トモスイ

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 110
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103516088

感想・レビュー・書評

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  • アジアを題材にした短編集。
    これはかなり好みが分かれる様だ。私は結構好きだった。特に「トモスイ」は初っ端からかなり癖の強い (文体はかなりあっさりなのだが) 作品なので、ここで分かれそう。こちらは第三の性に寛容なタイからインスピレーションされた作品。トモスイの描写はちょっと気持ち悪い感じはある、なんだか第三の性というかもう融合性ですよね。トモスイというのは筆者の作り上げた空想の生き物だが、明らかに性的。
    他作品も非常に個性的。前半は常に「水」がキーになっている。また刹那を思わせる作品のように感じた。後半は「存在のしない者」と幻想・夢のような世界観。なんとなく仮想の世界観が宮沢賢治っぽいとも思った。

  • 短編小説集。どれもほんの数日、数時間の出来事を切り取った話ではあるが、薫るような死の匂いと生命力を感じるような、、、
    文学などわからない無学な私ではありますが、まるで手触りの良い布触れているような心地の良い文章だと感じるました。

  • 2014.05.17読了。
    今年17冊目。

    アジアを舞台にした短編集。
    これもバリに行ったとき訪れた占い師の家でみつけて気になっていた本。

    蒸せるような湿度、艶かしさが感じられて官能的。そして死が共通してる。

    だけどどれも全く違っていて、それぞれが独特な空気を醸し出してて割と面白かった。
    特にトモスイ。

    トモスイなんて...なんだかわからないトモスイが気になって気になって仕方ないし、吸ってみたいし、ユヒラさんは中性的だしで、つかみどころがないのに胸に残る。


    芳香日記はバリが舞台。
    あのバリの空気感がすごく伝わってきてまたバリいきたい病。
    バリの雰囲気はこの小説にぴったりだと思う。


    あとは唐辛子姉妹かなー。
    唐辛子が主人公というビックリなお話だけど、けっこう面白かった。


    モンゴリアン飛行だけが、全く頭に入ってこなくて読むのに苦労した笑

  • アジアの様々なところを舞台にした短篇集。日常半分、非日常半分。「トモスイ」「唐辛子姉妹」「芳香日記」が好き。

  • トモスイってなんだー??
    手に取ったきっかけは、週刊ブックレビューを見ていて高樹さんご本人がこの本について、語られているのを見たからです。
    思えばその時は、亡くなられた児玉さんが出ていらっしゃいましたね。
    アジアを旅して書かれた短編集だからか、どの作品も湿度が感じられました。
    トモスイってSFに出てきそうですね、、私も吸いたい!

  • とろりとした空気の中でじわりとにじみ出て来るように
    物語は進んで行く

  • 『作家、髙樹のぶ子が九州大学アジア総合政策センターの特認教授として、五年の歳月をかけアジアの十カ国を訪ね歩いて各国の作家や市井の人々と交流し、その成果を様々なメディアを通じて発信するというプロジェクトSIA(Soaked in Asia)の記録』、『アジアに浸る』からできた短編集、『トモスイ』。
    『アジアに浸る』はどうも中途半端な印象をうけて、あまり好きではなかったのだけれど、SIA(Soaked in Asia)の活動からうまれたこの作品は、まったく違うものとなっている。


    全体的に、死のイメージがつきまとう。

    現実と虚構。
    現在と過去。
    死者と生者。
    相対立するふたつの存在が1つの短編の中で融合する。

    作者が感じたアジアとは、そういうものなのだろうか。

  • 年間で10カ国を訪ねるたびに書かれた短編集。 どの短篇も予想通りアジアンな熱気や湿度を醸し出す。 喪失感や孤独感を書いているものもあるけど、どれも前向きな力があって暗くはない。女性の持つたくましさ、しぶとさが見え隠れする。 とはいえ、お話のテイストはさまざまだ。 予想通り、短篇「トモスイ」は川上弘美に近い。 とらえどころのない漂うおかしみって好きだ。 旅情や思慕が立ち込める「ジャスミンホテル」、「芳香日記」は円熟した女性の書き手らしい話だ。 静から動への意外な結末の「投」もいい。 土砂降りの台風の映像が浮かんで印象的なのが「天の穴」。この本の中での私のベスト。福岡の話だしね。 あ、今気づいたけど、これ、九大のプロジェクトから生まれた企画だから、サービスで大学界隈を書いてくださったのかしら。

  • 「トモスイ」って何?と思って手に取った1冊。冒頭に据えられているが、不思議で官能的な作品。川端康成文学賞受賞というのも頷ける。
    アジア10か国を訪ねた際に書かれた10編の作品集。あとがきにも書いてあるが、重いどろどろしたものと突き抜けた境地の作風とが半々。命の狭間でのできごとが綴ってある。

  • (2011.03.31読了)(2011.03.09借入)
    2006年から2010年の間に書かれた10篇を収めた短編集です。
    「5年間にアジア10カ国の文学者を訪ねてその作品を日本に紹介し、作品が生まれた背景の情報を様々なメディアに発信すると同時に、私も触発されて短篇を書くというプロジェクト「Soaked in Asia = アジアに浸る」を終えて、今こうして私の短編集が本になることは、とても感慨深い。」(あとがきより)
    収められている作品名は、以下の通りです。
    「トモスイ」「四時五分の天気図」「天の穴」「どしゃぶり麻玲」「唐辛子姉妹」「投」「モンゴリアン飛行」「ジャスミンホテル」「ニーム」「芳香日記」
    この中の「トモスイ」で、川端康成文学賞を受賞したとのことです。

    あとがきに、それぞれの作品についての思い出が綴ってあります。アジア10カ国を訪れながら、そのたびに作品を仕上げるというのは、大変であるとともに、楽しいことでもあったのでしょう。
    ・「トモスイ」はタイ訪問から生まれた。タイは第三の性に寛容な仏教国で、旧い教典には人類には四つのジェンダーがあると記されている。
    ・「四時五分の天気図」は、台湾の離島で実際に起きたことだ。
    ・「天の穴」は一回目のフィリッピン編で書いた。
    ・「どしゃぶり麻玲」。マレーシアのクアラルンプールの高速道路で暴力的な豪雨に遭い、五感が潰されて奇妙な浮遊感がやってきた。一瞬、命が宙に舞った。
    ・「唐辛子姉妹」は、韓国の「恨とは何か」というテーマと格闘したあと、その重さに耐えきれずにちょっと遊んだ。
    ・「投」は上海で宿泊したホテルの窓から見た光景に、朱色の一点を加えた。
    ・「モンゴリアン飛行」。子供のころ祖父から聞かされたモンゴルの大地の雄大さに、実際の紀行が結びついて、さらに児童文学者ダシドンドグさんが書き下ろしてくださった詩が加わり、奇妙な一編になった。
    ・「ジャスミンホテル」は二回目のベトナム編で書いた。ベトナムといえば私の世代ではベトナム戦争に直結する。ベトナム戦争を日々意識した二十代に直結する。
    ・「ニーム」はインドで、女性保護施設を訪問したときに見かけた、無言の女性からの発想だった。人も樹木も牛も象も、すべて白く覆い尽くす埃の凄まじさ。
    ・「芳香日記」は、最後の訪問国インドネシアのバリ島が舞台だ。白銀色の芳香に酔いつつ短篇日記を綴った。

    訪れた国と紹介する作家からの刺激を受けながら綴った作品なので、ある意味実験小説的な印象もあり、これから書く高樹さんの作品への反映が楽しみと言えるかと思います。

    ・「トモスイ」
    トモスイは、「魚でも海藻でもなくて、赤ん坊ほどの大きさの、貝の剥き身みたいなものだった。」(19頁)タマリンドの実を餌にして釣る。
    食べるのではなくとことん吸い尽くすのだそうです。身体の突起物と穴から吸うのだそうです。「腹のように膨らんでいる端のところに、体内から飛び出したものがあり、もう一方の端には、縦長に割れた臍のような穴が開いている。」(19頁)
    味は「こんな旨いもんを吸ったら、死んでもいいと思います。」(20頁)
    (トモスイは架空の生き物だそうです。タイへ行っても決してトモスイを注文しないように!)

    ☆高樹のぶ子の本(既読)
    「光抱く友よ」高樹のぶ子著、新潮文庫、1987.05.25
    「サザンスコール」高樹のぶ子著、日本経済新聞・夕刊、1991.06.
    「甘苦上海」高樹のぶ子著、日本経済新聞・朝刊、2009.10.31
    「ショパン奇蹟の一瞬」高樹のぶ子著、PHP研究所、2010.05.10
    (2011年4月3日・記)

著者プロフィール

小説家

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

高樹のぶ子の作品

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