月まで三キロ

著者 :
  • 新潮社
3.82
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本棚登録 : 2013
感想 : 218
  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103362128

作品紹介・あらすじ

この先に「月に一番近い場所」があるんです――。樹海を目指した男が、そこで見たものは? 「月は一年に三・八センチずつ、地球から離れていってるんですよ」。死に場所を探してタクシーに乗った男を、運転手は山奥へと誘う。「実はわたし、一三八億年前に生まれたんだ」。妻を亡くした男が営む食堂で毎夜定食を頼む女性客が、小学生の娘に語った言葉の真意。科学のきらめきが人の想いを結びつける短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 6つの短編の主人公たちは、人生の岐路に立っていたり、それまでの来し方を振り返ったりと、様々である。理系の伊予原新らしく、登場人物として、天体としての月、雪の結晶、アンモナイト、水月湖の年縞、素粒子・ISS、火山学の専門家たちが絡んできて、なかなか上手いなあと思わされる。この作者は、そこのあたりが売りだよね。主人公たちの思いなども細やかに描かれている。
    水月湖の年縞については、ブルーバックスの中川毅「人類と気候の10万年史」を読んで関心を持ち、水月湖に行って年縞博物館も訪れてきた。ははあ、作者もこの本を読んだか、博物館の展示解説を読んだかしたんだろうなあと思った。

  • 多くの読友さんのお薦めの本。図書館本、待った甲斐があった。登場人物それぞれが辛い過去を有し、それを傍らに一緒に生きていく。これと対峙する方法が異なり、個性なんだなと思う。この辛さとともに生きることで成長できるし、一人では生きてはいけない。タイトルもあるが月やオリオン座、夜空を見上げてのカタルシスもとても良い。「エイリアンの食堂」が一番良かった。母を亡くした父・娘の鈴花。経営する食堂に研究者・本庄が毎日食べる定食。本庄と鈴花の会話は鈴花、父親のカタルシスに繋がった。時々夜空を見上げて、月星の観察もいいね。

  • 本屋大賞2021ノミネート作品の「八月の銀の雪」の著者、伊与原さんの短編集。「八月…」があまりに良かったので、読了後すぐに図書館に借りに走った。

    オビには「科学のきらめきが人の気持ちを結ぶ六篇の物語」とある。
    やっぱり、科学は人の心を救うんだ。
    読後、「人生捨てたものじゃない」と感じさせてくれる短編集。新田次郎文学賞受賞作。
    完全に伊与原さんのファンになりました。

    月まで三キロ 評価5
    子育ては月に似ている。
    月は地球に裏側を見せない。子どもも同じように親に裏側を見せようとしない。
    でも、相手を理解しようとし続けること。
    もしかしたらそこに救いが見出されるのかもしれない。

    星六花 評価5
    美しさは生殖のためだけにあるものではない。
    例えば雪の結晶、星六花(ほしろっか)の形とか。

    アンモナイトの探し方 評価3
    アンモナイトはイカやタコの仲間、なんだそうだ。

    天王寺ハイエイタス 評価5
    人生に後悔はつきもの。でも、それでいい。

    エイリアンの食堂 評価3
    自分の身体の一部だった原子は、体外に排出され、地球上から大気を抜けて、やがて宇宙へと散らばっていく。
    自分が生きた痕跡はずっと宇宙に残る。

    山を刻む 評価3
    山岳小説。ずっと家族に尽くしてきた登山好きの主婦が長年の夢を叶える話。
    新田次郎さんも山岳小説で有名だそうだ。
    山ガールって好き。

  • 理系文学の短編集。100%文系の私に最後まで読めるだろうか?とちょっと心配だったけど、この本は何ともロマンチック。宇宙や科学ってロマンチックなんだなぁ。どのお話も爽やかな読後感で気持ちよく読み終えました。好きな一冊です。

  • 短編集。

    月、雪、化石、年縞、素粒子、火山。
    理系や科学的分野を好む人物が、必ず登場。
    その熱量や、普通の人とちょっとずれた感じが、独特の雰囲気を作り出す。

    あたたかさのあるやわらかなやり取りの中、心を揺さぶるシーンがあり、切なかったり、ほっこりしたり。
    何度も泣けた。

    「月まで三キロ」「星六花」「アンモナイトの探し方」「エイリアンの食堂」が、特によかった。

    • KOROPPYさん
      >goya626さん
      こんにちは。
      この作家さん初読みで、とてもよかったので、他の作品も読んでみようかなと思っていたのですが、これが一番...
      >goya626さん
      こんにちは。
      この作家さん初読みで、とてもよかったので、他の作品も読んでみようかなと思っていたのですが、これが一番のできなんですね(^^;
      2020/10/22
    • goya626さん
      「これは個人の感想です」なんてテレビコマーシャルみたいですが、まあ読んでみてください。ヒットするものがあるかもしれませんよ。
      「これは個人の感想です」なんてテレビコマーシャルみたいですが、まあ読んでみてください。ヒットするものがあるかもしれませんよ。
      2020/10/22
    • KOROPPYさん
      >goya626さん
      考えておきます(^^ゞ
      >goya626さん
      考えておきます(^^ゞ
      2020/10/22
  • 根っからの文系人間で、理数はからっきし苦手の私だったが、自然科学の知識と絡めてこんな優しい物語が生まれるなんてと、読み始めた途端、心をガシッと掴まれてしまった

    短編6編、それぞれ疲れ果て内向きになってしまった6編の主人公が月や生物の組成、気象などの知識を聞くことによって自らまた前に、外に向かって一歩歩み出そうとする

    6人6様の心の疲弊が我が事の様に感じられ苦しかったが、科学の知識を語って聞かせる側のタクシードライバーや気象庁に勤める奥平さんや博物館の元館長の戸川さんだってみんな苦く辛い経験をしている。みんな必死に生きているんだ
    最後に一条の希望の光をを見いだし、進みだそうとしたのに救われた

    6編に盛り込まれた自然科学の知識も難しくはあったが、大変興味深かった
    月と地球は年に3.8cm離れていっているらしい。だから地球が誕生した頃は、今よりも6倍も大きな月が見ていたらしい。6倍も大きな月って、どんなだったのだろう。想像するだけでワクワクする
    満月の夜、しみじみ月を眺めてみたいなと思った

    138億年前の水素で私たちができていて、それは昔誰かが使っていた水素かもしれない。私が使っていた水素は、死後きっと他の生き物が使う。そうやってずっとずっと生命が続いていくなんて・・・

    ロマンというべきか。しばし日常を離れ、想像の世界に浸ってしまった






  • 心に効く一冊。

    ちょっと悩み立ち止まり、光を探している人たちを描いた短編集。
    第一話目からもう好き過ぎて心に効き過ぎて、たまらなかった。
    いつもなら拒絶反応起きる理系談義も、こうやって人生や今生きている世界に絡められると、耳に心地良い音色となってすんなり心に入ってくる不思議さ。
    そして涙がじんわりくる、この不思議さ。
    理系要素による導きの意外な効能には驚きと大満足。

    表題作「月まで三キロ」はタクシードライバーの語りがじんじん沁みた。
    「エイリアンの食堂」の亡き存在に対する新たな角度からの受け止め方に涙した。
    「山を刻む」は思わず自分を重ね合わせてしまう。決意と勇気ある一歩に拍手をしたくなった。

    この三作がお気に入りだけど、「星六花」もじんわり優しさがたまらないし…やっぱりどれも全部好き。

  • 著者の作品は初読みとなりますが、タイトルに惹かれ手にしてみました。

    表題作を含む6篇のストーリーがおさめられています。

    「月まで三キロ」も良かったですが、個人的には最後の「山を刻む」が一番好きかもしれません。

    余談ですが、「山を刻む」を読みながら、山に関する作品を思い出し、何度も読み返した「八甲田山死の彷徨」(新田次郎著)をブクログに登録していない事に気づき、慌てて登録しました。

    人と人の繋がり、温もりを感じられるステキな一冊。

    片意地張らずに気楽に読める作品でした。


    説明
    内容紹介
    この先に「月に一番近い場所」があるんです――。樹海を目指した男が、そこで見たものは? 「月は一年に三・八センチずつ、地球から離れていってるんですよ」。死に場所を探してタクシーに乗った男を、運転手は山奥へと誘う。「実はわたし、一三八億年前に生まれたんだ」。妻を亡くした男が営む食堂で毎夜定食を頼む女性客が、小学生の娘に語った言葉の真意。科学のきらめきが人の想いを結びつける短篇集。

    内容(「BOOK」データベースより)
    「月は一年に三・八センチずつ、地球から離れていってるんですよ」。死に場所を探してタクシーに乗った男を、運転手は山奥へと誘う。―月まで三キロ。「実はわたし、一三八億年前に生まれたんだ」。妻を亡くした男が営む食堂で毎夜定食を頼む女性が、小学生の娘に伝えたかったこと。―エイリアンの食堂。「僕ら火山学者は、できるだけ細かく、山を刻むんです」。姑の誕生日に家を出て、ひとりで山に登った主婦。出会った研究者に触発され、ある決意をする―。―山を刻む。折れそうな心に寄り添う六つの物語。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    伊与原/新
    1972年、大阪生れ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2010年、『お台場アイランドベイビー』で横溝正史ミステリ大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 月や星、気象等、興味のある分野の話が出て来て面白かった。
    理系の自然科学を絡めた短編集。

    人の悩みは常にもやもやしていて、理系の問題を解くようにスッキリした解答が得られる訳ではないのが辛い。
    人の気持ちは曖昧ではっきりした答えはなかなか出せないけれど、月や空、雲、星といった太古から脈々と受け継がれる自然科学を前にすると、自分の悩みもちっぽけに思えてくる。
    短編全てがラストで晴れやかな気持ちになれるところがいい。
    さすが理系男子・伊与原さんの描いた物語だけあって、話の展開が明確でスッキリしていた。
    特に『星六花』『アンモナイトの探し方』『エイリアンの食堂』が好き。

  • 憂鬱な悩みを抱えた人達が、科学に詳しい人と出会い、悩める人生に光を見出す。短編集。

    科学に焦点をあてた切り口が新鮮だった。
    物語の鍵となる宇宙や地層の説明がしっかり書かれています。難しい言葉も多く、なかなか理解が及ばなかったので、登場人物の気持ちに追いつくのが大変でした。

    <好きだった章>

    “アンモナイトの探し方”
    化石を発掘する戸川さんが、主人公に語る言葉がよかった。感覚的にはわかるけれど、言葉にするのは難しい考えが、分かりやすくまとめられていると思います。

    “山を刻む”
    今作の中で一番好きなストーリーでした。
    先生と学生さんのやり取りが面白く、
    希望を感じる展開でした。

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著者プロフィール

著者紹介
1972)年大阪生まれ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻。博士課程修了後、大学勤務を経て、2010年『お台場アイランドベイビー』で横溝正史ミステリ大賞を受賞。2019年『月まで三キロ』で新田次郎賞を受賞した。著書に『磁極反転の日』『蝶が舞ったら謎のち晴れ――気象予報士・蝶子の推理――』『博物館のファントム 箕作教授の事件簿』『ブルーネス』『ルカの方舟』『梟のシエスタ』など。

「2020年 『コンタミ 科学汚染』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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