紺碧の果てを見よ

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  • 新潮社 (2014年12月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (464ページ) / ISBN・EAN: 9784103370314

感想・レビュー・書評

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  • 鷹志は海軍、雪子は彫刻。
    兄妹は、それぞれの道を歩んでゆく。

    関東大震災から太平洋戦争までを描く。

    父たちの教えが、折に触れ、鷹志を動かしていく。

    軍隊の醜い一面はありつつも、全体としてはいい人が多い。
    大事な人が理不尽に死んでいくという、戦争の惨さを描きつつも、鷹志たちのまっすぐさがあり、さわやか。

    雪子や早苗など、当時の模範的な型から外れた女性たちの生き様も、すがすがしかった。

    勝つか負けるかではない。
    そのあといかに生きるか、を問うた作品。

    何度かじーんときた。

  • 「敗北せねば見えぬこともある。敗北したことで見えなくなるものもある。誰もが一度は勝ち、一度は負ける。真に人として問われるのは、負けた後のことだ。諸君、悲憤はこらえよ、復讐は捨てよ、だが誇りは決して捨ててくれるな。 」

     最終章のこの鷹志の言葉が心に響いています。
     軍人として艦長として戦争を目の当たりにし、部下を失っていく。また、戦争が長引くにつれて、多くの人が命を失い、国民は飢えていき、ひもじい思いをしている。そんな中、守るべき者たちをこれほど苦しめてまで、この戦争を続ける意味はあるのか?、と疑問を抱く。

     そんな鷹志は、「喧嘩は逃げるが、最上の勝ち」と言っていた父を弱腰だと思っていたが、そんな父の教えへと帰って行く。そして、自分が艦長を務める艦の乗組員を終戦までだれ一人も死なせない、軍人として華々しく散るのではなくて、仲間と生き延びるために、もてる力のすべてで逃げ回ろう、と心に決める。

     そんな鷹志の姿が、そして最終での鷹志の言葉がいいなと思う。

     須賀しのぶさんの小説はいいですね。

  • 「友よ、紺碧の果てを見よ。
    愛するものの防人たれ。」
    そう書き残して道半ばにこの世を去った盟友。
    最期の瞬間まで、家族の防人であった父。
    守るべき者たちをこれほど苦しめてまで、この戦争を続ける意味はあるのか?
    我々は、紺碧の果てに何があると信じていたのだろうか…

    平凡な夏休みから始まり、関東大震災を経て、次第に戦争へと近づくにつれ高まっていく緊張感と、章の合間に時系列を逆行するように差し挟まれる妹・雪子の兄・鷹志への手紙が切なさを呼ぶ。

    最終章、艦上で終戦を迎えた鷹志の部下への訓示は涙なくしては読めず、読み終わったときは思わず本を胸に掻き抱いていた。
    どのページを開いて、何度も読み返しても、胸は熱くなり、目頭も熱くなる。
    あ~、この時期にこの作品に出会えたことが本当に嬉しい。

    これからも、誰もが、いつまでも、愛するものと共にいられますようにと祈りを捧げたくなる作品でした。

  • 大正後期~第二次世界大戦終戦までの設定で海軍将校のお兄ちゃんと彫刻家を目指す妹のお話。
    中盤あたりの雪子が周りからチクチク見られてるとことか、潔癖主義とか同調主義が今より強くて、自分の意志の強い人は生きづらかったんだろうなと感じた。
    友達の手紙のシーンは鷹志と一緒に泣いたし、祥鳳が沈んだとこも涙目になった。

  • 負けるとわかっている戦いに自分を犠牲にする気持ちってどんななんだろうか
    軍人として生きながら、生きたいと願うことに矛盾はないと信じる
    国のエリートが皆死んだのはほんとうにもったいないなあ
    人一人育てるコストときたら途方もないものなんだから、命を引き換えになにかを得ることは正しくない
    正しい誇りを持ち、正しいプライドを持ち、生きたいと願う

  • 第二次世界大戦における日本軍の内情が緻密に書かれている作品でした。意味のない攻撃を行ったり相手を軽視した作戦を実行するよう命令する上層部。そのような軍のなかで生きる主人公鷹志と兵学校の仲間たち。この戦争とは何か。何のために戦っているのかをそれぞれの視点で物語が進んでいきます。

    雪子の手紙が物語が進むにつれて古くなっていることに気づいたときには衝撃を受けました。

  • 「ならぬものはならぬ」
    少年時代は腰抜けだと思っていた実父の教えに、最終的には回帰する主人公『鷹志』

    彼自身が生きるためというよりも、ともに戦う大事な『家族』を守るために、終戦まで逃げ切ることを決意するまでの葛藤に心を打たれました。

    妹である『ゆき』や、妻である『早苗』との心の触れ合いも、鷹志の人間性が感じられてよかった。


  • 2020.4.29

  • 戦争が始まって以降の話には、精神論を掲げて現実を見ず、向こう見ずな戦いに若者を送り込んだ日本政府や軍に嫌悪感を感じた。この時代の中で、戸惑ったり、怒ったり、悲しんだりしながらも、必死に生き抜こうとする人たちの姿が清々しかった。

  • 須賀氏には珍しく日本の太平洋戦争時代の物語。
    当時は弱虫の考えと思われたに違いない「逃げるが勝ち」の思想。海軍の、そして日本の敗戦を知っている現代の私としては、逃げて逃げてと願わずにはいられなかった。
    そしてもっと大切なのは、鷹司の父も言っていたように「どうして負けたのかを考えること」。
    そこまでやってこそ、多くの屍を乗り越えて次の時代に生き残る意味がある。
    我々現代人も過去から学ばなければならない。
    須賀氏の小説は、東欧モノの方が面白いかな。
    2018/07

  • 第二次世界大戦さなかに、海軍への道を志した兄と、慕いながら我が道を行くことになった妹。ふたりの全く異なる、けれど強い絆で結ばれた半生と、厳しい時代のさなかでの友や愛する人たちとの出会いと別れを描いた物語。

    時代背景と舞台を鑑みれば、生死が首の皮一枚でつながっていることは明白で、甘い話ではないというのは分かり切ったことです。けれど、兄と妹の生き様を軸に描かれているので、重さよりもその「志」のありよう、「こう自分は生きるのだ、進んでいくのだ」という想いの強さに惹かれるように読んでいけました。

    挟まれる独白の様な手紙が時代をさかのぼっていることに気づくと、最後まで読み終わったときにその時々の背景が浮かび上がり、離れ離れの二人の強固な絆の尊さが胸に迫るようでした。

    当たり前のように明日があることの大切さを、自由が手に入っている時代の有難さを、もっと感じなければいけないな、と思いました。

  • 面白かった。
    知られないまま消える想い.
    あってもいいなって思った。

    鷹志達のように生きるために戦った人もいたんだろうな。

    どうしても、雪子に肩入れしてしまう。雪子には「わかったふりをしないで」って言われそうだけど。

    雪子から見たらこの世生きづらすぎる。
    自分として生きたかっただけなのに。

    彫刻(仕事)をしたかっただけなのにあんな目にあう、つらい。(>_<)。。

    雪子が悪者扱いされてるのが理不尽。たぶらかしてないわ。師匠も弟子だから何をしてもいいと思ったんだろうな。その「この人には何をしてもいい」という意識がにくい。


    私の想像だけど雪子、集団炊事のとき周りに嫌みを言われてそう。つらかったのかもしれない。奈津だって早苗に対しては違った(デリカシーのない嫌み言いまくり)。
    不利になった人をいじめるのは今も昔も変わってなさそう。

    旦那さんが出来て幸せだったと思うけど、姑や周りにチクチク言われたと思うし。

    民衆からは疎まれ。両親も鷹士にみせる顔と雪子に見せる顔は違ったと思う。


    泣いても人々は雪子を傷つけるから強いふりをするしかなかった部分がある。

    酷い目にあった後に作ったのが「鷹」って言うのがちょっとウルウルきた。体がいたいとか手紙に書いたあたりも悲しかった。

    不幸に幸せを足してもぬぐいきれない悲しみもあるんだろうなって思った。雪子に最後に希望があって良かった。

  • 須賀しのぶさんの、日本を舞台にした作品は初めてかもしれません。戦前から戦中、終戦の描写が、重く心に迫ってきました。中心となって描かれる鷹志の、兵学校での友人との日々は瑞々しく、そのことが返って、戦中の戦場での惨さを感じさせられます。戦中から、鷹志が、この戦争はきっと負ける、と悟り、それからも防人の精神で日々を送っていくのが悲しかったです。防人、と、紺碧の果てを見よ、の言葉をぐるぐると考えてしまいます。重い作品でしたが、とても面白かったです。負けた後に、どう生きていくか。自分にとっても考えさせられます。

  • ぐいぐい引き込まれて一気に読了。すごく、疲れました....。

    時代が時代なので、登場人物が容赦なく減っていくのが切なかったですが、最終的に鷹志が白雨で決意したことが、終戦まで貫けたのはよかったです。
    途中に挟まれる雪子の手紙も最後まで読むとあぁぁってなって彼女の登場シーンを読み返したくなったり。あとタイトル、大好きです。

  • 時々、こういう本を読む必要は、あるのだと思う。
    想いを馳せることしかできないけど、それを忘れちゃいけない。

  • 会津藩の武士であった身分を捨てて浦賀の造船工場で働く父親を見て育った鷹志は防人でありたいという思いから軍人となることを目指す。
    大正から昭和へ、日本が軍国主義へと突き進む中を生きた男たち、女たちの物語だ。
    軍隊ものというとこの作家の好きな分野だなぁと思いつつ手に取った。
    この人の小説、デビュー作の頃から読んでいるけれど、当時から夢いっぱいのはずの少女小説でありながらあっさり人が死ぬ話を書いているのが驚きで、今回も読んでいて脇役としてしっかり描かれていたキャラが簡単に死んだりするあたりに淡々とした「戦争ってそういうものだから」というスタンスを感じた。
    戦争は美化されていないけれど、この時代を生きる人たちの姿は美しく清々しく描かれていて、作者のこの時代に対しての憧憬のようなものを感じた。
    よくあるといわれてしまえばそれまでだけどやっぱり泣けるな。

  • タイトルに何度も泣かされるとは思いませんでした。

    激動の時代の中で兄と妹、それぞれが大人になるまでを丁寧に描いています。
    途中何度も苦しくなっては胸中色んな思いがぐるぐると駆け巡っていました。
    幼い頃は反感を覚えていた父の生き方を、こんな方法で理解することなんてなかっただろうに…と、鷹志の歩んだ道を思うと何ともやりきれない気持ちになってしまいます。
    説明も多く淡々と進んでいく物語ですが、沢山のドラマが詰まっていて印象的な場面ばかり。思い出すたび切ないです。
    これはまた読み返したい作品だな…須賀さんって凄い作家ですね。

  • 大和や赤城に乗るわけじゃない、神風特攻隊でもない、とある海軍将校からみた太平洋戦争。すがさんが得意とする、時代と社会の空気の描き方が素晴らしい。

  • 私は戦争の本は好きじゃない。
    誰も、人が死ぬのを知るのは耐えがたいものがあるから。でも、あの戦争の、フィクションであるけれども、そういう人もいたであろう、一抹の事実が書かれたもの、を避けては通れない。知っておかなければならない事実と言うのは、大陸で何をしたかと言うことでも、南洋や本土、のちのシベリアや戦犯裁判でされたこと、よりも、その時の、軍を動かしていた人間じゃない、命令されていた人たちや普通の人たちが、何を見ていたかと言うことなんじゃないかと。

    なんとなく手に取った本。
    タイトルが良かったから。でも、装丁で気づかなければならなかった。読みはじめてすぐに、あーこれは戦争の話になるぞ、と。
    ラバウルという地名が出てきたところで、もうやめたい気分になったけど、やめられない。ここまで読んできた、ここまでで見知った人たちを、ここでやめてしまうわけにはいかないから。だけど本当に辛い。


    手に取ったときは気づかなかったのだけど、須賀しのぶさんの本だった。
    神の棘
    あの本も、何て言うか。

  • 良い意味でも、悪い意味でも魅力的なキャラクターが多い
    テンポ良くまとまっている分、
    一人一人をもう少し深掘ってほしいような気がしないでもない

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著者プロフィール

『惑星童話』にて94年コバルト読者大賞を受賞しデビュー。『流血女神伝』など数々のヒットシリーズを持ち、魅力的な人物造詣とリアルで血の通った歴史観で、近年一般小説ジャンルでも熱い支持を集めている。2016年『革命前夜』で大藪春彦賞、17年『また、桜の国で』で直木賞候補。その他の著書に『芙蓉千里』『神の棘』『夏空白花』など。

「2022年 『荒城に白百合ありて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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