カエルの楽園

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103364122

感想・レビュー・書評

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  • 誰でも嫌いなタイプの人がいると思うが、私にとっては百田尚樹がそのうちの一人だ。
    思想とか考え方と言うよりも生理的に受け付けがたい。
    完全否定するものの言い方、挑発的な言葉選びがどうも好きになれない。

    だから百田尚樹の本など読むはずはなかった。
    中学高校生向けの日本の政治の本らしいので、どのように問題提起(啓蒙?)しようとしているのかが気になり読んでみた。
    本書は日本の憲法と国防に焦点を当てたものだ。
    こんな本を読む子は、いろんな本を読むのだろうなと思った。
    なのでその子が何かを感じ取りいろいろ考えればいい。
    ただ、憲法を宗教のように扱っているのが気になった。

    本書からは百田尚樹が見ている日本がよく分かる。
    私から見えている日本と比べるとちょっと違うが大きくずれてはいない。
    同じ日本で生きているのだからそんなに違うわけはないか。
    違うのは立ち位置だ、かなり離れている(だから好きではないのだけれど)。
    立ち位置が違うと同じものを見ていても受け入れ方が真逆だったりして面白い。

    ウシガエルによってまさに今、香港がこの本のナパージュになりつつある。何処からも助けがないのが悲しい。
    今現在現実の日本は平和な国だが、国内外のいろんな情勢で将来の不安も感じる。
    本書はそんなことを考えさせられる一冊だ。

  •  日本を中心に周辺国や自衛隊、マスコミ等をカエルで擬人化して物語が描かれているが、このカエルは中国、このカエルは自衛隊等と捻りなく理解できるほど現代日本を取り巻く環境を風刺して描かれている。全く捻りがなく平易な文書のため一日で読了できたが、捻りがないので物語としては面白みに欠ける。しかし日本社会の現実を思い知らされる内容であった。

  • 久しぶりの百田尚樹さん。
    帯にご自身の最高傑作とあったので読んでみました。
    百田さんの強いメッセージの込められた風刺的な寓話。

    「あとどれだけ会議するかを決める会議をしよう」
    ナパージュ国のカエルたちが滑稽に思えてしまう。
    それと同時に、一つの考えに妄信的になる怖さも感じました。

    良くも悪くも、あらゆる意味で島国であるニッポン。
    自分の暮す国を、シニカルな目線で客観的に見せられたようなかんじです。

    内容は極論ではありましたが、
    しっかりと自分の国の将来を考える必要性に、
    一石を投じられたのではと思います。

  • 現在の平和ボケした日本と侵略国家の危険性を警鐘した寓話であろう。
    政治を抜きにして日本の小中学生に読んで貰いたい。それ以上に三戒(憲法第九条)を守れば侵略されないと信じている大人の九条信者にオススメしたい一冊だ。

    よりよく生きる道を探し続けることが、最高の人生を生きる、カエルの主人公ソクラテスは哲学者パスカルの名言を伝えたかったのだろう。
    侵略国家に囲まれた、わが国の在り方が問われる。
    『力なき正義は無力あり、正義なき力は圧制である。』

  • 絶望的な環境から逃れようと祖国を離れ、安住の地を求め旅立ったカエルたち。
    生き残り、楽園に着いたと思った二匹が見たツチガエルの国で起きたこととは。
    いろんな読み方ができると思いますが、DV被害に遭いながら逃げない人の思考はこれかもしれない、と痛ましい気持ちになりました。
    こちらの解釈をいくら変えようと、ダメなものはダメ。
    カエルの国のおとぎ話の形を取りつつ、痛烈な批判が盛り込まれている、そんな気も。救いをどこに求めたらいいのか、凹んでいる時には読まない方がいいかもと思えた本。
    表と裏があるとしたら、これは裏の本。表のカエルのウォートンの話で口直ししたいと思いました。

  • 最近、保守系のネットニュースを視聴しており、その番組のコメンテーターでもある筆者の本作品名をたびたび耳にするので読んでみた。中身についてはSNSで見聞きしていたので予想はついたが、いろんな意味で笑える(嘲笑ではなく)小説だった。

    アマガエルの二匹の目を通して「ナパージュ」という国を客観的に見ているが、確かに外から見るとかなり異質の国に見える。国民にとっては「当たり前」のことでも、国外から見るとそうでもない。その「当たり前」に感銘を受けることもあるだろう、ソクラテスたちのように。けれども平和に関して言えば、ナパージュの「当たり前」は奇妙極まりない。そこには統治者による教育があり、その思想を踏襲する扇動者による歪んだ報道がある。

    この内容を受けて賛否両論が巻き起こるのは当然だよなあ、と思う。特定の組織、特定の人物を連想させる言動の数々がいかにもそれらしいので私は笑えてしまったが。「平和」とは何なのか。その定義も時代と共に移り変わるように思う。憲法九条はそのための指針であって経典ではないよね。そもそも神道に聖典や経典なんて無関係だし。

    改憲反対派の主義主張を聞いてると、逆に戦争に憑りつかれてるように思えるのだが。ミステリではないが、ある角度から見れば恐ろしさが垣間見える、そんなお話でした。

  • アマガエルのソクラテス、ロベルタ。
    楽園を探して旅するが、行き着いたツチガエルの国は楽園なのか。
    読みやすかったが途中止まった。
    国際社会を表した寓話とのことだが、言われてみれば当てはまった。
    寓話と今を重ね合わせるところが発見だった。

  • いや~~ こんな事書いていいのかなぁ??
    どっかの 国の
    憲法○条の改正についてを
    カエルの王国として 例えて表現してあるけど。。。

    一昔前なら 検閲にひっかかりそうな内容でした。

    これを読むと 果たして どちらが正しいのか
    悩んでしまいますね。

    もしかしたら
    一番幸せなのは ローラのように 最後まで三戒を信じていたままの方がある意味幸せだったのかもしれないと 思いました。

    大きなカエルに攻められた時
    平和に話し合いをしたくても相手にされず
    こちらが 非暴力を貫けば どんどん攻めてくる。
    大きな他の生き物の力で守られていたけど
    その力がなくなったら とたんに攻められてくる。
    守っていてくれた生き物との相互協力は非暴力の主義にあわないので
    協力できず。
    最後には占領されてしまうが
    その方が 良いと思えるか あるいは それは違うと思うか。
    カエルの楽園は 一体どこにあるのでしょうか??

    考えさせられる お話でした。

  • 伝えたいことは伝わってきたし、警鐘を鳴らすためには伝わりやすい表現であると思った。しかし、作者の思想と自分の思想は同じ側ではあるが、比喩が直接的で、展開も救いようがなく、それが伝えたかったことなのだろうけど、「本」として面白いとは言えないと思った。

  • これは中々の問題作。ここまでの衝撃は「コンビニ人間」以来かもしれない。

    アマガエルのソクラテスは、生まれ育った国をダマガエルによって追われ、国から逃れるため、多くの仲間を引き連れて旅に出る。
    しかし旅は厳しく、多くの仲間を失って、ついには仲間はロベルトだけとなってしまった。そんな命からがらの状態で辿り着いたのは、ツチガエルの国、ナパージュ。この国では、三戒と言われる絶対的な教えが存在し、この教えによって長年の間、争いが発生せず平穏な日々が保たれていた。
    この国では三戒によって相手を信じて争いは決してしてはいけない、また、そのための力を身につけてはならないと教えられる。さらに、謝りソングを毎日復唱することによっていつまでも慈悲の心を持っていた。

    この国こそが最強の国家体制であり、理想の社会実現に必要であると考えて自分の国に持ち帰ろうとするロベルト。しかし、もう少しだけ様子を見てみようと提案するソクラテス。こうして平和の国ナタージュで2人は穏やかな日々を過ごすことになった。

    この作品は、童話のような簡易的な体裁を取りながら、現代を忠実にカエルに置き換えて再現している。ナパージュのモデルはいわれもなく日本のことだ。他にも、いまの日本周辺で巻き起こっている事象に当てはめることのできるモデルが数多く登場する。

    衝撃的なのはラストの展開だ。あまりにも当たり前で呆気ない終わり方。けれどこれが現実なのかもしれない。わたしはどちらかといえばリベラルな人間なのだけれど、いまの日本の在り方について、少し考えさせられてしまった。政治や社会の勉強をするなら、下手に分厚い参考書を読むより、まずこちらの小説を読んでみた方がいいかもしれない。

著者プロフィール



「2022年 『橋下徹の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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