パーマネント神喜劇

著者 :
  • 新潮社
3.41
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本棚登録 : 1311
感想 : 212
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103360124

作品紹介・あらすじ

「あんたの願い、叶えてあげる」こんなカミサマ、信じていいの――!? デートの途中、突然時が止まった。動かない街に現れたのは、「神」と名乗る二人の男(小太りとノッポ)。ペラペラまくしたてる小太りに肩を叩かれ戻った世界は、あれ、何かが違う……? 万城目ワールド、ここにあり! アヤしげな「神様」に願いを託し、叶えられたり振り回されたりする人たちの、ドタバタ神頼みエンターテインメント。

感想・レビュー・書評

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  • R3.1.29 読了。

     不思議なタイトルからは想像できない展開でした。
    とある田舎町の派手な衣装を身につけた中年オヤジのような外見の縁結びの神様と銀行員や営業マン風の外見の謎の神様の助手がいる神社を訪れる男女の悩みに答えてくれる連作短編。神様と出会ったことは神様に会ったとき以外は思い出せない。また、神様の世界にも一番偉いとされる大神様や上級の神様が居たり、人間のように昇進を気にしたりと人間臭い神様が味があっていい。
     表題作のパーマネント神喜劇は、大地震が中年オヤジ風の神様がおわす神社を襲い、御神木が倒れ、社も倒壊して大ダメージを負ってしまう。神様の姿が見えず、うろたえ不安げな表情で倒壊した神社を見つめる神様の助手。この後、大神様がこの神社にやってくることになり…。ハラハラドキドキの展開もラストはユーモアで閉幕。そして、この中年オヤジ風の神様が神々しくかっこよくさえ思えてしまった。
     「来年も再来年も、そう百年後も、こうしてともに在ることができたらいいね。」と言ってくれる神様に会ってみたいですね。
     また、この本に「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」のかのこちゃんが四年生になって物語に登場したり、「バベル九朔」のビルの古レコード屋さんが男女のつき合うきっかけの場になっていたりしており、ちょっとしたオマケも嬉しかった。
     もっともっとこの世界観に浸っていたかったなあ。

  • 縁結びをつかさどる神とその様子を報告書にまとめる調査員の神。彼らの計らいによりご縁が成就した人間のカップルを描いた連作短編集。

    『はじめの一歩』は、「まずはじめに」が口癖の肇と彼女であるみさきが主人公だ。先の見通しがないと前に進めない肇だが、神様は二人の縁を結ぶことができるのか。

    『当たり屋』は、何をやっても中途半端に終わってしまい、当り屋で小銭を稼いで暮らす英二が主人公。同棲していた彼女にも愛想をつかされ、やけになって競馬で「当ててやる」と叫び有り金をつぎ込んだ馬券が見事的中。これは神社を異動する神様の後任としてきた女神の采配だった。

    『トシ&シュン』は、小説家、俳優を目指しお互いに切磋琢磨する男女の物語。二人とも次のチャンスがだめならあきらめて就職しようと考えている。芸能&縁結びのハイブリッドな願いを神様は無事成就させることができるのか。

    最後の『パーマネント神喜劇』は、阪神大震災を彷彿とさせる大地震に見舞われて音信不通となってしまった神様と、神様を助けようと奔走する調査員の神様の間に起こった奇跡。

    全編とも、人生が上手くいっていない人たちが前に進んでいくきっかけをつかむ小さなハッピーストーリーで、疲れているときに読むにはちょうどいい物語だ。
    何もかもうまくいかない、と思っていても、ちょっとしたきっかけで好転することがある。それは、目には見えない神様が少しだけ力を貸してくれているのかもしれない。
    自分一人で悩んでいたことも、神様が見てくれると思うと気が軽くなる。神頼みって必要なのである。

  •  主人公は神様。
     百三十七色のド派手な服に身を包み,縁結びの神様として千年以上もお勤めしてきた。
     神様は,時を止めて人に接触したり,言霊を人に打ち込んだり,様々な手練手管を使って人々の願いを叶えるのを日々の仕事としている。
     そんな神様と,その神様の側にいる,どう見てもお堅いサラリーマン的ビジュアルの,フリーランスライター兼覆面調査員の神様らしき人物。

     4つの章からできていて,それぞれ,主人公の神様が関わる,不思議な話。
     縁結びを始め,何でも屋のように願い事を叶える神様の身にも,神様の世界なりに不思議な出来事が起こっていきます。


     万城目学さんの本は『鴨川ホルモー』とか『鹿男あをによし』とか『プリンセス・トヨトミ』とか『偉大なるしゅららぼん』とか,人間の力を超えた何かによる不思議な物語が多くて,1回目に読んだときは???ということもあるけれど,読んでいるうちにどっぷりと浸かってしまいます。

     拙者のような,ただのぼんくらの人間が,初詣などで神様に祈りを捧げても,起こった幸運な出来事が神様のおかげだと実感することは,まあ殆どないかと思います。
     けれども,人間界から見えないところで,こんな神様たちのお勤めがあるんだと思うとなんか楽しくなりますね。

  • 万城目さんの新作。万城目学なら必ず読むと決めているのだけれど、今回は楽しみでした。
    縁結びのしがない神様(でもキャリア千年)が語る一人称の文体は、時に読みにくく、無理もありましたが、最後の章では、こう来たか(笑)。
    神様が組織の一員で、サラリーマンのように自由がきかないところが面白い。最後に、然るべき手続きをしていなかったために、絶体絶命の危機に陥る縁結び神。こういう仕組みを考えたり、理詰めで納得させるところは万城目さんの真骨頂だと思いました。

    神様の事情とは別に、人間たちの悲喜こもごもの物語。市井の神様は、市井の人たちの願いを聞き続ける。縁結びの神が関わるけれど、人生を切り開くのは神様のおかげだけではなく、本人たちの力によるという。
    震災を子供の視線で扱った表題作は、心に沁みました。
    何度でも読み返したくなるお話です。
    2016年から2017年にかけて、あの長編「とっぴんぱらりの風太郎」や、「バベル九朔」と同じ時期にこのお話があったのですね。

    全編小説家みたいな神様がくっついているのですが、彼が最後に、地味にキーマンとなって意外な形で危機を回避する。万城目さんがちょっと笑っているような気がしました。

  • 図書館で。面白かったー。じんわり内側から温めてくれるような物語。突拍子も無いようでいて、こういう神様が寄り添っていてくれたら良いなぁ、と思っちゃいました♪

  • 神様の一人語り。中年のおっさんのような神様で楽しかったな。
    昇進試験とか、面白おかしく。変に難しくねじれた世界になったりせず、ファンも楽しめるくだりありで、さっと読めて万城目ワールドに満足。

  • 縁結びの神様たちのコメディ。
    最後はどうなることかとハラハラした。
    装丁が面白い。カバー裏がキュートでした。

  • 神様も頑張ってんだし。
    だから、ね。

    なんか元気でたわー。
    好きだ。まきめー。

  • 一気に読めて背表紙が斬新な佳作。

  • 神社におわす、神さまの仕事ぶりを覗いてみたら、意外と人間くさかったりして。
    という妄想を面白い小説にしてくれた万城目学さんの作品。
    あっという間に読み終えてしまった、もっと読みたい!
    請願成就の助けをしてくれる主人公、神?
    神の仕事ぶりを書き物にしたいと話を聴くライター、こちらも神?
    当たり屋の成年、小説家と女優を目指すカップル、彼女に振られそうなサラリーマン。彼らのために、神がなしたこととは。
    まさに「神喜劇」で、神さまエンタメとして読めた。次作も期待。

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著者プロフィール

万城目学(まきめ・まなぶ)
1976年生まれ、大阪府出身。京都大学法学部卒。
2006年、『鴨川ホルモー』(第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞)でデビュー。主な作品に『鹿男あをによし』、『プリンセス・トヨトミ』、『偉大なる、しゅららぼん』などがあり、いずれも文学賞ノミネート、映像化等など、大きな話題を呼ぶ。また、エッセイ集に『ザ・万歩計』、『ザ・万遊記』、対談本に『ぼくらの近代建築デラックス!』がある。

「2013年 『ザ・万字固め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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