BUTTER

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 343
  • Amazon.co.jp ・本 (460ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103355328

感想・レビュー・書評

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  • 長い間、図書館で予約していて、やっと順番が回ってきました。早く読みたくて読みたくてたまらなかった!

    この本の参考にされている有名な事件はもちろん知っていたし、どうして容姿もそんなに良くない、太っている女性が、いとも簡単に男を騙せたのか?操れたのか?と、そればっかりが気になっていた。

    女性経験に乏しく、ただ話を聞いてくれ、癒しを求めていた年上男性に取り入った。男のためだけに、ひたすら凝った料理を作りながら。
    結局男の人ってバカよね…途中までは、そう思った。

    だけど、この本に出てくるカジマナは、そんな簡単なものではない。取材する記者と一緒に、わたしも簡単に、彼女の手中に巻き込まれていたのだ。

    あくまで殺された、自殺に追い込まれたのは男だけど、この事件の本質は、女と女というところにある。カジマナは、誰よりも女の世界を憎み、妬んでいた。本当は、心の底から羨ましかったのだと思う。女友達だけでなく、母娘、姉妹、全ての女同士の関わりが、上手くできなかったから。

    ある意味かわいそうな人、一言で言えばそうかもしれない。人を裏切り、追い込むことでしか、生きる意味を見出せなかった。人間世界を諦めていた感じなのだろうか。

    逮捕される寸前、料理教室の女性仲間を招いて、七面鳥を焼こうとしていたカジマナ。取材していた里香が、誘ったときに流した涙は本物だったと、せめて信じたい。

  • 木嶋佳苗事件を下敷きにしたフィクション。
    食への意欲、感心、拘り、執念は生きる事に正直だから?周りの人との関わり方、見られ方、それも世間なのか身内なのかによって変わるが。日常の中の拘りは絶えず繰り返し行われる事だけに、強固に雁字搦めに根深く人格形成に影響しているのだと言うのがひしひしと伝わる。


    食の贅沢さとは金銭以上に気力体力を要するものだと痛感する。四季折々の素材に目を光らせ、お気に入りの店を見つけ、新商品の動向をマメにチェックする。そして、今自分が何を食べたいか、と常に冷静に自分の体に問いかける。
    食は本来エゴイスティックな欲望。グルメというのは基本的には求道者、いくら優雅な言葉で包もうと、挑戦と発見を繰り返し己の欲望に日々真正面から向き合っている。欲望に常に忠実であろうとする一種の生真面目さ。自分で料理を作るとなれば益々外界を遮断し精神に砦を築けるようになる。
    その時食べたいものを自分の手で作り出せるのは楽しい。
    人の為でなく自分の為に料理を作って良い。
    世の母親達が毎日の献立や料理作りに苦労するのは自分が食べたいものというより家族のことを考えるから。今まで、献立作りに迷ったことがなかったのはコレか!
    ラムにコリアンダーにオレンジ…味の想像がつかない。と言う呟きに、想像がつくものなんてつまらないでしょ?同感。
    テーブルクロスは反対色を選ぶと料理が映える。インスタで応用できそう。

    学生時代、母親がベストフレンドという環境のせいで外に居場所を求めていなかったからか、心を分かち合う友達がいなかった。足りてると冒険しないもの。
    自暴自棄に暮らした思い出したくもない父の血が確実に自分の中に流れている。それに対する違和感。変えられない事に対する嫌悪感。

  • 全体的に濃厚な内容
    というのも女性と食べ物の描写が多く独特な世界観が楽しめました!

  • すごく読み応えがあると同時にお腹がすきました笑
    おそらく東京のお店なので行けないけれどレシピがあるものは作ってみたいな、と思わせられました。

    主人公の上下する人生があまりに胸が痛くなりました。
    でも木嶋佳苗の手記を読んだことがあるわたしとして一見、正論に思える言葉にハマってしまった経験があります。
    だからあまり人ごととは思えませんでした(;´Д`A

  • 柚木麻子さんの真骨頂なのかな、読み応えあり惹き込まれる物語でした。出会うべきタイミングで読めて良かった。
    エシレバターと恵比寿のロブションが私も大好き。
    七面鳥はちょっと難しいけれどカトルカールを焼こうと思います。

  • 梶井さんを軸にここまで話を膨らませれることがただただ凄い。。バターが食べたくなる。

  • 女として生きていくことの、しがらみや息苦しさをドロドロとまとわりつくように取り上げられた作品。

    女の心情が深く掘り下げられており、テーマとしては珍しく感じたが、共感できない感情もあり、後味も悪かった。

  • 首都圏婚活殺人事件、木嶋佳苗の事件を題材にした小説。
    週刊誌記者の里佳の視点から犯人の梶井真奈子の生涯があぶりだされる。

    里佳自身も父親との関係がトラウマになっていたりして、カジマナの事件には変に思い入れがあるのかどんどんカジマナの手中にハマって太ったり翻弄されたりするけど、結局カジマナから殺意のようなものは感じられなかった。

    ただただ虚栄心が強くて女性とはうまくやれず、同世代の男性には相手にされず、高齢の男性とばかり付き合って自分の物語を完結させてるような寂しいひとだった。
    結局被害者たちがカジマナに殺された明確な証拠みたいなものはなかったけど、精神的に支配して死に向かわせたことは事実だと思う。

    里佳はカジマナに操られていた部分もあるけど、最後は自分を取り戻して、またカジマナに会う前よりも自分を労るようになってそれはよかったかな。

    里佳はカジマナから悪い影響もいい影響もうけて自分を昇華させたなと思う。

  • 木嶋佳苗事件の一番の驚きは
    美醜の善し悪しと料理というものは
    均衡が保たれているという
    幻想を打ち砕いたからだろう。

    加えて
    料理をつくれる=家庭的、女性的という
    偶像にこだわっている人が
    まだまだ沢山いて結婚にはその要素が
    不可欠であるという苦しみが

    週刊誌の記者の里香に対しての
    元同僚の伶子の箱入り娘感が
    いい子だからこそイラつく部分や
    不妊で悩んでいるのも
    自ら苦しみに行っている側面もあり
    やるせないなーと

    男達の欲望を受け入れたら自由が
    ある程度手に入ると高を括っていた
    カジマナが

    最後サロンドミユコで七面鳥グリルが
    10人 大きめの七面鳥がはいるオーブンなど
    用意できない事を知り
    自分のために歩みはじめ捕まるという
    推察はなるほどと唸った。
    サロンに通っている
    ある意味の金持ちの奥さんたちは
    その「いつか」のホームパーティのために
    備えているが
    その「いつか」は向こうからはこない
    こないのに嬉々としているところが
    カジマナにはこの上ない敗北感に写ったことだろう。


  • 一人の女性に翻弄される人たち。自分もきっと例外ではない。自分の好きなこと、心地よくいられる場所、気持ちを安らげる方法は、しっかり持っておこうと思った。
    他人からの評価ばかり気にしていては、この本に出てくる被害者たちのように、一人になったときに堕落していくばかりだから。

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著者プロフィール

柚木麻子(ゆづき あさこ)
1981年、東京都生まれの小説家。立教大学文学部フランス文学科卒業。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」で第88回オール讀物新人賞を受賞し、2010念二同作を含む初の単行本『終点のあの子』を刊行。2014年に『本屋さんのダイアナ』で第3回静岡書店大賞小説部門受賞。2015年『ナイルパーチの女子会』で第28回山本周五郎賞受賞、直木賞候補に。2017年『BUTTER』で直木賞候補。2019年、『マジカルグランマ』が第161回直木賞候補となる。

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