劇場

著者 : 又吉直樹
  • 新潮社 (2017年5月11日発売)
3.52
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  • 239レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103509516

劇場の感想・レビュー・書評

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  • 「火花」で又吉は本物だと思って次作も絶対読もうと思ってやっと読んだところ。
    in one sittingで読みました。珍しいんだよね、一気読みできる本ってそうそうない。
    太宰感がプンプンするけど私はそれは大好物なので快感しか覚えず、精緻な描写からは主人公のねっとりした自意識が読者に読みながらにして空気を通して入ってくる。いい。
    人間凸凹で寄りかかり過ぎるともうどこまでが自分でどこまでが相手なのかわからなくなって、自己と他者が恋愛によって結合すると切り離すのはレゴブロックのように簡単にはいかず。
    昔子供の頃粘土細工した時に、胴体先に作って手足を後からつけたら接着が難しくて、なんとか水つけながらつけて、もう一度手を作り直したいと思って取ろうとしてもその時にはもううまく取れなくなって諦めて粘土ぐしゃって潰すはめになる、みたいな感じ。

    テレビで、火花の時読みにくいという読者の声をたくさんもらったから読みやすくしたって言ってて不安になったけど、全く又吉節は消えておらずなんやねんって思った。テーマはただし身近になったかな。

  • 主人公は売れない劇作家の永田。
    その恋人は役者を目指して上京してきた純真な子、沙希。
    二人の間には<いい舞台を創る>という共通の夢があり、
    その分野に携わる個性的な人達と関わり合いながら揺れ動く彼らの行く末を見守らねば、という気持ちにさせられる物語。
    永田はとにかく変人ではあるが、
    沙希ちゃんにとって彼は<物語職人>であり、彼女が生きたいと願う舞台の<創造主>。故にその関係は創造主と創造された者、の様な不思議すぎる縁でのみ、結ばれていたのではないだろうか。
    恋愛臭が全くしなかったのはその為であった様な気さえする。
    だが、創造主的才能を持つ人間は永田だけでは無い。
    その事が彼を饒舌にさせ、台詞である「」内の文字数、半端無い事になってしまうのだが、これにうんざりしてしまう
    フリをしながら、内心(又吉、面白いな~)とほくそ笑んでしまう辺りは、さすがと認めざるを得ない。
    やがて、彼らの関係もなるようにしかならないラストで終わりそうだな~と思いつつ、残り少ない頁を捲っている時に感じたフエードアウト感。
    彼らがいた世界がすーっと遠ざかってでも行く様な感覚。
    思わずタイトルを思い出した。
    そうか、ここは劇場だ。するする心に幕が降りてきた。
    (観せられていた。)
    本を閉じた後、そう感じた。

  • 又吉さんが書いているという時点で、既にその世界に入れている、入らされている?
    独りよがりの主人公の胸が締め付けられる切ない物語。
    サッカーゲームの選手名を作家さんにして、イタリア、ブラジル代表と戦わせるシーンは又吉さんのセンスが光る。やはりツートップは芥川と太宰か。

  • まだ読んでる途中だけど、これ、フェリーニの「道」と同じだ。
    こういうのは本当にダメで、カラダの中身が水みたいに溶けて、全部目から流れ出ちゃいそう。悲しくて、切なくて、申し訳なくなる。

  • 火花を読んだとき、表現することうまいなあって思ったけど、それほど騒がれる本かな?でも又吉さんと友人になりたいってずっと思ってた。
    この作品は火花より私好み。3回以上クスクス笑って、こんな会話できる彼女と彼氏って最高やなって思ってた。まさか最後でじーんとくるなんて。次もいい作品書いてほしいな。

  • どこまでも、誠実な話だった。

    どこからどうみても、だらしなくてどうしようもない劇作家が主人公で、恋人を不幸にしていく話。冷静に見ればそういう話。
    ただ、そんな人間に対して、どこか"羨ましい"という気持ちを抱かせる。

    僕も"芸術"に携わる大学を卒業し、今も広義の意味では"ものを作る"仕事をしている。
    プロとしてやる以上、お客さんの意向もあるし、〆切もある。その中で、数々の"妥協"をしながらものを作っている。
    作り上げるものに関しては、大学生の頃の自分よりはるかにクオリティーが高いし、周りからもそれなりの評価は受けている。でも、"大学生の頃の自分"が今の自分を「スゴい」「羨ましい」と感じるだろうか?というモヤモヤは常につきまとっている。

    「あの頃の自分」や「芸術」や、つくりだす「作品」に対して、果たして今の自分は"誠実"といえるのか?

    そういう思いを抱えながら生きている自分にとって、本作「劇場」の主人公は眩しい。
    お金も稼ぎたいし、根本的に楽をしたい僕は、これからもきっと"妥協"し続けるだろう。そういう"賢さ"を、僕は捨てることはできないだろう。
    だからこそ、この主人公のような生き方に、思わず目を背けてしまうような、"負い目"を持っている。

    物語を読んでいる間、ひたすらにその"負い目"や、自分の"不誠実"を刺激されまくった。
    自分には生きれない、理想的で誠実な生き方に、心を打たれた。

    そして、"恋愛もの"でもある本作の、恋愛要素の部分でも、これまた胸を刺された。

    「この笑顔が好きだったはずなのに…」
    自分が好きになった人の、自分が好きだったところ。それを消していたのが自分自身だった。

    恋愛をしていると、そういうことはよくある。

    僕の場合も、恋愛から夫婦になって、もう随分長い時間を過ごしていて、子どもも生まれて生活をしていると、"幸せ"以外の時間だってそれなりにはある。
    当たり前の生活として、そういう時間も受け入れていたけれど、それじゃダメだった。

    奥さんを笑わせて、幸せを感じてもらうこと。
    それは今も諦めてはいけないことだった。

    そんな当たり前のことを、思った。

    ものを作るという仕事の面、奥さんとの関係の生活の面。僕の人生の大部分を占めるこの両面で、ボコボコにされた感覚で、電車の中で本気で泣きそうになって。
    ここまで感情を揺さぶられたのは久しぶりだった。

    芸能人が書いた本ということでフィルターをかけていたかもしれないし、前作の「火花」もちょっと否定的な気持ちを持っていたけれど、今回の「劇場」は非の打ち所がない。
    万人に受ける作品ではないのかもしれないけれど、僕にとってはどうしようもないほどの傑作だった。

  • 重すぎる自尊心を抱えて劇団を立ち上げて活動する男、永田。
    永田と出会い、献身的に支え、「~だよ」の口調が可愛い女、沙希。
    二人が夢を叶えようとやってきた東京は明るくて華やかな場所だったけど、東京は時間をかけて少しずつ二人を呑みこんでいった。

    ----------------------------------------

    自意識過剰過ぎる永田は、周囲から疎まれ、愛してくれる沙希までも精神的に追い込んでいってしまう。消耗していく自分の状況に気づきながらも、永田を肯定し続け、愛情を持って応援する沙希が不憫でならなかった。

    永田はヒモ野郎のクズだ。彼の言動すべてに共感できた。
    どうしようもない焦燥感、意味のない嫉妬、場違いな劣等感。くだらない自意識全部に見覚えがあって、懐かしさすら感じた。
    多くの人が十代から二十代前半までに気づく。”自分は才能のない普通の人間だ”という事実。それを認めず、クリント・イーストウッドにすら嫉妬し、自分を才能のある人間だと言い聞かせるようなあの感情。あの苛立ち。あの焦り。
    わかる、わかると思いながら読んだ。永田のことが好きだと思った。恋人が恋人の友達と自分の話をした、というだけで悪口を言われているような気がしてしまうあの感じ。自分に自信がないだけなのに恋人に文句を言ってしまう馬鹿な行為。強く感情移入した。

    勝手に自尊心に潰されそうになって、さらにその緊張感を恋人の沙希にまでぶつける永田はダメなやつだし、それを甘やかして許してしまう沙希も本当はダメなんだろうな。永田に言えない多くの不満を大量の酒で呑みこんでいく沙希が優しすぎて辛かった。

    昼も夜も沙希が働いてくれているのに、永田がサッカーゲームをやり続ける場面、最高だった。
    永田が本当にクズでたまらなかった。そんなことしちゃダメってわかっているのになんでやっちゃうんだろうな。なんで言葉に出して感謝を伝えられなかったんだろうな、と過去の自分に重ねていた。恥ずかしさと悔しさが入り混じって情けなさだけが残った。


    ”自分を追い込まないと良い物は作れない”
    そういうふうに考える人は多い。永田もそうだった。沙希の部屋を出て、わざわざボロアパートで一人暮らしを始め、演劇と向き合った。
    でも実際はそんなことをする必要はないんだと思う。良い物を作り出せる人はどんな場所でも作り上げるし、逆もまた然り。環境なんか関係ない。つまり、才能とかセンスとかそういうものがすべてなんじゃないだろうか。
    いくら自分を追い込んだとしても、自分自身と自分を愛してくれる人を傷つけるだけ。

    そう考えると芸術の世界は残酷だ。観たり聴いたり、芸術を観賞する分にはたくさんの夢を与えてくれる。
    だけど、芸術を作る側の人間になりたいと夢見た人は才能や運があればいいけど、多くの人がそういうものを持たないまま夢を追いかけて苦しんで年齢だけを重ねていく。

    東京で夢を追いかけようとする若者のための教科書のような小説だった。最高。

  • 常にみんな劇場の中に立っている。
    才能がなくても否応なしに。
    沙希は歪な言葉でも伝わってしまう存在で、永くんはそこに甘えている。
    本当はバランスの取れている永くんはアンバランスでいる自分を才能があると思い込もうとしている気がする。
    どこまでも落ちていっていいと思いつつも、幸せにしたいと思うのに傷つけてしまう。
    当たり前だからこそできないのかもしれない。
    最後の向かい合うシーンが印象的。

  • 切なくて、ラストが刺さった。不器用で、優しくて、ややこしい。そんな彼が不憫でもあり、人って程度の差こそあれ、こんな感じだなと思ったりしながら。
    次も楽しみ。火花も素敵だったけど、火花より、こちらの方が再読したくなってくる。

  • 火花を三度読んだけど、その時の感情や気持ちが恐ろしく繊細に書き込まれています。
    この本も二度、三度読むごとに違う視点や感覚で読めると思うので、少し寝かせてまた読もうと思います。
    翌日大後悔とはよく言ったものの、後悔後悔後悔の永田に人間の卑しい部分も嫌だけど共感してしまった。

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