葬送の仕事師たち

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 32
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103391913

作品紹介・あらすじ

葬儀社社員、納棺師、エンバーマー、火葬場職員……。その目を通し「死」を見つめる。葬儀業界の市場は右肩上がりの一兆六千億円。規模は拡大を続け、家族葬、直葬、合理化と、その形態は多様化している。一方で、団塊世代が八十歳代となる「超多死社会」が間近に。「死」の現場に携わるプロたちの「生の声」、尊厳をもって送るとは? 自らを語ることがあまりなかった職種を通し、葬送の実際をルポする。

感想・レビュー・書評

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  • 亡くなった人をあの世に送り出す仕事をしている人へのインタービューやその仕事を見学して書かれたノンフィクション。大変な仕事なのに偏見の目で見られるとの事。頭が下がる思い。損傷が激しい遺体の顔を修復する仕事など、これからの時代絶対必要。自分が死ぬ時はどんな風に送り出してもらいたいか考えながら読む。故人の好きだった薔薇の花に囲まれお姫様の部屋のような会場でのお葬式が本の中に出てきて印象に残った。

  • 現代日本に住んでいて、「遺体」を目にする機会は、一般的に、そう多くはないだろう。
    しかし、文字通り「毎日のように」遺体を目にしている、さらには遺体に触れている人々がいる。葬送に関わる仕事をしている人たちである。
    本書は葬送に関わる様々な職種の人たちに取材したルポである。

    「葬儀」は今や、一大ビジネスになりつつある。少子高齢化を背景に、結婚に関わる仕事、子供に関する仕事は減っていく。増えつつある高齢者(いや、高齢者には限らないが)が必ず迎えるのがこの世に別れを告げる日である。
    自分の実家を含め、地方では結婚式専門の式場が減り、セレモニーホール等と称して、葬儀「も」行う、あるいは葬儀「しか」行わない会館が増えているように感じる。
    結婚式のみではビジネスとして成り立たなくても、葬儀なら採算が取れる、そうしたシビアな姿が見え隠れする。

    葬儀に関わる仕事と言っても様々ある。
    葬儀屋と言われて思い浮かぶような、葬祭を取り仕切る人々。
    湯棺や納棺、損傷を受けた遺体の復元を担う人々。
    遺体の痛みが進まないように処理を施すエンバーマー。
    そして火葬場で働く人々。
    葬儀のプロを育てる専門学校も出来てきているというから、そうした学校で講師を務める人も、広い意味で、葬儀に関わる仕事と言えようか(実務経験を積んでから教師に転じている人がほとんどであるようだ)。
    著者は様々な人の懐に飛び込み、突っ込んだ話を聞き、可能な場合は現場を見せてもらっている。
    エンバーミングの実際の手順や、火葬炉の裏側の仕事など、あまり聞いたことのない詳細な話に驚かされる。
    長時間労働が常態化し、いつ呼び出されるかもわからない、体力的にきつい仕事である一方、被差別民が「死」の現場を背負っていた歴史を受けて、いまだに差別的に見る目もあるという。

    「死」の現場で働く彼らは、多く、肉親や近しい人の死による、強烈に印象に残る記憶を持つ。日々、死に接する中で、遺体に関する科学を深く学び、あるいは宗派にこだわらず宗教の勉強をする者も多い。人はいずれ死ぬことを目の当たりにすると、どうしても哲学的になるものなのかもしれない。

    団塊の世代が80歳代となる2030年代以降、おそらく大量の葬儀が行われることになる。著者はこれを「超多死時代」と呼ぶ。
    こうした時代に向かって、葬儀はどのように変わっていくのだろうか。
    現代日本では火葬が主流だが、実はそうなったのはさほど古いことではない。古くは土葬が一般的であり、明治政府などは一度は廃仏毀釈を背景に火葬を禁止している。これは土葬の用地不足で都会を中心に無理が出てきて2年も立たずに撤回された。但し、田舎では土葬が多く、戦前では最高でも火葬率は57%だったという。戦時中に一度30%まで落ち込んだ後、1950年代から加速度的に上がり、80年に91%、現在では99.99%が火葬となっている。
    現在は過渡期なのだろう。すでに、簡素化、家族葬への動きが目立ってきている。
    著者はこれからの葬儀について、「一日葬」、「合理化」、「感動化」を上げている。
    一番目と二番目は、忙しい現代人に合わせてあまり時間を取らないように、そして虚礼を廃し、必要なものだけとするということだが、三番目の「感動化」とは何か。
    それは規模は小さくても心がこもったお別れだったと思える葬儀が求められている、ということである。生前、描きためた趣味の絵を個展のようにして飾る。長年、切り盛りしていた店の看板のレプリカを置き、売り物を並べる。故人の人となりにあった、小さな「サプライズ」を盛り込んだ式をプランする業者もあるという。結婚式じゃあるまいし、と眉を顰める向きもあるかもしれないが、遺族には喜ばれることが多いようだ。
    一方で、まるで立体駐車場のようにボタン一つで遺骨を呼び出す「共同墓地」のような話もあり、時代の流れに驚かされる。

    遺体の状態に関してなど、いささか突っ込んだ話も多いので、万人にお薦めとは言い切れないが、存外、死にまつわるあれこれを考えるきっかけをくれる好著と思う。

  • 葬儀業界に関わる方のルポ。私も手術室勤務→斎場→霊園という場所で働いて来たので、内情は見て来たのですが。ご遺体を人か物か・・・どう扱うか感情と業務で揺れ動いてました。この本の火葬場で働く人のルポは普段、知り得る事が無かったので非常に興味深かったです。「御遺族に手厚く葬られるご遺体、そうやないご遺体。でも僕らが心を込めて火葬したら、ちゃんと見送れる・・・」と語る火葬場で働く人の言葉が胸を打ちました。どの様な思いで、ご遺体と向き合い送り出すか、家族として、どの様に送り出したいか・・・考えさせられる一冊でした。

  • 葬儀全般についてのルポ。

    自殺マニュアルの本を読んで、ちょっとは知っていた内容もあったけれど、葬儀だけでなく火葬についてまで、すごく詳しく取材している。
    知らない世界を覗くことができた。

    ダンナが何かの紹介で知って、札幌市の図書館で借りた本。

  • 葬儀をすることになったら、死者をモノ扱いするところは嫌だから、この本に載っているような、死者に敬意を払ってくれる葬儀社に頼みたい。

  • お葬式の裏方の仕事を様々な面から丁寧に取材したもの.なくてはならない仕事であり必ず何らかの形でお世話になるに違いないにも関わらず,あまり詳しくは知らなかったのを反省.色々参考にもなりました.

  • 葬儀に関わる人々の仕事を取り上げたルポ。葬儀業、納棺師、エンバーマー、火葬場など。エンバーマーとは、遺体に薬品処理等を施して腐敗を防ぐ仕事。
    遺体の描写がかなり出てくる。内容の割に凄惨な雰囲気はあまりない。文章が割合淡々としているのと、インタビュイーである葬儀業の人の感覚に極力寄り添う視点だからだろうか。酷い状態のも含めて遺体を日々扱う、それも敬意を持って扱うことを仕事にしている人の視点を借りて接する感じ。
    人間は死ねば物体になる、その物体を扱うための技術がつぶさに語られる。遺体の顔を整えるための含み綿、薬液注入、「きれいに焼く」ための作業。あくまで即物的な技術・知識と、死者への敬意が共存している。親類や知人の葬儀の時のことなどを思い出す。確かに何の処理もされていなかったら、哀惜どころではないような姿になっていたのかもしれない。そう気づけば、有難い。
    第6章では、時代に合わせた様々な葬儀スタイルが紹介される。自分がどう送られるか、自分で決めることはできない。死について考えることで、生きていることが大事に思えてくるというのは不思議なもの。

  • 人の死に関わる様々な職業について取材をして書かれた本。
    親族の死を見送った際、気になったことがいくつかあったが、この本を読んで、理解して、感心した。
    生きていた身体からお別れをするほんの短い間に、いろいろな職業の人が関わり、亡くなった人や遺族の為にそれぞれの施し方があることを知った。
    きれいな遺体ばかりではない話や東日本大震災の遺体についての話は衝撃的だった。

  • 「死」は誰にも平等に訪れる。本当にそうなのだろうか? この本に登場するのはそうあるように日々努力し続けている方々だ。一言で葬儀に携わると言ってもその仕事は千差万別で、より細やかに選別されているのだと知った。家族の形態も繋がり方も昔と変わったとは言え、故人を悼み、遺された人の心をケアするということは変わらないのだから。

    自分も送り手やったから当時を思い出してなんともな気持ちにはなるんだ。
    油断してたら喪主やるのなんかすぐであるよ、と言ってやりたい。

    これ読んでてずっと頭の中にハルキチ氏の小説の一節が回りました。
    『「死」は「生」の対極ではなく、その一部として存在する』
    その通りだなあ、と。


  • 人が死んだ後、遺族の為にあるいは本人に為に、静かに暖かく送ってあげる仕事に関わっている人達を取材した本。
    葬儀社の方、湯灌、納棺、復元の仕事をする方、エンバーマー、火葬場で働く方…。
    それぞれの技術が想像以上で大変驚いた。

    私自身、母が亡くなった時突然のことで何をどうしたらいいかわからず、もちろん大きな決め事は全て父がやったのだけれど。
    事情があり、父と私と弟とたった三人で母を送ったんだけど、棺に花を入れても入れてもなくならない。たった三人しかいないから。賑やかなことが好きでいつも笑っていた母の最後がこんなに寂しいものでいいんだろうかと思うと余計に泣けてどうしたらいいかわからなかった時、葬儀社の若い男の人が『花を全部入れて寂しくないようにしてあげて下さい』と言ってお花の入ったお盆を近くに持ってきてくれて『お顔のまわりにも入れてあげましょうか』などアドバイスしてくれて、ふとその人を見たらその人も泣いていて、凄く凄くびっくりしたと同時に、お母さん良かったね、泣いてくれる人がまだいたよって思えて、結局余計にまた泣いちゃったんだけど(笑)
    とにかく、その時もそうだけど火葬が終わるまでの一連の儀式を体験して、葬儀に関わる仕事ってなんて立派で素晴らしい仕事なんだろうって思った。
    そういう認識でずっといたのでこの本を読んでその思いはもっと深くなったし
    本の中に度々出てくる、このような仕事をする人に対する偏見が未だにあることも心底驚いた。

    本の中には知らなかったことや驚いたことがたくさん載っていたけど、一番驚いたのは火葬場の人の仕事かな…。
    スイッチ一つで全てが終わるんだと思っていた自分には衝撃でした。

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著者プロフィール

1955年奈良市生まれ。タウン誌記者を経て、フリーに。長く暮らした大阪から2010年に東京に引っ越すも、たびたび帰阪している。
著書に『大阪 下町酒場列伝』『旅情酒場をゆく』(以上、ちくま文庫)、『新版 大阪名物』『関西名物』(ともに共著、創元社)、『遊廓の産院から』(河出文庫)、『さいごの色街 飛田』(筑摩書房/新潮文庫)、『葬送の仕事師たち』(新潮社)、『親を送る』(集英社インターナショナル)などがある。

「2016年 『関西かくし味』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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