ヒトごろし

著者 :
  • 新潮社
3.74
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本棚登録 : 384
レビュー : 58
  • Amazon.co.jp ・本 (1088ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103396123

作品紹介・あらすじ

殺す。殺す殺す。ころしてやる――。新選組の闇に切り込む禁断の真説! 人々に鬼と恐れられた新選組の副長・土方歳三。幼き日、目にしたある光景がその後の運命を大きく狂わせる。胸に蠢く黒い衝動に駆られ、孤高の剣士の犯した数多の罪とは――? 激動の幕末で暗躍し、血に塗れた最凶の男の真実が今蘇る。京極夏彦史上、衝撃度No.1! 大ボリュームで贈る、圧巻の本格歴史小説の誕生。

感想・レビュー・書評

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  • 今までにないような新選組が描かれているので賛否両論あると思うが、私はめちゃくちゃ好きだ。
    この作品は土方歳三という「ひとごろし」について書きながら、人を殺すことの重みを説いていたように思う。
    なにがあろうとも人を殺してはいけない。
    人殺しを美化しちゃいけない。
    それらが、土方の頭の切れの良さと相性抜群の論理的な文章で書かれている。

    今までにないような新選組なのだが、物語は史実に沿って展開していく。ただ、輪郭は同じでも中身が全く違うのがおもしろい。
    他の多くの作品と一貫しているのは、土方は頭が切れるというイメージ。性質だ。
    物語が進むにつれて土方の価値観のようなものの輪郭もだんだんと形成されてく。
    「ひとごろし」の鬼の副長が誕生する過程は、他の作品では味わえないものがある。

    人は、性質と役目が合わないと役に立たないらしい。
    土方には頭が切れるなどの性質以外に「ひとごろし」という性質もある。
    では、役目は。鬼の副長だけだろうか。
    やはり「ひとごろし」なのだろうか。
    土方の最期からは、もっと他の何かが感じられたような気がした。

    まだまだ理解したとは言えないし、お気に入りの台詞もたくさんあるので何度も読みたいと思うのだが、いかんせん重すぎる。
    この本はそういう性質で、役目なのだろう。
    そこがいいのだから。

  • きょ、京極先生が新撰組ーーー?!
    予想外の組み合わせにワクワクしながら開いてみると、やはり一筋縄ではいかなかった。
    最初の方は土方と沖田のあまりの人でなしぶり&同じことをずっとぐるぐる考えているのにちょっと疲れてしまったが、京に着いた辺りから京極新解釈がバシバシ入って面白くなった。
    そう来るか、というところがたくさんあって新鮮。
    1000ページ超えだがあっさり読み終えた(行変えが頻繁だからもあるのだけど…。ページを文が跨がないようにという先生のこだわりのためでもあるんだろうか…個人的にはもうちょっと段落がまとまっていた方が読みやすい)。
    京極夏彦が描く女性は好きなことが多く、今回もお涼さんに惹かれた。
    山崎、齋藤が魅力的だったのもありがとうございます先生…。

  • 相変わらずなんとも物騒なタイトルの京極夏彦最新作。ブックカバーなしに人前で若干読みづらい。そしてこの本自体が人殺しとして鈍器に使えそうな結構な重量です。
    内容は土方歳三を語り手にした新撰組のお話。京極夏彦がそのような史実を下敷きにした小説を書くのって珍しいなあ、とちょっとびっくり。人を殺すことにたいして執着しつつもいろいろと考える土方像というのもなかなかに新鮮ではありました。他者に対して「ごちゃごちゃ考えるのはくだらない」くらいの態度であるのに本人はやたらとごちゃごちゃ考えるのがなんかちぐはぐな印象でもありましたが。
    歴史小説として、あるいは史実としての新撰組に興味が深い方からしたらいろいろ別の感想もあるのかと思いますが、そこまで詳しくない自分は「なるほど、こういうことがあったんだな」といろいろ興味深く楽しめました。もちろん人物像とかはフィクションだと認識したうえで。

  • 流石に、1000ページ超の本はなかなかボリュームがありました。
    主人公は土方歳三ですが、司馬遼太郎の『燃えよ剣』などに代表されるような、ある種「理想的」な人としてはまったく描かれていません。
    歳三は「ひとごろし」に憧れて、合法的に人を殺めることができる立場を得るためだけに新選組をつくり、自身の欲を満たしていきます。

    沖田もサイコパスで歳三と同じく殺人に取り憑かれた男として描かれ、京極夏彦の解釈もおもしろいと感じました。

    なにより、人外の化け物である歳三が、幕末の武士たちよりも世の中をある意味冷静に見つめていて、人の生き死にについてもしっかりと考えていることが印象的でしたし(自身の手にかけて人のために命を奪う、ということに執着しているので、具体的に感じられない「戦」を忌み嫌っていました)、確固たるビジョンをもたずに、その場の流れに諾々と従う多くの人々の姿に、現代への批判も感じることができました。

    個人的には楽しく読みましたし、京極夏彦の新選組の人物像にも納得行く部分も多くありましたが、いわゆる「新選組ファン」には納得できない表現も多いかもしれません。

  • とりあえず、すげーお・も・い(物理)。

    土方歳三を中心に、独特な切り口で新撰組の栄枯盛衰が描かれてます。
    新撰組ファンの方には怒られそうですが、土方と沖田がサイコパスっつーかシリアルキラーっつーか、いわゆる社会病質者であるという解釈なんですな。
    おおうそうきたか! と、びっくりはするけど、何かしっくりきたりして。
    ぶっちゃけ新撰組ってめっちゃ迷走してるじゃないですか。教科書的な解釈じゃ、イマイチ理解できなかったんだよ。そのあたりも、この切り口だと納得できたり。

  • この本の土方歳三はヒトでなしすぎてあんまり好きになれないけれど、それでもとてもかっこよかった。
    狂っているようで誰よりもまとも。
    最後まで生きる気満々で転戦していくのはこれまでになかった描き方で新鮮。
    ラストは涙涙でした。

  • 舞台は幕末。混乱した時代。その不安のせいか、熱病にうなされたか、大なり小なり大義名分があれば、個人の裁量で殺人が許されてしまう社会。
    そんなものはおかしいんだ。いい人殺しなんてもんはありえない。とぶったぎるのは新選組副長・土方歳三。
    ただ、彼自身は殺人衝動をもっているサイコパスなんです。

    ぶっ飛んでいるのは、沖田の方ですけどね。快楽殺人犯。
    同じ性質を持つ土方と沖田。衝動のまま殺すことに抵抗のない沖田と違って、土方は殺しのライセンスを作り上げようとします。公に殺しを行ってもいい状態。そのための新選組です。

    私情が天誅と名を変えて、正当化される殺人。
    戦争の中で、一人の人間としてでなく、一兵士という戦闘単位失われていく命。

    どちらにも、人を殺すことは大罪だ、と断言。一刀両断です。
    ただ、そういう土方自身が殺人衝動を抱え込んで、何度も殺人を実行しているという人間。

    『一人殺せば殺人者。百人殺せば英雄』とはよく言ったものですが、人殺しはどれだけかっこつけても大罪人だと突きつけられてます。
    古今東西の英雄譚に突きつけてますね。

    しっかし、相変わらず分厚いです。

  • 分厚い。圧倒された。
    「壬生義士伝」で号泣した口だが、この土方歳三像はかなり気に入ったし、こんな沖田総司は世の新選組感をひっくり返したのではないか。私的には斎藤一への興味が増した。

    この作者にしかできないでしょう、1083頁のハードカバーを手に取って読もうと思わせることは。読み終えて、平成最後の夏にひとつやりきったという達成感が味わえた。

  • 久しぶりの京極夏彦。ぶ、厚い!!
    読破に時間はかかるものの、全く長いと思わせないのは相変わらず。流石だなあ。二日かけて、ほぼ廃人状態で読んでしまった。だめ人間極まれり・・・。
    新撰組をただの人殺し集団と捉える。鬼の土方を、鬼として描く。本当は、これこそが全うな見方なんじゃないかと思う。
    粛正ばかりで、すぐに人を殺してしまう、無頼の若者集団。まともな訳がない。実際、客観的に見れば、本当に何一つ、何もしていない。
    それでも、どんな描かれ方をしても、なぜかそこに格好良さを感じてしまう。
    群像劇の面白さとか、彼らの青く熱い思いに、巻き込まれてしまうのかなあ。
    もうこれは、曲がった思い入れとしか思えない。こればっかりは、自分でも不思議だ。

    人外だと自覚しているが為に、人の枠に収まる努力をする歳三が、だんだん健気に見えてくる。
    人の方が、よっぽど酷い行いを、平然とするのだという逆説が、心に刺さる。
    山南、近藤との問答シーンが圧巻。

  • 中学生時代に司馬さんの「燃えよ剣」を読んで以来の新撰組(特に土方さん)ファンです。
    そして、京極さんの小説もほぼ読破している私・・。“京極新撰組”は、さて如何に・・。と読み始めました。
    まず副長が、ダーク。自らを“人殺し”として、そのうえで語られる生死感がキレキレ。大概の方々を論破(?)しまくっています(その時は副長、結構しゃべります)。
    そして沖田。“笑いながら人を殺す”サイコな危険人物として描かれています(沖田ファンは注意!って感じ)。
    ええキャラ揃いの監察方の面々や、見廻組の佐々木只三郎のくせ者っぷりも面白いです。
    齋藤が正義キャラで書かれているのは、個人的に意外でしたが、アリですw。
    新選組って、歴史的価値というか意味がほとんど無い集団と言われていて、本書でもそういう事をにおわせる表現が多々見受けられますが、何だかんだで、色々な作家さんの作品のネタになっている事から、魅力的ではあるはず・・。とファンとしては思いたいところです。
    そして、本書のラストはグッときました。やっぱ土方さんカッコイイです!

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著者プロフィール

京極 夏彦(きょうごく なつひこ)
1963年、北海道小樽市生まれ。小説家としてだけでなく、世界妖怪協会・世界妖怪会議評議員(肝煎)など妖怪研究家であり、他にも装幀家、アートディレクター、俳優など様々な顔を持つ。
広告代理店を経てデザイン会社を設立。1994年、そこで暇つぶしに書いた『姑獲鳥の夏』を講談社に送ったところ極めて評価を受け、同年、即出版・デビューに至る。瞬く間に執筆依頼が殺到する人気作家に上り詰めた。
1996年に『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、1997年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2002年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第130回直木三十五賞、2011年『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞など、数多くの受賞歴がある。
代表作に「百鬼夜行シリーズ」「巷説百物語シリーズ」「豆腐小僧シリーズ」など。

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