リバース&リバース

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 198
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103504320

作品紹介・あらすじ

あなたは覚えていますか? あの日贈ってくれた言葉が、私の世界を全て変えた。ティーン誌の編集者の禄はお悩み相談ページを担当しているが、かつての投稿者との間にトラブルを抱えていた。一方、地方に暮らす郁美はその雑誌の愛読者。東京からの転校生が現れたことで、親友との関係が変わり始める。出会うはずのない二人の人生が交差する時、明かされる意外な真実とは――。静かな感動が胸を打つ長篇。

感想・レビュー・書評

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  • ティーン誌の編集部である菊池禄は、お悩み相談室のページを担当している。
    主に中学生女子の悩みである。

    アルバイトの仁木により彼女が以前からこの雑誌を愛読しており、相談室も熱心に読んでいたことがわかり…。


    中学生の悩みといっても昔のような女子同士のいざこざや失恋といったよくあるものでもないのに驚く。

    この年代からすでに同性同士の恋愛に罪悪感を覚えたり、否定されたり非難されたりするんだと。
    間違ったことではなく、おかしいわけでもないけれど中学だからこそ悩んだりするのだろう。
    普通とは違うということで、除け者扱い…。
    未だに普通という定義で生きているのもなんだかなぁという感じなのだが。


    だれかの安心できる言葉ひとつで、前向きになれるということ。
    これがとても大切だと感じた。

  • 幼少期からの幼馴染で中学生の郁美・明日花の物語りと、女子中学生を対象にした雑誌の編集部に勤める菊池禄(ろく兄)・仁木の物語が交互に進み、最終的に二つが交差するストーリー展開。

    本作では郁美の明日花に対する"好き"の気持ちは同性愛として描かれているが、幼少期から青年期にかけての同性に対する"好き"は、とても複雑で判断がつきにくいように思う。
    二人一緒にいて楽しいという純粋な気持ち以外に、学校という集団生活の中で特有の"孤立したくない"という恐怖心から生じる束縛行為もあるだろう。なんとなく個人的には郁美の明日花に対する気持ちは、こちらの方が近いのでは?と思った。

    ろく兄はいい人ではあるのだけれど、読者である小野寺渚との関係性はやはり一線を越えていて、なんかスッキリしない。

    230ページと、長編としては短い方だと思うので、サラリと読み切れるが、個人的に心に響く部分があまりなく、★3つ。

  • ティーン誌の悩み相談担当の編集者が主人公。
    モデルたちのさざ波のようなお喋り、聡明な女子大生バイトたち、雑誌編集を支えるプロたち。読者とのねじれた関係性や、私的な鬱屈なども描かれているけれど、全体的に清潔で生真面目な空気感をまとった小説。ラストで繋がる伏線も控えめだけれどうまく活きている。

  • 初の奥田亜希子。ティーン(というか女子中学生)向けファッション誌の男性編集者禄と、地方に住むその女子中学生郁美がW主人公。

    ミステリーではないので主人公二人の接点は意外に早く見つかるのだが、彼らがそれぞれ関わってきた(来ている)悩みとか生きづらさが冒頭の人生相談部分とタイトルにつながるラストは見事。

    オセロの黒と白のように、被害者と加害者、弱い立場と強い立場なんてコロコロ入れ替わる(リバース)ものだし、人生には角なんて場所はそうそうないので、白黒はっきり決まることもそうそうない。
    そして、黒であっても白であっても、その立場がどうにもツラい時には、努力や時やあがきなんかを駆使してやり直すこと(リバース)ができる。

    思ってた以上に良い話を読ませてもらった。じじいの俺にも響くんだから、若い連中にはズンとくる小説なんじゃないかな。

  • 女子中学生と女子中学生向け雑誌男性編集者2人の別々の視点で物語は交互に進む。友達への独占欲や、今となっては通過儀礼とわかる自己承認欲求の若い頃のぶつかり合い等、ヒリヒリ描写は奥田さんらしい。ただ過去の出来事が喉元にひっかかり、誰かを救わなければと思い込む男性編集者の存在や、その危うさの描き方が私にはちょっとピンと来ず残念。小説は突き詰めれば、他人の悩みを書いたもので、架空の人物の苦悩を読むために時間やお金を差し出すことのクダリには納得。

  • ●田舎町の二人の女子中学生と都会からの男子転校生の物語と○中学生向け雑誌の編集者の物語が交互●○に語られます。はじめの1/3位まではもたついていますが、そのあとゾワゾワした感じになり、急かされるように一気に読んでしまいました。タイトルには、否定する側とされる側は入れ替わること(reverse )、また、やり直せること(rebirth)の意味があります。リアリティがあり、技巧的な作家さんですね。

  • デビュー作から大好きです。毎回新刊読むたび好きになってます、奥田さん。今回の作品もすごく良かった。
    ろく兄の親身なアドバイス、そしてそれぞれが抱える悩みや葛藤。温かくなるような言葉と、辛辣な言葉がぐさりとくる。ラストの爽快さも好き。
    この中に思春期のあの頃、そしてそのトラウマへのアドバイスや欲しかった言葉がギュッと詰まっています。

  • どんな話でもそうだけど、繋がるまでは面白くないが、繋がった瞬間が気持ちいい。

    みんな自分のことしか考えていない。けど、人を思いやる気持ちを学んでいって、視野が広がる。
    いくつになっても、誰からでも、学ぶことがある。
    それでいい。

  • 「ひっくり返す」と「もう1度生まれる」はカタカナで書くとどちらもリバースだ。

    女子中学生向けの雑誌を作る編集者の男性と、長野の田舎に住む女子中学生のふたつの視点でお話は進む。
    編集者の男性は相談コーナーを受け持ちつつ、相談に入れ込み過ぎた結果(?)心を悩ませていることがある。
    女子中学生は幼馴染の友だちを転校生の男の子に取られそうでモヤモヤしている。

    少しずつ繋がっていく物語はそのタイトル通りひっくり返されて生まれ変わることができるのか。

    生きていくのはしんどい。
    でも生き続けると救いがあったりする。
    読後感はちょっとほっとできる。

  • 真剣に対応していれば、それをちゃんと理解してくれる人もいるのだ。

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著者プロフィール

1983年愛知県生まれ。愛知大学文学部哲学科卒。2013年『左目に映る星』で第37回すばる文学賞を受賞しデビュー。他の著書に『透明人間は204号室の夢を見る』『ファミリー・レス』『五つ星をつけてよ』『リバース&リバース』『青春のジョーカー』『魔法がとけたあとも』がある。

「2021年 『求めよ、さらば』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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