一発屋芸人列伝

  • 新潮社
3.79
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本棚登録 : 273
レビュー : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103519218

作品紹介・あらすじ

世の中から「消えていった」芸人たちのその後の人生を、自らも「一発屋」を名乘る著者が追跡取材。これまで誰も書いたことがなかった彼らの現在は、ブレイクした“あの時"より面白かった?!涙あり笑いあり、そしてなぜか生きる勇気が湧いてくる。時代に翻弄されつつも必死に芸に生きる、どうしようもなく不器用な人間たちに捧げるノンフィクション!

感想・レビュー・書評

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  • 一発屋芸人だって生きている!

    自らも一発屋である髭男爵の山田ルイ53世が、その昔一世を風靡した芸人さん達にインタビューしたノンフィクション。
    知っている人も知らない人もいたが、いろんな人の人生を知ることができて興味深い。
    山田さんの文章は好み。
    教養とお笑いセンスがにじみ出てて笑うと同時に感嘆。
    でもやたら筆者は~筆者が~とご本人がしゃしゃりでてきていたな。読者の「うるさいよ!」のツッコミ待ちと見た。
    読了後は芸人さん達に親愛と敬意を覚えた。
    それでもなんとか生きている人々への人間賛歌だと思う。

  • 第24回「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞に輝いた連載が書籍化。

    多くの人々に愛され、真似をされた一発屋達の芸。
    一発屋達はお茶の間の人気者となり、その内の何組かは、"社会現象"と評されるほどの大ブレイクを果たし、時代の寵児と持て囃された。

    そして……消えた。

    お伽噺であれば、
    「めでたしめでたし」
    とその絶頂期に幕を引くことも出来るだろうが、現実はそうはいかない。
    人生は続く。
    本書は、自らも一発屋を自認する髭男爵・山田ルイ53世が彼らの生き様を描く試みである。

    著者の立ち位置が絶妙だなと思いました。
    楽屋ネタにしてしまわずに「そういうところがアカンのちゃう?」「甘い」と、どちらかといえば大衆の側に立って、一発屋達の体たらくにツッコミを入れていく。
    でもそのツッコミの鋭さは、彼自身がオモロさを追求し、"次"を虎視眈々と狙っているからこその鋭さだと感じました。

    いま、この時代この瞬間を切り取り、愛ある批評をし、もっとオモロい世界をめざし、人々に視点の転換を促す本書には、たしかにジャーナリズムが宿っている!ルネッサンス!

  • 山田ルイ53世さんのラジオを聴いていました。
    話がとても上手く、話芸だけでもいつか再ブレイクするのではと思っていました。
    伊集院さんもそうですがラジオで話すのが上手い人は文章を書くのも上手いんですね。
    自身が一発屋芸人であるからこそ、取材対象を落とすでも上げるでもない良い心地良いバランスで書き上げています。
    一発屋芸人への愛に溢れた作品です。
    山田ルイ53世さんにしかこの本は書けないですね。
    あと、オチが異様にうまい。

  • ノンフィクション、ではなくエッセイ。レイザーラモンHG、コウメ太夫、波田陽区、テツandトモ、そして自ら髭男爵、インタビューをもとに構成されている。けれど、全体の印象は、彼らをネタに書かれた、山田ルイ53世の「執筆芸」的なもの。読後感で残るのは、山田さんの文章力。文章力というかコメント力かなぁ。ひな壇でうまいこと言いそうな。ネット社会では、芸人は消えない。ずっと残る。なので、“一発芸人”というカテゴリーは絶好の食い扶持であり、それこそ消えていってほしくないもの、なのかもしれないなぁ。

  • 取材する相手によって当然、面白さの上下はあるのだけど、それでも一定以上のクオリティなのは、山田さんの力だと思う。
    コウメ太夫の回は秀逸。編集次第で飽きられたものもまた輝く、ということが分かりやすく書いてあった。

  • なんだこの重い本は、最近ここまで暗い気持ちになる本があっただろうかと思うほどキツイ本です。最後は幸せになりました、とか、**という悲惨な話だったのさ!さぁ笑え!というどちらでもありません、あとがきに書いてある通り「それでも今なお生きている」という現実を誠実に伝えようとする本で、リアリティが高すぎて本当にキツイ本でした。でも面白い!

    一時期「夢が叶う本」はもうお腹いっぱいぐらい読んだので、真面目な話、失敗してそのまま終わってしまったらどうなるのか?という本を読みたい(それは私の人生にとっても切実な問題だ)と一時期そういう本を真剣に探したことがありました。しかしまぁその「本来確率が圧倒的に高い方の現実」のつまらないことつまらないこと!(‘ᾥ’;)なぜつまらないのかというと現実そのままだから、説得力がありすぎるから。とにかく全然エンターテイメントにならず、お役立ち本として読むのも難しい、それは未解決事件の無残な被害者の告発を私達がそのまま100%受け取る必要(そしてそれはとても重要なことだ)があるような、ただひたすら勇気と元気と使命感が必要なジャンルだったのだと思います。

    だからこそ悲惨な状況をそのまま描いて尚心に強烈に響く映画「息もできない」「シークレット・サンシャイン」「母なる証明」「サイタマノラッパー」等の突出した傑作ぶりに余計感謝の念が湧いてくるのかもしれません。そういう意味でこれだけ強烈な現実をそのままストレートに執筆して、キツイキツイキツイ!と絶叫しながらも尚「面白い本だ(★5点満点!)」と感じるこの本は素晴らしい書籍なのだと強く思います。

    特にインパクトがある内容は波田陽区さんハローケイスケさんそして髭男爵御本人達の章。特に「ハローケイスケ」さんの章から受け取る情報量の多さたるや凄まじく、こちらが参ってしまいそうな現実がそのまま載っています。西尾維新さんの対談本「本題」には羽海野チカさんの対談で「才能とは他のことが何もできなくなる欠点である」というテーマが載っていました。二人の対談は真剣そのものでありながらある意味猛烈に辛辣な内容でした。対談を読み続けていると西尾維新的なキャラクターが私に呼びかけてくるのです「才能がなくて良かったじゃないですか?一万時間練習して才能がないなんて分かっても手遅れですよ。もう後は二万時間練習するしかないんですから。才能がなくて良かったじゃないですか?無駄な練習をしなくて済みましたね。」ハローケイスケさんの章では正に、ここまで続けたんだから後はもう二万時間練習するしかないという意味そのままの宣言があります。そして目標は「還暦に売れること」です。還暦までに売れることではないのです。ハイパーリアル!ハイッパーーーーーーッリアル!!(‘ᾥ’;)精神力が必要な本!!!

    全体を通して感じるのは(正にこれこそ私のような人間がいうことじゃないのですが)、登場する一発屋芸人さん達のメンタル面と行動面の不安定さ。人によっては「それはもう結構幸福な状況なのでは?」と思えることでもこんなに死ぬほどの苦悩をしてしまう、気の持ちようとは正にこのことで、もうほんっとに心療内科に通う私が他人に言うようなことではありませんが、「キンタロー。」さんの章を読めば大体の人が同じ感想を持つのではないでしょうか?逆に一発だろうとなんだろうと精神的に安定している人達の章の幸福感・満足度がビシビシと伝わってきて凄い差です。

    これは芸人に限らず、音楽でもそうなのですが、コンスタントに評価されたりされなかったりの平常の状態と異なり、飛び級の「一発」が当たってしまうと、客観的に見て他の芸人に比べてアベレージの低い高いに関係なく、彼らが一生「自分の世界記録」と勝負し続けることになることに衝撃を受けました。こちらの方はメンタルの安定性とは関係ありません(受け入れるか受け入れないかという問題になりますが、"自分の世界記録"との勝負自体は発生してしまうようです)。

    なんといってもこの本はこれだけキツイ話をこれだけ面白く書けるのが凄いと思いました。類似の本を一杯読みましたが、キツイ現実の上にツマラナイのは本当に辛いんです。泣けるけどツマラナイ映画は一杯あります。ブチ上がるけどツマラナイ本も一杯ありますが、泣けるとかブチ上がるはそれだけで単体で尊いものなのです。ですが、キツイ現実を読もうと思うなら、「キツイ現実」+「面白いと思うorタメになるorやる気になる」とセットじゃないと駄目なんです。少なくとも私は弱っちいので駄目なんです。そして大変なことに「キツイ現実」は面白くすることが死ぬほど難しいようなんです。前述した「キツイ現実も読んでみたい」のトライは当たり外れでいうなら他のジャンルの追随を許さないハズレ率でした(もう手を出すのをやめようと決意するほど)。だって現実がキツイんだもの!(‘ᾥ’;)それだけにこの話をこれだけ面白く読ませてくれるこの本は本当に尊い。素晴らしい本でした。でも!キツイ!!!!!!(‘ᾥ’;)激ヤバ鬼マスト!!

  • 一発屋の「中の人」だからこその距離感と突き放し方が面白かった。同業者だからチェックできるポイントがある。比喩も独特。賞を取ってくれなかったら、この本を知らなかったと思う。

    意外だったのは、登場する芸人さんの多くは一発当てるまでもいろんな試行錯誤があったこと。単に思いつきの一発ではなくて、練りに練る苦労があって、時代にマッチしたときに大きく当たる。スタンスは今も変わらない人が多い。芸人さんは芸を発明している人たちなんだな。

  •  山田ルイ53世著『一発屋芸人列伝』(新潮社/1404円)、『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス/1404円)読了。

     前者は、『新潮45』連載時に「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」の「作品賞」を得て、「芸人初の快挙」と話題になったノンフィクション。
     後者は3年前に出た著者の文筆家としての第1作で、幼少期から「髭男爵」としてのブレイクまでを綴った自伝エッセイだ。

     1980年代には、異分野から文章の世界に越境して活躍する人は、小劇場演劇界に多かった。如月小春、鴻上尚史、野田秀樹など、演劇界のスターたちが文筆家としても評価され、次々とエッセイ等の著作を発表した。
     それが近年は、お笑い芸人からの越境が目立つ。「分野としての盛衰」を反映しているのかもしれない。

     いまや芥川賞作家となった又吉直樹、向田邦子賞を得たバカリズム、エッセイストとしても評価されているオードリーの若林正恭や光浦靖子など、「いい文章を書く芸人」は枚挙にいとまがない。

     その中にあって、とくに抜きん出た文才を感じさせるのが、「ルネッサ~ンス!」で知られる「髭男爵」の山田ルイ53世である。
     第1作の『ヒキコモリ漂流記』からして、すでに文筆家として完成されている印象を受ける。抜群のリーダビリティ、随所にあるキラーフレーズ、力を抜くところは抜いてメリハリをつけるあたりのうまさ等々……。

     第2作となった『一発屋芸人列伝』は、さらに文筆家としての力を見せつける本だ。
     著者は、取り上げた芸人たちを「芸人仲間」としてすでによく知っていた。にもかかわらず、改めて各人にインタビューを行っている。そのことで取材者としての力量も証明しているのだ。
     
     一発屋芸人を集めたテレビ番組やイベントは、この本以前からすでにあった。だから、おそらくこのような本は他の書き手も考えていただろう。「先を越された!」と地団駄踏んだ人もいるかもしれない。
     だが、かりにプロパーのノンフィクション・ライターが一発屋芸人たちを取材して本を書いたとしても、本作ほど面白いものにはならなかったに違いない。

     一読して思い出したのは、高橋治の『絢爛たる影絵』。小津安二郎の助監督を務めたこともある元映画監督で直木賞作家の高橋が、小津を描いたノンフィクションだ。
     同書は、小津安二郎を描いたノンフィクションの白眉であった。何しろ、小津の映画作りの現場を知る人が、直木賞を取るほどの文才を全開させて書いた本なのだから……。
     
     同様に、自らも一発屋芸人で文才もある山田が一発屋芸人を描いた本書は、「この人にしか書けない本」の見本のようだ。

     必殺のキラーフレーズが、随所にある。

    〝50歳を目前に「諦めるのはまだ早い!」というより、「諦めるにはもう遅い」……そんなところかもしれぬ。〟

    とか、

    〝芸能界の〝不貞の神経衰弱〟を一週刊誌が全て捲ってしまうのではと恐れ戦いたものである(文春砲について)〟

    とか。

     思わず膝を打つ絶妙な表現、人目を引くフレーズ――「エピソードの燃費が悪い」とか、「〝苦節顔〟」とか――作りが、抜群にうまい。

     一発屋芸人たちの悲哀と矜持を描き切り、笑いの底に感動がある本書は、本年度ナンバーワン級の傑作である。

     山田ルイ53世は、第1作で自らの半生を振り返り、第2作で一発屋芸人としての稀有な体験を作品化した。
     この2作で、手持ちの切り札を一気に切ってしまった印象を受ける。文筆家としての真の力量は、ゼロから創り上げる次の第3作によって試されるだろう。どんな作品を世に問うてくるのか、注目したい。

  • 一発屋と呼ばれる11組の芸人について、髭男爵・山田ルイ53世の取材をもとに書かれた本。

    この本の帯には「それでも、人生は続く。」と書かれている。
    まさにその通り!と思える内容だった。


    一発屋になる前にそれぞれの考え方で行動していて、一発の後もそれぞれの人生を生きている。
    それも各人が三者三様であることがよくわかった。

    芸人という厳しい世界の中でどう生きてきたかを読んで、「それじゃあ、自分はどうなんだ?」という問いが、頭の中に常に浮かんでくる。

    この本に書かれている人たちに共通するのは、自分の周囲の変化にどう対応してどう生きるかを真剣に考えているんだと思った。
    これについても、「それじゃあ、自分はどうなんだ?」。

    山田ルイ53世さんのラジオや文章が好きで、お笑い番組が好きでこの本を読んだ。
    それにしては、予想以上に考えさせられる本だった。


    もちろん、お笑いネタのこともいろいろ書いてある。
    どの芸人さんも(1人は存じ上げない芸人さんですが)、やっぱりおもしろいと再確認した。

    特に、テツandトモは、数年前に地元の住宅展示場でのライブを見て、ものすごくおもしろかったことを思い出した。
    テレビによく出ていた頃を知らない息子たちもすごく楽しかったようだ。

  • 文章は読みやすかったのだけど、「こういう方向に持って行きたい」「この言葉が言いたい」というのが見え見えで、インタビューされた芸人達が道具のように私には感じられたのがしんどかった。
    インタビュアーは先に物語を組んでいることが多いだろうとは思うのだけど、まさに道具のように扱われて「一発屋」なんていう呼び方をされている著者がそれをするのか、と負の連鎖に思える。
    わざとなのかなぁ…。

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著者プロフィール

山田/ルイ53世本名・山田順三(やまだ・じゅんぞう)。お笑いコンビ・髭男爵のツッコミ担当。兵庫県出身。地元の名門・六甲学院中学に進学するも、中学2年に引きこもりになり中退。大検合格を経て、愛媛大学法文学部に入学も、その後中退し上京、芸人の道へ。「新潮45」で連載した「一発屋芸人列伝」が、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞し話題となる。

「2018年 『ヒキコモリ漂流記  完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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