- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103518419
作品紹介・あらすじ
羨望と嫉妬、禁忌の愛――。快楽の果てに、その鏡は奈落の闇を映し出す。ヴェネツィアから流れ着いた一枚の鏡。その鏡は磨いた者の願いを叶えると噂されていた。脳病院に身を置く「奥様」と看護婦、昔気質な鏡研ぎ職人と美青年、人気舞台女優と財界の黒幕。鏡に魅入られた人々に訪れる、愛憎に塗れた運命の行く末とは――。戦前から終戦直後を舞台に、著者史上、最も残酷で甘美なる連作短編集。
感想・レビュー・書評
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丁寧に磨き続けると願いが叶うという一枚の鏡をめぐり、人間の欲が角度を変えながらつながっていく連作短編集。「こんなの初めて!」という目新しさはないけれど、雰囲気抜群で安定感があり、後味の悪さにもかかわらずどれも楽しめた。
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面白かった。
願いを込めて磨くと、それが叶う魔力を持った鏡。
短編集でありながら、前の持ち主がチラリと出てくるのもなかなか良い。
結局、その鏡にはなんの力もなくて、本当はこれらの悲劇をもたらしているのは、磨くその人の恐ろしい願望なのだと思う。恐ろしいことを願えば、それはおのずと自分に返ってくる。だって鏡はそういうものだもの。ないものは映さない。
一番好きなのは『繚乱の鏡』。
万華鏡を覗くことが唯一の癒しだった榊が、大切な人を閉じ込めたそれを作ったのが素晴らしい。耽美的でその発想に圧倒された。
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磨くと願いが叶う鏡が主人公。結末は不幸になってしまうけど、思わぬ展開があって、私は好き。
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願いをこめて磨けば願いが叶う鏡に、人生を翻弄される人々の姿を描いた連作短編集。
最初の作品だけだと、時代背景が掴みにくいが、明治もしくは大正から戦後までを描いており、現代作品でない分、鏡に惹かれる人々の秘めたる想いも妖艶に描かれている。
そして、願いが叶っても、決して一筋縄でいかない、作者の醍醐味がどの作品でも活かされている。
新作が出れば、必ず読む作家さんじゃないけど、最近は目に止まれば、つい読んでしまう作家さんになっている。
そして、それに外れがない。
鏡より、作家自身が怖いかも… -
どれも面白かった。双生児の鏡が切なかった。ナルキッソスの鏡もだが、人間相手の気持ちはわからないのだからちゃんと伝え合わないといけない。
人間の欲深さが、願いの叶うと言われる鏡によって顕著になり、欲を求め続けた結果破滅してしまう。もし私にも鏡があったらどうしていただろう、いっときの間でもいいから幸せを求めるのか悩ましいと思った。身の丈にあった平凡な幸せで満足するのが間違いない。 -
短編の集まりだが、一枚の鏡で物語が繋がる。
どんなことでも磨けば願いが叶うという鏡。
胡散くさそうな設定なのに、願いが叶った人間の止まらない欲と、欲で自分の鏡が曇った真実の構成がどの短編も面白い。
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初めての秋吉さん作品。一つの鏡にまつわるストーリー。その鏡に囚われた人は誰一人幸せになっていない。時代背景が結構好き。面白かった。
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一枚の鏡が次々と人を翻弄していく。鏡に不思議な魔力があるようで、実はその人の心をうつしているに過ぎないのか。決して後味は良くないが、描き方、語り方に舌を巻く。