星夜航行 下巻

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 137
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (572ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103519423

作品紹介・あらすじ

その男は決して屈しなかった。人が一生に一度出会えるかどうかの大傑作。徳川家に取り立てられるも、罪なくして徳川家を追われた沢瀬甚五郎は堺、薩摩、博多、呂宋の地を転々とする。海外交易の隆盛、秀吉の天下統一の激動の時代の波に飲まれ、やがて朝鮮出兵の暴挙が甚五郎の身にも襲いかかる。史料の中に埋もれていた実在の人物を掘り起こし、刊行までに九年の歳月を費やした著者最高傑作の誕生。

感想・レビュー・書評

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  • 甚五郎は時々出てくるが、要は秀吉の朝鮮戦役の結末までの話が詳細に書かれている。あまりに細かく書かれているため。読む速度が非常に遅くなってしまう。内容は濃いが読むのに非常に力がかかってしまう。でも読後は爽やかな気持ちになるかなあ。

  • 圧倒的な詳しさで秀吉の朝鮮出兵を語る.ここまで詳しくなくてもと少し煩わしくなるほどの記述.欠点は添付されていた地図がとても見にくく,分かりづらかったこと.また,小西行長の正義は手前勝手な正義で,そのために死屍累々の荒野が残されたと言っても過言ではない.それに比べて甚五郎の清々しさが光る.元三郎信康の小姓衆がどの人物を取っても素晴らしく,もし信康が生きていたらどうだったのかと想像してしまう.装丁も良かったです.

  • 冒頭の衝撃ボディブローがじわじわ攻め立て、自分の読解力と処理能力をはるかに超える情報量の波に溺れそうになりながら追い立てられるように読み進む。
    圧巻はその浸透度。ずんずん侵食され心は遠き彼の地へ。
    読み終えて覚える安堵感は言わずものがな。

  • 長い長い物語、1100ページを一気に読み通してしまった。飯島氏の小説はいつもと感心しながらその世界に浸りながら読み終えてしまう。
    秀吉の朝鮮出兵の出来事を物語の中心に据え、その周辺に登場する様々な群像を冷徹な目を思って眺めていく。人はその時代その状況の中で生きていき、死んでいく以外に方法は無い。これは現代に置き換えてみても、私たちの生活状況に置き換えてみても、何も違わないのかもしれない。

    降倭軍通して秀吉軍と戦う人々は、何を思い、何を目指して、何のために戦うのであろうか?人はいつの時代も戦争を止める事はできない、殺し合うことをを続けなければいけない、

  • いただきもののプルーフ読んでました。飯嶋和一、オモロいよ、それは知ってんねん。ただ、雷電にせよ始祖鳥にせよ、ヒーローがかっこ良過ぎ、話全体のトーンが明る過ぎてちょっとね。神無き月の後半、絶望的な結末へ一直線なんだけど読むの止められないあの昏さが好きなんよね、Qとかにもつながるか。
    と思って読むとなぁ、権力の暗い圧迫みたいな面はあるけど、やっぱり主人公がかっこ良過ぎてひねくれものには眩しいのよ。

  • 激化し泥沼と化す朝鮮の役は、商人をしていた甚五郎も巻き込む。秀吉の死で役が終わるかと思いきや、思いがけない方向に進んでしまう。李舜臣も登場し、これまで知ることのなかった朝鮮出兵の顛末を読めたのはいいが、情報量と文章のボリュームがありすぎて読み進めるのには難儀した。時代小説を読み慣れていない故なのかもしれないが、人間の運命の不思議さや愚かさ、戦国時代のアジア情勢を知ることができるなど、この長編小説から得られたものは多かったから読んでよかった。

  • 校正も加えると、小説の完成まで9年かかったというから大変な労作である。海上貿易の実態や売り買いされる物品の詳細、朝鮮の家屋の構造、ルソン島を歩く主人公の目に映る地形や建物など、およそ著者がこの小説のために調べ上げた資料も膨大な量に及ぶ。とりわけ朝鮮役をこれだけ綿密に書き上げた小説はこれまでなかったのではないか。つとに知られた交渉役の小西らの謀りだが、実は偽装は日本側だけでなく明側でも行なわれていたり、秀吉にとって戦役前から属国となった朝鮮領内での戦いは、侵略ではなく一揆鎮圧だと思い込んだなど目から鱗の話。

    ただ朝鮮役などの戦国史に特に関心もない読者にとってはかなり苦行だったかも。きめ細やかな解説付きの歴史読み物だったという印象も残す。特にこれまで著者の持ち味であった、圧政に苦しみ耐え抜いた末に立ち上がる領民と、その蜂起に対し無慈悲に容赦なく取り締まる権力者との戦いを、圧巻のスケールとスピード感で読ませるというのが、本書では影をひそめる。朝鮮役がテーマなら、主人公は朝鮮側に投降し秀吉軍と戦う降倭隊か、戦役後も一方的に取り残される日本の兵士たちでも良かったのではないか。

    よく朝鮮出兵での秀吉の野望や無謀さを嗤うが、本書を読んで考えが変わった。緒戦で無様に敗走を重ねる朝鮮軍も、李舜臣らの朝鮮水軍の活躍と、各地で立ち上がった義民によるゲリラ戦などによって盛り返すが、頼みの明から援軍が張り子の虎同然で、数は多いが寄せ集めにすぎず、欲得ずくで戦闘意欲に欠け、朝鮮の領民を泣かせるのは倭軍同様という有様。とりわけこれまで戦いに明け暮れていた秀吉軍とは白兵戦をやらせても雲泥の差で、接近戦での鉄砲の威力は凄まじく、倭城の攻め方もわからず無謀な突撃を繰り返し撤退する始末。

    秀吉が死んでいざ撤退する段なっても、講和の条件が「朝鮮側からの謝罪」だというのだから、推して知るべし。面子にこだわったからというより、いつでも攻め寄せて切り取れるという妙な自信があるとしか思えない。本書にもある通り、武家に生まれたからには、もとより生への執着は捨ててあるし、後悔することなく、常に前進あるのみなのだから、秀吉がもう少し長生きしていたらどうなったかわからない。第一、百姓出身の秀吉の天下取りの野望や関白など官職への執着の方がよほど無謀で荒唐無稽な企てだろう。

    本当に同時代の人たちが、錯乱した秀吉の増大した野望に端を発した無理無謀な企てだと、現代の我々が信じるように感じていたかが問題で、おそらく渡海した将兵たちの多くは、朝鮮・明ともたいした相手ではなく、ただ時間切れで戦をおさめたと感じていたのではないか。なぜ小西らの偽りの交渉が白日のものとなったのに、依然として日本への召還命令も出ず、引き続き軍を率いることができたのかなど、朝鮮役はいまだ不明な点が多い。一方では戦を回避し早期終結に奔走し、もう一方では恒久支配に向けて最前線で奮戦する小西の矛盾した姿は、象徴的だ。

  • 徳川信康の小姓沢瀬甚五郎がたどる数奇な人生の物語なんだけど、信長・秀吉・家康と権力者が移り変わる歴史のうねりが主人公かと思うほど政治的国際的な叙述が中核にあり、甚五郎の虫瞰図的な人生とは一体化しづらかったですね。2つの話をうまく1つにできてない印象です。あまり知らない秀吉の朝鮮出兵の内実がわかって良かったです。でも、甚五郎には貿易商になってルソンやシャムとか国際的に活躍して欲しかったなぁ。でも、これが史実なんですね。

  • いや~苦戦しました。読めども読めども進まない。なんと読了まで2週間以上かかりました。
    もっとも「久しぶりに飯島和一さんを読もう!」と考えた時から覚悟はしていたのです。非常に良い歴史小説を書く作家さんですが、ともかく重い。ましてこの『星夜航行』上下2巻、1100ページを超える大作ですから。

    織田信長から豊臣秀吉にかけて。秀吉による朝鮮出兵を中心に、ルソンなどの南海貿易やそれに絡むキリシタンの物語を織り交ぜ、無名だが実在の人物・沢瀬甚五郎を描いた作品です。
    と、書いたものの主人公の沢瀬甚五郎の登場枚数は全体の1/10以下ではないだろうか。物語の中盤など、ルソンとの貿易に携わる甚五郎をさておいて、朝鮮での秀吉軍の動きがひたすらこれでもかと書き込まれる。とにかくやたらと地名人名が出て来る。フルネームできっちり記述されるため、今後も物語に絡む人かと思ったら、その場面のみに登場する通行人的人物でしかないのがほとんどです。記憶すべきかどうか見分けがつかなくて困ってしまう。

    自己の名声や子孫の安寧のみを願う誇大妄想的独裁者と化した秀吉による禍害。秀吉を抑えられずかえって弥縫策により混乱と惨禍の拡大を招く小西行長などの武将たち。侵略と言う民衆の危機を前になお政争に明け暮れる朝鮮の官僚たち。高慢で無能力、負けてはその原因を朝鮮軍に押し付ける明国の将軍たち。意外に朝鮮民衆の被害の悲惨さの記述は少なく、支配階級のわが身可愛さの戦いの無意味さをとにかくクドいくらい綿密に描きます。全体の史観として珍しいものではありませんが、脱走や捕虜となった後、降倭軍として朝鮮兵と協力して働く数千の日本人の存在など、これまで知らなかった史実も有りました。

    主人公が活躍するのは最初と最後。しかしその領域は物語として生き生きとしており、見事です。
    とは言え余りに物語り領域が少なすぎました。

  • <河> とにかく読み出があります。この様な歴史の機微にまで踏み込んで描いてゆく作品を,上下二巻にて押し込めてしまうのは無理が有るのだろうなぁ,と思いました。
    戦略/戦術/地政/権力闘争/天災/宗教/統治/貿易/外交/航海術・・多くの史実と知識がいっぺんに読者の中に流れ込んできます。もちろん全て興味深く為になるのですが。
    『○○○』の様な”大河長編小説”にすれば良かった。巻毎に主人公も変わってその物語について深く書いてゆく。読者はあわてづゆっくりと慎重に読む。まあいろいろな事情はあるとは思いまするが。

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著者プロフィール

小説家。1952年山形県生まれ。1983年「プロミスト・ランド」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。88年「汝ふたたび故郷へ帰れず」で文藝賞受賞。(上記の二作は小学館文庫版『汝ふたたび故郷へ帰れず』に収録)2008年に刊行した単行本『出星前夜』は、同年のキノベス1位と、第35回大佛次郎賞を受賞している。この他、94年『雷電本紀』、97年『神無き月十番目の夜』、2000年『始祖鳥記』、04年『黄金旅風』(いずれも小学館文庫)がある。寡作で知られるが、傑作揃いの作家として評価はきわめて高い。

「2013年 『STORY BOX 44』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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