苺畑よ永遠に

  • 新潮社
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本棚登録 : 12
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本
  • / ISBN・EAN: 9784103452058

感想・レビュー・書評

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  • とてもお気に入りの本。
    私にとっても、短かったけど、北海道で過ごした忘れられない日々を思い出させてくれる。
    同じく東京から北海道に憧れ、同じH大(主人公の恋人と同じ専攻)で過ごしたものとして、重なる部分が多く、自然と風景や思い出が蘇る。

    今回2回目の読了。

    前回読んだ時より私自身のH大での記憶は薄れてきてしまったけど、その分サチ自身に入り込んでより深く追体験をすることができた気がする。

    植物園でのアルバイト、大雪山のお花畑とナキウサギ、Kとのシレトコ旅行、ヌプリ会での山行の数々、冬のニペソツ、ハマナスの砂丘…
    これらは私が経験したことではないのに、まざまざと情景が目に浮かんで、北海道の厳しさと美しさを思い出す。

    物語のラストでサチが自分の将来と恋人のKとの間に下した決断は、最初は悲しく、理解ができなかったけど、今回は共鳴することができた。

    半年間心を捧げた〝私の苺畑”での実験が失敗に終わったとき、結果が「有意」でないのなら、この半年間も「有意」でないのだー
    という想いから、レポートの膨大な余白に隠れている《物語》に気づくまで。





    サチ(加藤幸子さん)は本当に自分と真摯に向き合って、心の機微を描き出すのが上手い。

    私も自分自身の《物語》を描けるだろうか。

    いつかまた北海道に戻りたい。




  • 北大が舞台と知り手にとってから何度読んだかな。ひさびさの再読。結局異国にわたったKのもとへいかない理由は、抽象的すぎてわからない。最初は山に、次に苺畑に、自分の新生をかけて果たせなかった佐智。同じく演劇の脚本に、演劇論執筆に賭けていた都筑が新生を果たせなかったのに呼応するように。佐智に反して、Kの物語になるよりは現実のKに飛び込む方がよっぽど、と思うのは読み手のあさはかさか。◆つまり自然が創造したものを、人間は模倣するってこと。p.223◆北国に来て四年目の苺畑で、佐智は自分のために物語を書いたのだ。名前もわからない誰かさんのために、石を積んだわけではなかったのだ。p.265◆

  • 1994年読了 (記録あり)

  • <あらすじ>
     周囲の反対を押しきって佐智は東京からサッポロの大学へやってきた。授業は思ったより退屈だし、数少ない女子学生として孤立したりもするが、初めての下宿住まいや北海道の自然には思いもよらない発見がいっぱいある。佐智は新しい自分を模索し始める。

    <ひとことコメント>
    『夢の壁』、『時の筏』に続き、大学生になった藤本佐智が描かれています。

  • 20080815

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著者プロフィール

1936年札幌生まれ。41年両親とともに北京に渡り、47年引揚船に乗り帰国。北海道大学農学部卒業。農林省農業技術研究所に勤める傍ら、「三田文学」に作品を発表。72~89年自然観察会代表。82年「野餓鬼のいた村」で第14回新潮新人賞、83年「夢の壁」で第88回芥川賞、91年『尾崎翠の感覚世界』で芸術選奨文部大臣賞、2002年『長江』で毎日芸術賞を受賞。08年から財団法人北海道文学館顧問。日本野鳥の会会員。

「2015年 『尾崎翠の感覚世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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