人間アレルギー なぜ「あの人」を嫌いになるのか

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103393818

作品紹介・あらすじ

すべては「アレルギー」が原因だった。ベテラン精神科医が解き明かす。親友、親子、夫婦、上司と部下――良好だった関係が、なぜ急にうまくいかなくなるのか。ささいな理由で存在までも許せなくなるのはなぜか。豊富な臨床経験と研究の蓄積が導き出した答えがここにある。身体のアレルギー反応と同じく、人間の心には人間を拒絶する仕組みがあるのだ。その全貌と核心に迫り、具体的な処方を示す。

感想・レビュー・書評

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  • 前半は過去のストレスから人間アレルギーになる原因とどう克服していったらよいかを書いていた。過去のストレスというのは、いじめであったり、虐待であったりして自尊感情が傷つけられ自分の価値を見失ってしまうことが原因となっていた。だから、周りの人はそこまで自分のことを気にしていないと思うことが大切だと書かれていた。
    後半は愛着障害のことが書かれていて、その事例が沢山あった。
    私にも人間アレルギーの特徴が当てはまるなと思うものが多く、人と付き合うことの難しさや大変さを感じたと同時にそのような子どもとどう向き合っていくかをかんがえていきたい。

  • ビジネス書だと思って読んだら結構ちゃんとした本でびっくり。
    「人間アレルギー」というタイトルは非常にキャッチーで、一冊読んでからもその通りだと思うのですが、中身の飾らない書きぶりのトーンとはちょいと合ってない印象でした。でも、このタイトルでたくさんの人がこの本を読むと思えば悪くないのかも。
    著者の経歴を見てなんとなく納得。東大哲学科→京大医学部→京大院精神医学教室。個人的には経歴で大事なのはこれ以外の部分ですが、哲学者的な誠実な書きぶりも感じました。

    自分が人に対して起こしてしまうマイナスの行動。
    それが実は、過去のトラウマが引き起こしたアレルギー反応にすぎないとしたら?勿体ないよね、それ。
    収録されてるたくさんの事例は、似たようなことを自分がしてしまったり、他人にされたりしたような、あるいはそうでなくとも「わかるわ、それ」的なモノばっかり。
    本の本旨じゃないとは思いますが、子育ての記述も非常に参考になりました。

    最初にビジネス書だと思っていた、ってのは「嫌な同僚ともこの考え方・テクニックで付き合えば完璧!」的な本だと思っていたのですが、この本は「人間アレルギー」を一般のアレルギーとある意味同列に並べて、そのメカニズムを紐解く中で対処法を探っていくような構成になっています。
    第三章「人間アレルギーというアプローチ」冒頭からの書きぶりが、人間アレルギーそのものの存在をまるで自明かのように置いているのには違和感を少し感じましたが、そこからの論理構成や並べられた事例は納得感がありました。

    こういう内容をいっそ学校で教えたら、世の中もうちょっと生きやすくなるし、職場の人間関係も少子化的な問題ももうちょっと楽になるだろうにね。

  • 人間に対しても食物と同じようにアレルギーがあることがわかり面白い
    トラウマなど、自分が持っているものに反応して、異物として認識され、やがて拒絶反応になる
    人に対して疑問や拒絶な気持ちが生まれても、その気持ちを否定せず、嫌だったんだなと第三者的な目線で見て、自分が脅かされる危険な相手からは逃げなければいけないと思う
    また自分が成長して耐性がついてくると、少しくらいの違和感のある人のことも流せていくのではないかと思う
    いずれにしても人との距離感は近すぎるとよろしくないと思っている
    苦手な人でも会う頻度が低ければ、案外やり過ごせたりするものだ

  • 食物アレルギーのように、人間に対しても拒否反応が出てしまう。根本にある原因によって、対処法が違うことを学んだ。だが、身体にアレルギー反応が出てしまっている場合は、食物同様、医者にしか治療できないのではないか。

  • 上手く言えないが、この人が苦手だという感覚はある。

    大部分、競争原理からくる、所謂、自らの利得を脅かす存在がそれだ。同じ分野で競争していない人、明らかに年齢が離れている人などは、対象になり難い。競争によって手に入れたいものは、出世や地位、名誉や報酬、異性。自分は意識していなくても相手にいつのまにか敵視される。そんな経験はないでしょうか。

    本著は残念ながら、この切り口における考察がない。岡田尊司の本は、原因を幼少期に求めやすく、所謂トラウマが齎す影響の考察だから、競争の中で、反発し合う機微については触れられない。それが社会に最も多い、人間関係の難しさだろうと私は思うのだが。

  • 自己啓発

  • P004 相手をいくら変えたところで、会社をいくら変わったところで、また同じことが起きてしまう。周囲の人間を変えようとしても無駄なのである。本当に改善すべきは、その人自身が抱えた人間アレルギーなのだから。

    P021 このような特性は、ストレスや不安を感じやすくするだけでなく、その原因となるような状況を生み出しやすくする。摩擦、対立、孤立を自ら招いてしまうのだ。頑なさが強さと勘違いされることもあるが、心が弾力を欠いているので、むしろストレスににもろい。本心を過度に抑え込んで行動するのは、鎧を纏って暮らしているようなもので、リラックスした人の何倍も疲れてしまう。人が信じられず、不安を感じやすいので、相手の顔色を常に気にしながら片時も気が抜けない。その気疲れは半端ではない。
    ★ストレスや不安への耐性も弱いため、なおのこと心身をむしばまれやすい。いつも不調で、すっきりしないということも多い。慢性的なストレスが自立神経のバランスを崩し、胃腸や循環器系に影響が出て、心身症にかかってしまうリスクも高まる。

    P023 人間アレルギーの本質に根差した特性として浮かびあがるのは、自分と相容れないものを認めないという自己への強い執着である。
    →他者は敵対者かライバルとみなし、自分に起きた悪いことは他者の悪いの結果だと考えてしまう。決して心を許さず、優位に立って他者をコントロールしようとする。
    敵対者やライバルとは、しょせん並び立つことのできない運命にある。自分が生き残ろうとすれば相手を排除するしかない。

    P044 自信過剰で、他人を見下した態度をとる自己愛性パーソナリティ障害の人では、幼い自己愛の願望が満たされないまま未熟な発達段階にとどまっている。見かけの尊大さとは裏腹に、内側にあるのは、劣等感にまみれた貧弱で幼稚な自己愛だ。それを補うために、傲慢に他者をさげすむ態度や周囲からの賞賛を必要とするのだ。
    自己愛性パーソナリティ障害の中核的な困難は、自己愛が強すぎることではなく、自分も他人も愛せないこと。すなわち、愛することの障害だという。そして、さらにその奥には、強すぎる憎しみがあるという。つまり、過剰な憎しみこそが、自己愛性パーソナリティ障害の本質。
    他者に対し、愛などはもはや期待しない。本当の愛を求めようとすれば、また傷つけられるだけだからだ。したがって、他社に求めるのは、モノだったり、体だったり、奴隷のような服従だったり、ホステスのような奉仕だったりする。一切さからわずに言いなりになるならよし、さもなければ破壊しつくすのみ。自分に刃向かう存在など、目障りな異物にすぎず、抹殺したいと思ってしまう。自分と同一のものしか受け入れられない。それをもたらしているのは、傷ついた自己愛の怒りであり憎しみである。

    P047 両価方のアンビバレンスとは、相手に過剰に依存する一方で、相手のわずかな非にも怒り責めるという相反する傾向が併存している点をさす。そのため、自分の支えとなり利益をもたらしてくれている人に対しても厳しい目を向け全否定するような言い方をしてしまう。相手も嫌気がさし、関係が終わってしまうこともしばしばだ。自分のふるまいによって、結局恐れていることを実現してしまうのである。
    いずれのタイプも、よほど忍耐強く支えになってくれる相手に出会わない限り、安定した幸福は手に入りにくい。

    過敏でストレスに弱い面を持ち、一見強そうだったりクールに見える場合も、実は体がストレスを感じていて、あっけなく潰れてしまったりする。実際、愛着が不安定な人は、うつや心身症などになりやすい傾向がみられる。

    P104  人間アレルギーを抱える人は、人の悪い点に注意が向いがちだ。そのため、同じ体験をしても不満や怒りを感じやすく、否定的な反応や攻撃的な対応をしてしまいやすい。毛㏍として、ネガティブな感情が周囲にも広がっていく。相手も同じような人間アレルギーを持っている場合には、ささいな否定や攻撃が激しい反応の応酬を生む。

    P147 ところが、エディプス関係と呼ばれるこの三角関係を乗り越えられないと、子どもは父親に対してネガティブな感情をひきずるだけでなく、三者関係に居心地の悪さを感じるようになる。つまり、一対一の関係に第三者が入ってくると、よけいな緊張を覚え、その存在を排除したいという思いを持ってしまうようになるのだ。

    P166 心の底まで相手を知り尽くし、知り尽くされようと、力の限り寄り添おうとする。だが、少しずつ、そんなことは土台不可能で、どんなに熱意を込めて相手を愛そうと、どんなに親密に相手とつながろうと、しょせん、相手は見知らぬ他人でしかないということを知るようになる。もっとも献身的な夫や妻でさえ、互いをわかることはない。それゆえ、自分の殻にこもり、黙りこみ、だれにも、一番愛している人にさえ見せることのない自分だけの世界を作るようになる。理解してくれる人はないと悟ったが故に

    P216 そして一般に、生活の気持ちがゆったりと楽になってきた。だがその代わりに、詩は年齢とともに拙くなってきた。つまり僕は、次第に世俗の平凡人に変化しつつあるのである。これは僕にとって、嘆くべきことか祝福すべきことか解らない。

  • 以前は、心を開き、信頼をしていた人をちょっとしたことが原因で、2度と関わりたくないと思うほど拒否感を持つことがある。
    その拒否反応をアレルギーに例えて書いた本。

    人間アレルギーの原因は、結局、愛着障害。
    愛着障害による人間関係の困難さは、以前から知っていたので、真新しい発見はなかった。

    自分には、少し読みづらい文章なのか、かなり時間がかかってしまった。

  • 嫌いたくて嫌っているのじゃ、ないのだけどね。

  • 人が人を嫌いになるメカニズムと克服法を解明。相手の嫌な部分を言語化する、共感性や自己省察力を高めるなど、嫌いになるメカニズムを理解したうえで適切な処置をすることで、「この人嫌だ」という人間アレルギーを治癒できるという。苦手な相手こそ自分の器を大きくしてくれる相手だととらえ、柔らかく対応できるよう頑張ろうと思った。

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著者プロフィール

岡田尊司(おかだ・たかし)
1960年香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退。京都大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。京都医療少年院勤務などを経て、2013年より岡田クリニック(大阪府枚方市)院長。日本心理教育センター顧問。パーソナリティ障害、発達障害、愛着障害を専門とし、治療とケアの最前線で現代人の心の問題に向き合う。著書『悲しみの子どもたち』(集英社新書)、『愛着障害』『愛着障害の克服』(いずれも光文社新書)、『愛着アプローチ』(角川選書)、『母という病』(ポプラ新書)、『母親を失うということ』(光文社)など多数。

「2022年 『病める母親とその子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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