樽とタタン

著者 :
  • 新潮社
3.29
  • (13)
  • (45)
  • (80)
  • (13)
  • (6)
本棚登録 : 418
レビュー : 72
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103513513

作品紹介・あらすじ

忘れかけていた子どもの頃の思い出を、あざやかに甦らせる傑作短篇集。小学校の帰りに毎日行っていた赤い樽のある喫茶店。わたしはそこでお客の老小説家から「タタン」と名付けられた。「それはほんとう? それとも噓?」常連客の大人たちとの、おかしくてあたたかな会話によってタタンが学んだのは……。心にじんわりと染みる読み心地。甘酸っぱくほろ苦いお菓子のように幸せの詰まった物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 面白いタイトル。
    理由は赤い樽の中にいつもちょこんと入ってる女の子。その子のニックネームはタタン。
    坂の下にある喫茶店での話。小学校から帰ったらこの喫茶店で時間をつぶす。
    そこの常連客との面白い日常。
    こんな小学校時代を送ったら面白かっただろうな~

  • 学校帰りに安心して立ち寄れる居場所。
    私にとってそれは家ではなく赤い樽のある小さな喫茶店だった。
    迎えてくれるのは血の繋がった家族ではなく、年齢も職業も違うし本名さえも知らない、喫茶店の一風変わった常連客の面々。
    けれど彼らはまぎれもない「家族」であり仲間だった。
    常連客の一人がつけてくれた私の呼び名は「タタン」。

    30年以上経って大人なった「タタン」が幼少時代の記憶を手繰り寄せる連作短編。
    あの頃のおぼろげな記憶が嘘か誠か…それは問い詰めてはいけない問題だ。
    確かに幼少時代の記憶は曖昧で、自分の都合で作り変えたものが多いのかも。

    印象に残ったのは亡き祖母の言葉。
    人はぱっと死んで、ぴっと入ってくる。
    亡くなった後、心の中に入り込んできた大切な人との思い出は、そのままずっと心の支えとなってくれるはず。
    素敵なセリフだった。

  • 居場所が見つかってよかったね。
    そんなにホッとできる喫茶店、行ってみたよ。
    周りの大人が放置してくれるから、変な気を遣わずにいられて安心できたのか? 赤い樽が魅力的だったのか。
    狭い所に入ると安心するってあるのね〜。
    本当の話のような嘘のような、でもなんかじわっと幼いころを思い出せていい感じ。

  • 子どもの頃の記憶、思い出。それは本当にあった出来事か。それとも後から付け足されたものなのか。確かに体験してその時にはよくわからなかったことが後々意味を持って降ってくる。ずっと思い出さずに忘れていたことが突然頭の中で鮮明になる時がある。思い出せば思い出すほどに大切で意味のあることだったのだと大人になった今気づく。あの時の自分と今の自分。変わったとこも変わってないとこもあるけれどあの頃の大切な記憶は大切なまま持っていられるように変わらずにいたい。

  • 小学校からの帰りに毎日立ち寄っていた喫茶店での小さな出来事を、大人になってから回想して記したという設定の連作短編集。

    幼い頃から集団生活になじめなかった少女の、唯一安心できる居場所だった喫茶店には、一風変わった人たちが集う。
    過去に体験したと信じている出来事は、果たしてどこまでが本当に起きたことだったのか、記憶の上書きも含めて記しているため、物語というよりも作者のエッセイを読んでいるかのような気分になってくる。
    その曖昧さが優しさに包まれて、そのまま読後感へとつながるような作品だった。

  • 「あの店に来ていた客たちは、誰もがどことなき孤独だった。[...] みんな独自のひとりぼっち感を漂わせていた。」(127 ページ)

    小さな少女が、幼少期に預けられていた喫茶店。
    そこで出会った、少し孤独な大人たちとの物語り。

  • どことなく川上弘美さんのうそこ話に似ているような似ていないような…
    でもあちらはたんぽぽの綿毛が舞うようなふんわり感であるのに対しこちらはさらさらと砂山が崩れるような儚さが漂うところはやはり中島さんらしさなのだろうかわかりにくいけど。
    かつてタタンちゃんと呼ばれた女性の30年の時を遡る回想録、当時下町の喫茶店に集う超個性的な常連さんたちの哲学的とも取れるエピソードだけでも充分に面白いのだがそれらをラストにファンタジーで一括りしてしまう演出も心憎い。
    もうひとりのトモコは誰?それは聞いてはいけない質問です

  • 2019.4月。
    .
    #樽とタタン
    #中島京子
    #新潮社
    .
    喫茶店の樽に居場所を持つタタンとそこに来る大人たちの不思議な話。
    学校でも家でもない自分の居場所があって、大人たちと関わりがあるっていいな。
    子どもも大人もないね。
    一対一の人間。
    そういう扱いをしてあげられる大人になりたい。
    .
    .
    #2019年28冊目
    #本 #book #読書 #reading #本の記録 #読書日記 #読書感想文 #書店員

  • しつけや勉強とか大層なものではなく、小さなことだが子供の頃に教えられた何気ないこと。そういうことって、みんな何某か持っていると思う。

    この本では主人公の小学生「タタン」が学童保育代わりに預けられた喫茶店でマスターや常連客から教えられた何気ないことを大人になって思い出す体でストーリーが進んでいく。大人(というか中年の域)になって読むこういう回顧物語は、実にフワフワと気持ち良い。まさに大人のための童話だなぁと思う。

    リアルな話もあれば、ちょっとだけファンタジーな話や、メランコリックな話もあって、心の様々な琴線をちょっとずつ揺らしてくれるのが心地よい。

    しかし、タイトルだけでスイーツをめぐる女子が活躍する小説と思っていたが、全然違った(笑

  • 語り手は、小学生のころ両親が共働きだったので放課後を近所にある喫茶店で過ごしていた。店主は彼女に赤いコーヒー豆の樽で居場所を作ってあげた。その樽の中にすっぽりはまって過ごしている彼女を、常連客の作家が「タタン」と呼び始め、お店の常連客達は皆タタンと呼ぶようになった。そのタタンと喫茶店の客たちのあれこれを大人になり小説家となったタタンが語る短編集。

  • 本書は9編の短編で成り立っている。

    カフェの樽の中に座っている女の子。
    その女の子が喫茶店の中で見聞きしたことを述べていく。
    彼女は小さな町の小さな喫茶店で小説家と知り合う。
    そして、その小説家にあだ名をつけられた。
    君は樽の中にいるから、タタンだな、というのだ。
    タルト・タタン。

    この物語を表す言葉が、作中に登場する。
    「小説家には一つだけ、聞かれても答えなくていい質問がある。」(215頁)
    それというのも、ここで描かれる物語はどれも大きな出来事が起きないからだ。
    ただなんとなく不思議で、何となく心温まるような、なんとなく切ないような、なんとなく恐ろしいような。
    そんな、どこかふわふわとした夢心地のような物語なのである。
    だからと言ってなんとなくが続いても、つまらないと言うわけではない。
    藤子・F・不二雄の言う、「すこし・ふしぎ」な世界がそこにある。

    8話目の「カニと怪獣と青い瞳のボール」などは子供の想像力という物の、美しさと悲しさと愛おしさを感じさせる。
    私も子供の頃ぬいぐるみで遊ぶのが好きだった。
    ぬいぐるみに喋らせて家族をたくさん作り、みんなが楽しく過ごしている世界を想像するのは楽しかった。
    マグロのまぐちゃん、ヒラメのひらちゃん、蛇のヘビちゃん。
    名前の付け方はどうにもこうにも適当であったが、その誰もが私の大切な友人であり家族であった。
    さすがに今はぬいぐるみたちが私に語りかけることはないが、私の子供たちにはまた語りかけているようだ。
    それは微笑ましくもあるが、それと同時にすこしだけ、悲しみを伴っているように感じるのは私だけだろうか?

    1話目の「「はくい・なを」さんの一日』は不思議な物語だ。
    事実は小説より奇なりと言うが全くもってそうだ。
    いや、この物語自体が小説なのだけれど、似たようなことは現実にも起きる。
    作り物と現実の境目は案外曖昧なのかもしれない。

  • 小学校の帰りに毎日行っていた、
    赤い樽のある喫茶店。
    わたしはいつも樽に隠れて遊んでいたので
    お客の老小説家から「タタン」と名付けられた。
    常連客の大人たちとの、可笑しくてどこか温かい
    会話からタタンが学んだことは…

    「「はくい・なを」さんの一日」
    「ずっと前からここにいる」
    「もう一度、愛してくれませんか」
    「ぱっと消えてぴっと入る」
    「町内会の草野球チーム」「バヤイの孤独」
    「サンタ・クロースとしもやけ」
    「カニと怪獣と青い目のボール」
    「さもなきゃ死ぬかどっちか」収録。

    子供の頃の記憶って、本当にあった思い出なのか
    時間が経つにつれて少し脚色が
    加わった記憶なのかわからなくなる事
    ありますよね。そんな感じの曖昧な
    不思議さが良く出ています。
    喫茶店のお客さんたちとタタンの距離感が
    心地よい可愛くてちょっと不思議な物語。

  • 「小さいおうち」の作者である中島京子氏の作品である。

    登校拒否的な小学生の女の子。
    坂の下にある1軒の喫茶店の中にある樽で、母の帰りを待つことになるのだが、、、、、
    常連客から、樽に居るから、タタンと、呼ばれ、色んな大人から 学校では教えられない事を学ぶのである。
    それは、難しい事でなく、喫茶店での出来事などから、人生経験豊かな大人が、話して聞かせてくれた内容である。

    愛について、、、サンタクロースについて、しもやけの直し方について、、、小説の作り方において、、、、

    小説の最後に、
    「小説家には一つだけ、聞かれても堪えなくていい質問がある」と、、、、

    この小説の中のタタンは、作者なのか?それとも創作の中の人物なのか?
    それを想像するのもいいかもと、、、、。

  • 小学校低学年の女の子がなぜか預けられている喫茶店での出来事だが、吸血鬼のようだったり、未来から来たり、現実離れしている。幼い子どものの想像力のなせる技か?バヤイの恋の話はわけがわからなかったが、恒川さんの一番最近読んだ本を彷彿とさせられた。おばあちゃんの話がすき。
    全体的にタタンに対しての喫茶店の人たちのベタベタしすぎない愛情が感じられて良かった。

  • 無口な喫茶店のマスター、そこに通う常連客は老小説家、学者…
    赤い樽がアクセントのお店で、小さな女の子が隠れてる。そこはきっと純喫茶。
    ノスタルジックだけど、ほんわかした話しばかりではなく、ちょっと物悲しかったりシビアだったり。
    思ったほど喫茶店メニューの描写はなかったけど(笑)
    大きくなった女の子「タタン」が、ホットミルクを飲みながら思い出したお話しのようでした。

  • 20181010読了

  • 第2章までで挫折・・・ほっこりした空気感は悪くないんだけど、自分の時間をかけてまで最後まで読みとおす気力がわかなかった、ごめん。図書館でけっこう待ったから、期待値が高すぎただけかも。

  • 駄洒落やん!と表紙絵を見て思う。小学生の頃、母の仕事が終わるまで主人公は喫茶店に預けられていた。喫茶店にある赤い樽の上に座っていたから、タタンと呼ばれるようになった。ここに書いてることって、本当なの?中島京子さんの、小さい時の話?そう聞きたくなったけど、最後に素敵な一文が。「小説家には一つだけ、聞かれても答えなくていい質問がある。」このお話ほんとう?嘘?

  • 赤い樽のある喫茶店で過ごす女の子。喫茶店にいる人達との関わり合いの短編集。想像力を思いっきり膨らませて読んでみると楽しい。子供の豊かな発想が面白い。中でも、お父さんが怪獣になったという一話は、全くもって分からなくて愉快。

  • 幼いころ、居場所になった古い喫茶店。
    赤い樽、常連客、店を訪れた客、サンタクロース?

    「はくい・なを」さんの一日
    ずっと前からここにいる
    もう一度、愛してくれませんか
    ぱっと消えてぴっと入る
    町内会の草野球チーム
    バヤイの孤独
    サンタ・クロースとしもやけ
    カニと怪獣と青い目のボール
    さもなきゃ死ぬかどっちか

    小説なのか、エッセイ風な書き物なのかわからなくなるような一冊で、さらっと読み終わってしまったんですけど、子供時代の感性とか、懐古的な雰囲気とか。ちょっと不思議な世界感がなんだかいい感じでした。

    お盆休みに田舎を訪れて畳に転がって読んだら、自分の幼いころの思い出のかけらみたいなものがふっと思い出されそう。夏休みに読めて良かったなーと思う本でした。

全72件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

中島京子(なかじま きょうこ)
1964年東京都生まれの作家。『FUTON』でデビュー。著書に『小さいおうち』(直木賞)、『かたづの!』(河合隼雄物語賞・柴田錬三郎賞)、『長いお別れ』(中央公論文芸賞)等。2019年5月15日、新刊『夢見る帝国図書館』を刊行。

樽とタタンのその他の作品

樽とタタン Kindle版 樽とタタン 中島京子

中島京子の作品

樽とタタンを本棚に登録しているひと

ツイートする