数学する身体

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 686
レビュー : 69
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103396512

作品紹介・あらすじ

「数学を通して世界をわかりたい」。30歳、若き異能の躍動するデビュー作! 思考の道具として身体から生まれた数学。ものを数える手足の指、記号や計算……道具の変遷は数学者の行為を変え、記号化の徹底は抽象化を究める。コンピュータや人工知能の誕生で、人間の思考は変貌を遂げるのか? 論考はチューリング、岡潔を経て生成していく。身体を離れ、高度な抽象化の果てにある、新たな可能性を探る!

感想・レビュー・書評

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  • p167
    自他の間を行き交う「情」が、個々の人や物の上に宿ったとき、それが「情緒」となるというのである。

    p170
    「無心」から「有心」に還る。その刹那に「わかる」。これが岡が道元や芭蕉から継承し、数学において実践した方法である。
    なぜそんなことができるのか。それは自他を超えて、通い合う情があるからだ。人は理でわかるばかりでなく、情を通わせ合ってわかることができる。他の喜びも、季節の移り変わりも、どれも通い合う情によって「わかる」のだ。

  • おもしろかった〜数字は自然なものではない、の一言にホッとしたりした。相変わらず数字を見ると思考が止まるけどいいものを読んだ。ありがたい…装丁がすごく良くてそこだけで好きになる。グレーの紙っぽくない質の紙にグレーのしおり紐、中を開けば鮮やかな青。

  • 面白かった。文系にもわかる数学の本。数学って学校で習った内容のイメージが強いけど、それはほんの一部で、本来哲学だったり心理学だったり、もっと広い分野に開けているものなんだな、と再認識させてくれた。チューリングと岡潔は個人的にも気になる人なので楽しかった。ブルバキって個人名じゃなかったんだ!ってこの本読んではじめて知りました。

  • 音楽や美術のように、数学も表現の行為だ。数学を通して「人間」に迫る、30歳、若き異能の躍動するデビュー作!
    「BOOKデータベース」より

    情熱的.
    「零までが大切」、この岡潔のことばは、自分の胸にも刺さった.ものごとの根源へ思考を馳せる.学問を志す者にとって必要な姿勢.博士の学位がなぜPh. D (Doctor of Philosophy)なのか、ということですね.

  • 2015.11.2-2015.11.3
    武術家の甲野善紀氏が勧めてゐるので購入。独立の研究者といふ著書の行き方にも関心があつた。
    数学が発生段階から身体と不可分であり、考へるといふことは、普通に思はれてゐる以上に身体的な過程なのだ、といふ論点は興味深い。それがギリシャ時代の数学を例に説かれてゐるあたりは秀逸だ。
    他方で、人工知能が人類の脅威になるのではないかと心配される程に発展し、「情報」が一人の人間の処理能力とは無関係に増殖する時代に、数学を身体化するといふ岡潔の理想がどのやうな指針となるのかは不明確だと思はれる。
    とは言へ、他の人達の力を借り、過去の遺産の助けを得ながらも、他人には伺ひ知れないものを抱へて生きる他ないのが人間である以上、頼りになるのはこの身体であり、その持つ潜在力が充分に使はれてゐないのは確かなので、頭でつかちになり勝ちな今の日本で、読まれる価値がある本だらう。

  • 森田君の初の著作。数学の本なのだが、数式は一切ない。数学の歴史の一端を概観しながら、チューリング氏や岡潔氏に対する森田君の心情を綴ったような内容。

    岡潔氏への森田君の情熱は以前から少しだけ伺っていたが、本当に好き(という感情ではないだろうけど)なのだろうと思う。読んでいる時も、文を書いている時の森田君の嬉しそうな顔が思い浮かぶような気がした。

  • 書店に行ってこの本を手にとって第一章だけでもまずは読んでみてほしい。数学の知識はいらない、身体だけあれば大丈夫。認知科学の知見なども引用しながら、数学という行為がどのように発生してきたのかをじっと見てみる。わずか数十ページながらとても贅沢な知的な旅ができて、この時点で僕は完全に引き込まれてしまった。人工進化、天命反転などのワードが飛び交い、みごとにひとつの線で結ばれていく様子は圧巻の一言。ものごとを横断するなにかが存在する、と思っている人に強くおすすめします。本当に面白いです。

    第二章「計算する心」には、道具として生まれた数学が、どのような発展を遂げていくかが続く。「証明」に重きを置くギリシャ数学の誕生は、考えてみればそれまでの数学からすればまさに革命だったということがよくわかる。その後の「無限」の発見はシンプルにめちゃくちゃアツい。ヒルベルトやゲーデルの時代まで数学の抽象化の過程を描いたのち、話題はついに本題の「心」に至る。玉ねぎの皮を剥いていくように心に肉薄しようとしたチューリングの一生を追って幕を閉じる。

    第三章「生成する風景」からは岡潔という一人の数学者に重点が置かれる。ここでも第一章で見たような、見事な編み物のような著者の思考の過程を追いかけることになる。我々の感覚が、いかに自分の身体という小さな入れ物で閉じていないかを再び浮き彫りにする。

    第四章「零の場所」は、岡潔がその生涯の中でいかにして難問に立ち向かったかの変遷を追う。ここが本書の真骨頂で、最終的に丘がたどり着いた「わかり方」、その先にある生きていく喜びのことこそ筆者が情熱をもって伝えんとしていることだと思う。「わかる」の究極はそれに「なる」こと、そうしたなかで見る風景を言葉に落とすことで数学を進めたのが岡潔だった。


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    ここまでが自分なりのまとめで、ここから先はとても個人的な感想です。

    ハードカバー版で読んだけど、人に貸すためだけに文庫版も買った初めての本になった。改めて読み返してみて思ったのは、これは岡潔が晩年にみた「もののわかり方」を説いた本だったのではないかということ。並んで重要なのが、それが人と通い合うという事実。情というものがあるからこれが可能だという。数学というもののユニバーサリティは実に不思議だ。たまたま丘潔という人物の、たまたま数学に対峙するやり方が紹介されている本書だが、数学であることは超えて、世界の中に生きるということを考えるにあたっても実りのある本だと思う。喜びは切り離された個から生まれるのではない。そこには通い合う情がある。
    一方で、主体にしかアクセスできない情緒の総和こそが人のオリジナリティの源泉なんだと思う。風景の、人と共有できる部分と、自分にしか見えない部分、どちらも大切で、後者を磨き抜いた上に、前者を広げていくことができる。それもまた本当に不思議なことだ。書いてみるとこれは研究という行為そのものだ。学問に限ったことではなく。

    研究をやっている身としても参考になる記述が大いにある。自然は最強の計算資源であること。環世界と情緒がひとが見る風景を編む。身体化された思考過程の精度を上げること。「零までが大切」という言葉。ついでに言えば冒頭で荒川修作の存在を知れたのも大きい。まさにlive foreverを目指した人のひとりだ。同類。生きることにまじめな人が好き。しかも天命反転住宅は普段いる天文台から徒歩圏内だ。びっくりしちゃった。森田さんそこに住んでたというからもっと驚いた。

    ライブ感のある詩的で情熱的な文章にとても親しみを感じる。特に岡潔の思想を語る部分には愛がこもっている。岡潔はやっぱり確信のあることを全力でしゃべる人なので、彼の思想に興味があるといって彼の言葉に直接あたってみるとラディカルすぎて引くというのがあるかなぁと思うんだけど(『人間の建設』でちょいちょいあった)、この本はそういう意味でもバランスがよく、成功していると思う。

    なぜ僕がこの本にこれほどまでに惹かれるかというと、何を嬉しいと思うかが森田さんとそっくりだからだと思う。ものごとがつながっていくときの感触、「零」に至った瞬間がなによりも心地良い。発見の喜びを知る人と出会うこと自体の喜びよ。ついでにいうと文体も似ていると思ったし、なりたい未来も似ている。自分がなりたいものには名前がないと思っていたけど、ほとんどそれにあう言葉が見つかってしまった。独立研究者になりたい。丘潔もそうだった。彼は数学に「新たな意味を吹き込」み、「文化として根付かせ、そこに自前の思想的文脈を与え」る(本書175ページ)ことに挑戦し続けた。そういうことを、天文学やらなんやら自分が愛するもろもろに対してやっていけたら幸せだと思う。

  • のめり込んでしまって、自分にしては短期間で読めた。
    最近読んでいる数学関係の本の影響もあるが、数学史にとても興味が出てきた。
    ある概念(例: 群)のもとになる実体(例: 対称群)がどのように考えられて、それがどのように抽象化されてきたかなどに興味がある。

    「数学する身体」にはヒルベルト計画の記載がある。
    「数学セミナー」の足立恒夫さんの「よみがえる非ユークリッド幾何」では完全性定理が述べられている。
    数学科時代は数学基礎論に興味はなかったけど、「数学ガール/ゲーデルの不完全性定理」を再読して《数学を数学する》ことをもう少し理解したい。

  • 100殺!ビブリオバトル No.71 夜の部 第10ゲーム「三位一体ビブリオバトルその2」

  • 数式は全く出てきません。
    数学を哲学する、著者の数学への探究心を言葉にしたものです。

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