1R1分34秒

著者 :
  • 新潮社
3.01
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本棚登録 : 1170
感想 : 176
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  • Amazon.co.jp ・本 (140ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103522713

感想・レビュー・書評

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  • #過去が現在(いま)現在が未来に繋がっていると信じるのはクソフィクション

  • この本好きだなぁと思いました。

    生きることについて向き合える本だと思います。

    ボクシングの知識が無い私でも読みやすかったです。


    ※ここからネタバレあり※

    ボクシングのプロライセンスを取った21歳の若い主人公。

    プロになれ喜んでいたけど現実は賞金を稼ぐほどの実力はなくバイトの日々。
    練習する時間もなく試合にも勝てず周りからも気を使われ悪循環の中にいる。

    トレーナーに見放され、新しくトレーナーとして紹介された同じジムに所属するプロボクサーの「ウメキチ」と出会い変化が起こる。

    奇人で飄々としているウメキチ。主人公は嫌々ながら疑いながらも、付かず離れずの距離でサポートしてくれるウメキチに段々と心を開き信頼し成長していく。



    私自身30代になって思うことは、10代、20代は生きると死ぬが近い距離にあった気がしている。

    おそらく短い期間に多くの選択肢が提案され、その中から自分で選んで生きているという感覚が強かったからだと思う。

    選んだからには最高でありたいと思う気持ちも強く、ただ理想と現実のギャップに苦しむことが多かった。

    歳を重ねるとあぁまたこの感情ね。はいはい。と段々なってくるし、もはやその感情は時間の無駄になるかもしれないと別の選択をするようになる気がする。

    この本を読んで、私はこの感情を忘れてしまっている自分がいるなと思った。

    最後はまとわりついていた苦しみとは反してあっさりと勝つことができた。成功に辿り着くまでの過程で経験する挫折感、焦燥感、不安、自己嫌悪感などは誰もが通るものなのかもしれない。信頼のシステムに切り替えられるかどうか。(信頼のシステムという表現は機械的であまり好きではないけど)

    (この本とは関係ないが読んでてふと思ったのは、人生は常に不安を無くしていく作業なのではないかと思った。そして目の前にいる人を幸せにする作業でもあり、とても難しい作業だなと思った。)



  • 地味なプロボクサーとして生きている主人公。
    その心の葛藤と自我との闘い。
    スゲー面白い、スゲー文学的と一気に読み進めながら、僕はこんなに物事を具体的に抽象的に自分の人生を問いかけながら生きているだろうか、いや生きてないだろうな。と思い至る。

  • ボクシングものって好きなんだけど、今回も人間の内面を掘り下げる内容で、どんどん嵌まり込んでしまいました。自分の内面と人とのやり取り。会話や、電話や、メールや、夢の中。自分の経験に当てはめてしまう。自分の場合は高校の柔道での減量。キツイほうじゃなかったけど、どんどん引き込まれた。そしていろんな人とのやりとり。こっちの方が、抜けられなくなった。久々に一気読みしてしまいました。

  • 負け込んでいる4回戦ボーイ
    意気込み、苦悩、諦め、そして再び「勝ちたい」

    心の中からあふれ出る言葉たちの
    なんと饒舌なこと!

    言葉のチョイスが独特で心地よい。

    この小説は日頃からボクシングやボクサーたちに
    触れてる人間ならば、より楽しめるかも。

  • 芥川賞受賞で話題の一冊です。ボクサーの苦悩がつらいほど描かれてます。ボクサーが主人公の小説って、どれもこれも面白い。それぐらい、命を削って戦ってるんですね。

  • 第160回芥川賞受賞作品。ボクシングの話しです。といっても、才能があるように思えず、努力もそれなり、恋愛もいい加減、仕事も適当なバイト。そんなグダグダな男の内面に光を当てた物語だ。ウメキチという新しいトレーナーと出会い。そこから彼は激変するが、メンタルの弱さはそのまま。そのぐだぐたの弱さが人間らしくおもしろい。試合を中心に動的な部分を描くのではなく、その中間、特訓や減量。女との距離感、友達との関係。そういうのが面白かった。
    http://muto.doorblog.jp/

  •  ボクサーの生理が事細かに綴られていてとても面白かった。また練習のメニューや内容が細かく、ロジカルに描写されていて先日見た『クリード』に物足りなかったのが全部描いてあった気がした。トレーナーとのドライでありながら、それが配慮である感じの関わり方がよかった。

     読み進めながら、これはもしかしたら試合に至らずに終わるパターンかと思ってハラハラしたが、短い表現であるにも関わらず納得の行く結末で安心した。

著者プロフィール

1983年生まれ。2016年『青が破れる』で第53回文藝賞を受賞。2019年『1R1分34秒』で芥川龍之介賞受賞。その他の著書に『しき』、『ぼくはきっとやさしい』、『愛が嫌い』など。最新刊は『坂下あたるとしじょうの宇宙』。

「2020年 『ランバーロール 03』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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