うかれ女島

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 75
感想 : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103518211

作品紹介・あらすじ

秘密と欲望と一瞬の愛。とまどいながら、傷つきながら、あの島で、女たちは強くなった――。届けられた死者のメモ。主婦、保育所のオーナー、一流企業のOL、女優。共通点はひとつ。「売春島」で体を売っていたことだけ。あの日の記憶が蘇り、恐怖に包まれる。ばれるかもしれない。娼婦だった母への憎悪で、胸が張り裂けそうな男もまた――。心と体を痛みが貫き、やがて快感へと変わる、戦慄の体験があなたを待っている!

感想・レビュー・書評

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  • 「うかれ」とは島の言葉で売春のこと。
    タイトル通り、これは売春婦の島に関わる人々の物語。
    ・・・となると、この表紙からもかなり重たく陰惨な話かと思いきやそんな事はなかった。
    それはどうしてかと言うと、多分、この中で描かれている体を売ってお金を稼ぐ女性たちがその仕事をある意味、自分で選んでいるし、嫌々してないからだと思う。
    むしろ、そこを通り越して、自分をお金で買った男たちを包み込むような、そんな包容力を感じた。
    それは登場人物の一人である女性の名前、マリアー聖母マリアでなく娼婦だったマリアのイメージにつながっているように思えた。

    うかれ島で売春婦をしていた母親が事故死した事を知った若い男性。
    彼は母親の遺言により、かつて、うかれ島で売春婦をしていた4人の女性に会いに行く。
    今も売春婦をしている女性。
    公務員と結婚した専業主婦。
    有名な作家の愛人である女優。
    大企業で働くキャリアウーマン。
    その内、会ってくれたのは最初に訪れた今も売春婦をしている女性だけで、あとは殺害されたキャリアウーマンの後輩の女性が彼女代理として会ってくれた。
    彼ら3人は現在はもう普通の島になりつつある「うかれ島」に行き、そこで様々な思いを抱き、ある真実を知る事となる。

    とにかく読んでいて目まぐるしくいろんな事を考えさせられる話だった。
    最初はちょっとした興味で読んでみるかくらいだったけど、内容的には思ったのと違い、ちゃんとしている。
    もちろん、内容が内容だけに性描写はあるけど、それは意外にも淡々と描かれていると感じた。
    一言で言えば、性を通して男女のサガを描いている本だと思う。

    私が読んでいて最も心が動いたのは、売春婦の女性が草食系の男性に対して憎しみにも似た思いをぶつける場面。
    何だか、その心情がよく分かった。
    自分だって今まで生きてきた中で何も傷がない訳じゃないのに、自分はキレイだと思っていて心で人を蔑んでいる。
    そして、それを上手に見せないようにしている。
    そういう人間を傷つけたくなる衝撃的な気持ちが理解できる。
    客観的に見れば、彼女の行為は理不尽で、母親が事故死した人間にそんな思いをぶつけるなんて・・・となる所だけど、そういう理屈に合わないのが人間じゃない?と思う。

    他にも、専業主婦になり、安定した生活を手に入れて幸せだと思っていたら・・・というのも皮肉だと思ったし、他にも皮肉な真相がここには描かれていた。
    女性は社会的に生きづらい。
    それを感じると共に、それに悲壮感を感じさせないのは、自分で自分の生き方を選ぶという事なんだな・・・と最終的に思う本だった。

  • 書き下ろし

    江戸時代から最近まで売春島が実在していたが、宿の女将だった真理亜が死んで、絶縁していたその息子大和から、かつてその島にいた女性たちに手紙が届く。

    受け取ったのは、東京で風俗店に勤める女性のための保育所を経営する忍、教員と結婚し専業主婦となった貴子、女優で脚本家の愛人の麻矢、大企業の社員で殺された(東電OL殺人事件の被害者をモデルにした)まどか。まどかへの手紙は同僚の瞳子に託される。

    そして大和、忍、瞳子は、さびれてしまった島へ行く。
    真理亜の独白が挟まれていて、断片的に彼女の人生が浮かび上がってくる。夫の事故死、母の新興宗教への傾倒、夫の実家に子供を預けて人生を断ち切るように島へ。息子が書いた自分の顔の絵を宝物にして。

    大和、忍の真理亜への負い目がわかっていく。
    優秀な先輩がなぜ売春をしたのか理解したい瞳子は、結婚出産が女の幸せだと押しつけてくる世の中に反発を感じ、男への反感がまどかにあったと知る。

    この作家さんは、これまでも女性の性の肯定を大きなテーマにして書いているが、女性の生きづらさへの告発が今までの作品より大きいと感じた。
    専業主婦の貴子が、売春では体を売るだけだが、専業主婦は自分の全存在を売ってしまったのだと気づく場面が、ひどく印象に残る。

  • はじめ、タイトルを『うかれ女(め)島』ではなく『うかれ女(おんな)島』と読んでしまった。

    表紙になっているのはカラヴァッジォの「法悦のマグダラのマリア」である。
    マグダラのマリアとはキリストによって改心させられた売春婦だ。
    つまり本書の主題は同じように売春を行っている女性たちなのだ。

    はじまりは伊勢田大和と言う男性の物語である。
    彼の母は、このうかれ女島まで働いていた女性だ。
    彼自身はいたって普通の、そしてごく真面目な男性である。
    いや、彼はあえてそうなろうとしてきた。
    なぜなら彼は母を恥ずかしいと思い、あるいは厭うていたからだ。
    彼は小学生の頃「お前の母親は淫売や」(17ページ)と言われ、非常に傷ついていた。
    そして祖母も自分の娘を売春婦や淫売と言って罵っていた。
    彼の脳裏からはその言葉が離れず、ずっと傷を抱えて生きてきた。

    そして別の章では、彼の母親と関わりのあった女性たちが描かれる。
    彼女たちはやはり大和と同じように傷ついてきたのだろうか。
    それとも自分が好きだからこの仕事についていたのだろうか。
    本書では東電OL殺害事件を想い起こさせるような表現が出てくる。
    その部分は読んでいてとても苦しい。
    女性は快楽を求めてはいけないのだろうか?
    女は欲望を外に出すべきではないのだろうか?
    なぜ、売春婦は人から蔑まれなくてはいけないのだろうか?

    239ページから240ページ、『「結婚して子供を産み夫に養われるのが女の幸福」みたいな価値観を押し付けられてきた』と瞳子がかたるところはその気持ちがよくわかる。
    幸せとは勝手に周囲が決めるものではない。
    そして、愛している、好きだのといったことばが、免罪符になるはずがない。
    自分可愛さに、女性を傷つけ、挙げ句の果てに勝手に不幸に酔う男性なんて!
    そんな奴らに対抗するには…赦ししかないのか。
    天使でも女神でもないただの女は、赦す事などできるだろうか。

  • かつて「売春島」で自らの意志で働いていた女たちの話。
    面白かった。
    最後のオチも含めて男への皮肉が効いている。
    (図書館)

  • 著者による山村美紗の評伝がHONZで話題になっていたので図書館に予約を入れたら、すでに順番待ち。なので、すぐ借りられた著者の小説を3冊読んで待つことにした3冊目。
    もう何冊目になるのかわからないが2018年刊行みたいだから、比較的最近の作。官能小説家と言われているみたいだが、これはまったく普通の小説だ。
    3冊読んだ中で一番面白かった。
    「売春島」と呼ばれる実在する島(三重県志摩市にある「渡鹿野島(わたかのじま)」)が舞台の話。
    そこに、東電OL殺人事件も絡めている。
    それでこれを書いているときに気づいたが、「黄泉醜女」があの「婚活連続殺人事件」の木嶋佳苗を題材にしたホラー小説と知る。おっと、これも読まねば!である。これらの事件本は何冊か読んで、男性が書いたものと女性が書いたものの差に笑わせて頂いたことを思い出す。女性が書いたものに限りますよ、この事件にインスパイアーされて書かれたものは。


    ※↓この著書が刊行されたときのトークイベントのレポート。↓
    「嫉妬は愛情とはちがうことに初めての恋愛で気づかされた 花房観音✕森林原人トークショー」
     https://bit.ly/351yXxs

  • 意外にもサスペンスタッチな展開で、だんだん全貌が明らかになるのが良かった。

  • 装幀のカラヴァッジョ作『マグダラのマリア』でビビビッと。一気読みの後、鳥肌は初体験。芳醇な官能要素はR-18の窪さん等で嫌いじゃない。江戸時代から続く「売春島」を舞台に複数の登場人物の人生が紡がれる。縁遠い世界にも関わらず、そこかしこに私が気づかない、或いは気づこうとしない自分自身の影が描かれていた。人並みに親に大事にされたかった寂しさ、普通の家のように親や家族からの愛情を享受したかった羨ましさ。脆弱な自我を保って生き延びるため、大事な何かを麻痺させて装って生きてきたのは娼婦の彼女たちと同じ。

  • 三重県に浮かぶ売春島-渡鹿野島のルポは、『売春島 「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』で読んだ。こちらは、この島を舞台にした小説。
    ここで女衒をしていた女性が亡くなり、その息子から「私が死んだことをこの女性に伝えて」と手紙が届く。息子はその人たちに連絡を取る。
    途中、東電OL事件を題材にした部分も出てくるが、陰惨ではないところが救われる。

    印象に残った部分
    島で売春をした後、東京で真面目な男と結婚した貴子が手紙を受け取るが、「この生活を壊させない」と無視する。
    なぜなら、P70 苦労して身体を貼って生きてきたあたしがやっと手に入れた、人が羨む安定の生活だ。
    から。
    そして浮気が夫にバレたところで悟る。
    P225
    ああ、そうか--と気づいてしまう。
    私はこの男に金で買われた奴隷なのだ。
    今まで私を買った男たちには、肉体、いや、セックスだけしか売っていない。
    けれど私は夫という立場のこの男に、セックスだけではなく、全てを金で買われてしまったのだ。
    奴隷には自由などないのだと、この男の笑顔は言っている。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。京都女子大学中退後、映画会社、旅行会社などを経てバスガイドを務めるかたわら小説を執筆。2010年、第一回団鬼六賞大賞を『花祀り』で受賞。著書に『女の庭』『指人形』『色仏』『うかれ女島』『ヘイケイ日記 女たちのカウントダウン』『すきもの』ほか多数。当社刊行の著書に『萌えいづる』『寂花の雫』『好色入道』『半乳捕物帳』『紫の女』『秘めゆり』。

「2022年 『ごりょうの森』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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