〈島〉に戦争が来た

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 22
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103452096

作品紹介・あらすじ

太平洋戦争末期、にわかに防衛の拠点として注目され、島中にトンネルが掘られることになった、太平洋上の小さな島。強制的に連れてこられた朝鮮人の少年インスは、厳しい労働に従事しつつ脱出する機会を窮っていた。ある日、インスは島の少女キヨと出会う-。運命に翻弄されながらも結びついていこうとする少年と少女を中心に、小さな島の大きな時間を鮮やかに映し出す長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 2011/9月
    加藤さんの文章にしっくり入れた。久々に世界にはまり込んだ小説。やっぱり戦争って、何かルーツを感じる。激戦も静戦もまだまだ色んな「戦争」があるんだろう。 加藤さん作品もっと読んでみたいと感じさせられました。

  • 主役は「戦争」という事実なのかな、と思った。
    地球をも含めた長い長い歴史の中の、「戦争」という一現象。

    一つの島に「戦争」がやって来た。
    戦争という非日常が引き裂く日常、歪められる人間性などが、どこか俯瞰して感じられる著者の筆が淡々と描く。
    淡々というのはもしかしたら妥当な言葉ではないのかもしれないが。

    一人一人の人物がこれからどうなるのだろう?と思わされた前半のほうが面白かった。
    後半は、前半ともっと絡んでくれたら、人間のささやかな一生の重みと妙のようなものを感じられてさらに面白く読めたかも。

    そうですか、そうなのですね二人の約束は……;;

  • <あらすじ>
     第一章「歴史」。島が生まれ、鳥たちがやってきて、人が住みつく。
     第二章「戦争が来た」。島の少女キヨと強制労働で半島から連れてこられたインスが出会う。やがて島に軍隊がやってきて、防衛のためのトンネルが掘られ始める。侵食される島の生活、近づく敵軍。インスは島からの脱出を狙うが、まだ好機に恵まれない。そして島の住人たちは本土への疎開を強制される。
     第三章「<島>へ」。終戦から64年。もうすぐ40代の有希は“光るキノコ”を撮影しに島へやってきた。島の獣医の照彦にガイドを頼み、彼の祖母・きぃばあちゃんが営む民宿に泊まる。飛行場で、海岸で、有希が感じる何かは戦争の記憶につながっていく。有希は“撮られたがっている”ものに導かれるようにシャッターを押し、トンネルの中へも進んでいく。

    <ひとことコメント>
     祖母世代の話から孫世代の話へ。『家のロマンス』と同じような構成ですが、どちらかというと『夕凪の街桜の国』(こうの史代)のような印象を受けました。さすが加藤幸子さん、鳥がたくさん出てきます。読んでよかった。加藤幸子さん大好きです。

  • 知人から借りる。

    私の住んでいる島(八丈島)を
    モデルにした小説ということで
    ぜひ読みたいと思っていた。

    長野に疎開していたという
    義父の話を思い出しつつ、
    興味深く読んだ。

  • この小説は、太平洋戦争に巻き込まれた「<島>=八丈島」の物語だ。三章建ての構成なのだが、第一章は<島>の創世記を語るまるで叙事詩のようなもの。そして第二章はこの小説の本題で、<島>の若い娘・キヨと朝鮮半島から徴用され強制労働をさせられている若者・インスの秘められた恋を描く。第三章は戦後64年を経た<島>を、何者かに導かれるように取材する女性カメラマンの視点で描かれる。島固有の黒鳩が黒子役を演じていて印象的だ。これまであまり注目されて来なかった(隠されていた?)八丈島=<島>での戦争が、この物語でクローズアップされ、人々の記憶に残ることがこの小説の大きな目的なのだろう。なかなか感銘を受ける物語で、これは実に巧みな著者の構成によるものかもしれない。

  • 八丈島に行ってみたいと思った。小説の尺もあってか少し消化不良気味かもしれない。もっとじっくり書かれていてもよかった。第三章が一番おもしろかった。

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著者プロフィール

1936年札幌生まれ。41年両親とともに北京に渡り、47年引揚船に乗り帰国。北海道大学農学部卒業。農林省農業技術研究所に勤める傍ら、「三田文学」に作品を発表。72~89年自然観察会代表。82年「野餓鬼のいた村」で第14回新潮新人賞、83年「夢の壁」で第88回芥川賞、91年『尾崎翠の感覚世界』で芸術選奨文部大臣賞、2002年『長江』で毎日芸術賞を受賞。08年から財団法人北海道文学館顧問。日本野鳥の会会員。

「2015年 『尾崎翠の感覚世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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