葬送の仕事師たち

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 344
レビュー : 38
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103391913

作品紹介・あらすじ

葬儀社社員、納棺師、エンバーマー、火葬場職員……。その目を通し「死」を見つめる。葬儀業界の市場は右肩上がりの一兆六千億円。規模は拡大を続け、家族葬、直葬、合理化と、その形態は多様化している。一方で、団塊世代が八十歳代となる「超多死社会」が間近に。「死」の現場に携わるプロたちの「生の声」、尊厳をもって送るとは? 自らを語ることがあまりなかった職種を通し、葬送の実際をルポする。

感想・レビュー・書評

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  • 正月に実家に戻った時、なぜか家族みんなで映画『おくりびと』を観た。(母が「急にもっくんが見たくなって」借りたらしい)
    それで葬祭業の仕事のことをもっと知りたいなと思って借りてきた本。

    私は深刻な場面で何故か笑いそうになるヘンテコな持病があるためお葬式は苦手なのだけど、葬送の知識も、葬送の仕事へのリスペクトも深まり、とてもよかった。
    特にエンバーミングは名前すら知らなかったのだけど、修復・保存の技術で、施術することでまるで眠っているように見えるのだとか。感染症防止にもなり、腐敗も遅れさせられるから、これが普及しているアメリカではエンバーミングした故人を椅子に座らせ、握手でお別れをしたりするらしい。いやすごいです。

    『おくりびと』では、本木雅弘演じる主人公の就職先が葬儀社と知り、広末涼子演じる妻は、「汚らわしい!」「触らないで!」と強烈な拒絶反応を見せるし、周囲の人も「こんな仕事」と格の低い仕事と見下していた。これが2008年の当時、まだ普通の反応だったのかなぁ…?
    おくりびとを契機に、時代の変遷もあってだいぶ意識も変わってきたように思っていたのだけど、今なお差別的な発言をしてくる人はいるらしく驚きです。(自分だっていずれお世話になるのに、というか今まさに家族を見てもらっているのに、よくそんなこと言えるなと思う…)
    でもそういう人達にこそ、この本を読んでみてほしい。読み終わった時、このお仕事を蔑んでいた気持ちはきっと変容している。
    皆さんとても仕事に誇りを持っておられてプロフェッショナル。「葬送の仕事師たち」というタイトルがしっくりくる。
    ご遺体に貴賎なく、死ぬときは身一つなんだなぁと。弔いは遺された者のためでもあるけれど、彼らは誰も引き取り手のいないご遺体でも、「人」として心をこめて丁寧に見送る。私は特に信仰はないけれど、死んだ後にこんな風に送ってもらえたら、私きっと成仏できるなぁなんて思った。

  • 葬儀に携わるひとの、プロの矜持というものはこんなにも気高いものなのか。
    今まで何も知らずに生きてきたことが、我ながら信じられないほどだ。
    葬儀社社員、納棺師、エンバーマー、火葬場職員等、葬送の仕事師たちのルポが本書。
    とりわけ、初めて耳にする「エンバーマー」という仕事には眼を見張った。

    エンバーミングと呼ばれるその技術は、動脈に衛生保全液を注入し静脈から血液を排出することで、遺体の腐敗を遅らせることが出来るという。更に、損傷した顔を元通りにする修復処置をほどこし、生きていたときの姿に極めて近い容貌に甦らせることが可能であるらしい。

    この処置の最大の効能は、別れの時間をコントロールできること。
    本書によれば50時間寝かせておくことが出来るらしく、訃報を受けて遠方から駆けつけても、故人と対面してお別れすることも出来るだろう。
    また、事故や災害などで損傷の激しい遺体でも元気な頃の姿に戻してもらえるというのは、遺族の方々にとってどんなに有難いことだろうか。
    この本に登場する会社によると、その費用は約12万円。
    まだ2%程度の普及率らしいが、これから増えてくることが望ましい。技術を養成する学校があるということも初耳で、そこで学ぶひとたちの言葉には、何度も胸を打たれた。

    火葬を手掛ける人たちに機械の運転技術が重要であるというのも、初めて知ったこと。
    遺体の状態などから判断し、火力調整して「きれいに焼く」には、タッチパネルでの弁の開閉や炉圧の調整などを行うのだという。
    その際の「炎の色」というのも7段階の目安があるのだとか。
    登場する火葬場の職員さんの言葉が、忘れられない。
    「直葬も引き取り手のない方も、ここで僕らが心を込めて火葬したら、ちゃんと送れると思うので」

    生涯に数少ない葬儀の場面。しかし、誰もが避けては通れない場面でもある。
    家族葬などが増えて葬儀の簡略化が加速しているようでも、心を込めて送り出したいのは誰しも共通の願いではないだろうか。
    葬儀に対する考え方は様々だ。それでも残ったひとたちの心に今生きて在ることの感謝の念が生まれればプロとしての本懐だと思う。
    葬送の仕事師さんたち、ありがとう。私もいつの日かお世話になることだろう。

  • 葬送にまつわる仕事について筆者がインタビューや取材をした記録。
    葬儀社と一言に言っても、大手や老舗、東西などそれぞれ違いがあり
    それすらもこの本を読むまで知らなかった。
    また、エンバーマーという仕事や葬送にまつわる資格や学校があるということ。
    火葬場で働く人たちや、新しい形での葬送ビジネス。

    葬式と一言で言ってもこんな色々な形があるのだなと。
    そりゃ亡くなった方とそのご家族、生き方がそれぞれであるように
    その最期の時もそれぞれであるべきこと。
    当たり前といえばそうなのかもしれないけれど、知らない世界を見せられた一冊。

    決して明るい話ではないけれど、必ず人は最期の日を迎えるからこそ知っておきたいことが詰まった一冊。

  • 死化粧、湯灌、エンバーミングなどの施術があることも初めて知りました。今思えば祖母や友人が亡くなって対面したとき綺麗な顔して眠ってました。
    その時は何も考えてなかったけど、湯灌師、納棺師、復元師、エンバーマーなどの人たちのおかげだったですね。このような人たちがどのような思いでどのような働き方をしているのか。とても学べる一冊でした。

  • 現代日本に住んでいて、「遺体」を目にする機会は、一般的に、そう多くはないだろう。
    しかし、文字通り「毎日のように」遺体を目にしている、さらには遺体に触れている人々がいる。葬送に関わる仕事をしている人たちである。
    本書は葬送に関わる様々な職種の人たちに取材したルポである。

    「葬儀」は今や、一大ビジネスになりつつある。少子高齢化を背景に、結婚に関わる仕事、子供に関する仕事は減っていく。増えつつある高齢者(いや、高齢者には限らないが)が必ず迎えるのがこの世に別れを告げる日である。
    自分の実家を含め、地方では結婚式専門の式場が減り、セレモニーホール等と称して、葬儀「も」行う、あるいは葬儀「しか」行わない会館が増えているように感じる。
    結婚式のみではビジネスとして成り立たなくても、葬儀なら採算が取れる、そうしたシビアな姿が見え隠れする。

    葬儀に関わる仕事と言っても様々ある。
    葬儀屋と言われて思い浮かぶような、葬祭を取り仕切る人々。
    湯棺や納棺、損傷を受けた遺体の復元を担う人々。
    遺体の痛みが進まないように処理を施すエンバーマー。
    そして火葬場で働く人々。
    葬儀のプロを育てる専門学校も出来てきているというから、そうした学校で講師を務める人も、広い意味で、葬儀に関わる仕事と言えようか(実務経験を積んでから教師に転じている人がほとんどであるようだ)。
    著者は様々な人の懐に飛び込み、突っ込んだ話を聞き、可能な場合は現場を見せてもらっている。
    エンバーミングの実際の手順や、火葬炉の裏側の仕事など、あまり聞いたことのない詳細な話に驚かされる。
    長時間労働が常態化し、いつ呼び出されるかもわからない、体力的にきつい仕事である一方、被差別民が「死」の現場を背負っていた歴史を受けて、いまだに差別的に見る目もあるという。

    「死」の現場で働く彼らは、多く、肉親や近しい人の死による、強烈に印象に残る記憶を持つ。日々、死に接する中で、遺体に関する科学を深く学び、あるいは宗派にこだわらず宗教の勉強をする者も多い。人はいずれ死ぬことを目の当たりにすると、どうしても哲学的になるものなのかもしれない。

    団塊の世代が80歳代となる2030年代以降、おそらく大量の葬儀が行われることになる。著者はこれを「超多死時代」と呼ぶ。
    こうした時代に向かって、葬儀はどのように変わっていくのだろうか。
    現代日本では火葬が主流だが、実はそうなったのはさほど古いことではない。古くは土葬が一般的であり、明治政府などは一度は廃仏毀釈を背景に火葬を禁止している。これは土葬の用地不足で都会を中心に無理が出てきて2年も立たずに撤回された。但し、田舎では土葬が多く、戦前では最高でも火葬率は57%だったという。戦時中に一度30%まで落ち込んだ後、1950年代から加速度的に上がり、80年に91%、現在では99.99%が火葬となっている。
    現在は過渡期なのだろう。すでに、簡素化、家族葬への動きが目立ってきている。
    著者はこれからの葬儀について、「一日葬」、「合理化」、「感動化」を上げている。
    一番目と二番目は、忙しい現代人に合わせてあまり時間を取らないように、そして虚礼を廃し、必要なものだけとするということだが、三番目の「感動化」とは何か。
    それは規模は小さくても心がこもったお別れだったと思える葬儀が求められている、ということである。生前、描きためた趣味の絵を個展のようにして飾る。長年、切り盛りしていた店の看板のレプリカを置き、売り物を並べる。故人の人となりにあった、小さな「サプライズ」を盛り込んだ式をプランする業者もあるという。結婚式じゃあるまいし、と眉を顰める向きもあるかもしれないが、遺族には喜ばれることが多いようだ。
    一方で、まるで立体駐車場のようにボタン一つで遺骨を呼び出す「共同墓地」のような話もあり、時代の流れに驚かされる。

    遺体の状態に関してなど、いささか突っ込んだ話も多いので、万人にお薦めとは言い切れないが、存外、死にまつわるあれこれを考えるきっかけをくれる好著と思う。

  • 葬儀業界に関わる方のルポ。私も手術室勤務→斎場→霊園という場所で働いて来たので、内情は見て来たのですが。ご遺体を人か物か・・・どう扱うか感情と業務で揺れ動いてました。この本の火葬場で働く人のルポは普段、知り得る事が無かったので非常に興味深かったです。「御遺族に手厚く葬られるご遺体、そうやないご遺体。でも僕らが心を込めて火葬したら、ちゃんと見送れる・・・」と語る火葬場で働く人の言葉が胸を打ちました。どの様な思いで、ご遺体と向き合い送り出すか、家族として、どの様に送り出したいか・・・考えさせられる一冊でした。

  • 亡くなった人をあの世に送り出す仕事をしている人へのインタービューやその仕事を見学して書かれたノンフィクション。大変な仕事なのに偏見の目で見られるとの事。頭が下がる思い。損傷が激しい遺体の顔を修復する仕事など、これからの時代絶対必要。自分が死ぬ時はどんな風に送り出してもらいたいか考えながら読む。故人の好きだった薔薇の花に囲まれお姫様の部屋のような会場でのお葬式が本の中に出てきて印象に残った。

  • 究極の職業小説と言えるかもしれない。
    被差別部落の人たちの仕事とは、今まで思ったことがなく、驚いた。
    仕事でembarmingはかじっていたけど、エンバーマーや復元士、その他の葬送を極める仕事師たちに脱帽。
    井上理津子さんの他のお仕事小説も読んでみたい。

  • ドキュメンタリー小説、葬送の仕事をしたい人の参考になる本です。
    火葬された後に骨を拾う時に骨が綺麗に並んでいるのが不思議だったが「整骨」されるのが分かって納得した。
    印象に残った文章
    ⒈ エンバーマーとはホルマリンを含む薬液を使って遺体に防腐処置など(エンバーミング)を行う資格保有者である。
    ⒉ 遺族が、個人と一緒に「ドライブ」したというのだ。
    ⒊ 点火した瞬間から、中にいらっしゃるのは人間じゃない、仏さんだと思って、仕事をしています。

  • 仕事への情熱が感じられる仕事。
    尊敬に値する仕事。
    仕事とはこういうものだ。と思えることが書いてある。
    一瞬、子供に進めたいと思った!

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著者プロフィール

井上理津子(いのうえ・りつこ) フリーライター。人物ルポを中心に幅広く活動。主な著書に『さいごの色街 飛田』『葬送の仕事師たち』『親を送る』『大阪下町酒場列伝』などがある。

「2020年 『絶滅危惧個人商店』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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