ワンダフル・ワールド

著者 : 村山由佳
  • 新潮社 (2016年3月22日発売)
3.23
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  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103399513

作品紹介

世界はこんなにも美しく、かぐわしい――運命の出会いを彩る香りの物語。かつての恋人との再会で芽生えた新たな感情、「愛人」という言葉では割り切れない関係、久しぶりの恋を捨てても守りたいもの――普通の恋愛とは呼べない。でも混じり気ない愛情と絶対的な安心感を与えてくれる存在を、特別な香りとともに描く全五篇。もうときめきだけでは満たされない大人に贈る、究極の恋愛小説。

ワンダフル・ワールドの感想・レビュー・書評

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  • 楽しみにしていた村山さんの新刊。
    早速発売日に買いました。
    すべての章に香りが漂う、喪失と大人の恋が入り混じった5つの短編集でした。

    ファンの間では、デビュー作「天使の卵」などの純心な作品を生み出す白村山と、「ダブル・ファンタジー」のような官能的で深みのある作品を描き出す黒村山とに呼び名が分かれるところですが、もはや今はそういった区分けすら不要なものだ、と感じさせるくらい白も黒をも内包した作品でした。

    酸いも甘いも知り尽くした大人だからこそ書ける魅力がまたたまらないです。いくつになっても恋に生きる純真さを残しつつ、年齢とともに変化していくものが作品には映し出されていて、これだからこそ追いかけるのをやめられない、と思わされます。

    さて、肝心の作品ですが、描かれている大人の恋は、とても現実的でした。
    ある程度生きているとそれなりに経験を積むから、夢を見にくくなっている部分がある。それと同時に、だからこそ焦がれるように夢を見たい気持ちもあって。
    ふと気付けばしっかり予防線を張っていたり、冷静に自分の手綱を握りしめていたりするのを自覚すると、自分も大人になったものだ、と少し寂しさを覚えます。

    大人になると既婚者率が高くなるとはいえ、不倫という呼び名を自覚することなく既婚者と関係を持つ人が多いことが、なんだか残念なような、それでいてすごく自然なような、苦い気持ちになります。
    もちろん、しっかりわかっている、と不倫をしている人たちは言うけれど、甘い言葉で誘う男性も、妻の存在に蓋をして誘いに乗る女性も、同罪ですよね。なにも、わかってない。
    とはいえ、私も感性の部分では、まあそんなこともあるよね、と自然に受け入れてしまいそうだからこそ、理性の部分で必要以上に自分を諫めてるのかもしれませんが。

    読んでいて感じたのは、人は必ず失うもので、失われようとしているものを止めることはできない、ということ。それは命にしかり、恋心にしかり。
    いつかはすべてが失われるのだから、その前にきちんと大切にしないといけない、ですね。

    老猫の話は、私も昔大事にしていたハムスターを、それこそ全身の毛が抜けるくらいまで長く生きた子が息を引き取る最期の瞬間を、自分の両手の上で見たという経験を思い出させるのと同時に、うちの愛猫の最期を想像せずにはいられませんでした。

  • 『匂い』に関連した短編集。
    登場人物が次の短編にサラッと出てくるけどさほど深くは関わらない。
    5編あるうち、もしかしたら人間よりも愛している動物と関わる主人公が3編。
    この子は私がいないと…!と思える対象がいることで救われる一瞬が描かれているのが好き。
    読みやすく、あっという間に読めた。

  • 読み途中の本が、余りにつまらなく、口直しで間に挟むつもりが、一気読み。
    読みやすいのと、ゆるゆる繋がる連作なのと、で、思いの外高スピードで読み終わっちゃった。
    借りる時に、白村山かな?黒村山かな?と、ちょっと気になったけど(私は白村山ファンなので)、読んでみたら、どっちとも言えない感じで…。もしや、私が見逃してただけで過渡期の作品?と思ったら結構最近のなんだね。
    黒村山出現で、遠のいた村山ワールドだけど、白×黒また段々融合してるのかな?喪失感を心地良い静けさで描くのはさすがだな~!こんな風なら、また読みたいなと思った。

  • 短編はあまり好きではないのですが、図書館での待ち時間にさらっと読めそうだったので手に取りました。

    香りにまつわる5編の物語。

    私自身はあまり香水に興味がないのですが、香りと記憶の関係は非常に興味深く、嗅いだだけでその香りにまつわる様々な思い出が蘇ってくる、といった経験は度々しています。

    皆さんは自分に合った香りをどのようにして選んでいるんでしょうか?
    やはり周りが不快にならない良い香りをつけてる方は、出来る女なイメージがあって多少憧れます。

    自分に似合う香りがあれば是非付けてみたいな、と思います。

  • 世界はこんなにも美しく、かぐわしい――運命の出会いを彩る香りの物語。かつての恋人との再会で芽生えた新たな感情、「愛人」という言葉では割り切れない関係、久しぶりの恋を捨てても守りたいもの――普通の恋愛とは呼べない。でも混じり気ない愛情と絶対的な安心感を与えてくれる存在を、特別な香りとともに描く全五篇。

  • 短編5編。最初の3編は、わりと好きな作品だけど、後の2編は・・動物を脇役にする作品って、好みなのが多いが、これはどうも・・
    「サンサーラ」はSFファンにとって、安易さで嫌いな内容にもなる。「TSUNAMI」は震災との絡みがあまり意味ないような・・
    最初の3編は、シンプルな女心になるかな。ちょっと色気もあり、初期作品に通じる。それに、村山さんは短編の方がいいかな?長編だと、言葉ばかり多くてややこしくなる(笑)

  • 男女と香りにまつわる短編集。
    最近の村山氏の恋愛小説は官能にばかりダラダラと焦点があたり、正直いってストーリー自体は楽しめないものが多いと感じていたが、その点この短編集ではどちらもが良いバランスで保たれたまま一編が終わる。ちょうどいい。
    2017/08

  • 匂いと動物をからめた恋愛短編集。登場人物も軽く関係性を保っているところが面白いです。
    どの作品もきれいな文章で綴られていますがエロチックです。
    どれも良かったけど、強いてあげるならアンビバレンスかな。
    カバーの絵もきれいです。

  • 香りとペット(それは子のようであり半身であり恋人であり家族であるもの)と恋人のはなし。
    真ん中一編は自分がペットにされてた感じかな。

    去年、書店で装丁に惹かれて衝動買い。
    新年度からのばたくたで積ん読となっていたものを、山ノ下からだるま落としのごとく引き抜いて、気がついたら一気読みしてました。
    去年じゃなく、今、このタイミングだからよかったのかもしれない。
    恋の切なさが感じられるのも、色々と受け入れられるのも、ことし、今だから。
    去年じゃしらけただけだっただろう。

    震災の影響がちらほら見えかくれする前半。
    ラストはまさにその時の次の日。
    たとえ小説の中とはわかっていても、揺れ続ける感覚と恐怖と、タビの旅立ちが迫る圧迫感がたまらなく逃げ出したくなる。

    何かを失って、新たに手にする者と、これから手にするのかもしれない者たちと。

    個人的には骨董屋さんと彼女の話が、ファンタジーなのか現実なのかわからないけどすごく気になった。
    それから白神山地へ旅する彼女が生き返っていく様。リスの話は自分のようだ(笑)
    ペットだった男の子の泳ぐ姿も目に鮮やかだし、インコ味は……いや、あれは飼い主でもやるのか?と。
    どれも記憶に鮮明に映像が刻み付けられている。
    切なさややるせなさもまた。
    それでも彼らが明日を生きていくように、私も生きなければならないのだ。

    今回の彼ら、彼女らの話は「恋」の話だったと思う。
    「愛」ってなんだろう。
    ペットへ抱く気持ちはそうかもしれない。
    執着もある気がする。
    おばあちゃんがおじいちゃんの遺影の後ろに潜めていた秘密を見上げるときのような清々しさが恋なのだとしたら。

    今回は恋を描いた短編集。
    愛を描いた物語を探したい。

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