著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 102
  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103399711

作品紹介・あらすじ

北斎の娘にして「江戸のレンブラント」天才女絵師・葛飾応為の知られざる生涯。あたしはただ、絵を描いていたいだけ。愚かな夫への軽蔑、兄弟子への叶わぬ恋、北斎の名を利用し悪事を重ねる甥――人生にまつわる面倒も、ひとたび絵筆を握ればすべて消え去る。北斎に「美人画では敵わない」と言わせ、西洋の陰影表現を体得し、全身全霊を絵に投じた絵師の生涯を圧倒的リアリティで描き出す、朝井まかて堂々の代表作!

感想・レビュー・書評

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  • 北斎の娘・葛飾応為こと、お栄の人生。
    女ながらに父も認める才能ある絵描きだったお栄が、いきいきと描かれています。

    天才絵師・葛飾北斎の娘、お栄は父の弟子に望まれて結婚するが、家事をする気もなく、絵に没頭。
    お栄ほどの画才もない夫は、北斎の娘婿として仕事を増やしたかっただけらしい。
    あっさり出戻ったお栄は、父と弟子たちとの暮らしに邁進し、気まぐれな父の世話をこなしつつ、画業に情熱を注いでいきます。

    ひょうひょうとした兄弟子の善次郎とはそこはかとない信頼関係があり、お栄は惹かれますが‥
    口うるさい母や、ろくでなしの甥に悩まされつつ、さばさばと生きるお栄。
    飾り気なく大胆で、当時としては相当変わり者だったんでしょうね。
    古風な女らしさはないものの、その情熱がどことなく色気となっているよう。

    北斎の有名な冨嶽三十六景の制作風景や、応為の代表作の吉原格子先之図などの描き方を工夫する様子も出てきて、臨場感を楽しめます。
    応為には、どこまで絵師として認められるのか、長い年月の間、葛藤もあったことでしょうが。
    やりきった感もあったのか、どこにいてもやっていけると思うようになった勁さ。
    清々しい読後感でした☆

  •  葛飾北斎の娘,葛飾応為(おうい)を主人公に書かれた小説。

     葛飾応為(おうい)は北斎の娘で,絵師のもとに嫁いだものの,夫の絵を鼻で笑って離縁され,北斎のもとに出戻って,父とともに工房で画を描いて暮らしている。
     その腕は確かで,父の北斎も「美人画は応為にかなわない」とまで言わしめるもの。
     出戻った娘に対しなにかと五月蠅い母,悪事を働き続ける甥,善次郎への思い。
     どんなことがあっても,お栄が絵筆を持ち動かしていくと,全ての雑念が失せ画に集中していくのであった。

     江戸時代,今より封建的なときに,お栄(応為)は画に打ち込んでいました。
     父親譲りの才能だけでなく,精魂こめて絵を描くということ。
     貝殻や石や膠などの素材を絵の具にしていくことも苦でなかった。
     絵師として生きる,絵師としてしか生きられない人生だったのかと感じました。

     この物語に出てくる「吉原格子先之図」はこの本の表紙となっています。
     その頃江戸で描かれてきた浮世絵とは全く違う。光と影。
     そう思ってまた読むと,『眩』の小説のなかで画が描き上げられていく過程が緻密に書かれていることに気づきました。

  • 栄女の人生を描いた小説というので手にした。
    初の朝井まかてさん読了。
    日本美術史の勉強をしていたので、
    葛飾応為のことは、いつか詳しく読んでみたかった。

    その、きっかけに。

    新しい本として紹介されていたのをブクログで
    見た時、確かに面白そうだと思った。

    読了してみて…いや、面白い。
    二日間で一気読み。

    北斎とお栄の関係も、描かずにいられない
    才能の横溢も、よく写し取られていたし
    江戸の女の生き様を活写するという点でも
    からり、さらりと意気地があって。

    たったひとり愛した男の、優しさもいいし
    その男が自分のものにはならなかったのも
    せつないけれども、潔くていい。

    お栄の周りは、サバサバと一人に
    見えて、心の優しいひとと、他人の
    ザラ感を感じさせる人間が、程よく
    配されていて、ああ、人間の暮らしって
    こうだよなあと思わせる。

    一般的な女性の枠からは、当時外れていた
    お栄だけど、典型的な良妻賢母とは違っても
    やっぱり北斎にとって、いなくてはならぬ
    内助の功の一人であったろうし、家庭を
    あえて持たない決断も、賢明さの現れと
    私は読んだ。

    世の中、よくある奥さんの枠に収まりもしないのに
    結婚しなきゃとジタバタする女のなんて多いこと。
    他人と家庭を持つのが、合っている生き方なら
    いいけれど…。

    自分は女である前に絵師。
    無理無体に世帯を持っても、壊す。

    だから一人。

    潔く一人。

    その判断は、読んでいて気持ちがいい。
    裏寂しさや孤独感、世間体や負け感が
    ないからか、出て来る人に底抜けの悪人が
    いないからか、読んでいて小気味いい。

    江戸弁の流暢さや、人情も丁寧に描かれていて
    時代小説のファンの方にもきっと好評だろう。

    文句なしの五つ星。

    読み終わったら美術館に行きたくなる。
    せめてこの酷暑なら、画集の一冊も繙きたくなる。

    読後感の爽やかな小説だった。

    同じく朝井さんの「恋歌」も登録したまま
    だったけど、読んでみよう。

    • uiriさん
      朝井まかてさんの作品は江戸時代末期の物が多く、ほとんど読んだ気がしますが、どれも面白かったです。
      朝井さんのお蔭で時代小説が苦手ではなくな...
      朝井まかてさんの作品は江戸時代末期の物が多く、ほとんど読んだ気がしますが、どれも面白かったです。
      朝井さんのお蔭で時代小説が苦手ではなくなりました。
      「藪医ふらここ堂」で火が付きました。
      2017/07/31
    • 瑠璃花さん
      コメントをありがとうございます。そうですか…もうたくさんお読みなのですね。次は「阿蘭陀西鶴」「恋文」あたりをと思っております。「藪医ふらここ...
      コメントをありがとうございます。そうですか…もうたくさんお読みなのですね。次は「阿蘭陀西鶴」「恋文」あたりをと思っております。「藪医ふらここ堂」ですか。せっかくですので一緒に借りてみます。

      時代小説には、面白くて、寝る間も惜しい
      作品が色々ありますので、どうか楽しんでくださいね。
      2017/07/31
  • 北斎の娘、応為の一生を書いた作品。絵とともに生きた女性、当時は女性の地位が低く、女性絵師の生きづらい面、周りからの評判、理解してもらえない人もいるだろう。その苦難などを心に溜めながらも、懸命に絵を書き、構想を凝らし、理想とする絵への探究心を追い求める姿、応為から見た北斎の父としての面、娘として父に孝行できることを尽くし、看取る姿は、絵師だけでなく人間としての魅力溢れた人物だと感じる。北斎の生涯最後の絵図を書く場面、応為の吉原格子先之図を書く場面は心に沁みる、感動であった。

  • この表紙の絵、現代の絵だと思っていました。装丁画家が描いたのだろうと。しかし、なんと江戸時代、葛飾北斎の娘・葛飾応為が描いた絵でした。本書の評判は数年前から聞いてはいましたが、いやはや、期待以上に素晴らしかったです。面白いです。主人公の応為。絵のこと以外はとても大雑把で、筆洗用の茶碗に徳利の酒を注いで飲んでしまうタイプです。その応為が、人生に悩みながらも絵の世界に没頭している様子がとても熱気があってカッコ良くて、最高でした。NHKでドラマ化、しかも宮崎あおい主演とのことなので、イメージを膨らませつつ読みました。ネットで絵を検索して、どんな絵なのかを見ながら読むのもオススメです。

  • 葛飾北斎の三女、応為の話し。
    テレビで「吉原格子先之図」が映ったのをたまたま見た。驚いた。
    それがこの本を手に取ったきっかけ。

    嫁いでも家事をせず、絵を描いている。
    離縁され、「これで自由に絵が描ける」と。
    お栄、すごく真っ直ぐな人だと思った。

  • マハさんのアート小説よろしく今回もスマホ片手に絵画鑑賞をしながらの読書。
    葛飾応為…存在すら知らなかったのだがその作品の素晴らしさときたらどうだ!
    先ず目を惹くのが絶妙な浮世絵と西洋画の融合、そして本文中にもあるが色彩への拘りと鮮やかに織りなす光と陰の美しさが視覚を通して心に響いてくる、そうこれまでに見たことがないような日本画であるのだ。
    調べてみれば本人は見目麗くもなくまるで男のような扱いなのだがそこはまかて流、作品にも劣らぬ色香溢るる女絵師が描かれており読み物としても面白い。
    わかりやすさから言えば恋歌も超えたかもしれない傑作でした

  • 葛飾北斎の娘・お栄(葛飾応為)の一生を描いた作品です。
    2年ほど前にNHKが宮崎あおいさんの主演でドラマ化。うっかり見てしまいました。
    基本、私は「読んだら観ない、観たら読まない」が原則。暫し冷却期間を置いて読んでみることにしました。
    細かなストーリーは結構忘れてましたが、どうしても宮崎あおいさんの姿が浮かんでしまいます。まあファンなので仕方ないですが。

    子供の頃から絵に魅入られ、一度は嫁いだものの離縁。北斎の元に戻ってから再び絵の手伝いを始めます。絵を描くことに集中する余り、自分の形振りや家事には全く興味が示さないお栄なのですが、思ったより常識人として描かれます。女らしい恋も有ります、ちゃんと人付き合いも出来ます。親思いで母親には反抗しながらも面倒を見切れなかったことを後悔し、北斎に対してはその最後まで尽くし続けます。

    何と言っても北斎やお栄が絵を描くシーンが記憶に残ります。それが本当なのか判らないのですが「ああ、こんな風に絵が出来て行くんだ」と納得させられるのです。

    最後、色んなことを踏み越えて、60歳を迎えて少し人間的に丸くなりつつも、なお絵に対する情熱を失わず、新たな旅立ちを果たそうとする姿が清々しく。

    良い本でした。

  • 北斎の事がしりたくて。娘、応為の苦悩がよくわかった。

  • さすがの朝井まかて、これも大層面白かった。浮世絵の世界を少し伺い知ることができた気がする。まさかの女浮世絵師を柱の展開に引き込まれてしまった。

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著者プロフィール

朝井 まかて(あさい まかて)
1959年生まれ。甲南女子大学文学部国文学科卒業後、コピーライターとして広告制作会社に勤務。独立。2006年から大阪文学学校で学び、2008年第3回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞してデビュー。受賞作は『花競べ 向嶋なずな屋繁盛記』と改題され、講談社文庫に収録されている。
2013年、幕末から明治を生きた歌人・中島歌子の半生を描いた『恋歌』で第3回本屋が選ぶ時代小説大賞、2014年第150回直木賞を受賞。ほか、2014年『阿蘭陀西鶴』で第31回織田作之助賞、2016年『眩』で第22回中山義秀文学賞、2017年『福袋』で第11回舟橋聖一文学賞、2018年『雲上雲下』で中央公論文芸賞、『悪玉伝』で司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞。
他の著書に『ちゃんちゃら』『すかたん』『先生のお庭番』『ぬけまいる』がある。『眩』は2017年に宮崎あおい主演でドラマ化された。

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