ワンダフル・ワールド

著者 :
  • 新潮社
3.24
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本棚登録 : 310
レビュー : 59
  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103399513

作品紹介・あらすじ

世界はこんなにも美しく、かぐわしい――運命の出会いを彩る香りの物語。かつての恋人との再会で芽生えた新たな感情、「愛人」という言葉では割り切れない関係、久しぶりの恋を捨てても守りたいもの――普通の恋愛とは呼べない。でも混じり気ない愛情と絶対的な安心感を与えてくれる存在を、特別な香りとともに描く全五篇。もうときめきだけでは満たされない大人に贈る、究極の恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 楽しみにしていた村山さんの新刊。
    早速発売日に買いました。
    すべての章に香りが漂う、喪失と大人の恋が入り混じった5つの短編集でした。

    ファンの間では、デビュー作「天使の卵」などの純心な作品を生み出す白村山と、「ダブル・ファンタジー」のような官能的で深みのある作品を描き出す黒村山とに呼び名が分かれるところですが、もはや今はそういった区分けすら不要なものだ、と感じさせるくらい白も黒をも内包した作品でした。

    酸いも甘いも知り尽くした大人だからこそ書ける魅力がまたたまらないです。いくつになっても恋に生きる純真さを残しつつ、年齢とともに変化していくものが作品には映し出されていて、これだからこそ追いかけるのをやめられない、と思わされます。

    さて、肝心の作品ですが、描かれている大人の恋は、とても現実的でした。
    ある程度生きているとそれなりに経験を積むから、夢を見にくくなっている部分がある。それと同時に、だからこそ焦がれるように夢を見たい気持ちもあって。
    ふと気付けばしっかり予防線を張っていたり、冷静に自分の手綱を握りしめていたりするのを自覚すると、自分も大人になったものだ、と少し寂しさを覚えます。

    大人になると既婚者率が高くなるとはいえ、不倫という呼び名を自覚することなく既婚者と関係を持つ人が多いことが、なんだか残念なような、それでいてすごく自然なような、苦い気持ちになります。
    もちろん、しっかりわかっている、と不倫をしている人たちは言うけれど、甘い言葉で誘う男性も、妻の存在に蓋をして誘いに乗る女性も、同罪ですよね。なにも、わかってない。
    とはいえ、私も感性の部分では、まあそんなこともあるよね、と自然に受け入れてしまいそうだからこそ、理性の部分で必要以上に自分を諫めてるのかもしれませんが。

    読んでいて感じたのは、人は必ず失うもので、失われようとしているものを止めることはできない、ということ。それは命にしかり、恋心にしかり。
    いつかはすべてが失われるのだから、その前にきちんと大切にしないといけない、ですね。

    老猫の話は、私も昔大事にしていたハムスターを、それこそ全身の毛が抜けるくらいまで長く生きた子が息を引き取る最期の瞬間を、自分の両手の上で見たという経験を思い出させるのと同時に、うちの愛猫の最期を想像せずにはいられませんでした。

  • 『匂い』に関連した短編集。
    登場人物が次の短編にサラッと出てくるけどさほど深くは関わらない。
    5編あるうち、もしかしたら人間よりも愛している動物と関わる主人公が3編。
    この子は私がいないと…!と思える対象がいることで救われる一瞬が描かれているのが好き。
    読みやすく、あっという間に読めた。

  • タイトルとは裏腹に、わりとバッドエンド多めな希ガス

  • 「香り」で綴った5編の短編小説。感情を揺さぶられる香りは人それぞれ。「バタフライ」が切なかったな。

  • *世界はこんなにも美しく、かぐわしい――運命の出会いを彩る香りの物語。かつての恋人との再会で芽生えた新たな感情、「愛人」という言葉では割り切れない関係、久しぶりの恋を捨てても守りたいもの――普通の恋愛とは呼べない。でも混じり気ない愛情と絶対的な安心感を与えてくれる存在を、特別な香りとともに描く全五篇。もうときめきだけでは満たされない大人に贈る、究極の恋愛小説*

    まさしく、濃厚な女の香りが匂い立つような短編集。激情と冷静さ、柔らかな寛容と決して譲れない自分の中の何か、そんな相反する感情が背中合わせになっている大人の女の恋愛模様。退廃的なのにほろ苦い甘さを含んだこんな恋慕が味わえるのは、大人の特権なのでしょう。意外な結末も併せて、独特の余韻を残す短編集。

  • 2018/12/11読了


    最近は作者投影が多かったので・・
    正直短編のほうが面白いかもなのです。


    「アンビバレンス」は何かのオムニバスで読んだ

    昔の恋が今も鮮やかに大切に存在している「オー・ヴェルト」の、ほっとした感じはかつてのおいコーみたい。
    女としての生き方と魂の燃やし方が素晴らしく
    終わりの始まりを美しく飾る「バタフライ」
    母親の恐怖と、束縛・独立を始めて意識する「サンサーラ」
    を読むと、ほんとうに村山さんの母親はどんな人なのか、どんな影響を受けたのかを考えてしまわざるを得ない。
    そしてやはり あの日 がテーマとなる
    言葉でもあり、影でもある「TSUNAMI」



    このすべてはなにかとの別れ、もしくは決別のオムニバス

  • 2018/11/13

  • 短編が5つ.表題名の作品はないが,それぞれの作品のオチが最終的にはワンダフル・ワールドになるのかなと感じた.どの作品も前半で恋の導入部があり,最後に意外な展開が待っているという構成だが,インコのしんのすけにまつわる「アンビバレンス」が面白かった.みちると比嘉雅弘の微妙な関係と,そこに割り込んできた安藤優司・破綻は突然なんだ.

  • たまには、大人の恋愛ものでも、、、。
    ******

    「サンサーラ」がよかった。

    生々しい性愛描写は、
    ちょっと、もう、いいかな、、、。
    想像を膨らませる余地が、より官能的かと。

    「TSUNAMI」の祖母のくだりは、、、
    切なくて、泣けた。

  • 短編だけど、つながっていて
    特に
    バタフライの志織さんには強く共感した

    わたしでも同じことを考えただろうか
    読むまでは思いつかなかったとしても
    読み終えた今となっては
    志織さんの真似をしてしまう自分が想像できる

    もし当事者となってしまったなら
    何かの役割としての自分ではなく
    ただひとりの女性としての選択ができる潔さを
    そのことを喜べる覚悟を持ち合わせていたい

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著者プロフィール

村山由佳(むらやま ゆか)
1964年7月10日生まれ、立教大学文学部日本文学科卒業。不動産会社、塾講師などの勤務を経て作家となる。
1991年 『いのちのうた』でデビュー。1991年『もう一度デジャ・ヴ』で第1回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞佳作、1993年『春妃〜デッサン』(『天使の卵-エンジェルス・エッグ』に改題)で第6回小説すばる新人賞、2003年『星々の舟』で第129回直木三十五賞、2009年『ダブル・ファンタジー』で第4回中央公論文芸賞、第16回島清恋愛文学賞、第22回柴田錬三郎賞をそれぞれ受賞している。ほか、代表作として『おいしいコーヒーのいれ方』シリーズがある。

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