吃音: 伝えられないもどかしさ

著者 :
  • 新潮社
4.08
  • (10)
  • (7)
  • (8)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 139
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103522614

作品紹介・あらすじ

日本に100万人もいるのに、彼らを孤独に追いやる「どもる」ことの軋轢とは。頭の中に伝えたい言葉ははっきりとあるのに、相手に伝える前に詰まってしまう――それが吃音だ。店での注文や電話の着信に怯え、伝達コミュニケーションがうまくいかないことで、離職、家庭の危機、時に自殺にまで追い込まれることさえある。自らも悩んだ著者が、丹念に当事者たちの現実に迫るノンフィクション!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 自身も吃音である筆者による吃音者の内面に迫る本。吃音を苦に命を絶つケースも多いそうで、かなり胸が痛む記載もありますが、周囲に吃音者がいる方は一読してみるとよいと思います。子どもの20人に1人が発症する(ほとんどがその後治る)そうなので、小さなお子さんをお持ちの方にもおすすめです。「ノミを打って少しずつ石を削るように一音一音を必死に出している」という表現が印象に残りました。
    続きはこちら↓
    https://flying-bookjunkie.blogspot.com/2019/04/blog-post_13.html
    Amazon↓
    https://amzn.to/2P7C0ds

  • テーマは「吃音」だが、関係のない人にこそ関係のある本。あとあまり、普段はノンフィクション読まないという人にも。

    すべてが明らかになるわけではなく、すべてに結論が出るわけでない、という、ありのままの姿勢がとてもよかった。小説のように全部が丸く収まるわけではないが、それこそ人生と同じで、読み終えて考えさせられるところが大きい。

    他者と関わる必要があるときに問題化する「吃音」は、それを受け入れられるかどうか、そこに社会の柔軟さが問われている、現れるべくして現れた問題のようにも思える。

    身近ではないので傍観してしまうところがあるのだと思うが、単純に、「他者としゃべりたくない」という現代社会の悲鳴のような気もした。「うつ」だって、「もう頑張りたくない」という、心の叫びなのかもしれない。この薬を飲んでください、で治るようになったら、もちろん救われる人もいるから解明は待たれるのだけど、病(「おかしい」→「この薬を飲めば治る」)のように単純な問題でもないような気がした。

    思いきって言ってしまえば、都市という空間で、私たち自身が悪化させた病状のようにも思われる。(男の人に多いというのも、プレッシャーを感じやすい社会だからじゃないのか、と思ったり。他の国とか、他の時代と比較してみないと何ともいえないが)

    症状としては「吃音」であるが、それが問題化する本当の原因は、私たちの脳の中にはないのではないか。根本的に社会の問題を治さなかったら、(それはつまり、昔の感染症などが衛生状態を良くしなければ別の病気が流行ったりするなど、根本的には解決しないのと同じで)それは治った、とはいえないのではないか。

    逆説的な見方をすれば、社会をより良くするために現れた社会の課題のようにも思われる。こういう問題をひとつずつ解決しながら、私たちは前に進んでいくのかもしれない。

  • 吃音の実態、治療法がないこと、それがまた軽視される悪循環にあることを伝えてくれた

  • 言葉を発しようとするとき、滑らかに話せず、つっかえたり、同じ音を繰り返したりする。
    どもり、あるいは吃音。
    からかいや差別の対象になることもあり、重度の吃音を持つ当事者にとっては重大な問題である。
    幼少期の子供ではおよそ20人に1人が吃音を発症するという。そのうち8割程度は成長とともに自然に解消されていくが、消えずに残る場合もある。概ね、1%が吃音を持つとされている。
    症状は多様で、大きくは「ぼ、ぼ、ぼ、ぼくは」のように繰り返しが入る「連発」、「ぼーーーくは」のように伸びる「伸発」、「・・・(ぼ)くは」のように出だしの音が出ない「難発」の3つに分けられる。
    100人に1人というくらいだから、著名人にも吃音の人物はいる。映画『英国王のスピーチ』はジョージ6世(エリザベス2世の父)の吃音がテーマだが、その他、マリリン・モンロー、田中角栄、ルイス・キャロルも吃音症だったという。

    緊張してスムーズに話せないというのは多くの人が経験することだが、吃音は、特定の言葉を発しようとするときや、特定の状況下で、喉や口元が硬直し、どうしても動かなくなる点で、一般的な緊張とは異なる。
    しかし、そのメカニズムは実は詳細にはわかっていない。器質的な問題もあり、それに加えて生活環境や発話状況に大きく左右される。本人にとっては深刻だが、他人からはその深刻さはわかりにくい。常にどもるわけでもなく、完全に話せないわけでもないためだ。
    原因もわからず、症状も安定しない。万人に当てはまるような治療法が確立されているわけでもない。

    だが、当事者には大きな問題だ。
    発話がスムーズでないことは、吃音者の人生に大きな影響を及ぼす。就職に不利になったり、対人関係で過剰なストレスを感じたりが積み重なり、思い詰めてうつ病を患う人もあれば、自死を選んでしまう人もいる。

    本書の著者も吃音の経験がある。著者の場合はあるきっかけがあり、症状は軽減しているが、そもそもライターという職業を選んだのも吃音があったせいだという。
    吃音というテーマを選んだのはもちろん経験者であるからだが、その著者にしても、自身の症状が重かった時期にはこの問題には取り組めなかっただろうと言う。そのことが吃音が当事者に与える影響の深刻さを物語るようでもある。

    吃音には特有の「曖昧さ」がある。
    それは障害なのか? 障害だとすれば身体的なのか精神的なのか。
    訓練によって直るものなのか。
    症状が出る場合と出ない場合があるのはなぜなのか。
    原因に関する憶測や偏見も消えない。

    吃音をコントロールしようと努力する人。
    障害者認定を受けて一息つく人。
    職場に恵まれる人、理解のない職場の対応に苦しむ人。
    吃音の度合いもさまざまならば、吃音に向かう姿勢もさまざまである。
    自身も吃音の経験を持つ著者は、丁寧に個々の吃音者に向き合い、その人生を追う。

    「個性」と「障害」の狭間で、もがく人たちがいる。
    吃音の人が持つ「生きづらさ」はどこからきているのか。
    読み応えのある好著である。

  • 「吃音」と言っても何となく不自由だ、程度の認識しかなかったが、自死に追い込まれるような苦しみ、身もだえするような苦闘の日々を送っている方がいることを初めて知った。
    著者自身が吃音者であったとのことだが、吃音者に寄り添いその心の内を聞きだしながら、治療法や支援の活動などを真摯に取材したことがよく分かる。
    流れるような文章で構成も立体的。素晴らしいノンフィクションであった。

  • 『吃音 伝えられないもどかしさ』吃音者の著者が当事者たちの現実に迫る - HONZ
    https://honz.jp/articles/-/45122

    新潮社のPR
    頭の中に伝えたい言葉ははっきりとあるのに、相手に伝える前に詰まってしまう――それが吃音だ。店での注文や電話の着信に怯え、伝達コミュニケーションがうまくいかないことで、離職、家庭の危機、時に自殺にまで追い込まれることさえある。自らも悩んだ著者が、丹念に当事者たちの現実に迫るノンフィクション!
    https://www.shinchosha.co.jp/book/352261/

  • 6/12 TV
    めざましテレビで尾崎世界観さん紹介
    言葉にならないものでも伝えるべきことはある―話題の一冊です。

  • もう少し踏み込みがあったら、良かった。

  • 長年吃音に苦しんで、社会人になって世界を放浪する中で突然治った作者が、吃音について語る。
    作者は学生の頃の知り合いだったが、そこまで苦しんでいたとは正直知らなかった。伝えられないことの苦しさを知る。
    それに、なぜか、名前をいう時に吃音が出やすいらしい。間違えてはならない、という強い思いがどもらせ、また繰り返すことで、負の学習をしてしまうのだろうか。

  • 自身も吃音で悩んだ著者による、吃音についてのノンフィクション。身の回りで吃る人はいたけれど、それを大きな問題と考えたことはなかった。
    症状にもよるようだが、その人の人生を大きく左右する問題だということが、この本を読み理解出来た。

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1976年東京生まれ。東京大学大学院修了。オーストラリア、東南アジア、中国、ユーラシア大陸、アフリカなどへ妻と旅をしながらライター活動を行う。京都在住。著書に「旅に出よう」がある。

「2017年 『遊牧夫婦 はじまりの日々』 で使われていた紹介文から引用しています。」

吃音: 伝えられないもどかしさのその他の作品

近藤雄生の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
エラ・フランシス...
塩田 武士
リンダ グラット...
三浦 しをん
角幡 唯介
又吉 直樹
ヨシタケ シンス...
有効な右矢印 無効な右矢印
ツイートする