許されようとは思いません

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103500810

感想・レビュー・書評

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  • 「世にも奇妙な物語」好きな人にかなりお勧めしたい。伏線回収型のミステリーではなく、人の認知能力を試すようなミステリー。表題作と「姉のように」がぞわりと、冷ややかに背中を撫でる。

  • ずっと気になっていた芦沢央先生の作品、図書館で借りることができました。

    人間の心の薄暗い部分が描かれた短編集。
    足元がぐらつくような不安感と、その先にある結末の面白さが私好みでした。帯にはミステリと書かれていましたが、どちらかというと怪談的な怖さに近いものも感じました。

    特に「目撃者はいなかった」という短編は、仕事であるミスをしてしまった男が奔走するお話なのですが、仕事に不安を感じている今の私にとっては二重でくるものがあって心臓をねじ切られそうな感覚になりながら読んだ印象深い一作。
    こういうミスって仕事をしてると割とあるあるだし、その後の行動も(そこに至るまでの気持ちも)分かっちゃうよなぁ…という、もしかしたら、一歩間違えれば私もそっち側になってしまうかもしれないという紙一重な感じもまた怖かったです…。


    <内容あらすじ>
    「許されようとは思いません」
    祖母の納骨を行うため、恋人の水絵と共に檜垣村(ひがきむら)を訪れた諒一。
    交際期間も長く結婚を意識し始める二人ですが、諒一には結婚に踏み切れないある理由がありました。

    「目撃者はいなかった」
    常に営業成績最下位という、うだつの上がらない営業マンの修哉。ある時、前月の営業成績が良いことで″これで一人前だ″と先輩に褒められ嬉しく思う修哉ですが、すぐにそれが単純なミスによるものだと気づきます。
    周りから失望されることを恐れた彼は、そのミスを隠蔽することを選びますが…。

    「ありがとう、ばあば」
    雪がふりしきる中、ホテルのバルコニーに薄着で締め出された″わたし″。
    なんとわたしを締め出したのは、孫である杏でした。
    ずっとかわいがってきたのに、杏のことだけを考えてきたのに何故…杏と過ごしてきた日々を振り返り、必死で考えます。

    「姉のように」
    優しくて、何でもできて、いつも笑っていた大好きな自慢の姉。そんな姉が起こした事件のせいで、夫ともママ友とも上手く付き合えなくなってしまった女性のお話です。

    「絵の中の男」
    浅宮二月(あさのみやにがつ)という画家の作品を鑑定している女性。
    ある日彼女の元に持ち込まれた作品は、浅宮二月の作品ではありませんでしたが、彼女はその絵を見てあることに気がつきます。そして、自分がかつて浅宮二月の元で家政婦として働いていた過去を語り始めます。

  • ’21年3月26日、読了。芦沢央さん、初の体験。

    気に入らない話もありましたが…凄かった!ちょっと、キツい。この人の他の作品を、と、思えない程。でも、他の作品も、読むんだろうなぁ…

    2016年発行の、単行本で読みましたが、文庫とは収録順が違うようで…こちらは表題作が最初に収録されてました。本来は、この収録順?で、後の文庫化で、最後に表題作を、となったのでしょうね。どのような、誰の意図で、文庫版はそうなったのか…興味深いですが、僕にはこちらの方が、キツく感じられ、「キツい話」を書く作家さんの意図を、より反映しているのかな、と思えました。最後収録の「絵の中の男」が、壮絶な話に感じたこともあって、創作の「意思」みたいなのが、こちらの収録順の方がダイレクトに感じられる、と思いました。

    どれも関心しましたが…「姉のように」のミスリードが、ドンピシャ!「絵の中の男」の罪と、罰の壮絶な様、表題作の、最後に小さな灯をともしたようなラストも、好きです。「ありがとう、ばあば」だけが、イマイチだったかな…。

  • いわゆるイヤミス短編集。あまり普段読まないタイプの本なのだけれどこれは表紙絵がとても気に入って(エイミー・ベンダーの文庫本カバーなどと同じ人ですね)。それぞれ人間のいや~な部分の描写がリアルで、オチでアッとなり面白く読みました。

    表題作は、田舎の村で村八分にあっていた祖母が曾祖父(祖母にとっては舅)を殺害した事件について孫とその恋人が真相に辿りつく話で、収録作の中では唯一終わり方が優しい(温いと言う人もいるかもしれない)のだけど、田舎の因習、境界の神様などのおどろおどろしさが好みだった。

    「絵の中の男」は、現代版「地獄変」かつ家政婦は見た!の赴き。子供の純粋さが悲劇をもたらす「ありがとう、ばあば」は、喪中ハガキのくだりでオチがわかっちゃったのだけど、そこにいたる過程の描き方、ばあばのエゴイスティックなキャラ作りなどがお見事。

    ※収録
    目撃者はいなかった/ありがとう、ばあば/絵の中の男/姉のように/許されようとは思いません

  • 圧巻の短編集。タイトルの秀逸さ。

    どれも胃が痛くなるような状況で読者をキリキリさせ、悪意というよりは限りなく悲しく切ない思いから犯罪が産まれる……

    表題作は最後に少し救われた気がする。彼女を大切に。
    「姉のように」アアアアアヤラレタアアアアアア
    「絵の中の男」一番インパクトが少なかったけれど、モチーフは断トツで好き。

    芦沢先生面白い……!

  • 厭~な読後感の物語で好みでした。イヤミス…の分類になるのかな?そう来たか!っていうようなオチがあって、面白かったです。
    お気に入りは「目撃者はいなかった」仕事のミスを隠ぺいするために奔走するサラリーマンがどんどん自分の首を絞めていくのに胃がキリキリした。そしてそれが思わぬ事件に繋がっていき…最後のオチにぞっと来た。
    「姉のように」すっかり騙されてた。これはうまい。
    他の作品も読んでみたい。

  • 題名から、もっと怖いかと思ったが、サクッと読める短編集だった。

  • ・殺人者である祖母の納骨に行くカップル
    ・仕事のミスを隠そうとして偶然事故を目撃した青年
    ・孫への指導熱心な祖母と子役になった孫
    ・犯罪者の姉を持つ女性と思うようにいかない育児
    ・ある絵の作者にまつわる不気味な噂

    どの話も直接的であれ間接的であれ人間の死が扱われており、陰惨な雰囲気が漂っている。「姉のように」は特にミステリとしての完成度も高く、今回も叙述トリックにまんまと騙されてしまった。全体を通して、事件の真相を登場人物とともに紐解いていくような没入感がありページを捲る手が止まらなくなっていた。

  • 2016/12/20

    人を殺すには、理由がある。
    罪を犯さずにいられなかった人たちの短編集。
    「許されようとは思いません」
    「ありがとう、ばあば」
    が面白かった。
    「姉のように」
    は明日は我が身と感じてしまい、怖かった。

  • 芦沢央さんの作品は2作目です。
    個人的に刺さったのは、目撃者はいなかったです。
    営業時代、、、ほんとこんなこと起きたら死にそうです。
    ミスに気付いた時点で、即報告です。が、上司怖すぎて隠蔽できないか。。と思ったことは何度かあります。間違うとこんな展開に。。
    あの時、あーしてればよかった。。なんて言葉がありますけど、100%自分が悪い時、ほんと一瞬で真っ暗になっちゃいます。
    これを教訓にいつも通り真面目に働きます。

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著者プロフィール

1984年東京都生まれ。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で、第3回「野性時代フロンティア文学賞」を受賞し、デビュー。16年刊行の『許されようとは思いません』が、「吉川英治文学新人賞」候補作に選出。18年『火のないところに煙は』で、「静岡書店大賞」を受賞、第16回「本屋大賞」にノミネートされる。20年刊行の『汚れた手をそこで拭かない』が、第164回「直木賞」、第42回「吉川英治文学新人賞」候補に選出された。その他著書に、『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『貘の耳たぶ』『僕の神さま』等がある。

芦沢央の作品

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