犬も食わない

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103521419

作品紹介・あらすじ

どんなに一緒にいても、こんなにも分かり合えないのは何故――? 「結婚とか別れ話とか、面倒な事は見て見ぬふりでやり過ごしたい」「ちゃんと言ってよ。言葉が足りないから、あたしが言い過ぎる」――脱ぎっ放しの靴下、畳まれた洗濯物、冷えきった足、ベッドの隣の確かな体温。同棲中の恋人同士の駆け引きを、クリープハイプ・尾崎世界観、千早茜が男女それぞれの視点で描く共作恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 尾崎世界観✖️千早茜が、男女それぞれの視点で描く、共作恋愛小説。

    「共作恋愛小説」となっているが、果たして、恋愛小説なのか?
    愛悪な出会いをした男女が、いつの間にか、同棲。
    と言うより、男が女のアパートに転がり込んで来たと言うほうが正しい。

    不真面目で、将来の事も何も考えない男。
    男が転がり込んで来たお陰で、増えた家事を、文句を言いながらこなす女。

    そんな男でも、一人になるのが怖いのか?
    さっさと別れておしまい!
    と、ずっと、思いながら、読んだ。

  • そうか、「夫婦喧嘩は犬も食わない」からきてるのか、同棲した二人の心の行き違いを。この本のおもしろいのは、その二人をそれぞれ二人の作家、尾崎世界観さんと千早茜さんで連作のごとく書いていること。
    それぞれの立場、それぞれの思いで書いているので同じ現象でも微妙にヅレが生じている。そうか、夫婦と言えども他人、こんな風に両方から二つの頭、四つの眼で見てるんだ、そりゃ違って当たり前、変なところで納得させられた一冊でおます。

  •  千早さんと、尾崎世界観さん共著の小説です。同棲カップルの日常を描いており、千早さんが女性「福」の目線で、世界観さんが男性「大輔」の目線で書いています。
     福さんは、きっちりした性格、しっかりもの。大輔は、いいかげんで、だらしない。そして、思ったことを、うまく言葉で伝えられない。
     最後まで読むと、この2人、性格はこんなに違うのに、似た者同士なのでは、と思いました。言葉の少ない大輔と、相手を責める言葉を、容赦なくぶつけても、本当の気持ちは伝わらない福さん。どうでもいいことは、言いたい放題だけど、大事なことは、怖くてきちんと向き合えない。
     最後に別れることになって、お互いに手紙を書く場面があります。自分の素直な気持ちを、正直にぶつけていました。これを言葉にしたらいいのに、と思っても、なかなか本人を目の前にすると、言えないのでしょうね。
     ちなみに、この手紙は渡されていませんが、サラッと元の関係に戻っています、まさに題名どおり。周りが何を言ってもこの関係は続いていくのでしょう。多分。

  • ラジオで紹介されて、気になって読んでみた本
    ずっと喧嘩してるんですよ
    って紹介されてた通り
    でも、あんなに最悪の出会いからなんで付き合った?って思うほど
    男性、女性、それぞれの目線で進んでいくけど、男性は本当にダメ男だし、女性も同じ女性として見ても本当にめんどくさいなって思ってしまう

    ちょっと変わった恋愛小説
    笑える部分もあり、なんか友達の昔の恋人との関係を思い出しました

    けっこうこういう関係、あるんじゃないかなって思います

  • 恋愛をしてると自分を心底嫌いになることも多いけど、逆にすごい好きになることもある
    福と大輔はお互い自分の嫌な部分を曝け出しているから自分のことすごい嫌いになるんだろうけどそれでも一緒にいるからすごい、恋愛ってすごく危ない
    読んでてイライラするのは自分にもよく当てはまるからなんだと思うと、もっと気をつけなきゃと思う一方で気をつけられないのが恋愛。
    とても難しいですね。

  • 挫折です……内容?というより、言葉が入ってこなかったというか…文字は読めるんですけど、そこから情景を思い浮かべるとか、解釈という部分まで到達できず……。すみません、食えませんでした泣

  • 尾崎世界観氏好きの友人がよかったと言っていて、手に取ってみたらハマり過ぎて一気に読んじゃいました。
    文章が静かでいて激しく、痛くて、辛くて、身につまされる。
    大輔のような男を好きになったことはないけれど、それでも福のほとんど全てに共感できて、あぁ、薄々は気づいていたけれど、私は典型的な面倒くさい女なのだ、と確信することになる。
    感情的になったって、何ひとついいことなどない、それは分かっていても湧き上がるエモーションはいつも止められず、いつも辛さや悲しさだけが残る。

    知りたいし、答えて欲しいのに、結局それを提示されたって信じられないのだ。
    だからこそ、“恋愛は、自らの期待との戦い"のフレーズに妙に納得してしまった。

    千早茜さん、初めて読んだけど素晴らしかった。
    尾崎世界観は、少しわかりにくい表現が時々あって読み返したりしたけど個性のある文章でした。

  • 尾崎世界観さんと千早茜さんの共作恋愛小説。同棲中のカップルそれぞれの視点による掌編が6回分(計12本)と間奏という小文2本の構成で、ふたりの出会いから別れまでの関係が描かれる。また、装丁の男性は雪下まゆさんというイラストレーターの作とのこと。生写真のような光の当て方で描かれた写実主義的な作風にすごく惹かれた。

    物事にはそれぞれの言い分があり、全体を通して口が悪いふたりの本音の応酬という感じが小気味よい。同じシーンをそれぞれの視点から覗き見れば、思っていても口には出さない気持ちがあることがわかり、その隠した部分と相手に突きつけた部分のバランスがすごく人間らしくていいなぁと感じる。一方で、不器用な男女がそれぞれの思いをちゃんとぶつけ合えていたら、結末は変わっていたのかもしれないなぁとも思う。

    ベタベタな恋愛小説とは違う、イライラのなかに沈みこんでいるくすぶりのような愛情が描かれていて、その低めの温度感がちょうどいい。ダメ男が出てくる小説が好きな僕にとって、口下手でめんどうくさがりで言い訳がましく、自分を甘やかす方向に流されてしまう大輔は、とても他人とは思えない良いキャラクターだった。

    夫婦喧嘩は犬も食わない、と言うが、その食わない部分を煮詰めて小説にしたらこんな感じになるのだろうか。他人ごとだからかもしれないが、それは食べてみると意外とおいしい珍味のようなものだと感じた。

  • 「だめな男」と「めんどくさい女」。同棲中の恋人同士の本音を男女それぞれの視点で描く、究極の共作恋愛小説。

    男女のどうしようもない日常を男目線、女目線で交互に書き上げた共作。男ってそうだよな~、女ってそうだよな~と決して万人に当てはまるものではないけれど、少なからずそう感じてしまうところがある。ただ、この物語の男女は少し両極端で、お互いを必要だと思っているのに疲れてしまいそうだなと感じる。合ってなさそうで合ってはいるのだろうなと思う。
    結局、犬も食わない展開なんだけど、双方の思考や感情の交錯を楽しむ感じです。
    千早さんはさすがの文章力。読みやすいです。尾崎さんは情景描写がわかりづらいところがあるけど、そのほかの文章力は素晴らしく、独特さがちょくちょく顔を出す感じが好きです。最後の手紙はクリープハイプの歌詞のようだなと思いました。

  • 打算がなく現実も将来も、何も考えていないように見える二人のやり取りは、そこはかとなくユーモラスで、珍しいタイプの恋愛小説じゃないかな(そんなに読んでないけど)。千早茜の小説で「吠える犬」みたいなキャラクターはあまり出てこないと思うけど、心根の優しさが垣間見えるし、ミュージシャンだという尾崎の描く、意味不明な行動をする肉体労働の男も、リアリティがあって不思議な魅力がある。結局ふたりとも純真さをなくしていない魅力的な人物だからこそ、これが恋愛ドラマとして成立しているのだと思う。

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。ロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル、ギターを担当。作家としても活動し、これまでに小説『祐介』、日記エッセイ『苦汁100%』『苦汁200%』(いずれも文藝春秋)、『犬も食わない』千早茜との共著(新潮社)を上梓。

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