BUTTER

著者 :
  • 新潮社 (2017年4月21日発売)
3.51
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本棚登録 : 4016
レビュー : 531
  • Amazon.co.jp (460ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103355328

作品紹介・あらすじ

木嶋佳苗事件から8年。獄中から溶け出す女の欲望が、すべてを搦め捕っていく――。男たちから次々に金を奪った末、三件の殺害容疑で逮捕された女、梶井真奈子。世間を賑わせたのは、彼女の決して若くも美しくもない容姿だった。週刊誌で働く30代の女性記者・里佳は、梶井への取材を重ねるうち、欲望に忠実な彼女の言動に振り回されるようになっていく。濃厚なコクと鮮烈な舌触りで著者の新境地を開く、圧倒的長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 男性3人を殺害した容疑者・梶井真奈子。
    特別に若くも美しくもない彼女のどこに被害者は引き付けられたのか。
    週刊誌記者・里佳は、カジマナの取材をすることに───

    「バター」と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは『ちびくろサンボ』のとらバターです。
    年齢とともに、食べることに抵抗を覚えるようになってしまったけれど、今でもホットケーキには絶対にバター。

    柚木麻子さんが好きで、ほとんどの作品を読んでいますが、
    特に食べ物の描写が、いつも本当に美味しそうで、大好きなのです。
    今回も「エシレバター」と「カルピスバター」は、すぐに買いに走りたくなるほどでした。
    が、しかし、
    濃厚なバターを白いご飯に乗せて醤油を垂らす。
    サッポロ一番の塩ラーメンバターのせ。
    その他にも、これでもか!というほど”濃厚”のオンパレード。

    そして、以前読んだ『ナイルパーチの女子会』で感じたような、
    あの心がざらざらする読後感。

    「食べたくないものは決して食べず、その時食べたいものだけ食べる」
    圧倒的な自己肯定感とともに、自分の本能のおもむくまま生きるカジマナ。
    カジマナのような人には近づきたくないと思っていても、
    いつの間にかその人のペースに巻き込まれ、翻弄されてしまうことってあるのかもしれない。
    決して首肯できるものではないけれど、彼女に巻き込まれたことによって、
    理佳と伶子がそれぞれの呪縛から解放されていくさまが、
    ほんの少し羨ましくも思えました。

  • 2021/02/12読了
    #柚木麻子作品

    醜い女の周りで連続する男性の不審死。
    女は事件に関与しているのか。
    描かれる料理描写が食欲そそる。
    細かな男女の人間心理も共感できる。
    構成は料理7ミステリ3。
    なんかフワッと終わった。。

  • 最初から最後まで濃厚なバターの香りたっぷりな作品でした♪ 実在の連続男性不審死亡事件を下地にしたフィクションですがけっこうミステリー感覚も充分に盛られた 料理満載な楽しめる小説です。決して美人でも若くもないポッチャリのカジマナ梶井真奈子の事件を深掘りすべく、とある週刊誌の敏腕女性記者 里佳は拘置中の被告人に接触を図る。彼女の核心に迫るべく告げられるままに同一グルメ体験をするうちに徹底的に翻弄されていく里佳と親友の伶子! リアリティーに欠ける印象だけど読み物として十二分に味わい楽しめました。

  • 【あらすじ】
    男たちから次々に金を奪った末、三件の殺害容疑で逮捕された女、梶井真奈子。世間を賑わせたのは、彼女の決して若くも美しくもない容姿だった。週刊誌で働く30代の女性記者・里佳は、梶井への取材を重ねるうち、欲望に忠実な彼女の言動に振り回されるようになっていく。濃厚なコクと鮮烈な舌触りで著者の新境地を開く、圧倒的長編小説。

    ・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

    序盤、物語の流れに入っていくのにかなり苦労しましたが、中盤以降は一気読みでした。どちらかというと、女性向けの内容だと思います。
    物語全体を通じてテーマとなっているのが「欲望」というワードです。特に食欲・性欲というものにスポットライトが当てられています。
    現代社会において、人間は欲望に対し様々な制限が課されていると思います。特に「婚姻」という他の動物にはないルールと、社会性が生んだ「常識」という概念が、欲望と現実の間を歪ませているのではないでしょうか。
    私自身も、自分が本当にやりたいことは何なのか、それを考えるのがすごく難しいと考えており、仮に何かやりたいことを考えついても、それが自分が本当にやりたいことなのか、それとも周りが「こうあるべき」と要求している(であろう)ことに迎合しているだけなのか、わからなくなってしまうことがあります。
    自分の欲望に従順な人が生み出すパワーは、とても強く感じられます。なぜなら、婚姻や常識を正面からぶち抜く力があると、周りはそれができない自分の無力さを痛感するからです。でも、この物語を読んで、その強力なパワーは、裏を返せば独りよがりでとても悲しいものなのだとも思いました。何に憧れるかは人の自由ですが、極端な考えに憧れそうになったときは一歩立ち止まって「本当に大丈夫?」と自分自身に問いかけられるようになりたいと思います。

  • 表紙絵とタイトルと作者で、軽く読み始めたけど、重かった。長かった。
    バターを食べたい欲求、丁寧に料理したい欲求に埋め尽くされているけど、今ほんとに胃が痛い。偶然なのか必然なのか。。。

  • ここにオンナの一生の全てがある。
    母と娘の、父と娘の、女と女の、そして男と女の、愛と憎。
    子どもの、思春期の、適齢期の、女としての価値とその揺らぎ。
    シングルマザーの、働く女の、子を欲する女の、悩みと迷いと決意。
    その全てを濃厚なバターでくるみ、これでもかこれでもかと突きつけて来る。
    あの、木嶋佳苗の事件があった時、私は何を思ったか。なぜ多くのオトコがあの決して若くも美しくもないひとりの女に溺れ、そして死んでいったのか、と首をかしげたはず。なぜだ?と。
    なぜこんな女に、と。そこに彼女を、そして男たちを見下す視線はなかったか。
    この物語を読んでいる間ずっと、肌を突かず離れずの距離でなでる生温かい手を感じていた。気持ちよくはなく、かといって鳥肌が立つほどでもない、そのざわざわとした得体の知れない居心地の悪さは自分が木嶋がモデルの梶井真奈子にからめとられていく恐怖だったのかもしれない。
    普段、自分のためだけに食事を作る事なんてほどんどない。外に出かける予定のない休日には化粧もせずだらしない時間を過ごしている。
    私も「自分のために」何かをすることを放棄している女のひとりだった。もしもどこかで彼女と出会っていたら、間違いなくその圧倒的肉感的楽観的自己肯定感にひれ伏し、嫌悪しつつも飲み込まれていっただろう。もしかすると彼女から見放されることに恐怖し、ひたすら動かされる駒になっていたかもしれない。そしていつか彼女に興味を示されなくなったとき、この命を落としていたかもしれない。どこかでとどまらなければ、飲み込まれるなと自分を引き止める声を聞きつつ読んだ。おいしそうな料理の数々に恍惚となる、けれどその裏側に人間の恐ろしく弱い業が口を開けて待っている。
    クチから始まりクチで終わる。自分を現実につなぎとめるために今日も私は料理を作り、そして食べる。

  • 雑誌記者って職業は大変だ。
    取材対象の半生を調べ、自分がその人になってしまう勢い。
    主人公だけじゃなく、親友も半端ない。
    だけど里佳は殺人こそしないけど、梶井を超えた気がする。

    タイトル通り、とっても濃い内容だった。
    私は本当に美味しいバターを食べた事はあるのだろうか・・・

  • 連続不審死事件の容疑者”梶井真奈子”を取材する女性記者”里佳”が主人公。梶井と関わり、翻弄されていく姿が描かれている。実際に起きた事件をヒントに作り上げられたフィクション。

    複数のテーマが絡み合っていて、感想を書くのが難しい。とにかく食べ物が美味しそうで、文章に引き込まれました。食感や香りまで丁寧に書かれていて、思わず喉がごくり。

    里佳は取材を通して、それまで避けてきた自分の問題と向き合い結論を出していきます。
    自分と向き合える強さや、自分の弱い部分を親しい人にさらけ出せる強さ。この強さが有るか無いかが、里佳と、梶井や被害者達との違いなのかな。という感想を持ちました。

  • 2日で読み終わった。全体的には面白かった。
    最初、ノンフィクションノベルとあったので、
    サスペンスかと思いきや、事件をきっかけとした、
    友情と、主人公の成長物語だった。

    女友達が出来なかった容疑者カジマナと、
    最後に親友とさらに信頼を深める主人公の対比が
    ハッピーエンドでもあり、カジマナが可哀想とも感じた。

    女に嫌われるカジマナ。

    随所に、「女らしさとは」を問いかける表現が目につき、作者はフェミニストなのか?と感じた。

    特に、男性へのケアを強いられること、容姿への追及、デブはダメ、何かと我慢を強いられるのは女性。など。

    そして対照的に取り巻く男性たちの、愚鈍さ、幼さ、無神経さもしっかり描かれていて、

    現代女性の生きづらさが随所に表現されていた。
    ちょっとしんどかった。

  • タイトルのBUTTERそのままに
    こってりと胸焼けしそうなストーリーがどこまでも続き、
    このまま読んでも読んでも終わらないのではないかと思えてくるほど濃厚な物語でした。
    なぜこんなにも読んでいて胸につかえるのか・・・
    自分の価値すら自分で決められないことにもがく主人公の姿は身に覚えがあるものばかり。
    「~でなければならない」ことばかりがどんどん増えて窮屈になっていく世の中で
    まわりの価値基準に合わせて生きていたら
    自分の「適量」さえも見失ってしまうだろう。

    小説のモデルとなった木嶋佳苗が逮捕された時
    私たちが心穏やかでいられなかったのは
    彼女が犯したとされる犯罪そのものよりも
    自分の容姿や生活を他人の尺度ではかることなく
    自分はそれだけの価値のある美しい女だと揺るぎない自信を見せつけられたからだったのではないか。

    心の中に投げ込まれた小石の波紋が
    読み終わった後いつまでも広がり続けています。

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著者プロフィール

柚木麻子(ゆづき あさこ)
1981年、東京都生まれの小説家。立教大学文学部フランス文学科卒業。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」で第88回オール讀物新人賞を受賞し、2010念二同作を含む初の単行本『終点のあの子』を刊行。2014年に『本屋さんのダイアナ』で第3回静岡書店大賞小説部門受賞。2015年『ナイルパーチの女子会』で第28回山本周五郎賞受賞、直木賞候補に。2017年『BUTTER』で直木賞候補。2019年、『マジカルグランマ』が第161回直木賞候補となる。

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