バブル:日本迷走の原点

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 35
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103505211

作品紹介・あらすじ

あれは「第二の敗戦」だった――バブルの最深部を知る記者が放つ警世の書。奇跡の復興と高度成長を成し遂げた日本だが、70年代以降、世界経済の仕組みは急速に変化する。グローバル化・金融自由化が進む世界と、変われないままの日本。その亀裂はやがてバブルを生み出し、全てを飲み込んでいった――。日本が壊れていく様を最前線で取材した「伝説の記者」が当事者たちの肉声をもとに迫るバブルの真実。

感想・レビュー・書評

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  • 1980年後半から1990年までに発生した日本のバブル。本書は、バブル期の前後を通じて多くの関係者に取材した著者が、主な登場人物と事件についてあらためて自らの見解を交えて振り返ったものである。日経の記者であった著者は、そのときのバブルを国民ぐるみのユーフォリア(熱狂)と呼ぶ。

    自分にとっては、バブルは大学生の時にその絶頂を迎え、そして崩壊していったものである。そのときには、ここで書かれたような裏の事情はもちろん表の事情もほとんどわからなかったし、おおよそ興味もなかった。しかし、そのときにこそもっと知っておくべき事柄であったと思う。もちろん、今でも知るべきことであることは変わっていないのかもしれない。「バブルの時代を知ることなしに、現在の日本を理解することはできない」という著者の主張が読み終わった後にはっきりとそうだとわかるだろう。

    振り返ると著者が挙げるようにそれぞれのプレイヤーに次のようなミスや瑕疵があった。
    ・上げるべきところで金利を上げなかった日銀の罪
    ・機関投資家に株を買うように誘導した大蔵省の罪
    ・不動産融資にのめり込んだ銀行の罪
    ・特金・ファンドラをリスクなき財テクのように扱った事業会社の罪
    ・会社の価値を収益ではなく含み資産で計算した証券会社の罪

    そうした中にあって著者は「誰が何にチャレンジしていたのか、そして何に敗れ、何を否定されたのか。バブルの時代という大きなうねりのなかで、敗れて行った人たちや、否定された人たちの行動の中にこそ、変革への正しい道筋が埋もれているのではないか」という。そうした問題意識の中で著者が堀り起こすこととなった人と出来事は多岐にわたる。

    三光汽船によるジャパンライン株の買占め、プラザ合意、ブラックマンデー、レーガノミクス、サッチャリズム、NTT株公開、リクルート事件、山一証券破綻、そごう問題、興銀・長銀破綻、阪和興業、秀和事件、特金・ファンドラ、株式損失補填、イトマン事件、イ・アイ・イ事件、公的資金投入など。

    バブルを彩った政治家、経営者も数多い。児玉誉士夫(右翼)、高橋高見(ミネベア)、磯田一郎(住友銀行頭取)、成田芳穂(山一証券)、竹下登(大蔵大臣、総理大臣)、渡辺喜太郎(麻布土地グループ)、高橋治則(イ・アイ・イ)、佐藤行雄(第一不動産グループ)、江副浩正(リクルート)、是川銀蔵(伝説の相場師)、加藤暠(誠備グループ)、小谷光浩(光進)、小林茂(秀和)、尾上縫(投資家)、橋本龍太郎(大蔵大臣、総理大臣)、三重野康(日銀総裁)、宮沢喜一(大蔵大臣、総理大臣) 、そして著者の父でもある永野健(日経連会長)。

    色々な要因があったが、日本のバブルを特異なものにしたのは土地神話であった。実家の大阪辺りでもマンションを買って大儲けをしている人が身近いるという話を聞いていた。「バブル崩壊後の「失われた20年」と呼ばれる日本経済の長期低迷と、銀行の経営危機の大きな原因が、1986年から89年にかけての土地をめぐる取引にあったことは間違いない。...銀行の節度を越えた土地融資への傾斜だった。最終局面の日本のバブルを、他の外国のバブルと分かつ重要なポイントである」ー 1989年末に史上最高値を付けた株価は90年に入ると急落したが、土地価格はその1年半後まで維持され、その後急落することとなった。

    東京23区の地価がアメリカ全体の時価総額を上回る。1株50万円弱と評価したNTT株が119万7000円で売り出され、上場後には318万円を付ける。大手都市銀行の一行あたりの時価総額が、世界最強と言われた米国のシティバンクの時価総額の5倍となる。小金井カントリー倶楽部の一口あたりの会員権が3億円を超える。これでバブルの兆候が見えなかったのは今から思えば不思議だが、バブルとはそういうものなのだ。「バブルは同じ顔をしてやってこない。しかし、われわれは生きている時代に真摯に向き合わなければならない。だからこそ、日本のバブルの歴史を今一度学び直す必要があると思う」

    著者は安倍政権に「謙虚さ」が足りないと指摘する。どこかバブルのときと似ているという。そして、最後に問う「安倍総理に、黒田日銀総裁に、かつて公的資金を投入しようとした宮沢喜一と三重野康のような洞察と責任感は果たしてあるのだろうか。自省の心が欠けていると思うのは私だけだろうか」
    このことが著者がこの本を世に問うこととなった最大の理由なのかもしれない。


    多くの登場人物がここ数年のうちに鬼籍に入った。その今だからこそ書けるものもあるのかもしれない。具体的に没年を明示されているのは次のような方々だ。

    2013年 大蔵省 窪田弘
    2013年 リクルート 江副浩
    2013年 トヨタ 豊田英二
    2014年 秀和 小林茂
    2015年 裁判官 滝井繁男
    そして、この本をちょうど読み終わった2016年12月加藤暠が亡くなったというニュースが入ってきた。

    歴史となりつつあり自らも同じ時間を生きていた時代を描いていて、とにかく非常に面白い。お勧め。

  • 136まで

  • 1980年から1989年までのバブル経済をマクロで語るというよりかは、当時、日経新聞証券部であった筆者が取材過程の中で遭遇した事案とともにどちらかというとミクロで具体的に見つめなおす本。経済原理ではなく生々しさで迫ってくるのでおもしろく、一気に読めた。

    すべては85年のプラザ合意から始める。恒常的な円高に対して筆者の言葉を借りれば「日本のリーダーたちは、円高にも耐えうる日本の経済構造の変革を選ばずに、日銀は低金利政策を、政府は為替政策を、そして民間の企業や銀行は財テク収益拡大の道を選んだ。そして、異常な株価高政策が導入され、土地高も加速した」ことがその構造的要因となってバブルは膨らみ、弾け、そしてその後は”失われた20年”と言われる長いデフレ期間が続くに至る。

    それにしても、バブル時代の土地高、株高を背景としたマネーゲームの象徴として”バブルのAIDS”という言葉があるのはこの本を通じて初めて知った。曰く、麻布自動車(A)、イ・アイ・イーインターナショナル(I)、第一不動産(D)、秀和(S)だそうだが、これらに加え、この本には河本敏夫、高橋高見、加藤暠、江副浩正、尾上縫などのバブル時代の象徴的な怪人物たちがもちろん登場してくるが、筆者の視点の面白さは、それらのバブル紳士たちを単純に批判するのではなく、彼、彼女らの思想はその後のグローバルな金融経済(いわゆるカジノ経済)の先駆たる先進性が一部には確実にあったことと、これらの人物に"成り上がりで強欲な人々"というレッテル張りをしてバブルの罪を負わせて、自分たちはその影に隠れて責任逃れを行おうとする、銀行、証券、大蔵省のエリート層への批判の怠らない点にあると思う。

    それにしても、東京23区の土地代がアメリカ全土の土地よりも高く、NTT上場時の時価総額は25兆、株購入の申し込みは1000万人を超えたとか、もはやおとぎ話にしか思えないが、すべての原点はやはりプラザ合意でアメリカに頭を下げられていい気になった日本のエリート層の慢心に(あと知恵で振り返れば)原因の確信があったように思う。やはり驕れる平家は久しからず、というところか。そしてその驕りが同時に訪れてもおかしくないドイツは実はちゃんと回避していた(要するにアメリカの意向無視して利上げをちゃとやっていた)というのをこの本を通じてこれまた初めて知って、やはり日本は極東の人の好い田舎者集団だったんだなーと思わざるを得なかった。

    日本人、もっともっと経験豊かになっていこう!と思える本でした。

  • 元日経記者の紐解くバブル本。なぜ起きたか、なぜ止められなかったのかを人物を描きながら総括。知らなかった事も多々あり。一つ一つ、一人ひとりの意思決定の積み重ねが歴史を作ってきたことが浮き彫りになる。日本の歴史として書き留める意味合いと現政権に対する警鐘として書かれているが国全体に関わらず、著者のような視点を持つことが組織と関わる人にとって価値がある。

  • 新聞記者だった著者が80年代後半から90年代前半にかけて起きたバブル景気の深層を自身の取材などから書かれた一冊。

    株と不動産がブームとなり、企業は財テクに邁進して誰もが熱狂した異常な事態だったバブルをという時代を取材した本書の記録は非常に生々しいもので真実を知ることができました。
    山一證券の倒産への真相や株式投資ブームの火付け役となったNTT株式上場の裏側など当時に起きていた関係者の動向も詳しく知ることができました。
    営業特金やファントラを推奨し、利用した企業や政治の失墜とその事後処理を後回しにした政治家や経済人の失敗は教訓にしなければいけないと感じました。
    そして、そんな中で野村證券の田淵元会長や宮沢喜一氏など当時火消しに動いていた人物もいることも本書で知りました。

    今から約30年前の出来事で派手な部分がクローズアップされがちなバブルですが、その裏側では政治家、経営者、証券会社や銀行といった金融機関などの様々な者たちの思惑が異常な経済を生み出したということを知りました。
    その大きなうねりの中で間違った感覚が常識のようになっていくことも感じました。
    そんな中で飲み込まれていく者や利用しようとする者など人の心理が露わになった時代を感じた一冊でした。

  • 平成に入ってついに生じたバブル経済崩壊。それから、いわゆる「失われた20」の突入し、日本経済は出口の見えないトンネルに入り込んでしまった。今なお、その影響は様々な分野に波及し、超高齢社会、人口減少も相まって、新たな問題対策の対応遅延に影響を及ぼしている。
    本書は、バブル経済時代から崩壊まで、間近で取材を続けた日経記者の生々しい当時の経済界、とりわけ日本興業銀行、日本長期信用銀行、当時のメガバンク、大手証券会社、日銀、大蔵省、内閣などの状況などが綴られている。
    本書で、「第二の敗戦」とまで称されているバブル経済崩壊とは?そして、現在のアベノミクスの行方とは?

  • バブル時は20歳代後半だった。経済的な話は正直よくわからないのだけど、同時代を生きたものとして、しかし恩恵はほぼ受けなかったものとして、著者のいう、後付けでない時代の諸相を知ることができたと思う。

  • 日本を熱狂に巻き込んだ「バブル」とは一体何だったのか? 日本を壊したのは誰だったのか? バブルの最深部を取材し続けた記者が、当時の状況を克明に記す。

    第1章 胎動
    第2章 膨張
    第3章 狂乱
    第4章 清算

  • 直接的に『バブル』という異常な熱狂を描くのではなく、バブル経済の源流を興銀と大蔵省の二軸に定め諸事案を立体的に構成し本質的功罪を炙り出していく良著だ。元日経のエース記者であった著者がまさにバブルの最前線で味わった感覚や見聞きした生の情報と分析は興味深い。

    著者はイタリア語の「ユーフォリア(熱狂)」という単語を度々使用しているが、的確にバブルを表した言葉であろう。例えば当時を知らぬ者からすれば証券業界の「にぎり」など異常そのものだが資金獲得合戦として銀行預入+αを確約しその背景に大蔵省の黙認があったこと
    と「ユーフォリア」という空気があったことを考えると理解できなくもない。興銀という当時超一流の組織が尾上縫に入れ込んだのも同様だ。

    人々はユーフォリアという多幸感のうちにバブルは弾け、その麻薬的後遺症はいまなお「当時の感覚」として残る。ステレオタイプで申し訳ないが、いわゆる「バブル世代」と話すと当時を懐古する様があり麻薬的快楽が消え去っていない。その限りバブルは再来するのだろう。そして彼ら「バブル世代」はバブル以後を「失われた20年」と評すがそこに生きた「ミレニアム世代(この呼称は好きではないが)」は生まれながらにITを身にまとい独自の感性とコミュニケーション感覚で時代を切り開き始めている。バブルを知らない世代は後遺症を知らないからその新しい感覚に酔いしれるのかもしれない。

    本書を読んだのは奇しくも日経16連騰。時代は流れ、そして繰り返すのかもしれない。

  • バブル経済を間近で取材した日経記者の作品。
    みなユーフォリアに浮かれて、実態経済から乖離しているにも関わらず、みなそのファクトに目を向けないのだ。

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