ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103526810

作品紹介・あらすじ

大人の凝り固まった常識を、子どもたちは軽々と飛び越えていく。優等生の「ぼく」が通う元・底辺中学は、毎日が事件の連続。人種差別丸出しの美少年、ジェンダーに悩むサッカー小僧。時には貧富の差でギスギスしたり、アイデンティティに悩んだり。世界の縮図のような日常を、思春期真っ只中の息子とパンクな母ちゃんの著者は、ともに考え悩み乗り越えていく。落涙必至の等身大ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 息子くんは器量デカし。

    こうでなくちゃという
    社会の鋳型に捕われず、

    あるものをあるがまま
    に受容するアナキスト。

    禅の心を持ってますね。

    人間がよってたかって
    人をいじめるのを見て、

    人間は人を罰するのが
    好きなんだと看破する
    あたり神がかってます。

    そう、正義は暴走する
    んですよね・・・。

    多様性なんていまさら
    論じるまでもない。

    いろいろあるのが自然。

    息子くん流に言うなら
    オーセンティックです♪

    多様性があって自由が
    ある社会は楽しくなる。

    この子どもたちが切り
    拓いてく未来はきっと
    明るいと信じます!!

  •  数年前に話題になっていた本。イギリスの社会情勢も世界の情勢もこの頃とはまた変わっているかもしれないけれど。
     日本生まれでイギリス在住のブレイディ・みかこさんが、イギリスで最底辺保育所の保育士として働き、息子さんを「最底辺」中学校に進学させた経験談だとは知っていた。
     イギリスといえば、19世紀の小説を読んでいても上流階級の人は「労働することは恥」と思っているくらい中流、下流の人とは生き方が異なるし、ミュージシャンのことを調べても「ビートルズは労働者階級と思われているが中流階級である」とか「ローリング・ストーンズは労働者階級と思われているが、ミックとブライアンは中流階級だ」とか、国籍だけでなく、そこが大事なんですねと思わせられることの多い階級社会なんだなと常々感じていた。
     みかこさんはイギリスで「最底辺」の保育所で働きながら息子さんもそこに預けていた。けれど、息子さんの進学した小学校はご主人の親戚がカトリックであるため、一族の方針に敢えて反抗することなく、「なんとなく」カトリックの小学校に進学された。子供をカトリックの学校に進ませる親は大体収入が安定していて、教育熱心なので、そこは品の良いトップレベルの小学校だった。
     しかしまた、中学校に進学する際、地元の「最底辺」と言われていた公立中学校から見学の案内が来たので行ってみると、「音楽部」のイキのいい活動にみかこさんは好感を持ち、さらに子供たちに好きなことを思いっきりさせる教育方針からそれに比例して成績もアップして「最底辺」を脱してきているということも知った。
     みかこさんは決して息子さんにこの「元・最底辺」中学校を進めたわけではないが、仲の良い友だちがそちらへ行くというので、息子さんはカトリックの中学校へそのまま進まず、その「元・最底辺」公立中学校を選んだ。
     息子さんの学校生活を通して経験するあれこれ、みかこさん家族の住むイギリスの元公営住宅という地域のあれこれを通して、イギリスなりの格差や普遍的な差別など勉強させられることばかりだった。
     まず、意外に思ったのは、色んな人種のいるイギリスという国の中で、一番差別されているのは、有色人種ではなく、「ホワイト・トラッシュ」と呼ばれる白人労働者階級の人達だということだ。みかこさんの息子さんが通った小学校のように裕福で教育熱心な家庭の子の通う学校のほうがむしろ色んな人種が集まっているらしい。
     対して息子さんが中学校から通ったような最底辺レベルの学校の生徒はほとんどが白人労働者階級であり、よってそこに有色人種の子が入ると虐められることが多いらしい。
     聡明で逞しい息子さんは、お父さんの心配をよそに中学校で虐められることもなく、むしろ楽しみ、生徒会長にまでなったが、友だち同士の対立や自分のアイデンティティのことで、思春期らしく悩むことも多かった。
     例えば、とても貧しい公営住宅に住んでいて虐められているティムという白人労働者の子に、みかこさんが学校のボランティア活動で直しているリサイクルの制服をあげたいのだけれど、彼のプライドを傷つけないように渡すには何と言って渡せば良いか、親子で一生懸命考えている姿が素敵だった。結局、「友だちだから」と言ってさりげなくリサイクル制服をあげて、ティムを喜ばせることができた。
     また、イケメンで歌が上手く、学校のミュージカルでも主役を演じたダニエルはモテモテだったが、親の影響か黒人の子やティムのような子に対してあまりにもレイシズム発言が多いため嫌われて友だちがいなくなってしまった。けれど、みかこさんの息子さんはダニエルとも友だちでいたいため、ダニエルが虐めにめげずに意地でも欠席せずに学校に行き続けるので、「こっちまで皆勤賞になっちゃうよ。だって僕がいなかったらダニエルが一人になっちゃうでしょ」とダニエルに合わせて学校を絶対欠席せずに行った。
     一番ぐっときたのは、イギリスの中学校での「シティズンシップ・エデュケーション」という授業で教えられる「エンパシー」という言葉。「エンパシー」は「シンパシー」と似ているが全く違う。「シンパシー」は「同情」に近く、自分と近い立場の人のことが自然と分かる気持ち。だけど、「エンパシー」は自分と違う立場の人の気持ちを「想像」することによって誰かの感情や経験を分ちあう能力のことであって知的作業なのである。みかこさん自身の生き方もそうだが、息子さんも「多様性」の社会の中で、「想像」しなければ分からない隣人の気持ちを一生懸命想像して友だちになっていった。そして、日々とても成長された。
     また、今の首相の名前さえ言えないイギリスの政治事情も少し分かってきた。例えば、保守党が「緊縮」財政を初めてから、子供の貧困が増え、制服代や給食費を出せない子供が多くなったので、貧しい地域では教員が子供たちの衣食住の面倒まで見なければならないのだとか。息子さんの通われている学校も低所得者層が多いから政府から「児童特別補助金」が入るのだが、少しミドルクラスの子が入ってくるようになったため、校長は学校のレベルを上げるために教育費にお金を使い、衣食住にも困るような子供が隅っこに追いやられてしまうようになったのだとか。
     私もこの日本で、子供の進学説明会に参加したり、大学のパンフレットを見たりするのだが、その中でよく見たり聞きたりする言葉が「グローバル教育」である。もう目新しくもなんともない言葉だが、なんか日本の教育界で「グローバル」って言われると「英語ペラペラ喋って世界のリーダーと渡り歩く」ことを目指しているように聞こえるのだが、本当は違うのだろうな。ここ数年で日本にもかなりの外国人が増え、「受け入れられる」かどうか考える暇もなく、異文化と接する機会も増えている。クールな面ばかりではない、馴染みにくい外国文化を理解しようとしたり、人種だけでなく、LGBTQ色んな人たちのことを理解して一緒に社会を渡りあうなど、今、日本にいても出来る努力 =「エンパシー」からグローバル化は始まるのだろうなと思った。

  • 多様性への理解とその能力、実際には計り知れないもの。そこに、見えるものとして存在するのは、そばにいることや語らい、穏やかな表情や眼差し。知らないことを知ろうとする心のゆとりや豊かさを大切に。

  • ブク友さん方のレビューを拝見し、とても興味を持ったノンフィクションです。
    うん、読んでよかったです。この本を知ることが出来てブク友さんありがとうです。

    『世界の縮図のような』とは言い得て妙です。ここでは、英国にある「元・底辺中学校」での日常がそのような場となっていますが、日本でも多文化共生、多様性などの言葉が目につき、耳に入るようになってきた昨今、遠い国の話ではなくなってきてると改めて思いました。
    そして、実際に見て聞いて体験し、他者と話し合うことの大切さを、今更ながらひしひしと感じました。子どもに対して、つい大人は先回りして、まだ難しいからとか、こんなこと知れば傷つくだろうからとか、酷い事実を隠したいと思ってしまいます。でも、子どもってちゃんと考え理解しようとする力を持っているんだと思います。逆に、大人が「ねえ、どうして?」と聞かれると、答えに窮してしまったり、後ろめたい気持ちや、邪魔くさい気持ちになって、子どもたちを問題から遠ざけようと無意識のうちにしているのではないのだろうかと思ってしまいした。
    著者の書かれるとおり、幼児たちの世界では、「こうでなくちゃいけない」の鋳型がありません。「この形がふつう」「こうでなくちゃいけない」の概念さえありません。それは、自分の子どもたちのことを振り返ってみても、その通りだと思いました。じゃあ、なぜ、子どもたちが成長するに従って、彼らの世界にいろいろな鋳型が現れ、自由で朗らかな存在でいられなくなるのでしょうか。偏見や差別、いじめがなぜ子どもたちの世界で生まれてくるのだろうか。考えてみれば簡単なことで、子どもたちに影響を与えてしまうのは、周りに存在する大人なんですよね。
    この優等生の「ぼく」は、そんな問題にぶち当たったとき、一緒に考えてくれる「母ちゃん」がいました。二人が考える物事は難しいように思えるけれど、「ぼく」のように、何が大切なことなのかをちゃんと考える力は、世界中の子どもたちが本来ちゃんと持っている力だと私は信じてます。ひとりで分からなかったら、ふたりで考えましょう。そうすれば、きっと何かが見えてくるはず。
    そんな大人の存在が増えてほしいし、私もそうでありたいです。

    • 5552さん
      地球っこさん、こんにちは♪
      この本、わたしも読みました。
      これからの日本に必要な良い本ですよね。
      いろいろ学ばさせてもらいました。
      ...
      地球っこさん、こんにちは♪
      この本、わたしも読みました。
      これからの日本に必要な良い本ですよね。
      いろいろ学ばさせてもらいました。

      2019/10/04
    • 地球っこさん
      5552さん、こんにちは。
      コメントありがとうございます!
      5552さんのおっしゃる通り、
      いろんなことを考えるきっかけを
      与えてく...
      5552さん、こんにちは。
      コメントありがとうございます!
      5552さんのおっしゃる通り、
      いろんなことを考えるきっかけを
      与えてくれる、素晴らしい本でした♪
      2019/10/04
  • 「ベストセラーは買って読め」という読書術の本のいわんとするところがわかった本です。

    今の時代は社会とかかわらないでいると何もわからなくなってしまうのだなと痛切に思いました。
    社会は生きている。
    この本にでてくる英国の元底辺中学校といわれるところに通う子供たちは国際感覚しかり、それ以外にもずいぶん多くの学習と呼ばれるもの以外のことを学んでいると思いました。

    P76より
    「EU離脱派と残留派、移民と英国人、様々なレイヤーの移民どうし、階級の上下、貧富の差、高齢者と若年層などのありとあらゆる分断と対立が深刻化している英国で、11歳の子どもたちがエンパシーについて学んでいるというのは特筆に値する」
    私は、恥ずかしながらエンパシーということばを、今まで耳にしたことがなかった気がします。共感・感情移入・自己移入の意味だそうです。
    学校の試験問題に「エンパシーとは何か」が出て、著者の息子さんは「自分で誰かの靴を履いてみること」と答えたそうです。
    「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」は息子さんのノートの隅の落書きだそうです。
    「ブルー」という単語は「悲しみ」または「気持ちがふさぎ込んでいる」という意味だそうです。
    いろいろな境遇の子どもたちが登場しますが、著者の息子さんの感性の伸びやかさ、鋭さには他にもかなりどきっとしてしまう描写がたくさんありました。

    日本の学校のいじめやスクールカーストなどの問題はゆがんだ社会において起きる問題にみえてしまうほどの本でした。
    自分のアイディンティティや人種、文化の問題は日本の片田舎ではなかなか意識できないです。
    ちなみにうちの隣は夏の間だけフランス人のご家庭が住んでいらっしゃるのですが、まだそこまで奥の深い話をしたことはありません。

    • 2020/03/03
    • soutaさん
      ぼくも日本にずっと住んでるのでアイデンティティや人種などの問題を意識することがほぼなかったです!この本を読んだからこそ多様性の複数の面を考え...
      ぼくも日本にずっと住んでるのでアイデンティティや人種などの問題を意識することがほぼなかったです!この本を読んだからこそ多様性の複数の面を考えられるんだと思います!
      2020/05/09
  • イギリスでの子育てをしながら、子どもの成長と社会の問題を取り上げている道徳的教科書的作品。

    「老人はすべてを信じる。中年はすべてを疑う。若者はすべてを知っている。」
    「子どもはすべてにぶち当たる。」

    「頭が悪いってことと無知ってことは違うから。知らないことは、知るときが来れば、その人は無知でなくなる。」

    「エンパシーとはなにか?」
    「自分で誰かの靴を履いてみること。」

    「僕は、人間は人をいじめるのが好きなんじゃないと思う。罰するのが好きなんだ。」

    とても素敵な家族だと思います。
    すごく読み易いので、子どもから大人までみんなにおすすめの一冊でした。

  • 英国在住の著者とその息子の中学校生活の最初の一年半を書いた話

    本書を読んで、とにかく立派な息子さんと関心!
    考え方が大人!
    行動が大人!
    (自分が中学生の頃を思い出してみると恥ずかしくなります…w)
    こういうふうに立派に成長していくのはイギリスという国の影響?
    家族、友人、先生など周りの人たちの影響?
    学校の影響?
    生活環境?
    良いことも悪いことも様々なものが子供の成長に大きく影響していることでしょう
    そして、親が気づかなうちに子供は勝手に強くたくましく成長しているのでしょう!

    • 1Q84O1さん
      こんばんはです♪
      ほん3さんも比べちゃいましたかw
      もし、あの年頃にもどれるなら…
      たぶん同じことを繰り返しているでしょう!w
      こんばんはです♪
      ほん3さんも比べちゃいましたかw
      もし、あの年頃にもどれるなら…
      たぶん同じことを繰り返しているでしょう!w
      2023/04/13
    • mihiroさん
      1Qさ〜ん♬こちらでも〜✌︎(๑˃̶͈̀◡︎˂̶͈́๑)✌︎
      この本、知らな事がいっぱいだったなぁ〜
      日本にいるとあんまり直面する事ないけ...
      1Qさ〜ん♬こちらでも〜✌︎(๑˃̶͈̀◡︎˂̶͈́๑)✌︎
      この本、知らな事がいっぱいだったなぁ〜
      日本にいるとあんまり直面する事ないけど、厳しい現実にびっくりでした(--;)
      私はこのまま日本で生活していきたいな〜って思いました←はなから海外行く予定ないけど笑
      息子さん中学生なのに、ほんと聡明でしたよね〜!
      2023/04/13
    • 1Q84O1さん
      mihiroさん、どーもです♪
      同じく知らないことがいっぱいでした!
      国が違えばいろいろと違うのは当たり前ですが、びっくりさせられることがた...
      mihiroさん、どーもです♪
      同じく知らないことがいっぱいでした!
      国が違えばいろいろと違うのは当たり前ですが、びっくりさせられることがたくさんでした
      私も住むなら今のまま日本がいいなぁ(^^)
      旅行で海外は行ってみたいですがw
      2023/04/13
  • 「老人はすべてを信じる
    中年はすべてを疑う
    若者はすべてを知っている
    子どもはすべてにぶち当たる」

    ブレイディみかこさんが、中学生の息子の日常を書き綴ったエッセイ。タイトルが秀逸。
    息子は、名門のカトリックの小学校を卒業して、なぜか地元の元・底辺中学校に進学する。からだが小さく東洋人のなりをした「ぼく」は、英国の人種差別や格差で複雑な人間関係の中、たくましく育っていく。周囲の衝突や喧嘩に巻き込まれながら、真っ直ぐな感性と大人顔負けの賢さで乗り越えていく、そんな「ぼく」の姿が眩しい。「大人も負けるなよ!」と肩をたたかれているようだ。

    本屋大賞2019 ノンフィクション本大賞受賞。
    子育て世代は必読。

    「エンパシー」
    この本で繰り返し出てくる重要なキーワード。
    シンパシーに似ているけど、シンパシーは自分の気持ちが主体の感情。対して、エンパシーは誰かに自分を重ねあわせ、相手のシチュエーションを理解すること。エンパシーは相手の気持ちが主体の感情。
    人種、宗教、そして性のアイデンティティが多様化した社会が幸せになるためにとても重要な感情だな、と思った。

  •             オーセンティック
    「クール。うちの家庭も 本物 だなと思っちゃった」
    「え?」
    「いろいろあるのが当たり前だから」

    英国南端ブライトンという町に暮らして20年以上になる著者が、名門カトリック小学校を経て公立「元」底辺中学校に通う息子について綴ったエッセイ集。

    「緑に囲まれたピーター・ラビットが出てきそうな牧歌的なミドルクラスの学校」から、「殺伐とした英国社会を反映するリアルな学校」へ。
    多様化と貧富格差と各種差別とのごった煮でマルチカルチュラルなイギリス社会でいろんなものを見て育つ息子氏の、中学生活はじめの1年半分の記録。

    これは、話題になるだけのことはある、良い本でした。

    まず文章が上手い。先日読んだ川上和人先生のエッセイ集も読みやすかったがあれは文章が上手いんじゃなくてしゃべりが上手い人の本だった。こちらはとにかく読ませる文で、気持ちが良い。

    それと、問題提起したいような出来事ばっかりの中で、「こうでなければならない」と訴えかけるような論調にはしないところが好ましい。
    もちろん、ポリティカルにコレクトネスな態度が当然であるという姿勢はある。でもそれは当然のことであって問題提起ではない。
    (ところで、ポリコレというのは日本の一部ではどうにも揶揄するような単語になってしまっているが、あれは本当にアンクールだと思う。「正しすぎて嫌だ」みたいなのも。そういうのはさぁ、自分が弱い側にいないから言えるんじゃないの?)

    息子氏が体験する様々な出来事それ自体も面白いし、かの国で行われている教育施策なども、へーと思いながら楽しく読んだ。
    日本にもあればいいのにと思うことも結構あって、例えば「コミュニケーション&ランゲージ」という項目で「言葉を使って役柄や経験を再現できるようになる」という目標があって演劇なんかを頻繁にやる。うちの子も自己表現がとにかく下手なので(親も下手だからでもある)良さそうだなと思う。
    他には「シティズンシップエデュケーション」と称して政治や法について学ぶが、これは日本の「公民」の授業より一歩進んで社会の成員として成熟するための第一歩であるように読める。内田樹が「私たちは学校教育を通じて、私たちの共同体の未来を担うことのできる次世代の成員たちを育て」るのだと繰り返し唱えている、まさにその現場なのではないか。

    イギリス教育万歳!という話ではなくて、むしろ日本の教育の方がトータルではぜんぜん良い、としか思えないが、どこだって教育現場というのは頑張っているなというお話。


    タイトルについて。
    息子氏のノートの端の走り書きを採用した(著作権を主張されている)このタイトルは面白い。
    イエローでホワイトはアジア人と白人という二つのルーツのことで、ブルーは感情表現のブルー。こういう文を書きたくなるようなことが中学生の身に何かしら起こったのだ。
    そこから、1年半後の彼は「いまはどっちかっていうと、グリーン」と発言する。

    >まったく子どもというやつは止まらない。ずんずん進んで変わり続ける

    変わることこそ子供の本質。忘れずにいなければ。

  • 1.この本を選んだ理由 
    最近図書館で予約した本が入ってこないため、ちょくちょく会社の本棚から面白そうな本を借りてきています。※1ヶ月に2冊程度ですが…
    その会社の本棚は、xx思考とか、マーケティングxxとか、ビジネスに直結するようなものばかりですが、この書籍のようなビジネス書とは違うジャンルのエッセイとか小説が少しあるので、結構探し出すのが楽しみになっています。

     
    2.あらすじ 
    全252ページ。
    イギリスで暮らす筆者のブレイディみかこさんと、中学生(11歳)の息子さんの生活が中心となって展開していく、ノンフィクション作品です。
    貧富の差が激しく、さまざまな人種が共に生活するイギリスの中学校生活は、日本で貧困とは関係なく過ごしてきた人間にとっては、異次元のお話のように聞こえてしまうかもしれません。
    ちょいちょい日本に帰ってきた時の話もあって、すごいイメージしやすい場面も多々あります。日本で日本人に囲まれて生きてきた人間には衝撃的な内容かもしれないです。


    3.感想
    イギリスの生活の様子を知ることができ、やはり、日本は同一民族で生活している国だと感じました。地方によっては差別的なものをうけてきた場所はあるでしょうが、今は地域に対しての差別は弱まっているのではないかと思っています。当然、日本の中でも、好き嫌いはあるでしょうが、そこまで大きなものではないでしょう。

    この作品はまさに11歳の子どもが読むと、別の国を意識するきっかけになり、とてもよいと思います。なんか、読んだ後にいろいろ質問は出るでしょう。

    作中にでてくる息子さんは11歳、純粋さがいい。
    ワールドカップで日本を応援するとこや、盆栽の話のとかは、面白かったです。
    私には高校1年生の息子がいますが、10歳から15歳ぐらいが一番カッコいい時期なのかもしれないなぁ〜と、この本を読みながら、ふと感じました。
    やはり、成長とともに、カッコよさがなくなっていくのは、年配者や環境の影響が強いわけで、両親や家庭の存在は一番大きいだろうと、あらためて感じました。

    いつまでも、純粋さは必要だな!と、感じさせてくれた。

    DVDレンタル店の話がでてきますが、いるよな〜と共感しました。私もCDをケース毎持って行って、ケースから抜いて持ってきてくださいと、嫌な顔で言われたことがあります。
    リアルでのレンタルがなくなっていくのは、こういうところにも要因はあるでしょう。やっぱり、ダメなものはなくなっていきます。

    全体的に笑いがあって、とても勉強になる作品でした。
    旦那さんを配偶者と表現するところも、なんか関係性が見える感じで面白かったです。
    この少年がどんなふうに育っていくかは、とても楽しみです。


    4.心に残ったこと

    さらっと、でてくる言葉がよかったです。

    「自分が属する世界や、自分が理解している世界が、少しでも揺らいだり、変わったりするのが嫌」という言葉がでてきますが、自分に当てはまることのないように生きていきたいと強く思いました。

    LGBTの世界観も面白い。パパ2人の親、ママ2人の親というのが周りにいないから、とても、不思議な感覚。
    「子どもたちには、こうでなくちゃいけない、の鋳型がなかった。」って言葉は、すごい惹かれました。

    陰気に硬直して、新しいものや楽しいことが生まれそうな感じがしない。

    欠席罰金には驚いた。

    最後の「まったく子どもというやつは止まらない。ずんずん進んで変わり続ける」は、よかった。
    これを見た時に、やっぱりいつまでも子どもでいいやと思った。いつまでも変わり続けられる人間でいたい。

    知らないことってたくそんあるな、とは、日々感じていますが、世界規模で考えたら、知ってることなんて、本当に少ししかないと、この本1冊読んだだけでも、感じさせられました。

    私の子どもは、小学生のときから、両親が別々の国でうまれたハーフアンドハーフの子たちが同級生に必ずいたので、少しずつ日本でもそういう子は増えているんだろうと感じていました。もっと、広がっていくと、面白いだろうなと思っています。当然、マルチカルチュラルが広がることで、いろいろと問題もでると思いますが、それ以上に得るものは大きいだろうと感じました。


    5.備忘録

    ①アイデンティティ・ポリティクス
    人種、ジェンダー、性的指向といった故人のアイデンティティの問題を重視する政策

    ②エンパシー
    自分と違う価値観や理念を持っている人が何を考えるのか「想像する力」のこと

    ③オルタナティヴ
    択一的、複数の選択肢の中から選び取る。

    ④ポリティカルコレクトネス
    特定の言葉や所作に差別的な意味や誤解が含まれないように、政治的に(politically)適切な(correct)用語や政策を推奨する態度のこと

    ⑤マルチカルチュラル
    2つ、あるいはそれ以上の文化を経験してきた人たち

    ⑥フォリナー
    外国人

    ⑦LGBTQ
    レズビアン
    ゲイ

    バイセクシュアル
    男女どちらにも性愛感情が向く性のあり方

    トランスジェンダー
    生物学的に割り当てられた性別に違和感を持ち、 異なる性を生きていきたいと 考えている人の総称

    クエスチョニング
    自分自身がまだわかっていない

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著者プロフィール

ブレイディみかこ:ライター・コラムニスト。1965年福岡市生まれ。高校卒業後、音楽好きが高じてアルバイトと渡英を繰り返し、1996年から英国ブライトン在住。ロンドンの日系企業で数年間勤務したのち英国で保育士資格を取得、「最底辺保育所」で働きながらライター活動を開始。著書に『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)、『他者の靴を履く』(文藝春秋)など多数。近年は、『リスペクト』(筑摩書房)、『両手にトカレフ』(ポプラ社)などの小説作品も手がけている。

「2024年 『地べたから考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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