- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103524311
感想・レビュー・書評
-
記録
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
木皿泉さん脚本のドラマは、ロボットが題材になっているものがいくつかある(Q10、セクシーボイスアンドロボなど)。
心を持たないロボットと人間の関わり…みたいなものが作品をつくる上で何か軸にあるのかなとは思っていたけれど、この小説ではその世界観が爆発していた。
「はだ」「あし」「めぇ」「こえ」「ゆび」「かお」「あせ」「かげ」「きず」の全9話。それぞれがまったく関係ないのかと思いきや、最後のほうに進むにつれて、最初のほうのお話との繋がりがあったりして胸が熱くなった。
「カゲロボ」と呼ばれる人間そっくりのロボットが日本で作られているという噂を、「はだ」の主人公である冬は小3のときに初めて聞いた。
冬は中学生になり、学校には孤立している「G」と呼ばれる美人の女子がいて、冬はひょんなことからGと親しくなるのだが、Gは実はカゲロボなのではないかという噂が流れ始める。
上記の通り、物語の中で人間が過ごすところに、ロボットめいたものが紛れこんでいる。それはすべての物語に共通していて、人型ではないロボットも登場する。
こないだテレビでAIが搭載されたペットロボの特集を観たのだけど、ロボットが側にある生活というのはもはや現実になっていて、もしかして人間だと思い込んでいるものの中に実は精巧なロボットが紛れこんでいることも現実にあるのかも?なんて思わされる。
機械だから、不要なものは廃棄されたり、機械なのに人間界で暮らすうちにいつしか心のようなものを持ち始めたり、読んでいて切なくなる場面もとても多かった。
きゅんとしたりじーんとしたり考えさせられたり、木皿泉さんの世界観が存分に楽しめる。
星新一さんの小説とか、ドラえもんとか、人の心を持ち始めるロボットもののアニメや映画とか、人間は昔からロボットというものに憧れと畏れを感じていたのだろうな、と考えたりした。
人間が作ったロボットに支配されるようになる映画も過去にあった。便利だし賢いから、怖いとも感じるのかな。 -
すこし光が見える、生きるって悪くないなと思えてくる。さすが、木皿作品だなと。
ここ最近は身近に死がふたつあり、こころがぎゅっと縮こまっていましたが、すこし泣いてまた前を向うと思えました。
-
不思議な話が詰まってる短編集でした。面白かったです。
-
人間そっくりのロボットが職場とか学校とか、場合によってはヘルパーという身分で家庭などに入りこみ、そこで虐待やイジメがないか監視する…
そんなカゲロボにまつわる都市伝説がある世界。
ロボットやAIやアンドロイドが公然または、秘密裡に身近にあって、都市伝説が伝説じゃないお話たちが続く。
最後にそれぞれが少しずつリンクしていることがわかる。
イジメで学校にこられなくなった男の子の代わりに鉄製の箱を毎日送り迎えし、世話をするイジメた側の男の子の話。(こえ)
子どもが生まれてすぐに離婚した両親が、子どもをどちらが引き取るかで決着がつかず、アンドロイドの子どもを作った。どっちがアンドロイドかわからずに育てたが、母親が疑心暗鬼になり、子どもの交換を父親に迫り、交換させられた子どもの葛藤の話。(かお)
人間って勝手だな。
でも、反省したり、慰めあったり、励まされたり、そうしてちょっとずつ成長して生きていく。
ほっこり心が温かくなる。 -
「きず」と「かげ」がよかった。
ささやかな悪事を働いちゃった悪い自分や傷ついてそれをなんとかしのいできた必死な自分のことは、自分しか知らないけど、それをずーっと自分以外の誰かが見守って全て知っててくれてるとしたら心強いのかもしれない。 -
『かお』が好き。『きず』は阪神大震災の混乱の中の話で、これを題材にするのって気分良くない…と思っていたけれど、結果的に良い話だった。
-
ロボットや人工知能が登場する短編集。
短編の中には、これは完成した作品というよりアイデアの芽のようなものなのかな?という感じのものもあった。
木皿泉さんのQ10が大好きなので、後半はQ10を思い出して、センチメンタルな気持ちになった。