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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784103509127
感想・レビュー・書評
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この本は川上和人さんが鳥類学者としてどのようなテーマを選び、どのように考え活動しているのかが書かれています。
川上和人さんのことを知らず、これまでの著作を読まずに本書を読んでしまった人には少し退屈かもしれません。
川上ファンの私ですら、3章くらいまで「この本で何を伝えたいのだろう?」と思いました。
噴火により地球上で希少な生態観測の場所となった西ノ島でしたが、再噴火で調査計画の見直しとなってしまったのは残念です。
溶岩と火山灰で島全体が覆われ生物が死滅してしまったのが2020年8月ですが、2021年7月に西ノ島の再調査が始まりました。
植物は見つかりませんでしたが、何と、海鳥の繁殖が確認されたそうです。
9月にもう一度調査に向かうらしいので、調査報告が楽しみです。
「オガサワラカワラヒワ」、地味ですが可愛らしい姿の鳥です。
個体数が激減しているこの鳥を確実に絶滅させる方法を考えることで、絶滅に至る要因を排除し何とか保護しようとしています。
本書の目的はこれでした。絶滅危惧種「オガサワラカワラヒワ」の知名度アップと保全。
ならば、啓蒙活動に協力しなくては!
よろしかったら、以下のウェブサイトを覗いてみてください。
https://ogasawara-kawarahiwa.jimdofree.com/
4章から6章は面白かったです。
日本鳥類目録の編集(2012年の目録第7版)の話では、三浦しをんさんの「舟を編む」を思い出しました。
DNA解析により分類が大きく見直されたり、デジカメの進化で撮影記録が飛躍的に増加したりで大改訂が必要となったようです。
ほぼ10年で改訂されるらしく、2022年には第8版が出版されるらしいです。
「日本鳥類目録」を見てみたくなったのですが、図書館に蔵書がないので諦めました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
期待通りに面白かった。やっぱり川上先生本もハズレなし。
ほんとにヲタツボがものすごい範囲で被ってるので、細かい例えや形容が尽く刺さってくる。
「例えば、左手がサイコガンとなった動物の集団がいるとしよう。サイコガンは精神エネルギーを弾丸として撃ち出す器官であり、他種を容易に制圧できる生存上有利な形質と言える。
突然変異によりサイコガンを持つ個体が集団内に出現すれば、他個体よりも長生きでき配偶相手にも恵まれ、より多くの子孫を残せる。その結果、この形質は集団内に速やかに広がり、全個体がサイコガンを持つ種が生じると考えられる。
このように、生物学では現代に存在する条件から進化の歴史を推定してきた。」
これは、非常にわかりやすく、萌え要素満点の説明文(笑)。
こんな感じで本当にエキサイティングでアンダスタンダブルな文章が怒涛のように攻めてくる。そして、笑い、楽しみながら鳥や環境に詳しくなる。
メインは島嶼の研究活動の話ではあるが、川上先生のブレインストーミングをちら覗きしているような感じ。特に多くの人に読んでほしいな、と思うのは絶滅危惧という言葉について考察するくだり。
そして、名言、名文章も多い。
「おわりに 鳥類学者の役と得」の9ページは必読。授業で使いたいぐらいである。
「なぜ自然を守るのですか?」
『生物の絶滅とは、この「知」の源泉となる存在をこの世界から永遠に消し去ることを意味する。未読の書籍を火にくべる焚書にも等しき行為だ。』
オガサワラカワラヒワがサバイブするよう、祈った。 -
その鳥は絶滅か?生存か?
著者の脳内&活動は、過去・現在・未来を探ることで、
目まぐるしい様相をしめす。でも小ネタは忘れない。
・はじめに 鳥類学者の罪と罰
第一章 鳥類学者、絶海の孤島リターンズ
第二章 鳥類学者には、秘密がある
第三章 鳥類学者は、妄想する
第四章 火山島の、鳥類学者 第五章 鳥類学者は、名探偵
第六章 鳥類学者は、振り向かない
・おわりに 鳥類学者の役と得
・おわりのおわりに ティンカー・ベルのお願い
鳥類学者探偵は今日も頭を巡らせ、行動する。
孤島の冒険、会議への参加と発表にダンス、
和名変更や目録編纂にも推理?を働かせ、
自然を守る話の合間に、趣味の映画やコミックの
言葉を投下し、読者をけむに巻く、面白真面目なエッセイ。
南硫黄島での大冒険。西島伽藍堂取り壊しプロジェクト。
古い標本の確認からの事実。和名変更の歴史は複雑怪奇。
ミゾゴイの行方。オガサワラカワラヒワ推し。
火山と台風に阻まれる西之島調査、巣の素材が漂流物!?
三浦しをん先生が言うが如く、目録はその海を渡る船。
大改訂という大波に揉まれての四苦八苦。
火山列島6種の陸鳥の島間移動。
有意義だった南鳥島での18時間の調査。
どんな難行苦行が待ち受けていようとも、
鳥の事を考えているのが抜群に楽しいと宣う、潔さ。
自然の中には多くの知見が眠っているとも、語ります。
それらをまじまじと感じられる熱意が良く、心地よかった。
うん、オガサワラカワラヒワは覚えたぞ~! -
鳥類学者の考え方を知りたいと思って、ちょうど良さそうな著者を発見したので。
自分も抱くことのある疑問。
外来種はなぜ排除しなければならないのか?
なぜ、生物多様性を維持しなければならないのか?
外来種の問題は、それが既存種の生命を脅かすからだ、と説明されることがよくあるが、セイダカアワダチソウのように、いっときの影響力はなくなり穏やかに分布を維持しているような種もあるはず。それも排除すべきとはどういう理屈なのか。この疑問は本書では得られなかったが、ヒントはあった。
生物多様性の維持については、著者の考察は目から鱗だった。
そもそも彼の取り組む鳥類研究は基礎研究であり、基礎研究とは、国民に知る楽しさを与える娯楽の提供なのだ、と。つまり、映画のプロデューサーや小説家のように、経済活動に勤しむ資本主義国家の国民に対して、財の投資先を提供するようなものだと説明していた。
そして、研究による発見は、ミケランジェロが大理石の中に埋められた神々や獣の姿をノミを使って取り出すように、生物に秘められた生態を取り出して明らかにすることだ、と。
われわれはなんとなく鳥を眺め、その姿に心を打たれる。その秘密を理解することで、夢の超特急が誕生したり、言語の解釈が変化したりする。種の豊かさを失うということは、自然に隠されたさまざまな物語を読み解く機会を永遠に失うこと(著者は焚書にも等しき行為、と言った)だ。人の役に立つことだけではない。娯楽としての知識の提供において、そのソースを失うことは、われわれの知的好奇心の源泉を失うことになるのだ。
と、いうことを言いたかったのかな?なるほど、ものすごく腹落ちのする解説だった。 -
農繁期に読んでそのままだったので、今中身を思い出そうとしたが、無駄なのでもう一度読んだ。相変わらず人を食ったような文章である。が、読み進めると人を食ってるのではなく、人の脇腹をこちょこちょっとやって笑わせておいて、財布を抜き取・・・いや、肝心の、餌を置いてあるところまで誘き寄せているのである。この場合、餌は離島の環境保全であり、オガサワラカワラヒワである。
私はまんまと引っかかり、見たこともないオガサワラカワラヒワのために寄付を投じてしまうことになった。私だけではくやしいので、この本を読んだ皆さんもぜひ引っ掛かっていただきたい。勢いでTwitterもフォローした。日々、南の島の自然が観察できるのでおすすめだ。
内容については帯の言葉が全てを語っている。
「センセイ、どうして鳥の研究をするんですか?」
「楽しいから。他に理由が必要かい?」
私のように鳥好きでなくとも、たぶん、読めば楽しい。 -
2018~20年のエッセイ 2冊目
前作より新鮮味は薄れたものの、面白いことは変わらない
・島の分解者はハエとカニ
・日本の鳥の絶滅は離島ばかりで生じている
島は面積が狭い上、生物は特殊な進化をしており絶滅しやすい
・オーストラリア、火を使う鳥
→チャイロハヤブサ、トビ、フエフキトビ
小動物を誘き寄せるためだが、これが原因で森林火災になることもある -
絶滅を確認するのは大変なんだな、と思った。
しかもそれが目録作成にも影響しているのがよけい大変そうだ。
外来生物について、さまざまな事例をあげつつ多角的に解説している。
そういえば日本列島では人間も到達時点では外来生物だったんだよな、とちょっと思う。 -
鳥類学者さんのエッセイ。研究者として、生物学の基本的なことや、分類であるとか絶滅であるとか外来種であるとかの概念の定義など小難しくなりそうなことどもを、ごくごく平易な言葉で平たく淡々と説明してくれつつ、これでもか!というくらいのおびただしい小ネタを繰り出しながら、絶妙のバランスで反則技ギリギリくらいの比喩を織り混ぜて、どんな手を使ってでもご自分の専門の研究分野であるオガサワラカワラヒワという絶滅の危機に瀕している鳥への関心を高めたいという切実な願いを、持てる力を振り絞って訴えかけてくる、という作品でした。ふざけているのに書かれていることは真剣で、つまり興味を広くもってもらいたいがために真剣にふざけていて、読みごたえがありました。小ネタの全部は分からなかったかもしれないけれど、面白かったです。
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ハイどーもー川上でーす!でおなじみ川上和人先生の著書、相変わらず川上節炸裂です。
絶海の孤島や火山島での調査、噴火や台風に翻弄されたり、国際会議での発表や目録の編集作業まで、鳥類学者のあれやこれやが詰まっている一冊。
特に外来種や絶滅の話題については、多方向から考える必要があると知りました。簡単じゃないんだな…
あとは、川上先生の著書は「やってる」箇所が多すぎてずっとニヤニヤしてしまうのです。
中学生の娘も「わかんないとこもあったけどおもしろい」とのこと。同世代にはドンピシャで、ここも、ここもやっちゃってんな!とつい読み返してしまいます。
これは図書館で借りたけどいつか買ってしまうかも。
川上先生の本は装丁もポップで大好きなので、うちにある他の川上先生の本と並べたいです。 -
研究者の方の著作で「中禅寺秋彦」の名が出てくるとは…オガサワラカワラヒワ、覚えました。
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ーー生物の絶滅とは、この「知」の源泉となる存在をこの世界から永遠に消し去ることを意味する。未読の書籍を火にくべる焚書にも等しき行為だ。(p.234)
大好きな川上和人先生の鳥本〜!
今回も小ネタ満載で、人前で読むのが憚られる(声出して笑っちゃうから)。
これまでの著作との違いは、冒頭に引用した部分にも現れているように、先生の中に危機感というか使命感というか、なんかそういうのがあるところ。なので、『鳥類学者だからって……』のようなエンタメ性100%本を期待すると、あれ?ってなるかもしれない。
けれど、自然保護や生態系保全のこと、そして研究活動のことを楽しみながら知ることができる本。
知らない世界を知ることは、人間にとって純粋な喜びなんだと先生は書いている。この本を読むことで、そういう喜びを感じることができる。
さいごに。
オガサワラカワラヒワ、オガサワラカワラヒワ、オガサワラカワラヒワ。 -
もともと鳥類学には特に興味はない。でもこの著者のエッセイは2冊目だ。
なんで読むかと言えば、文章が抜群に面白いから。
吹き出したりニヤついたり、読む場所は微妙に選ぶ本である。
学術的な話は難しい。でもこの著者の詭弁なような大袈裟なような、しかし的確で分かりやすい比喩を交えた文章だと、なんとなく分かった気になる。著者は同年代、そして同年代のなかでも嗜好が若干似ているようで、持ち出された比喩がツボると理解が一気にすすむ。逆に比喩がわからないと、なんとなく滑っていく。本書での当たりは6割くらいだろうか。
とはいえ学術的な話はたぶんしばらくしたら忘れるだろうけど。けれど「面白かったー」という読後感は長く残る。もう何年も前に読んだ『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ』がそうだったように。
「思うなよ」とか言っときながら、本作のラストでは鳥の観察は「抜群に楽しい」と書いている。やっぱ好きなんじゃん。
忘れるだろうけど、著者がこの本を書いた目的とあとがきに書いている絶滅しかかっている鳥の名前は覚えた。覚えました!
無人島でのフィールドワークのくだりを読んでいると、映画『南極料理人』を思い出した。どなたか、映画化してくれませんか?きっと面白いと思うのです。 -
前に読んだ著者の本と同じテイストの「鳥類学者によるエッセイ」。世代的にドンピシャな小ネタを楽しみつつ、もちろん大変面白く読んだのだが、やはり連発されるヲタネタにいちいち注釈がついていた方が本として正しい気がする。もちろん今の時代検索すれば良いという話なのではあるが、それを踏まえて楽しい注をつけるのもありなのではないかと。
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川上先生にしてはテーマがはっきりしてて、鳥と島に興味を持って研究者になってくれたら嬉しいな、オガラヒワを知ってほしいな、自然てすごいな、研究すると楽しいな。
御意。
とっても良かったです。
ただ、相変わらず情報量自体は三分の一くらいで、まず、川上先生に興味を持ってもらわないといけない本でした。
はまんない人は、絶対無理だろう。 -
相変わらず面白いバード川上氏のエッセイ。突然しれっと「たとえば、左腕がサイコガンとなった動物の集団がいるとしよう」って書かれてて、電車で吹き出しそうになったわ。居ないよ!そうなったら、皮膚がスケスケになる進化をした動物は絶滅だよな。しかしそんなギャグまみれの中で、自然環境や鳥についてのまじめなことも書かれているので、やはりいつもながら侮れない。
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研究のため無人島に行くのは大変そうだ。前回とは何が違うか検証したり根気のいる作業ばかり。
まさか鳥類学者と安楽椅子探偵の共通点が見つかるとは。 -
【高校生、大学生くらいの人にオススメ】の一冊
バード川上さんの独特の表現方法は誰が読んでも楽しめますが、「大人っていい、大人って楽しい」ということがひしひしと伝わってきます。
鳥類学が役になっているか、いないかは別として、こうやって仕事を、人生を楽しめる大人は素敵です。 -
229:アリストテレスは人間の本質を知への愛だと説いた。2000年以上前のこの指摘は正鵠を射ている。人にとって知ることそのものが楽しみであり、楽しみを娯楽と呼ぶなら基礎研究の成果はまさに娯楽なのだ。
233:彫刻家は石の中に潜む美に仕える身である。これと同じく、研究者は自然の中に潜む知に奉仕する身なのだ。
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