- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103391913
作品紹介・あらすじ
葬儀社社員、納棺師、エンバーマー、火葬場職員……。その目を通し「死」を見つめる。葬儀業界の市場は右肩上がりの一兆六千億円。規模は拡大を続け、家族葬、直葬、合理化と、その形態は多様化している。一方で、団塊世代が八十歳代となる「超多死社会」が間近に。「死」の現場に携わるプロたちの「生の声」、尊厳をもって送るとは? 自らを語ることがあまりなかった職種を通し、葬送の実際をルポする。
感想・レビュー・書評
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葬儀屋、湯灌・納棺、エンバーマー、火葬場で働くそれぞれの立場の方への取材を元に書かれている。以前に読んだ「エンジェルフライト国際霊柩送還士」で、初めて知ったエンバーマーの仕事。一般の葬儀でも活躍されてるのは知らなかった。亡くなった瞬間から、バクテリアや細菌が繁殖する条件が整い、ご遺体に触れる従業員だけでなく、その家族にも職業的な感染の危機があり、それから保護する役割がエンバーミングにはあるそうです。葬儀に関わる職業はどれも本当に大変なものだけれど、皆さん真摯に取り組んでるのが伝わって、頭の下がる思いです。
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なかなか日の目を見ない業界を丁寧に取材しており、読み応えがありました。少しの予備知識はあったけど、多くは新しい発見ばかり。死に関する様々な価値観、見方に役立ちます。
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死化粧、湯灌、エンバーミングなどの施術があることも初めて知りました。今思えば祖母や友人が亡くなって対面したとき綺麗な顔して眠ってました。
その時は何も考えてなかったけど、湯灌師、納棺師、復元師、エンバーマーなどの人たちのおかげだったですね。このような人たちがどのような思いでどのような働き方をしているのか。とても学べる一冊でした。 -
究極の職業小説と言えるかもしれない。
被差別部落の人たちの仕事とは、今まで思ったことがなく、驚いた。
仕事でembarmingはかじっていたけど、エンバーマーや復元士、その他の葬送を極める仕事師たちに脱帽。
井上理津子さんの他のお仕事小説も読んでみたい。 -
葬送にまつわる仕事について筆者がインタビューや取材をした記録。
葬儀社と一言に言っても、大手や老舗、東西などそれぞれ違いがあり
それすらもこの本を読むまで知らなかった。
また、エンバーマーという仕事や葬送にまつわる資格や学校があるということ。
火葬場で働く人たちや、新しい形での葬送ビジネス。
葬式と一言で言ってもこんな色々な形があるのだなと。
そりゃ亡くなった方とそのご家族、生き方がそれぞれであるように
その最期の時もそれぞれであるべきこと。
当たり前といえばそうなのかもしれないけれど、知らない世界を見せられた一冊。
決して明るい話ではないけれど、必ず人は最期の日を迎えるからこそ知っておきたいことが詰まった一冊。 -
ドキュメンタリー小説、葬送の仕事をしたい人の参考になる本です。
火葬された後に骨を拾う時に骨が綺麗に並んでいるのが不思議だったが「整骨」されるのが分かって納得した。
印象に残った文章
⒈ エンバーマーとはホルマリンを含む薬液を使って遺体に防腐処置など(エンバーミング)を行う資格保有者である。
⒉ 遺族が、個人と一緒に「ドライブ」したというのだ。
⒊ 点火した瞬間から、中にいらっしゃるのは人間じゃない、仏さんだと思って、仕事をしています。 -
仕事への情熱が感じられる仕事。
尊敬に値する仕事。
仕事とはこういうものだ。と思えることが書いてある。
一瞬、子供に進めたいと思った! -
葬儀業界に関わる方のルポ。私も手術室勤務→斎場→霊園という場所で働いて来たので、内情は見て来たのですが。ご遺体を人か物か・・・どう扱うか感情と業務で揺れ動いてました。この本の火葬場で働く人のルポは普段、知り得る事が無かったので非常に興味深かったです。「御遺族に手厚く葬られるご遺体、そうやないご遺体。でも僕らが心を込めて火葬したら、ちゃんと見送れる・・・」と語る火葬場で働く人の言葉が胸を打ちました。どの様な思いで、ご遺体と向き合い送り出すか、家族として、どの様に送り出したいか・・・考えさせられる一冊でした。
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葬儀全般についてのルポ。
自殺マニュアルの本を読んで、ちょっとは知っていた内容もあったけれど、葬儀だけでなく火葬についてまで、すごく詳しく取材している。
知らない世界を覗くことができた。
ダンナが何かの紹介で知って、札幌市の図書館で借りた本。 -
葬儀に携わるひとの、プロの矜持というものはこんなにも気高いものなのか。
今まで何も知らずに生きてきたことが、我ながら信じられないほどだ。
葬儀社社員、納棺師、エンバーマー、火葬場職員等、葬送の仕事師たちのルポが本書。
とりわけ、初めて耳にする「エンバーマー」という仕事には眼を見張った。
エンバーミングと呼ばれるその技術は、動脈に衛生保全液を注入し静脈から血液を排出することで、遺体の腐敗を遅らせることが出来るという。更に、損傷した顔を元通りにする修復処置をほどこし、生きていたときの姿に極めて近い容貌に甦らせることが可能であるらしい。
この処置の最大の効能は、別れの時間をコントロールできること。
本書によれば50時間寝かせておくことが出来るらしく、訃報を受けて遠方から駆けつけても、故人と対面してお別れすることも出来るだろう。
また、事故や災害などで損傷の激しい遺体でも元気な頃の姿に戻してもらえるというのは、遺族の方々にとってどんなに有難いことだろうか。
この本に登場する会社によると、その費用は約12万円。
まだ2%程度の普及率らしいが、これから増えてくることが望ましい。技術を養成する学校があるということも初耳で、そこで学ぶひとたちの言葉には、何度も胸を打たれた。
火葬を手掛ける人たちに機械の運転技術が重要であるというのも、初めて知ったこと。
遺体の状態などから判断し、火力調整して「きれいに焼く」には、タッチパネルでの弁の開閉や炉圧の調整などを行うのだという。
その際の「炎の色」というのも7段階の目安があるのだとか。
登場する火葬場の職員さんの言葉が、忘れられない。
「直葬も引き取り手のない方も、ここで僕らが心を込めて火葬したら、ちゃんと送れると思うので」
生涯に数少ない葬儀の場面。しかし、誰もが避けては通れない場面でもある。
家族葬などが増えて葬儀の簡略化が加速しているようでも、心を込めて送り出したいのは誰しも共通の願いではないだろうか。
葬儀に対する考え方は様々だ。それでも残ったひとたちの心に今生きて在ることの感謝の念が生まれればプロとしての本懐だと思う。
葬送の仕事師さんたち、ありがとう。私もいつの日かお世話になることだろう。