塑する思考

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103510710

感想・レビュー・書評

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  • どこで「弾性」を使い、
    どこで「塑性」を使うのか、

    自我を削り取って削り取って、
    最終、譲れないものはなんなのか、

    知っていきたい。

  • 佐藤さんがデザインの仕事の中で感じた「デザインは装飾であるという誤解」の危機感と、デザインを通して考えた人の営みについてエッセイ的に書いた本。
    「デザインが一切関わっていない物や事はひとつもない。どんな分野のどんな物事にも、すでにデザインがある。デザインとは水のようなもの。」と語る点は大変同感。

    「塑」の意味ですが、デザインの仕事をしていく中で、無理に守らねばいけない我なんてなくて、
    弾性(元に戻る)よりもむしろ塑性(そのままの形になる)ほうが「剛より強い柔」なのでは。という意味のようで、
    デザインをアートと取り違えて自己表現を重ね合わせがちな立場なので、この考え方はいいなあと思いました。
    デザイナーでなくとも、中身のあるいいものをつくりたいなとお考えのひとにおすすめです。

  • 養老孟司先生が新聞の書評で「この本を読んで、自分もデザイナーになってみたくなった」と書かれていたのを読み、自分もこの本を読んでみたくなった。
    これは、ニッカウィスキーの「ピュアモルト」明治の「明治おいしい牛乳」ロッテの「クールミントガム」などのデザインを手がけ、日本を代表するグラフィックデザイナーの一人である著者が(私は門外漢でお名前を存じませんでしたが)、それらの仕事を通じて思考し、たどり着いたデザイン論である。そのポイントを一言で表すとすれば題名にあるとおり「塑する思考」という著作オリジナルの言葉になるのだろう。「塑」とは、外部からの力に従ってどのような型にもなるが、決して元の型に戻ろうとしない、そもそも元の型というものがないという意味で、同じ「柔軟」ではあっても絶えず元の型に戻ろうとする「弾力」とは分けて考えるべきだという。柔軟に思考することは大切だが、デザインにおいては「塑する思考」すなわち、自分とか個性を表現しようとするのではなく、そのものに内在する価値を引き出すこと、いわゆる付加価値とは逆の発想こそが大切だというのである。和食の職人が素材の味を引き出すとか、仏師が仏様を彫るのではなく、木の中から仏様が現れる、などと語られることがあるように、いわゆる達人が語る言葉には分野を超えて通じるものがあるようだ。そもそもデザインとは絵画とか工芸とかいわゆる芸術の一分野に分類されるものではなく、人が生み出すあらゆるものに関わっており、その意味で人と物を仲介する「水」みたいなものだという。水は方形の器に隨う、たしかに「塑」だし、この惑星では普遍的に存在する生命の源でもあるから、デザインを論じるととても深い世界のことまで想像力が働いてしまう。養老先生がデザイナーになってみたくなったというのも、あながちお世辞ではないと思える。
    この本にはグラフィックスという2次元の世界を超えて、奥行きと含蓄に満ちた言葉が溢れている。

  • 佐藤卓さんのロッテの板ガムのデザイン。祖父が大好きで箱買いでストックをしていたので家に遊びに行くと毎回のように1本もらって帰りの車の中でじっくりと眺めてた。小さい頃からあのペンギンには親しみを感じていて大好きだった。リニューアルされたのは少し残念です。


    自我を殺しきれていない仕事と対峙した時、ヌメっとしたような、なんとも居心地が悪い感覚になることがある。それがどういう事なのか、柔を2つのパターンの「弾性」「塑性」の違いとして言語化してあった。「弾性的とは常に自分に帰る生き方」とはすごくわかりやすい。
    「付加価値」っていう言葉の違和感についてもそう、付加するのではなく、見直してより分かりやすく再構築をしたということ。付加する、という言葉に感じていた違和感がすっきりした。
    自我殺しのやり損ない・ムラっ気に気をつけなきゃなぁ。

    「アノニマスな便利」ではない、人為的な便利にも。
    私くらいの大富豪でもない人間でも、資本主義の便利のおかげで古代にすると常に12人のお手伝いさんを雇っているような生活が出来てる。その一方で貧困、格差、環境問題が遠いながらも知れてしまう。さかんに話題になっている。
    ある漫画家が「共産主義は、資本主義を通り過ぎた社会でのみ実現する。ロシアや中国のような君主制のあとに移行した共産主義は上手くいかない。日本のような、1度資本主義による成長と飽和を経験した国でこそ実現出来る。」と言った。
    その漫画家の時代には早すぎたかもしれないけれど、もう、根本の社会のありかた、資本主義の限界が来ているんだと感じる。資本主義でも共産主義でもない新しい考え方、または構造の改良が必要だ。

    「分からない」から全ては始まる。
    謙虚に生きたい、そう思える本当に素敵な本です。

  • 特にクールミントガム、おいしい牛乳の例は、デザインのしごとを進めていくうえで、ストイックさを持つべきところへの示唆を多分に含んでいて、非常に勉強になった。

    デザイン観みたいなものの考え方の色は、意外とあんまり合わないと感じた。

  • デザインを理想主義としての思考と捉えているところ、はげどう

  •  クールミントやニッカのエピソードは、正しく創造的なエピソードである。
     その一方で、サーフィンの話は、微苦笑。

  • 『「付加価値」撲滅運動』とか『「便利」というウィルス』などの章が特におもしろかった。デザインとはそもそも何か、というところから始まり、グラフィックデザイナーの視点から見た現代の様々な側面を、わかりやすい文章で伝えてくれる。

  • 普遍性を持つ容れ物(場・プラットフォーム・モノの形)としての『構造』と、その中で様々に展開する『意匠』。単純さと独自性。
    ブランディングとの関係。

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著者プロフィール

デザイナー

「2017年 『大量生産品のデザイン論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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