パーマネント神喜劇

著者 :
  • 新潮社
3.42
  • (55)
  • (147)
  • (233)
  • (42)
  • (7)
本棚登録 : 1314
感想 : 213
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103360124

作品紹介・あらすじ

「あんたの願い、叶えてあげる」こんなカミサマ、信じていいの――!? デートの途中、突然時が止まった。動かない街に現れたのは、「神」と名乗る二人の男(小太りとノッポ)。ペラペラまくしたてる小太りに肩を叩かれ戻った世界は、あれ、何かが違う……? 万城目ワールド、ここにあり! アヤしげな「神様」に願いを託し、叶えられたり振り回されたりする人たちの、ドタバタ神頼みエンターテインメント。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • R3.1.29 読了。

     不思議なタイトルからは想像できない展開でした。
    とある田舎町の派手な衣装を身につけた中年オヤジのような外見の縁結びの神様と銀行員や営業マン風の外見の謎の神様の助手がいる神社を訪れる男女の悩みに答えてくれる連作短編。神様と出会ったことは神様に会ったとき以外は思い出せない。また、神様の世界にも一番偉いとされる大神様や上級の神様が居たり、人間のように昇進を気にしたりと人間臭い神様が味があっていい。
     表題作のパーマネント神喜劇は、大地震が中年オヤジ風の神様がおわす神社を襲い、御神木が倒れ、社も倒壊して大ダメージを負ってしまう。神様の姿が見えず、うろたえ不安げな表情で倒壊した神社を見つめる神様の助手。この後、大神様がこの神社にやってくることになり…。ハラハラドキドキの展開もラストはユーモアで閉幕。そして、この中年オヤジ風の神様が神々しくかっこよくさえ思えてしまった。
     「来年も再来年も、そう百年後も、こうしてともに在ることができたらいいね。」と言ってくれる神様に会ってみたいですね。
     また、この本に「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」のかのこちゃんが四年生になって物語に登場したり、「バベル九朔」のビルの古レコード屋さんが男女のつき合うきっかけの場になっていたりしており、ちょっとしたオマケも嬉しかった。
     もっともっとこの世界観に浸っていたかったなあ。

  • 縁結びをつかさどる神とその様子を報告書にまとめる調査員の神。彼らの計らいによりご縁が成就した人間のカップルを描いた連作短編集。

    『はじめの一歩』は、「まずはじめに」が口癖の肇と彼女であるみさきが主人公だ。先の見通しがないと前に進めない肇だが、神様は二人の縁を結ぶことができるのか。

    『当たり屋』は、何をやっても中途半端に終わってしまい、当り屋で小銭を稼いで暮らす英二が主人公。同棲していた彼女にも愛想をつかされ、やけになって競馬で「当ててやる」と叫び有り金をつぎ込んだ馬券が見事的中。これは神社を異動する神様の後任としてきた女神の采配だった。

    『トシ&シュン』は、小説家、俳優を目指しお互いに切磋琢磨する男女の物語。二人とも次のチャンスがだめならあきらめて就職しようと考えている。芸能&縁結びのハイブリッドな願いを神様は無事成就させることができるのか。

    最後の『パーマネント神喜劇』は、阪神大震災を彷彿とさせる大地震に見舞われて音信不通となってしまった神様と、神様を助けようと奔走する調査員の神様の間に起こった奇跡。

    全編とも、人生が上手くいっていない人たちが前に進んでいくきっかけをつかむ小さなハッピーストーリーで、疲れているときに読むにはちょうどいい物語だ。
    何もかもうまくいかない、と思っていても、ちょっとしたきっかけで好転することがある。それは、目には見えない神様が少しだけ力を貸してくれているのかもしれない。
    自分一人で悩んでいたことも、神様が見てくれると思うと気が軽くなる。神頼みって必要なのである。

  •  主人公は神様。
     百三十七色のド派手な服に身を包み,縁結びの神様として千年以上もお勤めしてきた。
     神様は,時を止めて人に接触したり,言霊を人に打ち込んだり,様々な手練手管を使って人々の願いを叶えるのを日々の仕事としている。
     そんな神様と,その神様の側にいる,どう見てもお堅いサラリーマン的ビジュアルの,フリーランスライター兼覆面調査員の神様らしき人物。

     4つの章からできていて,それぞれ,主人公の神様が関わる,不思議な話。
     縁結びを始め,何でも屋のように願い事を叶える神様の身にも,神様の世界なりに不思議な出来事が起こっていきます。


     万城目学さんの本は『鴨川ホルモー』とか『鹿男あをによし』とか『プリンセス・トヨトミ』とか『偉大なるしゅららぼん』とか,人間の力を超えた何かによる不思議な物語が多くて,1回目に読んだときは???ということもあるけれど,読んでいるうちにどっぷりと浸かってしまいます。

     拙者のような,ただのぼんくらの人間が,初詣などで神様に祈りを捧げても,起こった幸運な出来事が神様のおかげだと実感することは,まあ殆どないかと思います。
     けれども,人間界から見えないところで,こんな神様たちのお勤めがあるんだと思うとなんか楽しくなりますね。

  • 万城目さんの新作。万城目学なら必ず読むと決めているのだけれど、今回は楽しみでした。
    縁結びのしがない神様(でもキャリア千年)が語る一人称の文体は、時に読みにくく、無理もありましたが、最後の章では、こう来たか(笑)。
    神様が組織の一員で、サラリーマンのように自由がきかないところが面白い。最後に、然るべき手続きをしていなかったために、絶体絶命の危機に陥る縁結び神。こういう仕組みを考えたり、理詰めで納得させるところは万城目さんの真骨頂だと思いました。

    神様の事情とは別に、人間たちの悲喜こもごもの物語。市井の神様は、市井の人たちの願いを聞き続ける。縁結びの神が関わるけれど、人生を切り開くのは神様のおかげだけではなく、本人たちの力によるという。
    震災を子供の視線で扱った表題作は、心に沁みました。
    何度でも読み返したくなるお話です。
    2016年から2017年にかけて、あの長編「とっぴんぱらりの風太郎」や、「バベル九朔」と同じ時期にこのお話があったのですね。

    全編小説家みたいな神様がくっついているのですが、彼が最後に、地味にキーマンとなって意外な形で危機を回避する。万城目さんがちょっと笑っているような気がしました。

  • 古代の神々の世界と現代社会の仕組みや職業を融合させた万城目ワールド全開の楽しいお話でした。表紙の縁結び神が芋洗坂係長さんにそっくり。短編連作方式で4編収録、4話目の表題作に出てきた女の子は、『かのこちゃんとマドレーヌ婦人』の、かのこちゃんかなぁと思いながら読みました。面白かったです。

  • 図書館で。面白かったー。じんわり内側から温めてくれるような物語。突拍子も無いようでいて、こういう神様が寄り添っていてくれたら良いなぁ、と思っちゃいました♪

  • 神様の一人語り。中年のおっさんのような神様で楽しかったな。
    昇進試験とか、面白おかしく。変に難しくねじれた世界になったりせず、ファンも楽しめるくだりありで、さっと読めて万城目ワールドに満足。

  • 縁結びの神様たちのコメディ。
    最後はどうなることかとハラハラした。
    装丁が面白い。カバー裏がキュートでした。

  • 神様も頑張ってんだし。
    だから、ね。

    なんか元気でたわー。
    好きだ。まきめー。

  • 一気に読めて背表紙が斬新な佳作。

  • 神社におわす、神さまの仕事ぶりを覗いてみたら、意外と人間くさかったりして。
    という妄想を面白い小説にしてくれた万城目学さんの作品。
    あっという間に読み終えてしまった、もっと読みたい!
    請願成就の助けをしてくれる主人公、神?
    神の仕事ぶりを書き物にしたいと話を聴くライター、こちらも神?
    当たり屋の成年、小説家と女優を目指すカップル、彼女に振られそうなサラリーマン。彼らのために、神がなしたこととは。
    まさに「神喜劇」で、神さまエンタメとして読めた。次作も期待。

  • 「いまからあんたの願いをひとつだけ叶えてあげる」
    とある神社に祀られている神様。お得意は縁結び。
    千年同じ神社に仕えていて、そろそろ人事異動の時期も迫り、願い事を叶えるノルマを達成しなければ…と、日々奔走している。

    そんな神様と、その神様を取材して本を書こうという神様のおしゃべりを通して物語が進んでいく。

    人の願い事は千差万別。軽~いものから自分だけのためではないものまで、日々たくさんの願い事であふれている。
    神様の力で願いは叶えられたけど、そこから先をどう生きるかは自分自身で決めること。

    神様自身も、もっと大きな力を持つ大神様に助けられたり。
    パーマネント=永遠なる
    永遠を生きる神様だって、半年、10年、20年、100年先も平和であることを願っている。

  • ちょっぴりほっこりいい気分になれる素敵な作品。
    読後感は「かの子ちゃん」の時とちょっと似てたかな。

    過去作品とのつながり、トシ&シュンでのそれっぽいラスト含め、作者のいろんなところへの愛情を感じる一冊でした。

  • 鴨川ホルモーから大ファンになった万城目学さん。
    バカバカしい面白さはここにも健在で。縁結びの神様が偶然と成り行きで任務を遂行。騙されるというよりも良い意味で担がれて、みんなが幸せになる筋書き。
    あり得ない設定というのがこれまた楽しい。
    じっくりと腰を据えて再読しても違った面白さを構築できそう。

  • 今度、意味もなく神社に行ってみよう。
    銀行員みたいなオジさんがいたら、どうしよう。

  • 万城目さんの本、いい意味で突拍子もないものが多いように思いますが、この本もまさに。

    すごくおもしろかったです。

    読みやすくて楽しくて、ちょっとじんとくるとこもあったりして…
    神様、いい味出てましたよ!

    ほっと一息。いい息抜きになりました。

  • 神さまがいたら、きっとこんなやり取りがあるんだろうな。ふふ。
    願い事をするときは、住所、氏名は言ったほうがいいのかも……なーんて。

  • 神様の世界はだぁれも知らないから

    もしかしたら本当にこんな感じなのかもしれない。

    お話の中の神様は、
    人間ぽくて、なんだか親しみやすい。

    完璧だと「ネ申」過ぎて恐れ多いからかしら。

    かのこちゃんとお父さん
    の登場が嬉しかった。

    神様も一生懸命、
    人間を幸せにしようとしてくれてるんだぁと思うと
    期待に応えなくてはと思うなぁ。

    がんばろう、私。面白かった。

  • こんな神様が本当にいたら良いな!御利益上がりそう^ ^

  • 面白かったけど、最後それでいいの?とちょっと思った。
    2千年後の人たちが困るのでは・・・・。

  • ご本人はそれ以外も書きたいかもだけど
    やっぱ、ファンとしてはこういうのを待ってたんだなぁ。
    このおかしみが出せる作家さんってそうそういないものね。
     ■ ■ ■ ■ ■ 
    最終章ね。
    あの子が出てきたからかなぁ。
    妙に身近に感じられて、神様ありがとう って子どもみたく素直に思えたよ。
     ■ ■ ■ ■ ■ 
    そう言えばあのビルもでてた。
    んで
    「あ マキメワールドではマキメさんが神様だ!」ってことに気づいて
    最終章で神様が仰る、ああいう気持ちで書いてらっしゃるのかなぁ?とか思ったり。
     ■ ■ ■ ■ ■ 
    「パーマネント」ってそういう意味やったんだ!
    知らんかった。

  • 久しぶりの私の好きな感じの万城目学さんの作品。しゅららぼん、ホルモー的な。最後のお話はただの面白いお話でなくてちょっと切なかったな。あの出てきた女の子かのこちゃんは、マドレーヌのかのこちゃんなのかな。きゅうさく、も出てきてたし。他にも気づかなかったけど、昔のキャラとか設定が出てたのかな。万城目学さんはこれからもこっち系でいてほしいなあ。良いお話だった!良い神様だったな!

  • 「別に驚くことないよ。だって私は神だもの」
    いやいや驚きますよ!そんな個性的な姿で突然現れたら‼

    しがない縁結びの神様がノルマ達成のため必死で「お勤め」に励むお話。
    万城目さんらしさ満載で楽しい。
    クスッと笑えてその後じんわり温かくなる…万城目作品はやっぱりこうでないと!
    あの大好きな作品の彼女とお父さんも出て来てファンにとっては堪らない。

    時に厄介で時に我が儘ばかり、何て面倒な相手だと思うことも多いけれど、来年も再来年も百年後も、こうして共に在ることができたらいい…。
    楽しき神芝居、たっぷり堪能できました!
    続編希望‼

  • 縁結びの神様がおこす、ドタバタお仕事劇。ユーモアがあって楽しいエンタメ作品。
    上にへつらったり、ずるしたり。神様なのに、人間くさい主人公。普通のおじさんのような内面と、神様という立場のアンバランスさが、面白い。
    最後は人情味のあるまとめ方。読後感もいい。
    「はじめの一歩」はドラマで見た気がしていた。調べてみると、やはり大野智主演で映像化されていた。

  • ヘンテコな神様、ファンタジーだけどノルマや昇任試験といったサラリーマンの悲哀要素、人の営みへの優しい目線などなど、これまでのマキメワールドがギュギュッと濃縮された連作でした。
    今まで以上に文体にクセがあるので好き嫌いは分かれると思いますが、これまで万城目学作品を読んできた人へのサービスが満載。
    かのこちゃんにまた会えたのが一番のプレゼントでした。

  • 万城目さんの新作。帯とカバーでヘンテコで阿呆らしいお話かなと期待値上げちゃった。縁結びのおっさん神様が昇進のためにノルマをこなしてくんだけど、最後地震が起こった街の神社でほにゃららいい話になった。
    同性カップルの出会いの場所が、前作のバベル九朔のレコ一だったり、最後の話に3年生になったかのこちゃん(!)が出てきたり。

    けど、なんだか可もなく不可もなくって感じ。万城目さんそろそろ卒業かしらん。

  • ここのところの万城目さんは重い作品が続いていたので、こんなテイストの作品を待っていました。縁結びの神様が主役の連作短編集で、神様の世界のディティールからして願い事を叶えるノルマがあったり、昇任試験があったりしておかしい。人間世界のリアルさと神様世界のファンタジーが絶妙に混ざり合って楽しい読書時間になりました。これぞ万城目ワールド!コミカルな話が続いた後に、最後の話で思わずホロリとできたのも良かった。雑居ビル『バベル九朔』と、かのこちゃんが出てくるあたりもファンには嬉しいところでした。

  • 初、万城目学著の本。
    最初は何がどうなってるのと思っていたが、最後に神の何かわかったような気がする。
    当たり屋、トシ&シュンが個人的には面白かった。

  • サラリーマンのような神様のお仕事の話。語り手がコロコロ変わるせいかのか、神様のお仕事が想像できないからなのか、ちょっと読みにくかった。神様のキャラは面白かった。

  • 荒唐無稽な話だけれど、なんだか温かい場面もあって、それはよかったかな。神様がサラリーマン風っていう設定は、そんなに好きじゃなかったけど、でも面白かった。
    東日本大震災を思わせる地震の話は、すごく印象的だった。

全213件中 1 - 30件を表示

著者プロフィール

万城目学(まきめ・まなぶ)
1976年生まれ、大阪府出身。京都大学法学部卒。
2006年、『鴨川ホルモー』(第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞)でデビュー。主な作品に『鹿男あをによし』、『プリンセス・トヨトミ』、『偉大なる、しゅららぼん』などがあり、いずれも文学賞ノミネート、映像化等など、大きな話題を呼ぶ。また、エッセイ集に『ザ・万歩計』、『ザ・万遊記』、対談本に『ぼくらの近代建築デラックス!』がある。

「2013年 『ザ・万字固め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

万城目学の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×