- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103514428
作品紹介・あらすじ
不安で叫びそう。安心が欲しい。なのに、願いはいつも叶わない――。『1ミリの後悔もない、はずがない』で大注目作家の心揺さぶる最新長篇! その頃見る夢は、いつも決まっていた。誰かに追いかけられる夢。もう終わりだ。自分の叫び声で目が覚める。私は安心が欲しいだけ。なのに夫は酔わずにいられない。父親の行動は破滅的。けれど、いつも愛していた。どうしたら信じ合って生きていくことが出来るのだろう――。痛みを直視して人間を描き、強く心に突き刺さる圧倒的引力の傑作!
感想・レビュー・書評
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千映のワンオペ育児から始まるのだが、読み進めるうちに娘の恵が将来の自分になっては…という思いが見えてきた。
読み進めるにつれて、壮絶な思いが伝わってくる。
これでもか…と続くうちに疲弊するのは自分だけなのか。
それでも投げ出さずに向き合っていくしかないのか…
許せることなどできるものか…と思い、だが捨てることはできないのだ。
愛とはいったい何なのか。
こんなにも苦しくて憎しみさえ感じてしまうものなのか。
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アルコールに溺れ、ついには暴力まで振るうようになってしまった父親。
一升瓶を抱えて酒屋からでてくる、主人公の千映。
高校時代から付き合い始めた、宇太郎との間に娘の恵も授かったが、近ごろ宇太郎の酒の飲み方が酷くなって来ている。
浴びるように飲む。吐く。寝る。紛失する。
私の父もよく酒を飲む人間だった。
暴力などは一切無いが、私が幼い頃は、午前様で部下を連れて帰り、翌日に知らぬ大人と朝食をとり、幼稚園に行く、なんてこともよくあった。
大人になり、実家に帰省した際も、深酒した父にうざ絡みされ、立てなくなる程酔った父を姉達と布団まで引きずったこともある。
母は「あんた達の顔見れて、嬉しくて飲み過ぎてるのよ!」と笑っていたが、子供の頃は日曜日など、寝不足の母の怒りが爆発し、二日酔いの父親と家を追い出され三人でラーメンを食べによく行ったのを忘れているのか?(笑)
一木さん作品は3冊目だが、いつも女性の細やかな感情を余すことなく表現されているなぁと思う。
例えばそれが、女子高生であっても、子育て中の母親であっても、孫をみる高齢の女性であってもだ。
「全部ゆるせたらいいのに」こう思っても、出来ない事の方が多い。
私のような未熟な人間性の持ち主には、特に厳しい。
現に絶対に全部ゆるせない相手がいる(笑)
短編集かと思って読み始めたら、主人公千映の子育て中の話から始まり、母の新婚時代、父からの目線、宇太郎との出会い、そして最後はまた現在へと繋がっていて、アルコール依存症の父を抱えた娘の葛藤の移り変わりが良く伝わってきた。
読み進めるのも辛いページもあったが、最後のザクロの木の話は、ささやかな幸せを感じられて良かった。
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読んでいて悲しく、つらかった。
アルコール依存症の父と、その父を心から愛する母。そんな両親の娘である「千映」。
千映が結婚して、娘「恵」が生まれたが、夫の宇太郎は酒に飲まれる日々を過ごしている。
恵が赤ちゃんのとき、家で恵と二人きりのときに千映が感じる孤独。
「諦めるのではなく、許せたらいいのに」と、千映は思う。
私はこれまで、「諦めること」と「許すこと」を比べたことはなかった。でも、この本を読んで、その違いと類似性に、ハッとさせられた。
諦めることと、許すことは、受け取る側にとってはさほど違いはないのかもしれない(どちらも、口うるさく言われなくなる、という点が)。でも、それを与える側、決めた側の人の心は全く違うんだ。
父がアルコール依存症になる前、幸せだったときのことですら、私は読むのがつらかった。だって、千映は、それを覚えていないから。
お互い幸せな時間もあったのに、忘れちゃう。覚えていられない。
幼かった子どもが覚えていないのは仕方ないと思うが、親である父ですら、別人のように変貌してしまう。依存症の恐ろしさだ。
ただ、最後まで読んで「やはり子どもは希望だ」とも思った。
千映自身も、誰かの希望だった時間があったこと、知ってほしい。
千映が思うように、私も、恵には千映のような子供時代を送ってほしくないと思った。幸せであってほしい。
千映の父もまた、誰かの希望だったのだ。しかし、千映の祖母(父の母親)は、優秀であること、いい学校に入ること、など、「条件付きの愛」しか与えてこなかったのだと、千映は思う。悲しいけれど、これは世の中のこどもの多くが味わってることだと思う。私も、親が望む姿でなければ自分は愛されないと思い、親に嫌われたくなくて、失望されたくなくて、不登校になる勇気すらなかった。
千映の父親も、もしかしたら、そういう息苦しさを感じ続けながら、大人になってまで親に与えられた職場ですり減り、行きつくところまで行ってしまったのかもしれない。
大人になってから、親のこと批判するなんてって憚られるけど。でも、大人だからこそ、もはや耐えられないことってあるんだと思う。
親子、夫婦・・・家族だからこそ、許すこと、諦めることが、難しい。
どんなひどいことされてても、相手が死んでしまえば、「もっと話しておけば、会っておけばよかった」と、残された者は後悔する。
死ぬことでしか、許してもらえないことってきっとある。千映の父は、死んだことで千映に後悔を残した。
私は常々、死んだから美化されるなんておかしい、と思っている。私は自分の意志で遠ざけている人がいるが、その人が死んでも、もっと会えばよかったなんて思わないだろうし、そう思っているからこそ、遠ざけている。
そんな私でも、その人が死んだとき、やはり、もっと親切にすべきだった、もっと会っておくべきだったと、自分を責めるのだろうか。
この本を読んで、現在の自分の判断に、少し自信がなくなってしまった。 -
図書館にて。
Twitterで紹介されていて予約。
ゆるせないだろう、と思う。
父ちゃんが酒乱で、という話。
子供は逃げられない。
危害を加えられる前に、母ちゃん助けろよと思う。夫婦の間の愛などはその後だろう。
冒頭の章、子育ての過酷さも自分のことがフラッシュバックのように思い出された。
全部ゆるせたらいいのに、は全部ゆるせなかったらいいのに、と自分なら思ってしまいそうだ。
どちらにも振りきれないからつらい。
反面、私も酒飲みだ。
楽しいときはいいけど、辛いときに飲んで何かしてしまうかもしれない。
どうであれ、娘を傷つけることはあってはならない。
酒に逃げる気持ちもわかりつつ、言い訳には出来ないし、許されたいだろうが許されないだろうなと思ったりした。 -
アルコール依存症は聞いたことあるが
こんなに辛く怖いものなんだと思った。
自分の親がお酒に呑まれていく様…
それが日常の出来事だから、他の家との違いが
余計に辛く悲しい。
彼女には幸せになって欲しいと思いながら読みました