【第156回 芥川賞受賞作】しんせかい

著者 :
  • 新潮社
2.57
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本棚登録 : 713
レビュー : 120
  • Amazon.co.jp ・本 (163ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103503613

作品紹介・あらすじ

十代の終わり、遠く見知らぬ土地での、痛切でかけがえのない経験――。19歳の山下スミトは演劇塾で学ぶため、船に乗って北を目指す。辿り着いたその先は【谷】と呼ばれ、俳優や脚本家を目指す若者たちが自給自足の共同生活を営んでいた。苛酷な肉体労働、【先生】との軋轢、そして地元の女性と同期との間で揺れ動く思い。気鋭作家が自らの原点と初めて向き合い、記憶の痛みに貫かれながら綴った渾身作!

感想・レビュー・書評

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  • 富良野塾ってどういうものなのか、意識の中にちょっとはあって、それが題材という事で私は読みやすかったです。

    文章の流れが私にはなぜか心地良かったし。

    試験を受けに行く前日の話も変わってて面白かった。

  • 倉本聰主宰の富良野塾の2期生である山下澄人が、塾での生活や入塾前の自身を描いた自伝的小説。スミトの定まらぬ思考や思考なき行動が描かれ、20歳前後の青年の精神的幼さや危うさが表現されている。しかし、読み手の興味関心によるが、少なくとも読みやすい小説ではない。単語や擬音レベルの非常に短いセンテンスの連続で説明不足感が続くかと思えば、接続助詞でつないだ長文で混濁した思考状況を表現したり、なかなか理解しにくい。芝居の台本の余白を詰めたような小説だ。そう考えてアングラ芝居の脚本のつもりで読めばいいかもしれない。

  • 山下澄人の本はすでに何冊か読んだけれど、これがいちばん「ふつう」で読み易かった。ある程度作者の経歴を知っていればこれが実体験であり、【先生】は倉本聰のこと、【谷】は富良野塾のことだとわかるからでもあるけれど、単純に語り手が一貫していて時間が一定方向に流れているだけで十分読み易かった。つまり今まで読んだ他の山下澄人作品ではそうではなかったということ。

    じゃあ読み易いから好きかというと、逆になんだか物足りなかった。なんだふつうの話じゃん、という。たまたま新聞記事で二期生募集の広告を見て漠然と「高倉健になりたい」「ブルースリーになりたい」と思った19才の青年が応募したら受かってしまい北海道で農業やらの過酷な手伝いをしながら【先生】の授業を受け、大勢の仲間たちとちょっと仲良くなったりモメたりしつつ、なんかちょっと成長したようなしないような、わりとストレートなお話で。

    文学としてどうかということより、富良野塾って結構ブラックだな~(失敬)みたいな感想しか出てこなかった。もちろんこれはフィクションなのだけど、これじゃ農業しにきたのか演劇の勉強しにきたのかわからないしこんなに過酷な目にあっても卒業生けっこういるけどそんなに成功者出てないじゃんとか(こら)受賞するなら作品としては「ギッちょん」のほうが良かった気がする。文壇的にも話題性的にも倉本【先生】の名前が重要なのだろうけど。

    ※収録
    しんせかい/率直に言って覚えていないのだ、あの晩、実際に自殺をしたのかどうか

  • 徐々に主人公が【先生】に感化されていく過程が表現されていた。
    特にラストシーンは、【先生】の描くドラマを見ているような錯覚を覚えた。

  • 面白くないという人も多いけど、個人的には嫌いではない。
    しかし、脚本ならいくら言葉が少なくてもセットや音響や照明や役者の演技で物語を深めることができるけど、これは。純文学は書かれていないところを読み取るのが重要だとわかってはいるけど、もうちょっと書き込んでもいいんじゃないかと思わずにはいられない。
    これに比べれば『火花』なんか、同じ実体験ものではあるがかなりちゃんと書いてあったなあと思う。
    かなりあちこち端折って書いてあるけど、当時の倉本聡のドラマの人気は相当なもので、ものすごい倍率を勝ち抜いて入塾できたわけだから、せめてオーディションの様子くらいは書いても良かったんじゃないか。
    まあ、こういう作風なのだろうから、これほど世間に知られた場所での体験でなければこんな風には思わないのだから、適した材料で書けば、もっと魅力が際立つのかも。賞も売れるかどうかは大いに関係するから、この材料なら倉本ドラマを見ていた人は買うだろうという計算が働いたのではないか。
    会話のテンポは面白いと思う。
    しかし、大御所の作家って、こういうアカデミックな教育を受けずに書いた人の文章には弱いよね。批判できないというか。そこは、つまらないと思う。

  • 面白いか面白くないかと言われれば、つまらないんだけど、なぜか読み進めてしまう不思議な小説。主人公の心情が全くと言っていいほど描かれず、読んでいてこいつは人として大丈夫なのか、と心配になるような不思議な不安感に襲われる。それを、どこか突き放すようでいて愛のある様子で見守る天との文通の雰囲気がいい。その彼女が最後、結婚したと報告するハガキが来る場面、まったく主人公の心情が描かれないのになにかストンっと落ちるような、そんな気分になった。

  • 淡々と進む。感じたものはなかった。

  • いいのか
    そうでないのか
    よくわからない本だった・・・。

    そういう意味で
    いわゆる靴の裏本(靴の裏よりどうでもいい本)とは違う。

    わからないけど
    わかりたくなってしまって
    読んでしまったなって感じか。

  • いわゆる文学作品というものを読んでみたくなり、図書館にあった芥川賞受賞作品として手にとった本。

    内容はさておき、これまで読んできた本(実用書といえばよいのか歴史書といえばよいのか)に比べると読書量が圧倒的に少ない。文字の大きさや文間も大きく、2時間ほど、多く見積もっても3時間かからずに読めてしまう。

    文学、というよりも個人的には学問ではないと思うので文芸の方がしっくり来るが、というものが、人間やそれを取り巻く社会を描くものとすれば、本作品はこと人間性の描写に焦点を当てたものと感じた(他の芥川賞受賞作品も同様なのか?)。

    少し意地悪な言い方をすれば、山崎豊子や城山三郎などの作品と比べると下調べに時間をかける必要がほとんどないだろうから、その点だけに関して言えば効率的な作品と感じた。

    通常人とは違う視点で人間を捉えていることは否定しないが、個人的には可もなく不可もなく、といった印象。

    内容は、もはやおぼろげだが、大物脚本家が後進の育成のために北海道に設立した研修所(俳優+脚本家)に、主人公は本当に偶然に(確かたまたま誤って投函された新聞広告を見て応募)入学することになる。そこで、他の研修生、先生、近辺の関係者(農家)との人間模様を描いた作品。

    こういう研修所でありがちな、先生が(望む望まないかかわらず)絶対的な権力者として研修生からあがめられ(先生に憧れて入所しているので当然だが)、歓心を買うため、評価を得るための他の研修生の言動・仕草が、現実社会の至るところでみられるものであり、良くも悪くも人間らしさを再認識させられた(先生に評価されることが、世間で成功することではないはずだが、当人たちにはそれが見えない)。

    主人公は先生のことさえもよく知らず、俳優になりたいわけでもなく入所しているので、他の研修生との温度感が面白い。

    序盤では新宿で彷徨う様子が描かれているが、世間にはこういうタイプの人間も程度の差はあれいるということを(少数派なのだろうが)当人の視点から描かれていて興味深い。
    こういったタイプの人間はどうしても日本的にムラからは少数派扱いされるだろうが理解したい人には参考になる作品ではないだろうか。

    あと、本書の中で、先生の授業中に眠りこけてしまう主人公に激怒する先生が描かれているが、なぜ先生と言われる人は生徒が眠ると怒るのだろうか。
    多くの人は、自分自身が寝た経験もあるだろうし、そんなことをしたことがない人間でも周りの人間で寝ている人がいることは知っているだろうに。

    本書からは離れるが、住み込み式の研修所であれば特に人間の性質というのが現れざるを得ないだろうし、人生の一時期にはそのような生の人間の本性に触れる時期が何らかの形で必要なんだろうと思った。

  • 芥川賞ということで購入。
    ある地方にある「谷」と呼ばれた所では、役者や脚本家などを目指す人たちが自給自足をしながら、共に生活をし、修行をする物語。
    舞台となったのは富良野塾で、「先生」のモデルとなったのは、倉本聰さん。著者自身が参加されていたこともあり、リアリティがありました。また、文章は芥川賞の作品の中では、読みやすく時間がゆったりと流れているように感じました。
    ただ、流れているだけで、特に話の深みということは無いように感じました。難しい言葉が使用されているということではないのですが、堅苦しいかなと思いました。芥川賞向きに言葉を変えたのでしょうか。著者自身の言葉で、経験したことを綴って欲しかったかなと思いました。

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著者プロフィール

1966年、兵庫県生まれ。富良野塾二期生。96年より劇団FICTIONを主宰。2012年『緑のさる』で野間文芸新人賞を、17年『しんせかい』で芥川賞を受賞。その他の著書に『ギッちょん』『砂漠ダンス』『コルバトントリ』『ルンタ』『鳥の会議』『壁抜けの谷』『ほしのこ』がある。

「2020年 『小鳥、来る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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