- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103526810
感想・レビュー・書評
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今の日本や世界のあり方について考える種がたくさんありますね。
子供さんはもとより、大人にもおすすめしたい。
いや、むしろ大人かな?
星がも少しあったらもちょっとつけたい。
子供をほしいとほぼ思ったことがない人生を歩んできましたが、こんな息子が家にいたら、人生が深まりそうだなーとちょっぴり羨ましいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ずうっと本屋さんで気になってた本をいよいよ買って最寄りのマックで読んだら、ぐいぐい引き込まれてしまってそのままマックで読み終えてしまった。何回ポテトが揚げあがる音を聞いただろう…
私たちは誰かと同じでもあって誰とも違う。
何者であるか、ひとつに決めることはできないし、決めつけられることもない時代だ。
イギリスの中学校に進学した息子さんとその周りで巻き起こる色んなことは、遠くのニュースと私たちの日常とも地続きだ。日本の学校だと同質性の圧力に苦しむことが多いのかもしれないけど、イギリスにいる彼らの場合は「多様性」という、その渦中にいる人たちにとっては楽ではないことにぶつかることが多い。
みかこさんの視点のなるべく面白く観察してやろうという興味と好奇心と「人」に対する優しさのようなものが、あらゆる周りの人と自分にも向けられているのを感じて心地良い。
そんなみかこさんに冷静につっこんだり、心の中でいろいろ考えているのだろうことがわかる息子さん、お父さん、彼の友だち、教員のミセスパープルもナイスだ。
私たちはみんな人を傷つけるためじゃなく、自分の大切な人を、大切な人が大切にするものを助けたいと思うことで動ける人でありたいと思う。
そのためにぶつかったり心が痛くなる、あの感覚を抱えながらそれでも一緒にやって行こうとする生き方を、ぶつからないで内にこもっていくより選んでいきたい。
綺麗な話でも絶望を嘆く話でもなく、そのぶつかりを友だちどうしの関係から、考えながら感じながら成長していく息子さんをみて、ニュースが映すどん曇りの未来とは違う、きらっと眩しい気持ちになった素敵な本だった。 -
2019年Yahooノンフィクション大賞受賞作。
カトリック系の人気小学校から、地元ブライトンの荒れた中学校へ進学する息子の成長が描かれている。
けれど、これはただの子育てエッセイではない。
階級格差、移民、政治、差別、ジェンダー平等、LGBTQ、アイデンティティクライシス。
私たちが目を背けてはいけない、これからの未来とは切って切り離せない様々な社会問題が提起されているのだ。
それらに真正面からぶつかっていく息子を、自らも東洋人として差別を受けた経験のあるブレイディみかこさんはあたたかく見守り続ける。
多様性って、とても大変だ。全員が全員気持ちよく生きていける社会をつくることは、とてもむずかしい。
むずかしいけれど、でも理解することはできる。知ることはできる。多様性に対して無知でいることはそれだけで暴力になり得る。
大人になってしまった私たちは、知ることを放棄しがちだ。多様性、と口では認めてもいまいちどういうことなのか分かっていない。
シンパシーではなく「エンパシー」という能動的な力を身につけ、相手の靴を履いて感じる体験が何よりも必要なのだ。
この"ぼく"が通う中学校の子どもたちのように、もっとたくましく柔軟に、イエローにもホワイトにもブルーにも、そしてグリーンでもピンクでも何色にも変わり続けていけるなら。世界はもっと生きやすくなる。 -
日頃あまり考えない、人種差別、格差、アイデンティティ、貧困、世界はなかなかシビアなのだと改めて思い出させてくれました。
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ニュースじゃ、なにもしれないんだなあと。
わたしは本当に無知で、なにも知らないんだなあと、
この本を読んで思いました。
世界情勢や経済、差別など、テーマが重い本ですが、利口で前向きな息子さんと、言葉の選び方がお上手な作者さんのおかげで、ストレスなく、とてもすらすら読むことができました。
悲しいことがたくさん綴られている中身なのに、読むほどに前向きになれる気がして、諭すような台詞は数多くあれど、これは単なるお説教本ではありません
読んでいるこちらが、まさにイエローでちょっとブルーな気持ちになりました -
イギリスのEU離脱について、私は長いこと
「成り行きで決まってしまって後悔しているのではないか」
と見ていました。
しかし昨年の総選挙で、実は離脱派が圧倒的に多かったと知りました。
ニュースや本ではわからないものですね。
この本はそんなイギリスで暮らす日本人のブレイディみかこさんの「エッセイ」と言っていいかな。
日本にはあまり縁のない「移民」の問題やマルチカルチュラルといったものが、実際に暮らす人の言葉で語られます。
もちろん、日本でもありうる、貧困とかいじめとか少女の家出などもあります。
「波」に一昨年1月から昨年4月まで掲載されたもので、まだ連載は続いているようです。
続きが気になります! -
とても話題になっている本だったので購入。
子供でも読めるようにわかりやすく書いてあるので
あっという間に読了した。
舞台はイギリスで中学生の男の子の日々の葛藤が
描かれている。イギリスなので日本よりも更に
多様性が進んでいて、子供のおかれる状況も様々だけれど
思春期の子供が考えて、大人に問いかけて
自分の在り方を選んでいく様子が清々しい。
格差の問題や、人種の問題、ハーフという中途半端な
立場の自分のアイデンティティの問題、いじめの問題
LGBTのとらえ方などとても勉強になるし
自分がこうと思っていた意識をもう一度考え直さないと
と凝り固まった自分の考えを見直すきっかけにもなる。
一度読みだすと止まらない本なので、中学生の娘にも
読ませようと思う良い本だった。
住んでいる国は違っても自分と同じように葛藤しながら
大人になっていく同世代の同志がいるって知ることは
とても大切だと思う。 -
「でも、多様性っていいことなんでしょ?学校でそう教わったけど?」
「うん」
「じゃあ、どうして多様性があるとややこしくなるの」
「多様性ってやつは物事をややこしくするし、喧嘩や衝突が絶えないし、そりゃないほうが楽よ」
「楽じゃないものが どうしていいの?」
「楽ばっかりしてると、無知になるから」
--- P.59より引用
応援するチームが複数あるのは幸運なことだが、なるほど多様性の強さってのはこんなところにあるのかと思う。こっちがダメならあっちがある、のオルタナティヴが存在するからだ。こっちしか存在しない世界は、こっちがダメならもう全滅するしかない。
--- P.130より引用
厳格なカトリック小学校から元底辺中学校に進学し、様々な価値観や階級で育ってきた子どもたちと出会う中で、傷付いたり感動したりしながら成長する親子の物語。父親はアイルランド人、母親は日本人で、英国在住。
この春、それこそ厳格なカトリックの私立幼稚園から国立小学校(元底辺では全くないけど私立よりはずっと多様性に富んでいるという意味で)に進学する我が息子のスクールライフと、ちょっと重なりそうな気がして大変おもしろかった。
そんなつもりはなかったのに些細な一言が地雷になり相手を怒らせてしまったアフリカ人の母親とのやりとりや、「オリエンタル」という単語が今では差別用語に当たるということ、生徒たちの渾身のラップ(割と本気で泣きそうになった)、その他も印象に残るエピソードがたくさんあったけれど、一番は冒頭に引用した親子の会話。今、自分が楽ができる環境にいるからこそ身につまされる会話だった。大人になったら、合わない人とは必要以上に関わらないという選択ができちゃうから。この年になると...とか、昔からの友達が一番...とかつい言いたくなる気持ちをぐっと堪えて、世界がこれ以上狭まらないように精進したい。
滅多に買わない単行本。とっとと読んでさっさと売ろうと思ってたけど(失礼)、これはバイブル認定をして大切に保管しようと思います。読みながらたくさん頭を使う、いい本でした。 -
英国の人種的多様性が生み出す社会の蠢きを感じた。読み終わった今日12/13 保守党の圧勝が告げられ、EU離脱へ一気に動き出すことが確定的となった。
日本と同じ島国なので似たところも感じるけど、階級社会のなかで確立されている労働者階級の屈託のなさや、教育基準局(Ofsted)のドンと構えた制度設計には国の歴史というか、議会制民主主義国に至った分厚い経験が蓄積されているのも見えてくる。
(日本で目にするEU離脱の報道は、離脱することのデメリットや、「それを本当に選択したら困るのは英国民自身じゃないの」的な側面が強いのに、違和感を覚えた)
日本人の母とアイルランド人の父を持つ少年が、成長していく過程がよく切り取られている。
自分とは違うルーツが違う人間が経験を通して見せてくれる感性こそが、私という人間の感受性を明らかにしてくれる。
子どもは母の影響かで育まれるものだなぁとも感じたし、この母にしてこの子ありとも感じた。
各エッセイの終わりに著者が呟く短い言葉が良い。成長と将来(息子と息子の暮らす未来)に期待を込めているのがわかる。ーーこの佇まいが、この2人を大きくしている。 -
衝撃でした
ノンフィクションであることに
イギリスの12歳の少年が様々な体験から
しっかり地に足付けて自分の頭で考えていることが
私の凝り固まった常識をガンガンたたかれました
知らない言葉のなんと多いことか
日本 あかんよ
わたし あかんよ
≪ 線引きや 差別だらけに 突き進む ≫