異郷の友人

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 106
レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (156ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103367338

作品紹介・あらすじ

ねえ、神様。あんたにやってもらいたいことがある。世界を正しいあり方に戻すんだ。阪神大震災を予言し、信者を増やす淡路島の新興宗教。教祖Sはイザナキ、イザナミの国生みの地で、新たな世界創世を説いていた。ある日、アメリカ西海岸の秘密組織から男たちが訪ねてくる。彼らは何を企んでいるのか。すべてを見通す僕とは、いったい何者か? 世界のひずみが臨界点に達したとき、それは起きた――。大注目の芥川賞候補作。

感想・レビュー・書評

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  • 転生の記憶が消えないうえに複数の他人の記憶をリアルタイムで知ることができる男と、淡路島の新興宗教と、アメリカの天才ハッカー集団が絡まる。

    読み始めてすぐ「ああ、これは好きなやつだ」と思ったのだけど、進むにつれて難解で諦めそうになった。
    どこまでが真実で妄想なのだ。

  • 語り手は「私」と「吾輩」という2つの一人称を同時に使い、
    しかも今は「ヤマガミ」という青年であるがかつては石原寛治でありフロイトでありテレンティウスであったといい、
    その上ほかの登場人物の意識を覗いて記述することも出来るという。

    なんだかわけのわからないメタメタな構成である。

    けれど「語り手」のその立ち位置というのは要するに、
    登場人物に憑依してその視点で物語世界を見るという「書き手」、すなわち小説家自身のことを、
    SF的に、もしくは寓話的にとらえ直した私小説なのではないか、とも思う。

    「中二の時に他人の意識が流れ込んでくるのを感じるようになった」というようなくだりはつまり、
    「このころから妄想と自意識の線引きが出来るようになって、自分でない別の人格としての物語を造り始めた」という「書き手」自身の独白であって、また、
    「吾輩に起きていることは全て私の妄想なわけだ」という一文は、
    「吾輩」を「語り手」に、「私」を「書き手」に読み変えることも出来る。すると、そのあとの御託云々はそのまま、書き手の「意識の流れ」そのものだ。

    物語を産む「書き手」とは、その世界においては創造主なのである。神なのである。
    しかしこの世界の「神」は自分自身が物語の中に入り込んでしまっていて、「語り手」たる主人公に「語られて」しまってもいる。

    「私」が溢れまくっている。「私」があり余る。「私」以外にも「私」はいるの。
    という、そんな「私」小説である。

    主人公は「私」という概念そのものなのかもしれない。

    文学の世界の中で「私」はこれから、どこに行けばいいのだ。どこに行くのだ。

  • 大再現は起きた。

  • 芥川賞候補作。

    選考委員の山田詠美の評が、的を得ている。

    「いかすアイディアがいくつも出て来る。」「知識も豊富っぽいし、頭のいい人が書いた小説なんだなーっ。でも、そんな頭のいい人が、何故それらの締めに津波を使ってしまうのか。」


    震災はこんな軽々しい作品に用いるべきでは無いし、震災で亡くなった方に対する冒瀆に他ならない。

  • 前世の記憶をいくつも持っている我輩、そして今は山上甲哉。

    今世は普通の平凡な一般人として人生をまっとうするはずだったけれど、
    我輩の意識の中にはある人物の記憶があった。

    ひとりはJといって、ハッカーとして大変頭の切れる男でありながらも、自分の能力を活かし切れずにいる自意識の塊のような人物。
    もうひとりはSといい、淡路島で新興宗教の教祖をしている人物。

    我輩である山上甲哉が、Jに自分の存在を知らせるために送ったメールは
    Jの所属する組織のEに気づかれ

    EとJ、同じ組織のMは
    教祖のS、教団だった早乙女や北海道にいる山上甲哉に会いにくる。

    JとSの記憶を覗くことができ、Sを通してEと早乙女の記憶も覗けて
    地震による津波で、それぞれの運命は別れ、我輩はまた新たな人間となる。

    不思議な話。読むのに時間をかけすぎた。

  • 全く分からない。
    過去の記憶があって異郷の人と意識が繋がっているから「神」。モンスターエンジンも唐突。
    阪神淡路大震災から始まって東日本大震災。
    これが国産みだというのか。
    誰の発言なのか意識なのかごちゃ混ぜになっていた。
    面白くない。

  • 第154回芥川賞候補。

    非常に刺激的な読書だった。正直、前作『私の恋人』は何が言いたいのか、何がしたいのか全くわからず、この人は自分にはあわないかなぁと思っていたので、今回これだけ面白く読めたのが意外だった。
    導入部の語りのあの名作のパスティーシュであーとなり、また「生まれ変わりの設定」などは前作を彷彿とさせまたこのパターンなの?とうんざりしたりもしたのだけれど、今回はそれと異なり同時代に生きる淡路島の宗教団体の教祖の意識と、アメリカでハッカーをしている青年の意識をも覗くことができる(しかもそれは今まで何度も生まれ変わりをしている主人公にとって初めての経験)という設定が導入されると、話が途端に大きく広がって、これから話がどうなっていくのかと純粋に物語に引き込まれた。
    それらの個人の設定や書き込みなども非常にうまく、前作ではあまり感じることができなかったのだけれども筆力があるのだと思った。
    ネタバレになるのでその後の物語の展開についてはここでは書かないけれども、二転三転する物語は面白く、非現実的な設定であるにも関わらずそれをほとんど意識することなく読むことができた。デビュー作である『太陽・惑星』(未読)はSF畑でも話題になったけれども、やはり実力のある作家なのだろうと思う。
    では文学的にはどうなのかというと、これがちょっと評価がしづらい。登場人物の「文学的」懊悩はやや類型的な気もするし、また、意識的に導入された物語の不整合(これもネタバレになるので詳しくは書けないのだけれど)について説明(解明)がされないのは何故なのだろうと気になった。どうも、そういう矛盾を意図的に持ち込まれるとモヤモヤしてしまうタイプの読者なのだ。

    まあ総じて(まだ読むのが二作目の作家だという新鮮味もあってだろうけれど)大変面白く読むことができた。順番が前後するけれども『太陽・惑星』も読まないとなぁ。

  • なんだこの話は。これこそ、暇を持て余した、神々の、遊び。

  • 構成や設定はよいし、前半面白いが、大きなテーマを挙げた割に、途中からふつうの若者の話になってしまっている。時間軸と幅広い年齢(幅広い年代)、幅広い地域(グローバル)の多種多様な考え方が立体的につながると面白かったと思う。細部(たとえば固有名詞:車の名前や、iPhoneなどにあまり意味がない。)もっと掘り下げると立体的になったと思う。詳細な部分をもう少しシンプルに。

  • 神というものの存在を,一つのあり方として料理した物語,阪神大震災の震源地,淡路島を舞台に始まり,最後は東北地震に終わる.コンピュータを介しての啓示というのが,現代風.

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