劇場

著者 :
  • 新潮社
3.46
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本棚登録 : 2706
レビュー : 381
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103509516

作品紹介・あらすじ

一番会いたい人に会いに行く。こんな当たり前のことが、なんでできへんかったんやろな。演劇を通して世界に立ち向かう永田と、その恋人の沙希。夢を抱いてやってきた東京で、ふたりは出会った――。『火花』より先に書き始めていた又吉直樹の作家としての原点にして、書かずにはいられなかった、たったひとつの不器用な恋。夢と現実のはざまでもがきながら、かけがえのない大切な誰かを想う、切なくも胸にせまる恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 又吉の小説2作目。
    今度はお笑いではなく、演劇の世界で芽を出そうともがく若者の恋と葛藤を描いてあります。
    お笑いのほうが、体験も滲んでいて、ユニークと言えばユニーク。
    個性的な表現を追求する気持ちには、演劇のほうが感情移入しやすかったです。

    永田は、友達と上京、小劇場で活動していました。
    たまたま画廊で一緒になった感じのいい女性・沙希に声をかけます。この人ならわかってくれるだろうと。
    永田の方はともかく、紗希がよく付き合う気になったな~という出会いですが。
    沙希もじつは演劇が好きで上京したので、何かを感じ取ったのでしょう。

    暗くて不器用な、演劇に取り憑かれている永田。
    それでも二人は暮らし始め、楽しいひとときを経験し、微笑ましくいたわりあいます。
    芝居はうまくいかないほうが多く、永田は沙希が関わる他の人達に嫉妬するようにも。
    後半は、好きな女性にしてはいけないことのオンパレード。
    何度かやり直そうとするのですが‥
    真剣に仕事に集中して、やっと少し成功し始めても、取り返しがつかない。

    最後に懸命に愛を伝えようとするのが切ない。
    そんなに好きなら、互いに気持ちが残っているのなら。
    とも思うけど‥
    紗希はぼろぼろですよね。この後も苦労をかけられそうだということを考えると、こんないい子はもっと平和な環境で暮らしたほうがいいのかもしれない。
    そんなことを思いながら読了。
    「出会わなければもっと早く東京に負けていた」という沙希の言葉に説得力がありました。
    ただ苦しんだだけではない、必然的な出会いだったのでしょう。

  • すっっっごく良かった。好き。
    「報われない人間は永遠に報われない」とほんのり似てた。
    それにしてもデビュー作とくらべると気持ちのいいほど肩の力がぬけている。
    ちゃんと書きたいことを冷静にとらえて、話題性とか批評とか、そういう煩悩に惑わされることなく書き上げたんだろうなと思う(わたし誰目線なんだ)。
    小説そのものもとても好感がもてるし、これを彼が書いたのだという事実もぐっとくる。
    本当にさりげなくそっとはさまれるジョークが絶妙にシュールで、芸人としての矜持も感じた。

    東京で劇団を立ち上げ脚本や演出をするも一向に売れない永田と、それを献身的にささえる天真爛漫な彼女の沙希ちゃん。
    永田の脳内をのぞいているような奇妙な生々しさが文章から滲み出ており、独特の世界観を纏って話はすすむ。
    永田は自意識過剰で卑屈でどうしようもない男だ。明るくて優しい沙希ちゃんがとにかく不憫でならない。
    だけど永田が感じている劣等感や焦燥も、読み手の私にはどうしようもなく伝わってきてしまって、素直になれない彼が滑稽で、可哀想で、情けなくて、不甲斐なくて仕方ないのだ。
    ただひとつ空気に触れるべき言葉が永田の口からでてこないもどかしさがまた切ない。
    ラストシーンはそういうあれこれ全てが苦しく押し寄せてきて涙がとまらなかったです。

    現実だって、どんなセリフを吐き、どんな演技をするか、すべて思いのまま。ここは劇場だ。

  • 「火花」で又吉は本物だと思って次作も絶対読もうと思ってやっと読んだところ。
    in one sittingで読みました。珍しいんだよね、一気読みできる本ってそうそうない。
    太宰感がプンプンするけど私はそれは大好物なので快感しか覚えず、精緻な描写からは主人公のねっとりした自意識が読者に読みながらにして空気を通して入ってくる。いい。
    人間凸凹で寄りかかり過ぎるともうどこまでが自分でどこまでが相手なのかわからなくなって、自己と他者が恋愛によって結合すると切り離すのはレゴブロックのように簡単にはいかず。
    昔子供の頃粘土細工した時に、胴体先に作って手足を後からつけたら接着が難しくて、なんとか水つけながらつけて、もう一度手を作り直したいと思って取ろうとしてもその時にはもううまく取れなくなって諦めて粘土ぐしゃって潰すはめになる、みたいな感じ。

    テレビで、火花の時読みにくいという読者の声をたくさんもらったから読みやすくしたって言ってて不安になったけど、全く又吉節は消えておらずなんやねんって思った。テーマはただし身近になったかな。

  • 針先くらいの大きさしかない、つまらない、大したことない自己顕示欲にがんじがらめになっている主人公が大っ嫌い。
    今まで読んだどの本の主人公より、「こいつ嫌いだわ」って思った。

    心の狭さ、器の小ささ。
    逃げることでしか保てない自分の軸。
    でも、その人間臭さに惹きつけられた。

    うだつの上がらない毎日を、
    丁寧にしたいのにどうしたらいいかわからない恋人との日々を、
    自分で自分の首を締めながら生きてる様は、
    たとえ悪あがきだろうと、
    演劇という拠り所を通して「生きてる」そのものだったんだろうな。

    終盤の畳み掛けの熱量がすごい。
    登場人物たちの人となりはしんどいけど、結果、すごく良本。

  • 出だしから引き付けられた気がする。

    永田の小難しさ、沙希のおおらかさ。
    辿っていくであろう未来が想像されるけど、そうなってほしくない感じ。

    文豪に例えるサッカーゲーム、らしいな~

    永田と青山のメールでの罵り合い。メールでって。

    最後の沙希の部屋でのシーンはグッとくるかな。

    「火花」より好きかもって思った。

  • 冒頭の技巧的な装飾的心理表現は辟易としたが、ストーリーが転がりだしてからの展開は凄くいい。主人公の彼女への想いを語るところはグッとくる。全体的にはよくあるストーリーで、そう思わせるのは作者の力量を感じた。

  • 私は永田のような人物は好きではありません。自分勝手で周りにいる大切な人を振り回して傷つけて、取り返しがつかない状況になってからやっとそれに気づき反省する。だったら初めから大切にしろと思います。甘えるなと。ただそれはとても人間らしいとも思います。隣にいるパートナーが眩しすぎて、自分がひどくつまらない人間に思い、それを事実だと自覚しているからこそ逆につらく当たってしまう状況というのは私自身身にも覚えがあります。分かるだけに、それでも彼女を苦しませないでほしい、なんとか頑張ってほしいと思ってしまいます。

    この作品全体に流れる空気感は、前作「火花」と似ているところがあるように感じました。芸人と舞台という、ともに先が見えない職業をテーマにしているからでしょうか。主人公の永田も、読みながらただの又吉じゃねーかとつっこみをいれてしまいました。(サッカー好き、文学好き、分析が多く、人見知りなとこなど)

    最後の2人の会話にはぐっときました。彼からの一方的な思いだけではなく、彼女にもちゃんと彼を必要とする理由があったんだなというのが分かりました。ただ夢を追いたい彼と応援したいが現実も見えてしまう彼女がすれ違うのは必然だった気がします。彼女はその葛藤で相当苦しんだと思います。2人の今後は描かれていなかったのですが、とにかく彼女が幸せになることを願うばかりです。

  • 文芸紙に載っていたものを読んでみた。花火も読んだが、こちらの方が小説としてレベルが高いように思う。

    主人公のクズっぷりを読んでいると、だんだんこれは自分のことが書かれている本だという錯覚に陥った。

    愛しかたは人それぞれなのだが、愛しているが故に歪む事は多々ある。それは相手に対しての甘えということでも、我儘ということでもなく、その人の心からの愛の1つの発露として、何故か、そうなる。

    話題性だけではない、この作者の非凡な才能を感じた。

  • 小説を目で追っているのに
    脳内で又吉さんの声と顔で文章が変換されてしまい
    ずっと又吉さんに朗読をしてもらっているような
    面白い読書体験でした。

    青山と罵り合う主人公永田の、
    あまりにも容赦がなさ過ぎるセリフがとにかく辛い。
    永田がここまでの憎しみや怒りを感じてしまうのは
    相手の嫌な姿の中に自分を見つけてしまったからなのでしょう。
    永田と沙希の最後の場面は、私が今まで読んだ恋愛小説の中で一番美しく感じました。

    一冊目の火花よりもこちらの方が
    私の中で主人公と又吉さんが同化しすぎてしまい
    小説を読み終わった直後、
    又吉さんのことがちょっと嫌いになったくらい(笑)
    読み終わったとたん内容をきれいさっぱり忘れてしまう小説があるけれど
    これは正反対。
    いつまでもいつまでも心の中に主人公たちが生きています。

  • 主人公は売れない劇作家の永田。
    その恋人は役者を目指して上京してきた純真な子、沙希。
    二人の間には<いい舞台を創る>という共通の夢があり、
    その分野に携わる個性的な人達と関わり合いながら揺れ動く彼らの行く末を見守らねば、という気持ちにさせられる物語。
    永田はとにかく変人ではあるが、
    沙希ちゃんにとって彼は<物語職人>であり、彼女が生きたいと願う舞台の<創造主>。故にその関係は創造主と創造された者、の様な不思議すぎる縁でのみ、結ばれていたのではないだろうか。
    恋愛臭が全くしなかったのはその為であった様な気さえする。
    だが、創造主的才能を持つ人間は永田だけでは無い。
    その事が彼を饒舌にさせ、台詞である「」内の文字数、半端無い事になってしまうのだが、これにうんざりしてしまう
    フリをしながら、内心(又吉、面白いな~)とほくそ笑んでしまう辺りは、さすがと認めざるを得ない。
    やがて、彼らの関係もなるようにしかならないラストで終わりそうだな~と思いつつ、残り少ない頁を捲っている時に感じたフエードアウト感。
    彼らがいた世界がすーっと遠ざかってでも行く様な感覚。
    思わずタイトルを思い出した。
    そうか、ここは劇場だ。するする心に幕が降りてきた。
    (観せられていた。)
    本を閉じた後、そう感じた。

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著者プロフィール

又吉直樹(またよし なおき)
1980年、大阪府寝屋川市生まれ。お笑いコンビ「ピース」のボケ担当。第153回芥川龍之介賞受賞作家。2009年6月せきしろとの共著、自由律俳句集『カキフライが無いなら来なかった』を刊行し、これが初の書籍となる。2010年12月に続編である『まさかジープで来るとは』、2011年11月初の単著『第2図書係補佐』をそれぞれ刊行。2015年1月7日に『文學界』2月号に初の中篇小説『火花』を発表し、純文学作家としてデビュー。3月に文藝春秋から『火花』が単行本化。同作が第28回三島由紀夫賞候補となり、第153回芥川龍之介賞受賞に至る2016年にNetflixと吉本興業によってネット配信ドラマ化2017年板尾創路監督により映画化された。2017年『劇場』刊行。2018年9月、毎日新聞夕刊で新聞小説「人間」を連載し、毎日新聞出版から2019年秋に発売予定となる。

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