- Amazon.co.jp ・本 (163ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103503613
感想・レビュー・書評
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言葉遣いのリズム感は好きなんだけど、物語としては「卑怯」だと思う。倉本聰の私塾の2期生だったという自身の経歴を描いたということを「売り」にして、読者にもそういう風に想起させる様な描き方をしてて、でも最後の最後であの「どんでん返し」をしてしまうのは、巧い気もするけど、曖昧にして逃げた風にも思えてしまって、卑怯に感じてしまった。
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ところどころ「むふっ」って吹き出してしまった。生活が過酷なほど会話とか思考はシンプルになるのだろうか。スミト、態度悪いけどかわいいやつだったんじゃないのかな。
昔母に連れられてなぜか富良野塾まで?近くまで?行ったことあるな。あれ何だったんだろう。富良野塾と書いた看板の下で撮ってる写真がある。 -
★あえての淡々★倉本聡や富良野塾という背景が分かってこその小説で、とりたてて期待したほどのことが起きるわけではない。だが、50歳になって高卒直後の日々を振り返り、あえて劇的な日々ではなかったと記すことに意味があるのかもしれない。芥川賞と言われても小説の評価は難しい。
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短かったですし、セリフ部分が多かったので、すぐに読み終わってしまいました。
あまり編集されていないのか、頭のなかを描写しているだけの未整理な文が、多かったですが、若者の内面だと思いながら読めば、臨場感を抱いて読むことができます。
「先生」との距離感が若者っぽくて良かったと思います。これが、「先生」の作品の信者のような塾生が書いたらこうはならなかったでしょう。 -
まるで脚本を読んでいるかのような(脚本をよんだことはないのだけれど)、舞台のお芝居を観ているかのような、不思議なくらい小気味よいテンポで進むストーリー。テンポが良すぎて登場人物の誰が誰やら…も曖昧なまま読み終えてしまった。だけど、それで良いのだと思う。きっと、そんな話だし。二話目の「率直に言って覚えていないのだ、あの晩、実際に自殺したのかどうか」と、併せて読むことでより面白い。
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俳優を志す主人公の若々しい感性があふれる作品だ。短文の連続と、息の短い間合いの文章が続くのが特徴だ。おそらく演劇人独特の間合いなのだと思う。
描かれている富良野塾での生活は弟子と師匠の関係が印象的だ。もはやこのような教育の場は少なくなった。理不尽だが、一挙手一投足に注目する弟子の姿はなぜか懐かしい思い出を引き起こす。 -
本書は、主人公の「ぼく」が演劇塾へ俳優の勉強をしに行く『しんせかい』と、その前に試験を受ける当日を著した『率直に言って覚えていないのだ、あの晩、実際に自殺をしたのかどうか』の2編で構成されています。『しんせかい』は【先生】と生徒たちである一期生、二期生の厳しく温かい関係が、良く著されていると思いました。2編目の『率直に言って・・』は、試験前の不安定な心象が良く表れている感じがして、これも率直に楽しめました。