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本 ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784103362142
作品紹介・あらすじ
数百年先に帰ってくるかもしれない。懐かしい、この浜辺に――。なんとかウミガメの卵を孵化させ、自力で育てようとする徳島の中学生の女の子。老いた父親のために隕石を拾った場所を偽る北海道の身重の女性。山口の島で、萩焼に絶妙な色味を出すという伝説の土を探す元カメラマンの男――。人間の生をはるかに超える時の流れを見据えた、科学だけが気づかせてくれる大切な未来。きらめく全五篇。
感想・レビュー・書評
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第172回直木賞受賞作。
いい小説というのはこういう小説なのかなと思いました。
あまり「楽しい」とか「愉快」とか「手に汗握る」とかの要素は少なく、エンタメ度は低めだと思います。
品格があるのかなと思いました。
連作ではない短編集です。
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「夢化けの島」
32歳で山口県の国立大学で助教授をしている久保歩美が偶然船の中で出会った島の人間ではない一番苦手なタイプの男、三浦光平。
三浦は自分のことを「ただの無職のヒマ人」と語りますが陶芸の窯で働きたいと言い出します。
以前は写真家だったと言いますが、果たして三浦は何者なのか…。
「狼犬ダイアリー」
東京から来たフリーのWEBデザイナーのまひろ30歳は奈良の山奥に移住して半年です。
借りている家の大家さんの一人息子の拓己、10歳と友だちになります。
拓己がオオカミの鳴き声が聞こえたと言ったのち拓己の飼っていた犬のギンタがけものに追われて行方不明になります。けものはオオカミに違いないという拓己。果たしてオオカミは現代に存在するのか。
オオカミに興味のある方には面白いと思います。
「祈りの破片」
九州の長崎田之坂郷の集落から車で二十分のところにある不思議な空き家にまつわる話。
役場の住宅課の小寺が「えすか家や」(怖い家だ)と言われる家の調査をします。
時は長崎に原爆が落とされたころに遡ります。
キリスト教の信者にまつわるお話でした。
「星隕つ駅逓(ほしおつえきてい)」
北海道の遠軽町。
郵便局の配達員の38歳の信吾。
その妻の涼子が落ちてきた隕石をみつけますが、それを知った「日本流星ネットワーク」のマニアらに不審な点を指摘されます。
「藍を継ぐ海」
徳島県姫ケ浦のウミガメの話。
主人公は沙月という中学二年生。
祖父と二人暮らし。未婚で出産した母は亡くなり、家を出て東京へ行った姉がいます。 -
『宙わたる教室』同様、読書感想文の課題図書にぴったりな本だと思いました。ドラマ化にも向きそうです。
日頃はあまり大きくは取り上げられないけれど、地方の特色ある自然環境がもたらす人々の営みがリアルに語られています。
科学的好奇心が刺激されるとともに、人の気持ちや行いに、じんわりと感動させられました。
ストリーテリングが巧みで、次々と地域や登場人物たちの事情が語られていき、お話の結末に導かれていきます。
5つの短編がおさめられていますが、各編のタイトルの付け方が秀逸で、お話を読み終わって改めてタイトルをみると、その工夫が分かります。
けど、実は、
わたしとしては、最近、今回の芥川賞受賞作品や候補作、「このミステリーがすごい!」大賞受賞作など、いわゆる純文学や若い世代の作品を読むことが続いたせいか、伊予原 新さんの作品は、作者が小説全体や登場人物を支配していて、事柄を小説内に置きにいっている感じがして、窮屈に思いました。(裏返して言うと、作品の完成度が高いということですし、短編としての話の進行上、なおさらそう感じるのかもしれません。)
フェミニズム的に読むと、女性の見方へのバイアスがきつい気がして、作者の性別や年齢や社会的背景を感じずにはいられませんでした。この女性観が違和感なく受け入れられるとすれば、それは理科系分野への女性の数が少ない状況などが影響しているのかな? とも勝手に思いました。(それが作品の狙いのひとつなのかもしれませんし、短編としての制約なのかもしれませんが。)女性の若い作家による、自然科学分野の小説があれば読んでみたいと思いました。
(生意気なことを言ってすみません。あくまで個人の感想で、好みの問題です。)
最近、文学賞受賞作品を続けて読む機会に恵まれ、特徴の違いを体感することができ、自分の好みも分かってきました。わたしは、キャラクターたちが自己の意思を持って、天衣無縫・自由奔放に動きまわっているような小説が好きみたいです。人格的に完成なんてしていなくても、考えていることに矛盾があっても、それがリアル!、現在進行形! みたいな。小説としてほころびが見えていても、分かりにくくても、熱量の高さのほうが大事! みたいな。
あら? わがまま、気ままなわたしの性格そのままだわw
読書は、自分自身の姿を見せてくれますね~w -
直木賞受賞作の短編集です
短編ってあまり手にしないのですが
宙わたる教室がすごくよかったのと
ねこさんに短編と長編の読み分けを教えてもらったのでこれを機に手に取りました
科学を取り入れた題材で
静かに情熱を燃やしている人々の物語でした
その情熱がじわーっとこちらに伝わってくる心地よさがありました
なかなか足を運べないようないろいろな土地の歴史や風土も知れて面白かったです
夢化けの島
山口県見島 萩焼
狼犬ダイヤリー
奈良県東吉野村 狼
祈りの破片
長崎県長与町 原爆
星隕つ駅逓
北海道遠軽町 隕石
藍を継ぐ海
徳島県姫ヶ浦 ウミガメ
土地も題材もバラバラで、幅広いのに詳しく書かれていて驚かされます
あまり長い時間読めない日に開くとちょうど良い読書量でした。
やっぱり長編の方が没入感があって評価は上がりがち。
でもまた違った楽しみ方がわかったような気もしています(^^)ねこさんありがとうございます♪
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確かに狼かっこいいですよね。
私もシベリアンハスキーを飼っていたことがあるので、狼好きです♪
そして、やっぱり長編が好きです(๑˃̵...確かに狼かっこいいですよね。
私もシベリアンハスキーを飼っていたことがあるので、狼好きです♪
そして、やっぱり長編が好きです(๑˃̵ᴗ˂̵)
2025/03/26 -
雪見酒さん
狼かっこいいですよね!!
なんか獣たちの中でもシュッとしてる気がします!(語彙力のなさ)雪見酒さん
狼かっこいいですよね!!
なんか獣たちの中でもシュッとしてる気がします!(語彙力のなさ)2025/03/26 -
まきさん
シベリアンハスキー(*'▽'*)
小さい犬より大きい犬の方が好きなので
羨ましいです!!
まきさん
シベリアンハスキー(*'▽'*)
小さい犬より大きい犬の方が好きなので
羨ましいです!!
2025/03/26
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2025年第172回直木賞
デビュー当時から使い古されてしまったけど
作品に自然科学のエッセンスを含ませるという
絶妙な特色を持たせている
「夢化の島」
山口県見島 萩焼に使われる幻の土を違う方向から追う研究者と陶芸家
「狼犬ダイアリー」
奈良県東吉野村 都会からの移住者が狼犬の存在とその気質を知り 自分の生き方を鑑みる
「祈りの破片」
長崎県長崎市 取り残された空家に残された瓦礫
そこに残された記録と記憶
「星隕つ駅逓」
北海道遠軽町 隕石をめぐる今とアイヌと科学と人の想い
「藍を継ぐ海」
徳島県姫ケ浦 ウミガメの産卵を保護する人々
土地に家族に縛られる少女がウミガメに寄せる思い
今回の短編5作には自然のモチーフとともに継承が描かれているとのことです
そして科学の部分を読み飛ばされないようという
お気持ちは充分反映されていました
小説に落とし込まれた科学から読み解く
伝統と継承-
2025/04/01
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2025/04/01
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2025/04/03
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つい先日、伊与原新さんの「宙わたる教室」をプライムビデオで見ました。とても感動し面白かったので、今回こちらの作品を読みました。
5篇の短編集で、どのお話もそこの土地の歴史や人々の想いを深く掘り下げており、大変興味深かったです。また科学的な要素も取り入れられ、小説としてだけでなく、科学の図鑑を見ている感覚のような面白さもありました!
・夢化けの島
山口県見島市 萩焼
・狼犬ダイアリー
奈良県東吉野村 狼
・祈りの破片
長崎 原爆
・星隕つ駅逓
北海道 隕石
・藍を継ぐ海
徳島県姫ヶ浦 ウミガメ
読了後、最後まで心に残ったのは、狼犬ダイアリーと祈りの破片でした。
また他作品も読みたいです。 -
5篇からなる短編集。直木賞(2024下半期)。物語と科学的知識の融合。「夢化けの島」(岩石学)、「狼犬ダイアリー」(狼)、「祈りの破片」(長崎原爆)、「星隕つ駅逓」(隕石)、「藍を継ぐ海」(海亀)。「好きなところで、気に入った場所で、生きたらええの。生まれた場所に責任がある人なんて、どこにもおらんのよ」
期待通りの秀作でした。物語と科学的知識の融合もスムーズでしたし、地域との繋がりも強く感じました。 -
第172回直木賞受賞作。
ということで、伊与原新作品を初読み。
山口県見島、奈良県東吉野村、長崎県長与町、北海道遠軽町、徳島県阿須町。5つの地方を舞台にした、その土地ならではの物語を科学と少しのミステリーを織り交ぜたような、5編からなる短編集。
どの話も雰囲気は異なるけど、短編とは思えない壮大なスケールの話が多かった。全部良かったけど、『祈りの破片』の清太の件は号泣だった…
印象に残ったのは『夢化けの島』の中の言葉で、
「土にはの、土のなりたい形があるんじゃ。その声をよう聞きながら、さぐりさぐりのばすことや」
陶芸の話だけど、こういう気持ちで常にいられることが名人であり、きっと様々な関わりの中で大事なことなんだろうな〜-
べーさん、こんにちは。いつもありがとうございます。声をよう聞きながら、さぐりさぐりのばす、という表現が素敵ですね♪茶の湯の達人が茶を点てたり...べーさん、こんにちは。いつもありがとうございます。声をよう聞きながら、さぐりさぐりのばす、という表現が素敵ですね♪茶の湯の達人が茶を点てたり、職人が手のひらの感触だけで木を削っていくときも、まさにその感覚なんでしょうか(*^^*)2025/05/18
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コルベットさん、こんにちは!
コメントありがとうございます!
そうですね、色々な名人に通じるものがあるような気がします。何かに向き合うとき...コルベットさん、こんにちは!
コメントありがとうございます!
そうですね、色々な名人に通じるものがあるような気がします。何かに向き合うときの姿勢というか、自然体でいることの大切さみたいな。2025/05/18
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5編の物語で構成されるが、関連性はないのでどこから読んでも良い。
物語の舞台は知らない土地だったので、地図で場所を確認しながら読んだ。
どの話も科学・生物学とそれに関わる人たちの地道な活動や想いが描かれている。
山口県の見島 島の土と萩焼
奈良県の東吉野村 絶滅したニホンオオカミと狼犬
長崎県の長与町 空家問題と原爆被ばく品
北海道の遠軽町 閉鎖される郵便局と隕石
徳島県の日和佐 産卵場所の海岸とウミガメ
「藍を継ぐ海」は、最後のウミガメの話で、何が藍なのかというと、黒潮の色だった。
かつて存在していた場所や生き物が、すたれていく様を描いた物語でもあった。
失くしたくないものが、じわじわと無くなっていく。
かつての様子を知っている人も歳を取り、記録の継承も難しくなる。
科学的エッセンスに惹かれる5編の物語なのですが、
ニュースにならない社会の問題と、それに対峙している人達の生活もいろいろあるのだなと思った。 -
先日、母校に伊予原さんが来て、「宙わたる教室」の話をしてくれたということもあり読んでみた。短編集なので物足りなかったが、見島土、狼犬、ウミガメ、隕石、長崎原爆の資料、全部が興味深い題材だった。
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理科学系の5編の短編集。
今、NHKで「宙わたる教室」が放送されている。
本の中でも感動したが、ドラマだと違った側面から科学に関する知識を得られる。
今作も過去から今が繋がっているという歴史を感じることもでき、大切なものが何かを気づかせてくれた。
淡々と流れるのではなく、そこで住む人の感情も細やかに現れていて最後は、とても清々しい気持ちになる。
日本各地での出来事だというのも興味を持って楽しむことができた。
「夢化けの島」〜山口の見島で出会った男が萩焼の土に拘る理由とは。
「狼犬ダイアリー」〜奈良の東吉野村で響いてきた遠吠えはオオカミなのか?
「祈りの破片」〜長崎の田之坂郷の空き家にあったものとは…。
「星隕つ駅逓」〜北海道紋別郡白滝で落下した隕石を見つけたのは。
「藍を継ぐ海」〜徳島の海辺でウミガメの卵を孵化させて育てようとする女子中学生。
著者プロフィール
伊与原新の作品






品格、、、なるほど、、、、
品格、、、なるほど、、、、
私もちょうど読んでいる時にブク友さんの「面白くない」と言うレビューがタイムラインに流れていて「えー!」と思いました。
面白...
私もちょうど読んでいる時にブク友さんの「面白くない」と言うレビューがタイムラインに流れていて「えー!」と思いました。
面白さのツボは、皆さん違いますよね。