最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常

著者 :
  • 新潮社
3.80
  • (143)
  • (233)
  • (185)
  • (27)
  • (8)
本棚登録 : 1880
レビュー : 279
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103502913

作品紹介・あらすじ

入試倍率は東大の3倍! 卒業後は行方不明多数!! 「芸術界の東大」の型破りな日常。才能勝負の難関入試を突破した天才たちは、やはり只者ではなかった。口笛で合格した世界チャンプがいるかと思えば、ブラジャーを仮面に、ハートのニップレス姿で究極の美を追究する者あり。お隣の上野動物園からペンギンを釣り上げたという伝説の猛者は実在するのか? 「芸術家の卵」たちの楽園に潜入した前人未到の探検記。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 読んでみて初めて東京藝術大学の面白さというか凄さがわかりました。
    東京藝大ってこんなところだったんだー!

    「普通の」学問や技術を身につける大学とは趣が随分と異なっていて、「芸術」を身につける大学ってやはり一味も違う「天才」たちの集団なんですね!(笑)
    しかも少数精鋭で、「大学」というよりも徒弟制度の集団がいくつも集まって構成されている組織みたいな感じになっていて、「芸術」とは古来より現代に至るまで少数相伝で担われてきたということがよくわかりました。
    文中に「東京藝大は芸術界の「東大」なのではなく、東大が学問界の「東京藝大」なのだ」という話がありましたが、古来の「芸」という観点からするとむしろこういう話もなるほどなあと。(笑)
    日本の「芸術」ってこういう人たちに担われていたんですね。学長が絶叫するのもよくわかります!(笑)
    とりあえず、大学祭には物凄く行ってみたい気になりましたよ。

    さて、本書の構成は、藝大生である著者の妻の行動が奇異であることに興味を持ち、藝大生に対して次々とインタビューをして得た奇天烈な思考や言動を載せるという形式でしたが、最初は面白いと思いながら読んではいたものの、結局、最後までこのスタイルのままだったので途中からこのスタイル自体に飽きがきてしまって、単調さが際立つ結果となってしまったのは残念この上ないです。
    素材が変わっていただけに、いっそさらに発展させて小説にしてしまった方が面白かったかもしれない。

    個人的な感じとしては、音大よりも美大の方に変人が揃っているのではないかな?(失礼!)

  • 世界最高水準・日本最高峰の芸術専門大学である「東京藝術大学」に通う学生たちとの対談をまとめたもの。

    普段はなかなか知りえない藝大の内側を垣間見ることができて素直に面白かったです。自由な校風と恵まれた環境、限られた時間とお金を存分に駆使して、全力で何かを表現しようとする学生たちの姿がそこにありました。本書では確かにななめ上の行動も多々紹介されているのですが、それぞれ自己実現に向かって真摯に取り組む真面目な人が多い、という印象です。

    奇人変人当たり前、非凡な学生たちをドーンと懐で抱える藝大。支えはするが後押しするわけでもなく、全力で向かってくる者を全力で受け入れ、指導するというよりは背中で魅せる鬼才溢れる教授たち。そして音校と美校、個々で並外れた技量を持ちながら互いに個性を認め合う学生たち。
    ゆるく正しく構成されたこの世界から秀でた才能が生まれ、それを今後も各分野で遺憾なく放出してくれると思うと、なんとなく日本の芸術分野は安泰だなと思ってしまうのです。

    来年は学祭にお邪魔してみようかな。半分は純粋な魅力と、半分は怖いもの見たさで。

  • 東京藝大生の妻をもつ著者が、妻を通して知った、上野公園の森の向こうの不思議の国・東京藝大に入国し、そこの学生たちにインタビューをする。いや、ほんとうに国境をまたいだくらいの非日常空間なんですよ、藝大。

    インタビュー集としては、あまり出来はよくないように思う。
    藝大生たちの天才・狂人ぶりを強調するために、そして、なるべく全学部全学科バランスよく描写するために、著者の影はずいぶん薄くなってしまっていて、物足りない。インタビュアーがすぐに「すごい」って言ったらもったいないよ~。話終わっちゃうじゃんね。もっと深い話を聞いてみたいひとが何人か。
    文章を追いながら映像を頭の中に浮かべるんだけれど、ホームビデオで撮られたような映像になってしまう……。ほら、あれあれ、「おしゃれイズム」でお家に潜入するやつあるでしょう、あんな感じ。
    それでもこの本が面白いのは登場する藝大生たちのパワーですね。

    著者とともに藝大のキャンパスをうろうろしながら、アートって何だろう、と考えてしまう。
    「私、初めてカラーコーンをちゃんと見た瞬間、があったんです。工事現場とかにある、赤いカラーコーンです。何だろう、あの赤い三角形のもの、みたいな。その色とか、くたびれ具合とかが、びっくりするくらい素敵に思えて。あれ、私は今までカラーコーンの何を見ていたんだろう、って。そういうものを見つけて、共感してもらうために作品を作るっていうか……? む、難しいですねー!」
    これは、先端芸術表現科のある女の子のアート観。
    ぼくはけっこうここに真実がある気がしたりする。
    「感動」を自分の手、自分の身体で再現したい、他人に伝えたいとシンプルに思い続けられるかどうか。それができる自分を信じ続けられるかどうか。
    東京藝大という難関校に、超絶狭い門をくぐり抜けて入ったひとたちの言葉から、この思いの強さをぼくは感じ取りました。ここが実は、彼らの一番「ふつうじゃない」ところでは。どうでしょう。

    夢をあきらめそうなときに読むといいかもしれない。踏ん張ってみる気にも、逆にすっぱりあきらめる気にも、なれそう。

  • 藝大生の妻をもつ著者の東京藝大潜入レポート。
    ネタ本かと思っていたら、取材やインタビューに基づき、藝大生のリアルな姿を教えてくれる1冊でした。

    多彩な専攻があることにびっくり。
    作曲、音響心理、アートマネジメント、舞台芸術…など何でもありの音楽環境創造科。
    言葉で音楽を表現するための知識を身につける楽理科。
    「芸術大学」という言葉から想像していた以上に、さまざまなジャンルを学ぶことができる場であることを知りました。

    印象的だったのはインタビューに答えている学生さんたち。
    目標に向けて邁進する人もいれば、将来に対して悩みを抱えている人もいる。
    ものづくりや音楽の才能がある人は特別だ、と思いがちだからこそ、本書に描かれていた「普通の若者」の一面に親しみを感じました。

  • 予約本。ふざけてやるのではなく本気。常にピュア。真剣でマジメなところに驚いた。みな学長みたいに「愛だ!芸術は爆発だ!」的なものを思っていたけど、離れたくても離れられないとか、芸術の方から選ばれたり、呼ばれる何かがあるのかもしれない…そう感じた。ブラジャー・ウーマンが苦しそうで切なかった。才能があるというのも大変なんだな。

    自由、才能があふれて天才、神みたいな天才が多いんだろうなぁ…と勝手に思っていたけど、才能とやるべきこと、向かう方向性などと常に押し合いへし合いしていて重圧に苦しくなったりするんだなぁ…と。著者の奥さまが個性的で、妙に落ち着いていて素敵でした。あと学園祭楽しそう!読んでいてちょっと自由の風を感じた。

    常にピュア。真剣でマジメなところに驚いた。もっと「芸術は爆発だ!」的なものを思っていたけど、離れたくても離れられないとか、芸術の方から選ばれたり、呼ばれる何かがあるのかもしれない。そう感じた。ブラジャー・ウーマンが苦しそうで切なかった。才能があるというのも大変なんだな。

    自由、才能があふれて天才、神みたいな天才が多いんだろうなぁ…と勝手に思っていたけど、才能とやるべきこと、向かう方向性などと常に押し合いへし合いしていて重圧に苦しくなったりするんだなぁ…と、やっぱり人なんだなぁ…とそう感じた。
    美・アート・芸術とか似たようなものだと思っていて、だけど求められているものが違うんだな…とぼんやりと感じた

  • あの東京藝大のルポなのだからして、もう興味津々。確かに「秘境」と言ってもさほど大げさではない気がするほど、実態が見えない大学だ。いったいどんな天才奇才たちが生息しているのか?

    さぞかし変わった人がいるのだろうという予想は、半分当たりで半分外れ。確かに、いやもう天才と呼ぶしかないよねという優れた才能の持ち主や(「口笛で藝大に入った」人がいる)、ちょっと他ではお目にかかれないファッションで構内を闊歩する人とか(この女性が一番のインパクトだった)、すごいわ~としか言いようのない方々が次々出てくるのだが、トータルな印象としては、多くの学生が真面目で真摯で、「普通の」若者なのだと感じた。

    一般人から見れば抜きんでた才能を持つ藝大生も、その道のプロとして生きていくのはとても難しい。それでも一生懸命制作や練習に打ち込む姿に心を打たれ、「珍物件」拝見、という最初の気持ちは、読み進むにつれてすっかりなくなった。若者がひたむきに何かに取り組んでいる姿って、本当にいいものだとしみじみ思う。

    音楽・美術それぞれに、思っていたよりもたくさんの学科や専攻があることにも驚いた。ピアノや油画のようなメジャーなものと並んで、古楽や三味線を学ぶ学生や、「先端芸術」という、何それ?という学科も登場する。なかなか内側を窺い知れない大学だけに、非常に興味深かった。



    ・これは是非見たい!と思ったのが、学園祭である「藝祭」。1年生による神輿パレードは、ニュース映像でちょっと見たことがあるが、やはり実物を拝まねば。

    ・東京藝大の入試はすさまじい倍率だが、国立なのだからしてセンター試験も受けねばならない。以前から成績も良くないと合格しないのだと思っていて、そこがまた藝大の値打ちをいや増すものだと有り難がっていたが、実技がずば抜けていたらそれで通ると書いてある。え~、そうだったの。

    ・友人知人で東京藝大出身者は一人だけ。楽理科卒の彼女の結婚披露宴で、声楽科卒の友人が歌声を披露してくれた。曲は「イッヒ・リーベ・ディッヒ」。みんな、もううっとり。次に指名された新郎側の友人が「新婦が藝大の人だとは知らなくて…僕も歌を歌うんですけど…スミマセン」と恐縮していた。彼が何を歌ったかは忘れた。

  • 高校一年の娘が、芸術コースを選択したいと言ってきたので、どうも売れてるそうでもあるこの本を手に取った。それまでは、藝大が音楽コースと美術コースの両方あることも初めて知った程度の知識。いまだにどこにあるのかわかってないけれど。

    藝大生(彫刻専攻)を妻に持つ小説家が、妻の伝手もあって藝大生へのインタビューを行ってその内容をまとめたもの。表紙や煽りからもっとはっちゃけているのかと思ったけれども、インタビューを受けてくれるような学生はまだまともな人たちなのか、飛んでいる知り合いの話は出てくるけれど、本人はいたって真面目な人が多い。もちろん、専攻する分野に関して究めるためにはある種の真面目さが必須の要件なのだろう。

    これだけ切望する人がいるところで短時間の受験で合否を決めるのは大変というか何か問題ありそう。それでも口笛で入学したという人もいたりするのは、フレキシブルな入試制度が必要だということなのかも。

    娘は藝大志望ということではなさそうだけれど、希望しているいわゆる美大も面白いのかもしれない。現実的にはこの本にも出てきたデザイン科であれば、仕事には困らなそうだし。そもそも娘が何をしたいのかわかってないんだが、何より楽しそうだ。最後に書かれた音校と美校が交わって協力して何かをクリエートしていく状況は、大学の意義というか、やはり素敵であると思った。

  • 話題の本。
    一般的な大学生活とは懸け離れた東京藝大の学生たちの日常に迫るノンフィクション。
    タイトルはキャッチーだが、取材者である著者の真摯さに支えられた好著である。

    東京藝大は芸術系の大学の最高峰といってよいだろう。
    数多くのアーティストを輩出してきた殿堂。
    しかしその内情は、外部の者には窺い知れない。

    著者の妻は彫刻科に通う藝大生であり、著者はホラー小説やエンタメ小説を書く作家である。
    奥さんとの日常は不思議に満ちている。テーブルを自作したり、自分の体で型を取ったり、家に「生協で買った」というガスマスクが置いてあったり。奥さんネタだけで1冊本が書けそうなくらいだが、その奥さんの伝手で、著者が藝大のあちこちを見学し、何人もの人にインタビューしてまとめたのが本作である。

    まず、藝大には音楽を専攻する音校と美術を専攻する美校があり、各々のカラーがかなり異なるという観察がおもしろい。ざっくりいうと、音校は洗練されてスマートかつ勤勉、美校は型破りで何でもありな破天荒タイプが多い。

    藝大は難関というが、具体的にどう難しいのか。センター試験で高得点が必要だというわけではない。建築系やデザイン系など、センター試験である程度の点数を取る必要がある学科もあるが、センター試験が散々でも、実技試験が好成績であれば入れてしまう学科が多い。だがその実技試験が桁外れである。「人を描きなさい(時間:二日間)」「自分の仮面をつくりなさい」「自己表現しなさい」といった難問が出される。もちろん、「模範解答」などない。採点者の教授をいかに唸らせるか、表現者としての力量が問われるわけである。

    狭き門をくぐって入ってくる学生たちはそれぞれユニークである。
    口笛を楽器としてクラシックに根付かせたいと思う者。グラフィティアートに没頭した後、ホストクラブで働き、結局日本画がやりたいと藝大を目指した者。絡繰り人形を作りつつ、漆を学ぶ者。
    理論派。感性派。情熱家。天才肌。
    カラーもそれぞれだが、彼らに共通するのは、「自分にとっての芸術」を突き詰めようとする姿勢だ。

    破天荒に見えても、楽天的に見えても、その戦いは厳しい。おいそれと自分のやりたいこと、すべきことが見つかるはずもない。
    奮闘し、あがき、空回りし、中には自分を見失うものもいる。
    厳しい戦いを勝ち抜いて入学したはずの藝大生だが、卒業生の半数程度が「行方不明」という。フリーターになる者。旅に出る者。バイトをしながら目が出るのを待つ者。失踪する者。
    多くの者の「敗北」が積み重ねられ、数年に一度、「天才」と目される者が出る。累々たる屍の上に、時折、栄光が煌めく。

    藝大のあちこちに目を見張り、多くの藝大生の声を聞く著者のまなざしは、一貫して素朴な驚きに満ちている。揶揄する姿勢がないのが好感を持って読めるところだ。
    それは、著者自身が、フィールドは違えど、やはり表現者であることによるところが大きいかもしれない。
    そのまなざしは、「人にとって芸術とは何か」という、深い問いを孕む。

    終盤近くに触れられる、学園祭「藝祭」の様子が圧巻だ。まさに爆発。これぞ混沌。
    尖り過ぎて自分にはまったく理解不能ではないかと危惧しつつ、若き才能の片鱗に触れに、いつか覗きに行ってみたいような気もしている。

  • 凄過ぎる、凡人の私には何度も読み直さないとうまく受け入れられない。
    とにかく藝大に行ってる方々は自分が何をしたいのか、早いうちから出来上がってて、もちろん行きながら模索してる人もいるだろうけど、脳の使い方が違ってる気がする。
    天才たちの集まり。そんな藝祭に行ってみたいものだ。

  • おもしろかった~!

    「ゲーダイ」東京藝術大学は
    芸術に生きることに憧れているのに
    才能が足りなくて
    こうしてぼーっと生きてきた私にとって
    永遠の憧れなのである。

    駆られるように
    「創る」ことで表現し続けている人には
    天?から何か使命が与えられているのだ。
    だがその道は長く厳しい。
    使命という重荷に負けないように
    道を歩き続けていってほしいと思う。

    藝大の音校の楽理を出た高校の同級生がいるが
    今でも「音」と環境・教育の関わりを
    実践を持って追求し続けている。
    さすがである。

    藝祭は今年も生き損ねたが、来年はぜひ行きたい。

    前学長が藝祭で
    「ニッポンの文化芸術を背負うのは
     お前らじゃああああ!」
    と叫んだように、藝大生のみなさんには
    ぜひニッポンの創造力を担っていってほしい。

全279件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

二宮敦人(にのみや あつと)
1985年、東京都生まれの小説家、ホラー作家、推理作家。一橋大学経済学部卒業。携帯小説サイト「魔法のiらんど」「E★エブリスタ」でホラー小説を発表し、2009年に『!(ビックリマーク)』でデビュー。妻が東京藝術大学彫刻科の学生だったことから、多数の藝大生に取材しノンフィクション『最後の秘境 東京藝大』を執筆、ベストセラーとなる。
著書に『郵便配達人 花木瞳子が盗み見る』『一番線に謎が到着します』など多数。

最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常のその他の作品

二宮敦人の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常を本棚に登録しているひと

ツイートする