毒母ですが、なにか

著者 :
  • 新潮社
3.46
  • (15)
  • (43)
  • (52)
  • (14)
  • (1)
本棚登録 : 349
感想 : 50
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103512516

作品紹介・あらすじ

幸せは、たゆまぬ努力でつかみ取る。私、どこか間違ってます? 十六歳で両親を亡くしたりつ子は持ち前の闘争心で境遇に逆らい、猛烈な努力で自らの夢を次々実現してきた。東大合格、名家の御曹司との結婚、双子誕生。それでもなお嫁ぎ先で見下される彼女は、次なる目標を子どもたちの教育に定めた。あなたたちにも幸せになってほしいから――。努力と幸福を信じて猛進する女の悲喜劇を描く長篇。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • はじめての作家さんでしたが、タイトルに惹かれ手に取りました。
    私自身も子どもたちの中学受験を経験しりつ子さんの気持ちもわからなくもなく他人事ではないと思いました。

    書いていることは、わりと重いのだけどりつ子さんの毒吐きっぷりは、おもしろかったです。

    母と娘の在り方を今一度考えさせられる作品でした。
    他の作品も読んでみたいと思います!

  • 初めて読んだ作者の本。
    中々面白かった。

    主人公は若い頃に両親をなくし、祖父母に育てられた女性。
    彼女は美しく頭もよく、育ててくれた祖父母は裕福な名家・・・と、何もかも揃った女性で、やがて東大を出て、名家に嫁ぐ。
    夫は優しい人柄の男性だったが、姑、小姑は性格が悪く、姑には最初に出来た子どもを中絶するようにと言われる。
    その後に生まれた双子の男の子と女の子。
    男の子の方は出来がいいが、女の子はグズで彼女の思うように育たず、苛立ちを子供にぶつけてしまうようになる。
    やがて、子供を名門校に入れるべく彼女は奮闘する。

    タイトルに「毒親」とあるけど、私からすると、この主人公の女性は毒親というよりも教育ママというイメージだった。
    毒親っていうのはもっと、子供の事だけでなく、自分だけに意識がいっている人だし、子供の足を引っ張る人、夫婦ともに似たような感覚でもっと狡猾で外面がいい、というのが多いと思う。
    それで言うと、この人はかなり感情的になっているものの、理性的な面もあるし、父親は子供を愛している。
    結果的に子供が成功者になっているのを見ると一概に悪いとも言えないのでは・・・と思う。
    むしろ、子供の様子を見ていると、主人公目線で見るせいか、私もイライラする所もあった。
    ただ、毒親という言葉は広く使われていて、定義もちゃんとないので、これが毒親だと思えばその人にとっては毒親なんだろうと思う。

    タイトルからして子供と毒母のことばかりを書いてあるのかと思いきや、最初は主人公の生い立ちを描いていて、ここ、そんなに丁寧に書く必要あるかな?と思ったけど、それがあって彼女の心情が理解できるというのがあった。
    だから、イライラする気持ちや自分だけがのけ者になっているという疎外感もよく分かった。
    ずっと自分の確たる居場所のなかった人だったんだと思う。
    どんなに完璧にやっても認められない虚しさ。
    自分がこんだけ頑張ったんだから子供も・・・と思う。
    いつも、どこか満たされない気持ちがあって、それを身近な者に求めてしまったー。

    ・・・と、真面目ぶって感想を書いてるけど、物語のイメージとしてはシリアスというよりはどこかコミカルだった。
    特に主人公が腹が立つ姑、小姑、子供に悪態をついたり、悪口を心の中で言ったり呟いたりするのには何となく読んでてスッキリした。
    もっと言ってやれ!と思った。
    毒母の主人公よりも周りの人間に私も腹が立った。
    人が良くて優しいと描かれている夫も勝手なもんだと思う。

    彼女は出来る人なんだから、子供に期待する分、自分自身が成功するように動いたら良かったんだ・・・と思う。
    その方向性の違いが悲劇(喜劇?)を生んだ。
    結末は主人公がしたたかにしぶとく生きている様子がうかがえて良かった。
    新しい目的ができたんだね・・・。

    また、この作者の本は別のを読んでみようと思う。

  • 水と油のような母娘だ。小学受験のくだりは読むのが辛かった。
    りつ子自身も苦労を重ねた。両親が早くに亡くならなかったら人生違っていた事だろう。
    環境が彼女を頑なにしてしまった。
    年老いても娘に対抗する母、恐ろしすぎる。

  • もう少しソフトな内容をイメージしていたので、20ページも読まない内に辛くなって来た。行を飛ばし、段落を飛ばし、遂には章まで飛ばしながらどうにか読み終えた(と言えるのか?)。
    個人的には全く違う世界で生きて来たので共感は出来ないが、描かれているモノが実在に近似し得るものと言うのが恐ろしい。

  • 中学受験を控えた子供を持つ親としては、穏やかな気持ちでは読めなかった。
    聖良と同世代の人間として受験を経験した身としては、フィクションだと分かっていてもどのエピソードもリアルに感じられ、なんだか身につまされて辛い気持ちで読んでいた。

    子供のためと思っての言動のつもりが、自分のためになっていないか、ちゃんと子供の意見を聞けているか、省みたいと思う。

    毒母も、周りに対する自分の優越感のを満たす目的と同時に、一応は娘の将来に備える目的も持っていることはよく分かった。

  • 私はちょうど主人公の娘と同じ年に生まれているが、地方出身なので幼稚園受験とか中学受験とかとは無縁(むしろ校内暴力とかバンバンある中学校に通っていた)だった。なのでこんなに必死な、昔でいう教育ママは周りにいなかったけれど、父親が毒親だったのでどうしても主人公より娘の方に感情移入してしまう。娘のことを要領が悪い、愚鈍だと罵っているけれど主人公もいまいち要領がよくない。思い込みがはげしくて選択の幅をせばめては失敗しているし、そのわりに反省はしない。失敗してきているのに他人の話を聞かず、なぜか自分の考えに間違いはないという自信があるのだ。生い立ちには同情するけれど、逆境を跳ね返すパワーがありながら方向性を間違っている。娘への罵倒や暴力など、そのままでは悲惨で後味が悪い話になってしまうが、しかしその間違ったパワーと娘の反抗のおかげで最終的にはコメディ調でまとまっており、救いがあって読みやすかった。

  • 姑がヨメをいびる話…かと思いきや、主人公自身がお受験ママ。双子を出産するが1人を溺愛し1人を出来の悪い子と決めつけこれが愛情と信じ込んで子供の意思を無視して自分の価値観を押し付けていく。。
    他にはない主人公、ストーリーで意表をつかれすごく楽しめた。

  • 私も双子だから、比べられる辛さなどがわかるので、ものすごく自分の事の様に読んでしまった。
    色々な家族がいるんだなと、感じた作品。

  • 最後まで一気に読み切ることができた。

    子どもをほったらかしにしているわけでもない。
    むしろ「いつもいつでも子どものことを考えている」母親が
    こうも毒になりうるのか、と順をおって読み進めることができた。

    主人公りつ子が、若い頃に自分の人生を自分で考え、精一杯の努力をし、人並み以上の成果を勝ち取ってきたからこそ、
    「よかれと思って」やることが、子どもをつぶしていく。

    りつ子の気持ちも理解できるし、
    娘、星良の気持ちも痛いほどわかる。
    親にこんなことをされたら家庭で息ができない。

    姑、小姑たちとの関係もすごくリアル。
    本人に努力しようのない事情のみをあげつらい蔑むのは本当に罪深い。。

    もし星良がうまれたのがこの家でさえなければ。
    祖父母が倫太郎と一緒におやつに誘ってくれていたら。
    お受験の時、一度でも母親が受験より自分を見てくれていたら。
    父親が星良のために踏ん張って父親として戦ってくれていたら。
    子どもからのSOSは何度もあった。切ないほどの描写があった。
    なのに、見ようとしなければ親には何も映らないのですね・・・
    長い年月をかけて毒を盛られていく過程を見せられました。

  • 母親目線のお話し。
    色んな経験をして結婚、出産、子育てをしていく。
    子どもの将来を想い、良かれと思った行動が子どもを苦しめていく。

    ”子ども自身がしたい”と思っているのか
    “親のエゴ”なのか…
    一生懸命になる方向を間違うと、親子の“絆”が“溝”になると知りました。

    人間の執着、劣等感など、負の感情がたっぷりで
    とても興味深い一冊でした。

全50件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1958年、東京都江戸川区生まれ。早稲田大学文学部卒業。松竹シナリオ研究所で学び、脚本家を目指し、プロットライターとして活動。その後、丸の内新聞事業協同組合の社員食堂に勤務しながら、小説の執筆に取り組む。2007年、『邪剣始末』で作家デビュー。2013年、『月下上海』で第20回松本清張賞を受賞。その他の著書に「婚活食堂」「食堂のおばちゃん」「ゆうれい居酒屋」シリーズや、『風待心中』『ゆうれい居酒屋』『恋形見』『いつでも母と』、共著に『猿と猿回し』などがある。

「2023年 『婚活食堂9』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山口恵以子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×