全部ゆるせたらいいのに

著者 :
  • 新潮社
3.67
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本棚登録 : 289
レビュー : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103514428

作品紹介・あらすじ

不安で叫びそう。安心が欲しい。なのに、願いはいつも叶わない――。『1ミリの後悔もない、はずがない』で大注目作家の心揺さぶる最新長篇! その頃見る夢は、いつも決まっていた。誰かに追いかけられる夢。もう終わりだ。自分の叫び声で目が覚める。私は安心が欲しいだけ。なのに夫は酔わずにいられない。父親の行動は破滅的。けれど、いつも愛していた。どうしたら信じ合って生きていくことが出来るのだろう――。痛みを直視して人間を描き、強く心に突き刺さる圧倒的引力の傑作!

感想・レビュー・書評

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  • アルコール依存症の父とその娘のエピソードがメインストーリーとなっているが、それぞれの章では、父、娘、娘の夫がそれぞれ主人公となっている。各章でそれぞれの立場が描かれており、それを読むことで、人にはそれぞれの立場や思いがあり、それが「現状」を生み出しているのだとそんな当たり前のことを気づかされる。他人を見るとき、私たちはつい自分から見えている部分だけでその人を判断してしまいがちだ。しかし、自分自身にも色々な事情があるように、他人にも、その人なりのその人にしか分からない苦しみや困難を抱えているものなのだ。
    そんな困難でどうしようもない状況でも、家族の愛だけは信じてみたくなる、そんな温かくも切ない作品。
    後悔しない生き方なんてないのだろう。だけど人は皆、その時できる選択をしながら必死で生きているのだと感じた。

  • 図書館にて。
    Twitterで紹介されていて予約。

    ゆるせないだろう、と思う。
    父ちゃんが酒乱で、という話。
    子供は逃げられない。
    危害を加えられる前に、母ちゃん助けろよと思う。夫婦の間の愛などはその後だろう。
    冒頭の章、子育ての過酷さも自分のことがフラッシュバックのように思い出された。

    全部ゆるせたらいいのに、は全部ゆるせなかったらいいのに、と自分なら思ってしまいそうだ。
    どちらにも振りきれないからつらい。

    反面、私も酒飲みだ。
    楽しいときはいいけど、辛いときに飲んで何かしてしまうかもしれない。
    どうであれ、娘を傷つけることはあってはならない。
    酒に逃げる気持ちもわかりつつ、言い訳には出来ないし、許されたいだろうが許されないだろうなと思ったりした。

  • ヒロインの千映と、アルコール依存症になったその父親の、長年にわたる愛憎の物語。

    4つの短・中編からなる連作。各編のタイトルは「愛」という言葉から始まる。タイトルどおり愛の物語ではあるが、どれも苦く哀しい愛だ。

    4編はそれぞれ、異なる視点・角度から描かれる。

    最初の「愛に絶望してはいない」は、千映の視点から、夫の宇太郎との結婚生活を描いている。
    宇太郎は仕事のつらさから酒に溺れがちで、千映はそのことが不安でたまらない。かつて父親のアルコール依存症に苦しめられた記憶が蘇り、幼い娘を自分と同じ目に遭わせたくないと思う。
    つまり宿命の連鎖の物語であり、夫婦関係をフィルターとして千映と父の関係が描かれている。
    ここでの「愛」は、不安と背中合わせの薄氷を踏むような愛だ。

    2編目の「愛から生まれたこの子が愛しい」は、千映の母親の視点から、千映が幼かった日々が描かれる。
    それは、父親がまだアルコール依存症になっておらず、幸せだった日々の記憶だ。
    しかし、ストーリーの細部に、やがて父が依存症に陥っていく片鱗がほの見える。

    3編目の「愛で選んできたはずだった」は、父親の視点から描かれる。ここでの父親はもう、高校生の千映に酔って暴力を振るう男になっている。
    2編目に幸せな日々が描かれたあとだけに、父親の変貌ぶりは読者にも衝撃を与える。
    また、アルコール依存症に陥るまでのいきさつも丁寧に辿られている。

    最後の「愛で放す」は、中編といってよいボリューム。内容も濃密で、本書の圧巻といってよい。
    ここで視点は再び千映本人に戻り、幼年期から父の死までが描かれている。
    父親の晩年も、最後の死にざまも無残なものであり、作者はその無残さを、容赦なく克明に描く。
    しかし、父親はけっして悪人でも冷酷な男でもなく、ただ酒によって愛情を歪められてきただけなのだ。

    アルコール依存症の恐ろしさを、迫真のリアリティで描いて秀逸。
    親子/夫婦の愛憎の物語として捉えても、繊細な心理描写が素晴らしい。

  • 父親が朝から晩までお酒を飲み、家庭不和だった。娘はいつも父親とその事でケンカをしトラウマになってしまう。娘は家庭を持ち、子供が生まれたが夫はお酒に溺れる日々。育児が大変な時期なのに夫が父親のようにアルコールに依存するのでは、と。アルコール中毒の父親と同じになり、自分は母親のように何もかも諦めて生きていくのか、と。では、一体どうすればアルコールから切り離した生活を送る事ができるのか・・・。父親がアルコール中毒の治療をするまでの道のりが壮絶で言葉になりませんでした。そうならないように両親とは違うカタチで娘は自分の家庭を築き上げて欲しい、と思わず願ってしまいました。

  • アルコール依存症は聞いたことあるが
    こんなに辛く怖いものなんだと思った。
    自分の親がお酒に呑まれていく様…
    それが日常の出来事だから、他の家との違いが
    余計に辛く悲しい。
    彼女には幸せになって欲しいと思いながら読みました

  • アルコール依存症(千映の父)の話。
    千映(対夫)、千映の母、千映の父、千映(対父)と。

    1章。12時までに帰るって約束したのに!って気持ちとか、連絡がつかないときの気持ちとか・・・この本書く上で以前の私に取材したっけ?なんでわかった?ってぐらい、その頃の気持ちほぼそのとおりだった。 いまは、夫がお酒は家で飲んでくれる日々で、とてもうれしい。
    1章から、4章。宇太郎はお酒を飲みすぎるのをやめたのだろうか。

    お酒は、頼りすぎるとおそろしい。それに、暴力は、なんだって、いけない。

    アルコール依存症の病院に入院させるまでのようすは、すさまじかった。お酒を飲ませながら、飲ませながら、気が変わらないようにと祈る思いで、連れて行く。

    「『好きだったからよ』って。」根底に、たくさん幸福な思い出があったから、お母さんは、お父さんをゆるせてしまうのか。

    全部、ゆるせたらいいのにね。

  • ①今現在の千映の話
    ②千映が幼かった頃の話
    ③千映の父親から見た千映の幼かった頃から青春時代にかけての話
    ④千映から見た父親のアル中の話
    これが、とんでもなく酷い。母親も祖母も、どうして助けてあげないのか?しかも何より可愛い子(孫)なのに。


    特に③の話、酔った父親に因縁といか言えない絡まれ方をするのは読んでて辛い。
    どうして逃げ出さないの?
    どうして母親はかばってくれないの?

    読んでいて救いようがない。
    携帯電話の番号を変える、そんなこともっと早くにすればいいのに。

    ラスト数ページ、少しだけ救いが見えたが、根本的に許すとかでは無い話であり、千映の夫の話はうやむやになってしまったようで、この話は、同じスパイラルを繰り返すように感じた。



  • アルコール依存症の父と、家族の物語。
    圧迫感や不安感が真に迫っていて、気軽に読める感動話ではないけれど、後味の悪さは全くなかった。

  • 教訓:酒は飲んでも飲まれるな。アルコール依存症の父を持つ娘の苦悩の物語。かつては私を愛してくれた父。それがこんな風になってしまうなんて、私のせいかもしれない。私が許せれば....。依存症という病気とはいえ、家族に対して多大な心身の苦痛を与える父親が許せなかった。私ならとっくに縁を切っている。徐々に希望が感じられるようなラストだが、私はその後の想像をじっくりしてしまって不安の方が勝ってしまった。なので読後はドンヨリ気分だが、暗い心の機微の描写がうまいのでグイグイ読めてしまう。

  • 一木けいさんの新刊は、アルコール依存症の父親とその家族の物語(鳥飼茜さんの表紙も物語のイメージぴったり)。全部で4篇で構成されていて、2編目の「愛から生まれたこの子が愛しい」までは幸せ展開と思っていたら3篇からは一転、壮絶展開が続く。家族なので許したいが許せない、でもいつか許せる日が来るかもしれない…自分も昔を振り返ってみると同じようなことがあったので読んでいてつらい部分もあった。物語の中の父親はどうしようもない人なんだけど、アルコール依存症になったきっかけを考えると、非常に切ないなと思う。

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