残りものには、過去がある

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103522119

作品紹介・あらすじ

結婚して幸せになるために必要なのは、愛、打算? それとも……。新郎新婦を巡る披露宴の物語。まだ肌寒い春の、とある結婚式場。美しく若い花嫁とカバのような花婿という、年の差婚カップルの披露宴に集った客たちはそれぞれ、偽装、詐欺、婚前不貞という闇を抱えていた。そして一見、幸せの絶頂にいるように見える新郎新婦には、2人だけの秘密の約束があった……。恋人、夫婦、家族の新しい関係を提案する連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • ある披露宴を巡る6つの物語 「結婚式」、それは祝福と拍手に包まれる良き日  格差婚夫婦、招かれた客、招かれなかった人… 皆が人に言えない秘密を抱えていた そして、新郎新婦の結婚に隠された「真実」
    残りものには、過去がある、なんて意味深な題名だけど 出席者のそれぞれの物語は、一生懸命で切羽詰まっていて でも話しの顛末は救われるものがあってホッとなる各ストーリーでした。オムニバス的な視点で面白かったです。

  • 一見、華やかに見える結婚式。
    でも新郎新婦、親戚、友人と“友人”の中には、それぞれの想いや過去がある…

    〜~〜~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    清掃会社の跡取りである伊勢田友之。
    あだ名は「伊勢ふく」で、ふくよかな見た目をもつのんびりした男だった。
    同級生のなかで唯一の独身者だった伊勢田が、47歳の今、結婚するという。
    お相手は、おなじ清掃会社に勤めていた部下でもある29歳の早紀だった。

    しあわせで、華やかに見える結婚披露宴を舞台に、参列者や過去に関わりのあった人、新郎新婦それぞれの心中を描いた連作短編集。

    〜~〜~〜~〜~~~~~~~~~~~~~~~~~〜

    タイトルにある“残りもの”“過去”という組み合わせから、遺品整理業者のお話かな??と思って開いてみましたが、それとはほぼ真逆の舞台である結婚式に出くわしたので驚きました。
    最初の1編が、その結婚式に“レンタル友人”として出席した女性が主人公のお話だったので、「人物をレンタルする会社のお話?と思いましたが、ひとつずつ話が進むにつれて、主人公は参列者である友人、親戚、新郎新婦へと移っていき、「ああ、“過去がある”のは参列者たちのことなのか」と気づきました。
    しかし“残りもの”の意味がよくわからないまま、最後の新郎新婦のお話までたどりつきましたが、なるほど、確かに新郎新婦のお話を読むと“残りものには過去がある”だなと、腑に落ちました。

    結婚式や披露宴というと幸せの場、お祝いの場というイメージが強いですが、確かに言われてみれば、参列者全員がそういう感情をもっているとは限りませんね。
    笑顔で拍手し「おめでとう」と言っているその人の本当の気持ちは本人にしかわからない…
    結婚披露宴はこうあるもの、祝福と幸せの場であるものという体裁をたもった上で繰り広げられるそれぞれの心中と過去のお話は、それぞれのお話自体が読者にしか見えない秘密の話に見えて背徳感のようなものも感じ、とてもドキドキしました。
    そのひとつの場面を、あの人はこうとらえ、この人はこうとらえている…その差異が見える、読めるというのがとてもおもしろかったです。

    傍目からみたら伊勢田は“残りもの”に見えるからこそ、その彼が美人で年下の早紀と結婚することに驚いたり、羨んだりする人があらわれます。
    けれどとうの伊勢田と早紀にとっては、それぞれの過去があってその延長線上に“結婚”という形があっただけであって、けして“残りもの”ではないのですよね。
    過去は誰にでもあるし、残りものにみえてしまうかどうかは自分にはコントロールできないし、はた目からどう見えようと当人たちがそれでいいならいいじゃないですかね、としみじみ思ったお話でした。

  • ある結婚式をテーマ?にした短編集。
    披露宴に出席した人、招かれなかった人、いろいろな人の立場でその結婚が語られて奥行きを作っています。読み勧めていくと伏線がはられていたことに気づき、もう一度振り返ったり。最終話の結婚の経緯も含めて、どの話もほっとできるエンディングでよかったです。

  • 新聞の書評で知り、即購入。

    ある新郎新婦の披露宴が舞台。新郎新婦と周りの人達の物語が、いろいろな形でつながっていく、連作短編のような形で展開される。
    登場人物の描写がよく、物語にひきこまれていく。

    読後感も、心地よく、また読み返しました。
    タイトルも素敵だし、想定も綺麗。

    個人的には、ある登場人物(たち)の「そうであったかもしれない」人生に思いを巡らしました。

    ほんとうに、素敵な物語たちでした。

    余計な話題になりますが…。
    児玉清さんが、この素晴らしい物語を読んだら、どんな言葉で書評したんだろうか。
    笑顔で語る姿を想像します。

  • 友人代表(仮)のスピーチに感動した。
    即興なのにも関わらずすごいな。
    1番の親友のあの子の結婚式で、私が友人代表だとしたら何を話すんだろう。とか考えてた。
    きっとスピーチの原稿を考える時間すら幸せなんだろうな、、
    『前から友だちでも、後から友だちでも一緒だ』

  • 結婚式に参列する人々。
    新婦側の友人を演じるレンタル友人、新婦の従姉、新郎の学生時代の友人、そして新婦や新郎自身も。
    それぞれがそれぞれに重い過去がある。
    結婚式から披露宴が終わるまでの時間に、それぞれの過去が語られていく。

    ちょっと苦しいその過去たちだけれど、最後に新郎新婦が新しく一歩を踏み出す明るさが見える。
    大きな感動…というわけではないけれど、ほのぼの心が温かくなる。

  • あるカップルの結婚式・披露宴に関係する人たちのそれぞれの心温まるストーリーでした。
    最初はレンタル友だちの人の話。この話が最初に持ってきたのは良かったと思います。このカップルはどんな人なのかと興味を大いにかきたてられ、次々に読んでしまいます。

    表紙の写真が何か意味深な感じで、読む前から興味を引くのも良かったです。

    読後感も良く、さわやかな感じがします。

    これから結婚を考えている人にはぜひ読んで欲しい本ですね。

  • 悪いことばかりではない。これまでの出会いがきっとこれから先の自分に繋がっていく。今、必要な出来事なのだと思って過ごしていきたいものだ。

  • 「祝辞」「過去の人」「約束」「祈り」「愛でなくても」 「愛のかたち」
    披露宴を巡る6つの物語が収録された連作短編集。

    私の中では、中江さん=女優のイメージがまだ強いけれど、一小説家として十分に堪能出来る作品集でした。

    この良き日に招かれた客、招かれなかった人がいる。

    それぞれが抱え込んでいる秘密もあれば、カバのような花婿と、美しく若い花嫁の格差婚夫婦の結婚に隠された『真実』もある。

    良い人も嫌なヤツも出て来るけれど、その人間模様は非常にリアルだ。

    『困っているときに友だちの価値がわかる』
    この言葉には強く感銘を受けた。

  • へえー、なかなか。
    着地点がモヤっと、ハッピーエンドだった。

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著者プロフィール

俳優、作家、歌手。1973年大阪生まれ。89年芸能界にデビューし、数多くのTVドラマ、映画に出演。俳優業と並行して脚本の執筆を始め、2002年「納豆ウドン」で第23回「NHK大阪ラジオドラマ脚本懸賞」最高賞受賞。06年には第一作となる小説『結婚写真』を刊行し、小説、エッセイ、書評など文筆活動も積極的に行う。NHK-BS『週刊ブックレビュー』で長年司会を務めた。NHK朝の連続テレビ小説『走らんか!』ヒロイン、映画『学校』、『風の歌が聴きたい』などに出演。近著に『万葉と沙羅』(文藝春秋)、『残りものには、過去がある』(新潮文庫)、『水の月』(潮出版社)など。文化庁文化審議会委員。19年より歌手活動再開。

「2023年 『北條民雄『いのちの初夜』 2023年2月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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