報道協定

  • 新潮社 (2024年6月19日発売)
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本 ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784103400530

作品紹介・あらすじ

「命がけでも、知りたいの?」人生崖っぷち記者が迫る、報道の瀬戸際。東京中央テレビの諸橋孝一郎は、数多の特ダネをモノにしてきた敏腕記者。だが、部下のヤラセを機に、職場で閑職へと追いやられ、家庭内でも居場所を失っていた。そんな最中、IT界の風雲児・簗瀬拓人の息子が誘拐されるという事件が発生する――超リアルな警察資料やネタ元との生々しいやり取りで描く新感覚報道小説!

感想・レビュー・書評

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  • 初瀬礼さん著「報道協定」、初読みの作家さん。1ヶ月ほど前のYahooニュースでフジテレビの現役社員さんが本作品を執筆されたことを知り読んでみようと思い購読。

    今回の作品の面白い所が誘拐事件を報道協定を引かれたメディア側からの目線で描かれている所。犯人目線、被害者目線、警察目線ではなくメディア目線で描かれる事で事件に対して4視点からの展開がなされていた。
    作者がテレビ局の報道、情報番組のプロデューサーだったとの事で内容や物語に組み込まれた背景が凄くリアルに描かれている。

    物語は過去の幼児誘拐殺人事件との関連を匂わせつつ展開されていく。その過去の事件が今回の誘拐事件に深く絡み合い面白い物語展開だった。
    誘拐事件に対して引かれた報道協定なのに警察側の情報隠蔽が絡み、ネットニュース、海外メディア、SNS等が協定外で幾応に無秩序に展開され混沌としていく。
    作者がテーマとしてあげている現在の報道協定の矛盾と未来の報道の理想も読み取れ凄く引き込まれる作品だった。

    しかし決定的な難点があり、自分には作者の文章が凄く読みにくかった。とにかく登場人物が多い作品で、誰が誰と誰の話をしてるのか?何処で誰と?何時どうして何の為に?
    一回で読んで理解できない。理解するまでに頭がフル回転させられる。読みながらストレスを常に感じていた。
    同じ文章を何度も読み直して頭で理解していかないと全く読み進められない。300頁位の作品なのだが読み終えるのに10日位かかったのではないだろうか。
    とにかく書いてあることが集中して理解していかないと終始わからない、不思議な文章だった。スッと頭に入ってくるようなもう少し読みやすい文章だとストレスを感じないで読めただろう。

    物語の視点やテーマは凄く素晴らしかった。唯一文章の読み進めにくさが自分には残念に思えてしまった。

  • 2010年、誘拐事件が発生し、報道機関への協力要請の報告があった直後に人気ブロガーがネットニュースに誘拐の一報をあげる。
    その結果、最悪なことになり…。
    そして、2014年幼児がエレベーターから忽然と姿を消し、誘拐か⁉︎と。
    東京中央テレビの諸橋はかつては数多の特ダネをモノにしてきたが、部下のヤラセを機に閑職に追いやられていた。
    この誘拐事件にどう立ち向かっていくのか…。

    報道の現場を生で見ているような感覚になり、目が離せなかった。
    過去に起きた誘拐事件が関係するとわかってから警察やマスコミがどのような報道をするのか、興味深かった。

    昨今、TVや新聞よりもネットニュースが早いと感じるのだが、その真偽を見極めるのは難しい気がする。



  • 有名ブロガーの書き込みを契機に、ネットニュースが誘拐を報道したことで、報道協定が成立せず、子供は遺体で発見された。
    時がたち、今度はIT企業社長の息子が、自社ビルのエレベーターから姿を消して……。

    報道協定の仕組みと、それにそった各社の動き方。
    そこから外れたネットニュースなどに、どうやって人命尊重の体制を取ってもらうのか。

    やや説明はくどいものの、報道協定の問題を主題にしているのは、珍しかった。

    ふたつの誘拐事件も謎が多くて、最後まで興味を引く。

  • 個人的な感想です
    終盤まで丁寧に書かれ過ぎていて
    少し進みが遅い気がしました

    最後の方に一気に話が進み面白く感じました

  • 報道の在り方を問うミステリー。14年前と同じ手口の誘拐事件が発生する。その時取り交わされた各局の報道協定は1人のブログの記事によってあっと言う間にネットニュースになる。今回は同じ轍を踏まない様奔走する落ち目の記者が主人公。時々雑な文章になったりしたが、読み甲斐あった。

  • 警察(刑事)の側からではなく、
    主にテレビの報道記者の視点から描かれる誘拐事件。
    14年前に発生した誘拐事件とリンクする。
    そこに「報道協定」が絡み、それぞれの行動を制限していく。
    ルールの中でギリギリの取材を敢行する記者たちの攻防や苦悩が
    生々しく描かれる。

    キャラクターにはリアリティがあり、
    後半は展開のテンポが上がる。
    映像化も意識したストーリーのようにも思えた。

    (以下、読んでいないとわかりにくいかもですが)
    「実は○○は□□でした」というのは、
    ちょっと「えっ!?」と思いましたが、
    よく読めば、しっかり伏線も張ってあるし。

    業界の裏話的な世界観も含めて、
    読み応えのある作品でした。

  • 2010年と2024年に発生した誘拐事件にはどんな関係があるのか。前者では警官の初動捜査ミスにより誘拐事件がネット上で公表され、人質が殺され、警官と公表した人物がたたかれた。後者では公表した人物の息子が誘拐された。主人公であるテレビ局の遊軍記者諸橋は、報道協定が敷かれた中、広い人脈を使って真相を追う。

    これまで読んだことのある事件関連の物語ではほとんど警察を中心とした展開だった。今回はテレビ局の記者が主人公で、人質の安全を優先するための「報道協定」の意義や、警察や裏社会との関連、社内家庭内での苦境が赤裸々に描かれる。そんな意味で新鮮味があった。各章では諸橋のほかに、2024年に誘拐された息子の父でIT企業社長の簗瀬、刑事の種田、記者のアンなどが主人公となり、事件の背景を幅広く伝えている。真犯人の追求のほかに、報道協定の制限下で暗躍する人々が詳細に語られる。それぞれが手柄を上げたくて、他社に先駆けてすっぱ抜こうとする。そんな競争意識と、職場での足の引っ張り合い、信じていた者の裏切りはかなりシビアだ。

    諸橋には発達障害の息子がいて、すべてを妻に任せきりにしてきた。そんな負い目と、部下の不始末で降格された屈辱を背負っての起死回生が、ドラマチックである。後半のスピード感あふれる描写には、必ず解決するはず!という自信が漲っていた。2024年の事件の方は発生したのが12月という設定。こんなことが起きなければいいと祈らずにはいられない。

  • Amazonの紹介より
    東京中央テレビの諸橋孝一郎は、数多の特ダネをモノにしてきた敏腕記者。だが、部下のヤラセを機に、職場で閑職へ追いやられ、家庭内でも居場所を失っていた。そんな最中、IT界の風雲児・簗瀬拓人の息子が誘拐されるという事件が発生する――超リアルな警察資料やネタ元との生々しいやり取りで、協定下での誘拐事件の取材を追体験する新感覚報道小説!



    wowowで放送されてる連続ドラマwをみているかのような見ごたえのある構成かつ驚きの展開が面白かったです。
    題名の報道協定ですが、警察が新聞やテレビなどのマスメディアに対して、報道を一切控えるように求めることによって、マスメディア間で結ばれる協定のことと書かれています。

    なぜ報道協定が必要なのか?その理由や必要性、デメリットが小説を通してちりばめられています。

    安易にブロガーが発した誘拐報道をきっかけに殺人事件にまで発展した過去の事件と今回の誘拐事件が、どう繋がっていくのか?そして犯人の正体と目的が読みどころとなっています。

    あれやこれやでネタを探そうとする記者達の熱意や攻防戦が緊迫感があって面白かったです。
    作者がテレビ局勤務ということもあり、より濃く報道現場が垣間見れます。
    事件を中心に、様々な登場人物の視点で展開していくのですが、それぞれの事件に対する思いや後悔が描かれています。

    ミステリーとしての面白さもありますが、報道することの意味や意義についても考えさせられました。
    そもそも、何のために報道しているのか?情報を発信しているのか?

    もちろん、たくさんの人に情報を伝えることですが、深掘りすると、発信する側としては、果たしてどう思っているのか?読んでいくうちに色んな考えが思い浮かんできました。
    お金のためなのか?自分自身の名誉のためなのか?それとも恨みなのか?

    小説では、安易な発信が様々な悲劇を生んでいます。だからこそ、色んなルールがあり、意味があるんだと実感しました。報道協定というルールの中で、どう記者は動いているのか?そしてルールの盲点も勉強になりました。報道によって、人生を狂わされた人達に胸が痛くなる気持ちでした。発信する側の責任感やファクトチェックなど一つ一つの重要性が問われるなと思いました。


    ミステリーとして着目すると、次々と過去と現在の共通点が繋がれていく展開は面白かったですし、犯人の正体も意外性があって良かったです。
    中盤あたりでは、みんなこの人が犯人だろうと予想がつくはずが、後半ではどんでん返しといった事実が次々と登場するので、飽きさせませんでした。

    記者として、はたまた情報を発信する一般人として、発信することの重要性を学ばされました。

  • 主人公が記者であれ社員であれ、事件が起きれば物語の主題は捜査であり犯人探しになる。真相は単純なものだったがそこに至るプロセスに読み応えがあったので、楽しめた。


  • 幼い子どもを狙った誘拐事件が発生し、
    犯人逮捕と事件解決に全力を尽くす警察組織と
    情報を届けることに心血を注ぐ報道関係者たちの
    熱い物語。

    人命救助を最優先に考えて敷かれる報道協定。

    外部から見えない裏側で交わされる約束事や
    立ち位置の違う者同士の苛烈な騙し合いと
    身を削るような心理戦略。

    話が進むにつれて次第に加速していく
    物語の経過がアップテンポでとても爽快。

    細かな説明があってリアリティ十分な反面、
    しっかり読み込んで細部についていかないと
    話が繋がらず迷子になりそうになるので
    頭はフル回転が必要でした。

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