太陽・惑星

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103367314

感想・レビュー・書評

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  • うわぁ。
    久しぶりに出会ったこういう人!
    中学生の頃に三島由紀夫を読んで圧倒され、
    次から次へとはまっていった感覚を思い出した。

    言葉の海。
    あっちの世界(正常)とこっちの世界(異常)
    をふらふらと飛び越えたり戻ってきたり、
    揺さぶられているうちに何が正常で何が異常だか
    わからなくなり自分の感覚が壊されていく感じ。
    もっと読みたいと中毒みたいになる。

    「太陽」
    高レベルの幸福や不幸に対しての許容度を表す数値
    「グジャラート指数」。この言葉が何度も出てきて共通理解として受け入れた頃、気になってググってみたら著者の造語だと知って驚いた。

    読んでいる最中にふと、人間は「拡げたい」生き物なんだろうなあと思った。自分の研究が後世に広がりを持って派生する状態になりたい。独身者を忌むのは広がらないから。孤独死を怖がるのは子供達に囲まれて死にたいから。

    話の拡がり方の支離滅裂さも良かったけれど、暴力的な幕引きとなった最後の一文の「が、太陽のことであれば以上だ。」にしびれた。

    「惑星」
    タルコフスキーの「惑星ソラリス」は観たことがないけれど、観ていたらこの話の理解も少しは変わっただろうか。現在、過去、未来という「時間」と、最高製品や肉の海と呼ばれるものにコネクトすることで「空間」も一体化して、その最後に残った人間の会話。著者の言いたいことがつかめそうでつかめず、もどかしい。そして次の本も読んでみようと決意をした。

  • 『太陽』
    金(きん)を生成するには莫大なエネルギーが必要だ。太陽では足りないほどのエネルギー。

    現代に生きる人々のなかで金(かね)を欲する者は多い。金(かね)で女を買いたい、と思っている男や、大きな買い物をすることで財力を見せつけようとする者、赤ちゃん工場を作って子どもを売って金(かね)を得る者。

    赤ちゃん工場の首謀者は高いIQを持っていて、世界の仕組みを知っている。彼の優秀な頭脳を引き継いだ赤ちゃんがパリで暮らし、その子孫が金(きん)を生成することを提案して、やがて人類ごと太陽に飲み込まれていく。

    --------------------------------------------------

    人間の群れ、もしくは地球上の生き物、という単位の視点で世界を見るような、壮大なカメラワークを感じる小説だった。
    もはや個人の感情など小さすぎて見えないような、”人間”というカテゴリーに属する生き物をもっと大きな視点から観察されているみたいな物語だった。

    塔子、という名前の女性が重要な役割で登場する。
    上田さんの小説のなかでの”塔”が持つ意味を誰かに解説してほしい。けれど、自分の力でどうにかして理解したいとも思う。
    すべてがわかっているわけではないのに、話の流れに引き込まれていた。他の作家さんの小説とは違う味わいを感じる。

  • 太陽:第45回新潮新人賞
    惑星:第152回芥川賞候補

    順番が前後してデビュー作を最後に読むことになってしまったけれど、デビュー作の時点でもうほとんど作風は完成されているように感じる(良くも悪くも)。
    受賞してしばらく「新潮新人賞をSFがとった!」とSFクラスタ(死語?)の人たちが結構騒いでた記憶があるんだけど、受賞作「太陽」はそんなにSFは感じなかったな。「惑星」はジャンル分けしたらSFになるのかな?という感じもしたけど。
    これでこの人の作品は全部読んだことになるけど、ミクロとマクロの視線の繋ぎ方が独特で、壮大なことを描きながら個人的な感覚をそこにリンクさせようとしているのかなあと。ただその個人的な感覚の掘り下げが、やっぱり話の壮大さに比してやや類型的な書き割りにとどまっている気がするところが(確信犯的な部分もあるけど)やや物足りなく感じるかなあ。
    今の所どれも中編程度の作品のみなので、いっそ短編か、がっつり長いのだとどういったものが出てくるのかな、と思いました。
    それにしても「惑星」は、やっぱ人類補完計画が思い浮かんで仕方なかったよ。

  • 一生懸命読んでみたが、今の思考回路ではちょっと難解。太陽の途中で挫折。またいつかあらためて。

  •  「太陽」と「惑星」というSFっぽい二つの中編が収められている。
     「太陽」では、一介の大学教授や、デリヘル嬢、人身売買の男たちが登場する現代の生活から、人類が第二形態へと進化して太陽を爆発させるまでの壮大な過程を、時間と場所を縦横無尽に飛び回りながら一気に書き上げている。何もかも経験し尽くした人類が太陽を道連れにして破滅へと突き進むのだが、最後はそれすら何でもなかったことのようにしめくくり、はかなさが残る。
     「惑星」は、作中で言及されている有名なSF作品たちのオマージュのようだった。

  • これは大傑作。凄くスケールが大きくて、かつ、緻密。
    長編2編で、どちらも人類(あるいは、この世)の終末を描いているのだが、空間的な広がり(登場場面や登場人物の属性が世界に広がっている)だけでなく、時間的な広がり(特に現在と未来を自由自在に行き来する)があって、それを神の目のような俯瞰的視点から描いている。SFといえばSFだが、妙にリアルで、思わず小説の中に引き込まれるような迫力がある。
    読む人によって好き嫌いが分かれるかもしれないが、色々な人に一読をお勧めしたい。
    著者の今後の作品に期待したい。後に、本書が彼の最高傑作だったと言われないといいが。

  • 不老不死を求める人類の物語だと思いました。感情が表立っていない語り口で風俗から人身売買まで、時間軸を飛び越えながら高速で流れていくストーリー展開が新鮮。他に見ない内容で面白いと感じました。

  • 本当に太陽のようににぶっとんでいる感じが新鮮でおもしろいです。

  • 途中でやめてしまいました〜 またいつか読みたいです

  • 太陽
    現実世界との接続感がとても強い。物語の中に史実や今の世界のことが混ざっているようで、どこまでが想像でどこまでの現実を取り込んでいるのかの境界が曖昧で、
    これはどういう感覚だろう?
    他の作品でもこれをベースに描いているんだなとか思うことはあるけれど、
    この人は/言葉は実在しているのではと思わされることはそこまで多くない気がする()(ドンゴ・ディオンムはいたと思ったし、グジャラート指数もあると思った)。

    もし田山ミシェルが違う方向に進んでいたら、太陽を乗り越えていたら、どこに進んでいたんだろうか?

    惑星

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

上田岳弘の作品

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