孤独の意味も、女であることの味わいも

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 105
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103522522

作品紹介・あらすじ

女であることは、強さと矛盾しない。知性は感性を殺さない。本を偏愛した少女時代。
学校生活での疎外は暴力へ。夫との出会い、最愛のわが子を喪う経験、母親から再び
女性になるということ。どんなことがあっても救えない子はいない。正解のない試行
錯誤そのままに、気鋭の国際政治学者が、長年抱いてきた葛藤を初めて語る。

感想・レビュー・書評

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  • てっきりお嬢様育ちで、順風満帆な人生を生きてる人だと思っていた。

    はじめの方を読んでるうちは、この本出さない方が良かったのでは?と思っていた。

    イメージ商売として、歯に衣着せぬ少し生意気な、女に嫌われる女要素を持ち合わせた部分を演出していると感じていたから。
    それをことごとく覆す人生歴に一人勝手にがっかりしていた。

    しかしそれは、私の羨みであることに気づいた。

    読みすすめるうちに、言葉の端々に人生と自分に真摯に向き合い、考え、

    自由と自立を手にしてきたことが現れていた。

    読み終わる頃には手のひらを返すように羨みが憧れに変わっていた。

    この人のように深く考え人生を味わいたいと思い、安易にヒントを得ようと、あまり行うことのない一度読んだ本を読み返す作業をしている。

  • 私より一回り以上年齢を重ねた方が書いた本だから今より葛藤する機会が多かったのだろうなと思うけど、今の世代にも通ずるし、染み入った.....孤独の意味も女であることの味わいももっと知れると思えば、大人になるのも楽しみだ〜〜

    「女性性の葛藤からの一つの脱出方法は、擬態を排除して盾をはりめぐらし、お気に入りのもので自分を囲んで眼鏡越しに世界を見ることだ。」
    「帰責性と因果関係を混同したらだめだ。」
    「やがて私が辿った道の一部を通り、苦労することも、幸せを覚えることもあるだろうけれど、それをあらかじめ指摘して意識させ、行動を縛ることに何の意味があるのだろう。」
    「あなた自身を、出来事や外部に定義させてはいけない。あなたのことはあなた自身が定義すべきなのだから。」
    「私は私の愛する人たちのためにも、そして無数の私のためにも、書いておこうと思ったのだった。」

  • どうやら星野源さんと三浦瑠麗さんが流行っているようだというのが海外生活から戻ったときの日本の印象だったくらい、テレビを見ない私でさえも知っていた三浦さんの存在。数年遅れでみた逃げ恥のお陰で星野さんはどうやら歌って演技のできる人らしいと判明したのだが、三浦さんについては先日AERAwithKidsのバックナンバーで初めて対談を読み、この本にたどり着いたので、いきなりその私的な部分から知ることになった。メディアでの露出部分については読後に知った次第。

    こんなにも個人的な体験を共有してくれてありがとうというのが第一の感想。死産や流産といった体験をオープンにする著名人が増えてきているが、そういう体験の共有が女性のなかに連帯感を生み出す不思議。数年経って言語化できるようになったとは言え、この本を書く過程でだって辛かっただろうに。その文脈で、毛色は真逆ではあるけれどミシェルオバマさんのBecomingの読後感に通じるものがあった。一見、強くて完璧に見えていた女性に、何か自分に通じる部分を見つけて勝手に愛おしくなる、これまた不思議。

    Wikipediaを読んでいたら、この本はフェミニストにウケなかったという趣旨の、あたかも女性に嫌われているかのような記述があった。なんで毎回毎回、女性どうしは対立するものだという論調を作り上げるのだろう。それはもちろん三浦さんを好まない女性もいるかもしれないけれど、例えば同じようにメディアに露出している男性を女性が嫌っていてもそれをわざわざジェンダー間の対立に毎回結びつけはしないだろう。三浦さんの主義主張や活躍に妬む人たちが、「やっぱり同性に嫌われている」という構図を作りたがっている悪あがきにしか思えない。

    自己犠牲一辺倒の子育てをやめた後、母からも夫からも自立したという彼女の生き方は、未だ女だから母親だからという枠で縛られがちな現代女性の枠を軽やかに超えていて眩しい。お子さんへの愛情が深いことは言葉の端々から感じられるのだが、だからといって決して子供を自己表現の手段にしていない。母親である前にひとりの女性であるという姿(再び女に戻ったという表現だったが)は、この本の直前に「読書する女達」を読んで、自立した女性であることと母親になることは両立するのかと色々考えさせられていた後だっただけに、より一層爽やかに映った。

    • てるしんさん
      読み応えのある感想をありがとうございます。
      読み応えのある感想をありがとうございます。
      2022/10/23
    • タテヨコさん
      コメントありがとうございます!読書の励みになります。
      コメントありがとうございます!読書の励みになります。
      2022/10/28
  • テレビで拝見する三浦瑠麗さん。こないだアナザースカイをみて、興味を持って読んでみた。

    聡明さ漂う物言い、淡々とした語り口はメデイアの印象そのまま。それでも赤裸々に語られる母との関係、学生時代の出来事は、途中あの三浦さんのことだということを忘れてしまう感覚があった。

    明るいばかりじゃない辛いことも語られるが、多分孤独を知ったからこそ、愛情を自覚した家族との関係性もあって、とても前向きで強い。

    人生で起きるさまざまな刺激に心を開いておくこと。
    あなた自身を出来事や外部に定義させてはいけない。あなたのことはあなた自身が定義すべきなのだから。

    またライフステージが変わったら読んでみたい。

    2020.11.14

  • 著者が子供の頃から体験し、感じてきたことを、22項目のエッセイにして纏めた本。母親のこと、学校のこと、高校生の時に暴行を受けたこと、付き合っていた男性のこと、そして死産をしたことなど、衝撃的な内容を、自分の言葉で主観的にはっきりと述べている。スマートで、とても勇気がある人だと思う。現在を真剣に生きるのが大事ということが、著者の積極性やチャレンジ精神を支えているのだと理解した。感銘を受けた。

    「真摯に向き合う一瞬一瞬の「いま」が積み重なって、川の流れのように私たちを終着点へ押しやる。映画の主人公と同じく、「いま」をどう生きるか私が真剣に考えるようになったのは、多分この年齢になってからだ」p137

  • 湘南高校から東大の美人、現在は国際政治学者。
    結婚して子どももいる。
    これまですべて順風満帆に生きてきたのだろうと思っていました。

    こんな壮絶な体験をしてきたなんて…。
    ものすごく強い人なんですね。

    いろいろ辛い経験をして思い悩んでいる人は
    読んでみたらいいと思います。
    偉人伝よりも心を打つかもしれません。

  • 何も感じずに生きていけたらどれほど幸せだろうかと思っていた。敏感であることは弱さであり、良くないことだと感じていた。
    著者は過去を徹底的に内省し、困難な経験を自身の智慧と愛情へと昇華した。ヒントとなる言葉がたくさんある。強くなるということは「オトコ」になることではなく、自分らしく堂々とあることであるということ、本当に美しい人だと思った。

  • 三浦瑠璃の自叙伝、彼女のバックグランドが分かる本。

  • よかった…。
    辛いことも、嫌なこともあるんだけど、
    著者は強く賢く、著者なりの"孤独"の中に生きている。
    子どももだんなさんもいて、ぱっと見孤独には見えないと
    思うんだよなぁ…
    幸せが主観的なように、孤独もそうなんだってことだろうな。

    以下いいなと思った表現などのメモ
    p29
    彼女の誕生の瞬間は、連続的で、騒々しく、満ち足りて、またそのために記憶はぼんやりしたものだ。
    →出産のときなんて激痛やときに恐怖や不安で、自分の感情の流れなんて覚えておいてもいられなそうなのに。ぼんやりといいながらも、まさしく言い当ててそうだなというその表現。人それぞれだろうけど、幸せと喧騒と痛みと、その瞬間にぎゅっとまとめて巻き起こる渦。


    p128
    私たちが恋愛を求めるのは、生きていくため。生きる上で、愛し、関心を向ける対象を必要としているからだ。

    次の瞬間を、明日を心待ちにするための何か。
    →安定すると、マンネリの中で安心しきって素敵な自分が引っ込んでいきがち。新しいものを求めたいというだけじゃないけど、好きな人をいいなとおもう気持ちにふたをしなければならないというルールに縛られなくてもいいよね! 自分勝手かなぁ…。

    p130
    私には、自らの人生の欠落を埋めようと試行錯誤する彼女がいとおしいものに見えた。人間が生きて行こうとする姿は本物だ。それが結局は度重なる失望に終わるのだとしても、人に思いを懸けることはそれ自体、美しいからだ。
    人というのはたいてい愛すべき存在なのだった。

    →それって、人類みな愛しいって、すなわち母性なのだと私は思っている。

    p137
    周囲の人から孤立しても、最愛の子を喪っても、人生には必ず意味がある。さまざまな刺激に心を開いていれば、時が傷を癒したことに気づくことができる。それほど人生にはさまざまなことが待ち受けている



    p138
    →ちいさいころ~の記載を読んで、職場の休憩室で涙が出た、人生って、女の人生っていろいろあるけど、自分は自分。著者自身によって、自分のために時を超えて残されたストーリーなのだと知った。

  • 女性と男性は平等だし男女同権と言いながら、決して日本社会はそうではないわけで、そんな綺麗事ではない。そして女性にしか経験できず、感じることは男性には知りようも無いし、それは逆もまた然り。とはいえ、女性としての彼女のこれまでの自伝ともいうべき本書は、男性が女性の立場に立って見る視点の一助にはなると思う。最後のページは本当にそうだなと思わせます。朝生の彼女はあまり好きでは無いですが、また違った視点で彼女を見るきっかけになりました。

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著者プロフィール

国際政治学者。1980年神奈川県生まれ。東京大学農学部卒業。東京大学公共政策大学院修了。東京大学大学院法学政治学研究科修了。博士(法学)。専門は国際政治。現在、東京大学政策ビジョン研究センター講師。著書に『シビリアンの戦争』(岩波書店)、『日本に絶望している人のための政治入門』(文春新書)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)。

「2017年 『国民国家のリアリズム 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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