路地の子

著者 :
  • 新潮社
4.13
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本棚登録 : 177
レビュー : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103362524

作品紹介・あらすじ

大阪・更池に生まれ育ち、己の才覚だけを信じ、食肉業で伸し上がった「父」の怒濤の人生。「金さえあれば差別なんてされへんのや!」 昭和39年、大阪――「コッテ牛」と呼ばれた突破者、上原龍造は「天職」に巡りあう。一匹狼ながら、部落解放同盟、右翼、共産党、ヤクザと相まみえる日々。同和利権を取り巻く時代の波に翻弄されつつ、逞しく路地を生き抜いた男の壮絶な半生を、息子である著者が描く異色のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 大阪・松原市更池の“路地(同和地区)”に生まれ育った著者が描く父・龍造の一代記。あまりの峻烈・激越な生き様に圧倒されっ放しのまま一気読み。今年文句なしのベスト1。

    さて、本論。のっけから紙面に引き込まれる。屠場で熟練の男たちが黙々と牛割り(屠る)シーンに息を飲む。屠られたばかりの肉や内臓の温かさ、1頭の牛が商品になるまでの各工程に息づく職人芸をドキュメンタルに活写。その熱気漂う現場に小競り合いが起こる。龍造が牛刀を持ちヤクザ者を執拗に追い回す。その蛮勇さから更池の「コッテ牛」と恐れられた型破りな少年は「金さえあれば差別されへん」の信念の元、まさしく徒手空拳で食肉業界に乗り込む。

    当時の食肉業界地図は社会党系の解放同盟が牛耳り、その牙城を切り崩そうとする共産党系の正常化連・全解連。自民党系では同和会、そこに右翼に極道が入り乱れ、三国志さながらの利権闘争が渦巻き、無学な龍造が頼りにするのは自身の感覚のみ。どこに与するのがプラスになるのか。その一点で次から次に降りかかる難局に対峙していく。

    巻末の「おわりに」には、年老いた父 龍造との現在の関係、著者の自殺未遂、そして路地との関わり…を綴る。これがまた切なく、この「おわり」の一章を書きたいがために、ノンフィクション作家になったのではないか。エレジー奏でる凄絶なノンフィクション。#路地の子 #上原善弘 #新潮社 #食肉業界 #同和問題 #おっさん近ごろ乱れ読み #おっさん読書

  • 「路地」という言葉のもう一つの意味。学校の歴史で軽くながすだけの被差別部落の、今も続く問題たち。普段何気なく食べている牛肉が、牛から肉になるまでにかかわる多くの人、絡まる利権、政治的思惑。いくつもの、知らない、というか見てこなかった話に驚くばかり。食肉偽装がここにつながっていたってことも驚いたし、右翼左翼共産極道の複雑な関係にも驚いたし。「橋のない川」は昔々の話じゃないのだな。

  • 【そこに生まれ,そこに生きて】『日本の路地を旅する』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した上原善広が,被差別部落で生まれた父親の半生を記した一代記。突破者として不器用に生き抜いた男,そしてその男を取り巻く社会を無骨な文体で描いていきます。

    いわゆる「同和」という言葉を耳にしたときに受ける印象とはまったく異なる世界が広がっていました。その世界を,いわば内部の人間が内部の言葉で外に向けて書き記しているため,読者とその読者を抱える社会の言説がぐっと広げる効果を持つ一冊だと思います(と,なんか小難しいことを書いていますが,そんなことどうでも良くなるくらいにぶっ飛んだ作品です。)。

    〜「ホンマに『被差別部落民の団結』どころか,『仁義なき戦い』ですわな。」〜

    映像化はできないでしょうが☆5つ

  • 路地。
    小さい頃、「ろぉじ」という言葉を耳にした記憶があるが、それがどんな時に誰から発せられた言葉なのかなどの記憶は全くない。
    親が言ったのか、遊び仲間の子が言ったのか…。
    路地で育った著者が、父親から聞かされた話をもとにして彼の一代記を描いたノンフィクション。
    道を外さずに、よく肉一筋に生き抜いたと思う。
    ネットで関連事項をチェックしてみると、内容に思い違った部分もあるようだが、そんなことは抜きにして、多くの人に読んで貰いたい本だと思った。

  • 本書の「路地」とは被差別部落を指す。
    著者は被差別部落の出身者であることを公言し、多くの路地を題材とした作品を著している。

    主人公は著者の父であり、物語の中盤から主人公の三男である著者も名前が出てくる。

    導入部の屠畜の詳細な描写は読者を選ぶかもしれない。

    舞台は羽曳野市など、大阪のどちらかというと南部に近いところである。

    ボク自身は大阪北部で生まれ育っているが、やはり、西日本は大規模な被差別部落が多く、大なり小なり身近に感じることは度々あった。

    中でも、かつてボクの自宅の近くに市場があり、隣接して大きな精肉店とういよりは精肉工場があった。その入り口には巨大な肉牛を縦に二つに断ち割った枝肉がいくつも吊るしてあった。
    その近くでは牛の大きな骨を野良犬が取り合っていたりした。

    それを奇異にも思わず日常的に見ながら登下校していた思い出がある。

    近くには地名からそれと分かる地区もあったが、関係はわからない。

    登場人物は戦中戦後を生きた世代から主人公のように高度経済成長期から今日までの食肉業界の内幕を裏社会とのしがらみを交えて展開していく。

    ノンフィクションではあるが、まるで花登筐の描く物語のように見事にドラマチックに展開して行く。
    又、時代背景が未整備な行政と同和問題(利権)が絡み合った戦後からの闇社会なので、まさに仁義なき戦いの同和版と言える。

    特に後半は同和・暴力団・右翼が利権を巡って複雑に絡み合い、銭儲けの才覚だけはあるが狂犬のよう(作中では何度も気違いと言われている)な主人公や、一人任侠路線を貫くヒロイックな脇役なども登場して盛り上がりを見せる。

    とてもフィクションとは思えない展開ではある。
    あとがきの中でも、著者は自分の父親に取材している時に誇張しているのではと思ったらしいが、むしろ控えめに物語っているらしいことを語っている。

    主人公にはほぼ感情移入することはできないが、自分にはまったくない人格であり、ある意味魅力的でもある。

    また、あとがきでも書かれているが、著者もずっと自分の父親を忌避しつつ、実は愛しており、同様な道をたどってきたとのこと。
    佳品ではあるが、今のところ著者にもシンパシーを感じることはできない。

    ✳︎実はこの主人公に似た食肉会社のたたき上げ社長を知っているのだが、リアルすぎてこの文章に書くことが憚られる。

  • 【版元】 
    判型 四六判変型
    頁数 239ページ
    ISBN 978-4-10-336252-4
    C-CODE 0095
    ジャンル ノンフィクション
    定価 1,512円
    http://www.shinchosha.co.jp/sp/book/336252/

    【誤記の情報】
    ・指摘
    “昨年末、部落解放同盟中央本部は、上原と版元の新潮社に対し、抗議と話し合いを求める申し入れ書を提出した。これに対し、両者は1月中旬に文書で回答した。/上原は回答の中で、事実関係の間違いを認め、増刷時には訂正し、その内容をウェブ等で広く公開することを明言した。なので私は、彼のツイッターやブログ(その名も「全身ノンフィクショ作家」)で公にされるはずの弁明を待った。ところが、1月下旬以降、彼はなぜか、ツイッターとブログを停止してしまった。
    〔……〕”
    http://kadookanobuhiko.tumblr.com/post/171087797529

  • 作者の父の話。エッタと差別を受けながら、強く生きたちょっと暴力的だか、どこか憎めない龍造が私は嫌いではない。

  •  「本の雑誌」1月号、2017年ノンフィクションの第4位。戦後大阪の路地、更池でのし上がっていった突破者の半生をその息子が描く。
     その時代の政治家、活動家、嗅覚鋭い商売人は利権を貪り、役人は「忖度」する。突破者ではなく、その時代のそれらを取り巻くシステムに辟易する。歴史には、幾つもの側面があり、「正史」には書かれないその歴史に、ひとりの突破者に焦点を当てながら照射する。

  • 一読して感じたのは、『血と骨』(@梁石日)で描かれる世界との類似性。
    くわえて、著者が主人公(父)に抱く、言葉にし難い想い。

    一気読みして、寝不足である。

  • 路地、いわゆる被差別部落に出自をもつ筆者が、自らの父親の自伝を記した本作。父親であるのに、いや、父親であるからこそ、その姿を厳しく客観的に書き上げているのが印象的。

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プロフィール

1973年、大阪府生まれ。ノンフィクション作家。大阪体育大学卒業。著書に、『日本の路地を旅する』(文藝春秋)、『私家版差別語辞典』(新潮選書)、『異形の日本人』『被差別の食卓』(新潮新書)など。

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