著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103399711

感想・レビュー・書評

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  • 葛飾北斎の三女、応為の話し。
    テレビで「吉原格子先之図」が映ったのをたまたま見た。驚いた。
    それがこの本を手に取ったきっかけ。

    嫁いでも家事をせず、絵を描いている。
    離縁され、「これで自由に絵が描ける」と。
    お栄、すごく真っ直ぐな人だと思った。

  • 周防柳を読んで、朝井まかてを思い出し、その後(西鶴のあと)何かあるかと検索したら出てたので、読んでみた。

     『恋歌』『阿蘭陀西鶴』ほどの良さはなかったが、葛飾応為の存在を知れたのは収穫。

     江戸末期の庶民生活の詳細な描写は巧みだし、応為の画風の成り立ち、父親北斎や弟子や業界とのやりとりはリアルで活き活きと描かれている。
     なのにイマイチな、前作との差を感じるのは、あまりに素直に時系列をなぞった物語展開だったからだろうか。あるいは視点の平易さからか(基本、応為=お栄の視点から)。『恋歌』の入れ子的な構成でもなく、西鶴の姿を愛娘の視点から描いたのでもなく(盲目なのに視点ってのも変だが、そこが妙だった)。
     応為の代表作の制作が晩年だったことも災いしてか、ストーリーが3分2ほど進むまでが、なんとも倦む日常なのが、ちょっと辛かった。
     もちろん、そこで親父北斎や母親との暮し、懸想人の兄弟子善次郎との日々、厄介者の甥の存在などが具に語られるから終盤が活きるのだが、ちょっと長かったかな。

     とはいえ、元禄のただただ華やかな文化と異なり、やや廃頽的な江戸末期の天保の文化の担い手たち。どことなく陰影の濃い世相を巧くアレンジし、日本人離れした応為の画風を彷彿させる作品トーンは、さすがの筆力だとは思う。
     応為の作品が少ないこと、江戸のレンブラントと称される西欧絵画風の作品のヒント、北斎との共作のあれこれ。歴史の謎をひとつひとつパズルを嵌めていくように、応為の人生の中に散りばめてあり楽しめた。

     なにより、画業に人生を捧げた応為が魅力的に描かれている。最後にこうい言い放つ姿が清々しい。

    「あたしは、どこにだって行けるのだ。どこで生きても、あたしは絵師だ。」

  • 「恋歌」といい、「その一瞬」を、なんて軽やかに鮮やかに切り取る作家だろう。文章でこれをなし得る朝井まかてに脱帽しかない。
    栄のキャラクターのせいかな。恋歌ほど、こころを持っていかれる感覚は薄かった。でもとても楽しく読みました。

  • 葛飾北斎の娘であり、絵師の葛飾応為の物語。
    男勝りで勝ち気な上、色気もない。
    しかし、気風がよく、からりと晴れた青空のように気持ちのいい女性。
    まさに江戸の女。
    己の生涯を絵に賭け、絵と共に駆け抜けて行った。
    ひとりの女性である前にひとりの絵師であった。
    そして、絵を愛したひとりの人間であったのではないだろうか。

  • ドラマ見逃したー!と言ってたら、桂さんが貸してくれた。
    生涯を追う形式だから仕方ないんだけど、平気で数年経っちゃって…もう少し味わいたいなぁって思った。
    あと、色々難しいんだろうけど、いちいちの作品が見たい!
    凄い分厚くなるの覚悟で図録とセットで、それぞれの話も切れ目できっちり頁あけて…って余韻を持たせる贅沢な作りだったら物語も活きたんだろうな。

  • 2017.5.17

  • 北斎の娘。あるかも、と思う。

  • 北斎の娘、お栄の人生を描いた作品。お栄の存在を知らず、北斎などの人生との絡みを含めてなかなか面白かった。作品もネットで実際の物を見ながら読んだので、興味深かった。ただ、引き込まれたかと言われればもう一つ。結局時太郎は何だったんだろう。北斎が借金を重ねて貧乏だったことの原因として?

  • 感想が難しい。
    落陽や、恋歌、西鶴の話よりも胸に響いてこないんだけど、だからといって決して本作が悪いというわけではない。
    話の内容に救いがないからだろうか?
    葛飾北斎の娘の絵師の話なのだけど、救いがないというな日の光が差し込んだかと思うと、すぐに陰ってしまうかんじが、寂しい。

  • 北斎の娘にして「江戸のレンブラント」天才女絵師・葛飾応為の知られざる生涯。あたしはただ、絵を描いていたいだけ。愚かな夫への軽蔑、兄弟子への叶わぬ恋、北斎の名を利用し悪事を重ねる甥――人生にまつわる面倒も、ひとたび絵筆を握ればすべて消え去る。北斎に「美人画では敵わない」と言わせ、西洋の陰影表現を体得し、全身全霊を絵に投じた絵師の生涯を圧倒的リアリティで描き出す

著者プロフィール

作家

「2023年 『朝星夜星』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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